PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ヴァレーリヤ! お酒を飲むだけで報酬がもらえる依頼があるらしいぞ!!!

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●わくわくのヴァレーリヤ
「本当ですの!? 本当にお酒を飲むだけで報酬を得られる依頼が!?」
 と、鉄帝の街中をすごい良い笑顔で歩くのは、ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)であり、その一歩前を歩きヴァレーリヤを先導するのがヨハン=レーム (p3p001117)である。
「ええ、あるらしいですよ」
 にこにこと微笑むヨハンである。ヨハンは尻尾をパタパタと振りながら、ヴァレーリヤを先導する。
「ああ、神はここに居ましたのね……まさか好きなだけお酒を飲むだけでOKな依頼があるなんて!」
「ええ、すごい話ですよね」
 にこにこと笑うヨハン――その口元がぴくぴくと動いている。笑いながら、笑うのを我慢しているかのような奇妙な表情であったが、ヴァレーリヤはそれに気づかない。
 お酒を飲むだけで報酬が得られるお仕事が存在するらしい――ヨハンからそう聞いたヴァレーリヤは、頭に耳があればぴん、とそれを立てたであろう勢いでその話に乗っかった。そして、ヨハンに誘われるがままに鉄帝に来たわけである。
 二人がしばし街路を進んだ先にあったのは、鉄帝国にはよくあるトレーニング・ジムの一つである。普段は男女問わず筋肉のひしめき合う音が聞こえるこの施設だが、今日は休みなのか、僅かな人の気配を感じるのみである。
「ここに!?」
「ええ、ここが今回のお仕事場所です!」
 ヴァレーリヤが、トレーニング・ジムの扉をばーん! と開く。中はランプがともっていないようで暗く、よく見えない。そうですわよね、ただ酒が飲める依頼ですものね、中はきっと暗くて極秘なのですわ、と都合よくヴァレーリヤは解釈した。
 ヴァレーリヤがつかつかと内部に進むと、何か巨大な建造物にぶち当たった。でっかいテーブルですかしら、お酒の乗った。と、都合よく解釈したヴァレーリヤであったが、背中から聞こえた、がちゃん、と言う音で我に返った。そのがちゃん、と言う音は、ヨハンが入り口の扉を閉めて鍵をかけた音だと気づくのに、酒に溺れたヴァレーリヤの頭脳ではたっぷり数十秒ほどかかったが、しかしそう気づいた時にはすでに遅い。
 がちゃん、と音がなって、一斉に、部屋中の練達製・白熱電球が明かりをともした。そこにあったのは、巨大なリングマットであって、その中心には四人の男女が腕を組んで立っていた。
「これよりヴァレーリヤ特別訓練を開始する!!!!!」
 ヨハンは声高らかにそう宣言した。
「あ、これ騙されたやつだ」
 ヴァレーリヤは「あ、これ騙されたやつだ」と思った。

●しおしおのヴァレーリヤ
「ヨハン! 貴方騙しましたわね!? 今まで想像していたただ酒が飲める依頼は!?」
「あるらしいですよ、すごいですよね――まぁ今回のお仕事には関係ありませんが」
 ぐぬぬ、とヴァレーリヤは歯ぎしりをしつつ、しかし気づいた。確かにヨハンは「そう言う依頼があるらしいですよ」としか言っていない。
 つまり、今回の依頼がそうですよ、とはいっていないし、何なら嘘をついたわけではない、という事になる――これは完全にこちらの落ち度という事になる。
「ヴァリューシャ」
 と、リングの上から声が上がる。それはマリア・レイシス (p3p006685)であり、ヴァレーリヤとは特に仲の良い間柄であったから、まず話をするならマリアだ、とヴァレーリヤはリングにかじりつく。
「マリィ! 助けてください! これ絶対ろくでもないことになるに違いありませんわ!」
「ヴァリューシャ。君はこれからトラになるんだよ」
「ふぁ?」
 ヴァレーリヤが思わず素っ頓狂な声をあげる。意味が分からない。こほん、と咳ばらいをしつつ会話に入ってきたのは、ゼファー (p3p007625)であった。
「ヴァレーリヤ、あなたは『鉄帝国ガチムチ女子プロレス大会』のローレット特別参加枠としての参加が決まっているのよ」
「はぁ!?」
 ヴァレーリヤがさらに裏返った声をあげる。なんだその珍妙な大会は。それに、そんなものに参加表明した記憶がない。
「はっはっは! 覚えていないだろうね! でもこういえば思い出すかな――この間、めちゃくちゃお酒飲んだ時に書かされた外泊申請書――」
「そんな古典的なトラップで!!!」
 ケタケタと笑う茶屋ヶ坂 戦神 秋奈 (p3p006862)の言葉に、ヴァレーリヤは地団駄を踏む。つまり、滅茶苦茶お酒を飲んで酩酊した時に、ヴァレーリヤは「外泊申請書」なる謎の書類にサインをした訳だが、それが『鉄帝国ガチムチ女子プロレス大会』の参加申請書だったのである。
「それで、今回はなんの集まりなんですの!?」
 ヴァレーリヤが声をあげるのへ、答えたのはマッチョ ☆ プリン (p3p008503)である。
「特訓だッ!!」
「特訓っ!?」
「そう――オマエが『鉄帝国ガチムチ女子プロレス大会』を勝ち進むための、特訓だッ!」
 特訓、と言う言葉に、ヴァレーリヤは眩暈を覚えた。いや、特訓って、絶対ろくでもないことになるに決まっている。ことこのメンツは、かなりフィジカル面では突き抜けている人たちであり、そんな人たちの基準で特訓となると、絶対に酷いことになる。
「マリィ! 助けてください! 貴方なら何とかしてくれますわよね!!」
 と、最後の頼みの綱になるヴァレーリヤであったが、しかしマリアは悲愴な顔を見せるだけであった。
「ヴァリューシャ、獅子は我が子を千尋の谷につき落すんだよ。私は獅子ではないけれど、でも軍人として、部下を育成するすべは叩き込まれたから安心して!」
「話通じない!」
 ヴァレーリヤが頭をガシガシとかいた。多分マリアはマリアで、割とこの状況に浸っているのだ!
「諦めなさい、ヴァレーリヤ」
 ゼファーが言った。
「それに、もうすでに大会にエントリーは済まされているのよ。このまま参加してみっともない姿をさらすのと、訓練を受けて結果を残すの……どっちがいい?」
「棄権しますわ」
「棄権したらそれはもうキツお仕置きが待ってるからね」
 秋奈がぴしりと釘をさす。どうやら丁寧に退路は断たれているらしい。ヴァレーリヤはぐぬぬ、とうめいた。
「ヴァレーリヤさん。やるしかないんですよ」
 にやにやと笑いながら、ヨハンが声をかける。ヴァレーリヤは頭を抱え、
「どうしてこうなるんですの!!!」
 吠えた――。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 此方のお仕事は、イレギュラーズ達による特訓(リクエスト)により発生したお仕事になります。
 がんばえー! ヴぁれーりやー!

●成功条件
 ヴァレーリヤを一生懸命特訓する。

●状況
 ヨハン=レーム (p3p001117)に言葉巧みに誘導され、鉄帝へ連れてこられたヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ (p3p001837)――。
 そこにはヴァレーリヤを鍛え、『鉄帝国ガチムチ女子プロレス大会』へと参加させるための策謀が渦巻いていました。
 罠にはまったヴァレーリヤ。罠にハメた仲間達。皆さんは、ヴァレーリヤの心・技・体を鍛え、鉄帝国ガチムチ女子プロレス大会で優勝できるように導いてあげてください。
 なお、リプレイは特訓部分、そしてなんやかんやで勝ち進んだ決勝戦部分の二部構成でお送りする予定です。
 特訓を担当する皆さんは、ヴァレーリヤさんにどんな特訓をするかをプレイングにお書きください。
 ヴァレーリヤさんは、自主訓練したりサボったりしつつ、決勝戦部分でどのように戦うかをプレイングにお書きください。

●決勝戦で戦う相手
 クレメンチーナ=イリイーニシュナ=リャザノヴァ 23歳
 特徴
  金髪のガチムチ女性。
  12歳の時にクマを素手で殴り殺した。
 心・技・体レベル(1~10の十段階評価)
  心レベル:70(少し弱い。女の子だもの)
  技レベル:80(関節技が苦手)
  体レベル:100(死なない)


 以上となります。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。

  • ヴァレーリヤ! お酒を飲むだけで報酬がもらえる依頼があるらしいぞ!!!完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年11月02日 22時10分
  • 参加人数6/6人
  • 相談8日
  • 参加費200RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
※参加確定済み※
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
※参加確定済み※
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
※参加確定済み※
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
※参加確定済み※
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
※参加確定済み※
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
彼女(ほし)を掴めば
※参加確定済み※

リプレイ

●大特訓だ! ヴァレーリヤ!
「ぜひゅー……ぜひゅー……」
 澄んだ秋の空に、今にも死にそうな呼吸がこだまする。
 鉄帝の街中をランニングするのは、一人の赤毛の女性の姿。
 そう、みんな大好き『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)である。
 平日の午前中である。普段なら寝ているか酒をかっ喰らっているであろうヴァレーリヤが、どうしてこんな健康的な事をしているのかと言えば、端的に言えば皆に騙されたからである。
 『鉄帝国ガチムチ女子プロレス大会』のローレット特別参加枠として参加を強制されたヴァレーリヤ。仲間達は、そんなヴァレーリヤがとりあえず大会で死なないように、特訓を行っているわけだ。とはいえ、酒にやられたヴァレーリヤである。基礎的な体力特訓の時点で、もう半ばネをあげていた。
「ヴァリューシャ……ごめんね……辛いよね……」
 と、その横を今にも泣きだしそうな様子で並走するのは、『神鳴る鮮紅』マリア・レイシス(p3p006685)。皆に騙されてヴァレーリヤをスパルタ特訓することになったマリアであるが、それはそれとして、ヴァレーリヤが苦しむ姿を見るのは、辛い。
「すぐにでもお酒を飲みたいよね……でも、今は我慢して……! ヴァリューシャ、一緒にトラになろう。トラになったら、沢山お酒あげるからね……!」
「ぜひゅっ、ひょ、ひゃっひゅ、ひゅー、ひゅー」
 何やら意思を表明したいヴァレーリヤであったが、それはもう呼吸が辛く大変なことになっているので、何を言いたいのかはよくわからない。
 ヴァレーリヤが何を言いたいのかはマリアにもよくわからなかったが、それはそれとして、ヴァレーリヤが今すぐ逃げ出したいのだけは分った。分かったが、しかしどうすることもできない。本音を言えば、今すぐ酒場に駆け込んで駆け付け一杯、とやってあげたい所だったが、しかし後方からは、スパルタお姉さんこと『never miss you』ゼファー(p3p007625)が追いかけてきて、にらみを利かせている。
「マリア、『私が走った分も実質ヴァリューシャが走った分!』ってのはナシですからね?」
 と、マリアなら言いかねないことを先手を打って釘をさしておくゼファー。先手を打たれたマリアは、ちょっとぐぬぬ、ってなった。
「まったく。いくら短期決戦タイプとはいえ、いきなり体力の限界を迎えるとは思わなかったわ。でも、限界を超えたところに成長があるものよ。きっちり後2時間は走ってもらいますからね?」
「ぜひょ、ひゃっひゅーひゃひー、ひゅー、ひょひひゃっはひー……」
 呼吸音を響かせながら、ヴァレーリヤがうなだれた。正直今すぐ逃げ出したかったが、しかし意外、逃げ出すことは最後までなかった。なんだかんだ言ってヴァレーリヤは真面目なのだ……たぶん。ハイ・ルール違反を恐れているわけではない……たぶん……。
 逃げ出すことは無かったが、無意識のうちに酒場に飛び込むことはあったし、駆け付け一杯で麦酒を頼みそうになったところをゼファーにつまみ出されることはあったが、それはさておき、二時間のランニングを、ヴァレーリヤは完遂することができた。ヴァレーリヤの体が1上がったのを、皆は実感していた。

「うーん、温度差で風邪ひきそう」
 さて、ランニングを終え、鉄帝のトレーニング・ヤードへとやってきたヴァレーリヤを迎えたのは、『ヴァレーリヤ育成四天王』が一人、『豊穣のシリアス展開中に連れてこられた『戦神』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)』である。そう、時期的に、豊穣ではそれはそれは大変なことになっている気がしないでもないが、このシナリオは平常通り、季節感や時間軸を無視してお送りしております。
「ぜひゅ、ひょ、ひゃっひ、ひゅひょー?」
 ヴァレーリヤがなんか言った。息が荒すぎて、何を言っているのかはよくわからなかった。
「……っというわけで! フィジカルだ! フィジカルを盛るペコ!!!」
 ばし! と背後に控えるホワイトボードを平手でたたいて、ヴァレーリヤの視線をそこへと向ける。ホワイトボードには、今後のトレーニングメニューがびっしりと書き込まれていて、
「まず! 修行の間は私のことは老師って呼ぶのだっ!」
 と、一肌脱ぎながら(いつもの格好から老師っぽいトレーニングウェアに着替えながら)、一つ一つの項目を指で指していく。
「一つ! ・いっぱいはしるっ! ……はさっきやったから次はこれ! ・さかさまに吊るされた状態で置いてある水瓶からコップで背中にあるバケツに水を汲むっ!」
「ひゅっひゃひょひひょは!!!」
 ヴァレーリヤがなんか言った。
「大丈夫! 効果は(この間見た映画で)実証済み! 練達も(非科学的すぎて)びっくりの特訓だよ!」
 まぁ、非科学的と言うか非効率的ではあるだろうが、根性と筋肉は、実際鍛えられそうな特訓ではあるだろう。映画でやってたから間違いないだろうし。
「ひゅー、ひょっひょひゃひひゃは、ひーひゃひゅーひょー!?」
 ヴァレーリヤがなんか言った。
「大丈夫大丈夫! 私に任せて!」
 曇りのない、めっちゃきらきらした目で言う秋奈。ヴァレーリヤが、思わず隣にいたマリアに目で救いを求めるが、
「ヴァリューシャ……ごめんね……でも、君ならきっと、出来るって信じてるから……」
 と、二人分のバケツを持って泣きそうな顔をしてるので、これは逃げ道はないな、と思った。そう思っている間に、縄に縛り付けられて、解体ショーのマグロめいてつるされたヴァレーリヤが、死んだ目をしてぶらぶらと揺れている。
「ちなみに、これを越えた先にあるのは、以下の特訓だっ!
 ・いっぱいなわとびっ!
 ・頭や肩にのせたコップの水がこぼれないように長時間体勢を維持するっ!
 ・冷凍庫で凍った吊るされたお肉にスパーリングっ!
 全部練達でも(もっと科学的なトレーニングがあるよって)実証された奴ばっかりだから、短時間でフィジカルが盛るペコになるのは間違いないペコ! 見せてみろ、お前の可能性を!」
「ひゅひょーひゃああああああ!」
 ヴァレーリヤの悲鳴がこだました。ヴァレーリヤの心と体が1上がったのを、皆は実感していた。

「プリンだッ!」
 プリンである。
「今から俺が専属コックだッ!」
 専属コックである。
 と言うのは『たんぱく質の塊』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)である。プリン柄の可愛らしいエプロンを装着しつつ、食卓に、死にそうなヴァレーリヤを座らせ、ふんぬ、とフロントラットスプレッドした。
「そして僕が専属メイドです!」
 『(((´・ω・`)))』ヨハン=レーム(p3p001117)が元気よく片手をあげた。
「ひゅー……ひゅー……」
 思いつく限り最悪の組み合わせだな、とヴァレーリヤは思った。
 さて、トレーニングにおいては食事も重要な要素となる。人間の身体とは、すなわち食べたものでできているのだ。筋肉をつけたいならたんぱく質をしっかりとらなければならない。
 という訳で、栄養管理もしっかりするのが、トレーニングのお約束。さて、専属コックであり、(たぶん)トレーニング食の専門家であるマッチョ ☆ プリンが提供する食事とは――!
「食うものあってこその特訓ッ! プリンだッ! プリンを食すのだヴァレーリヤッ!」
 プ リ ン で あ る !
「食前ドリンク! 『鉄人!プリン☆シェイク』! のどを潤せ!」
「ぜひゅんぼぼぼぼ!」
 口に叩き込まれるグラス。そこから直接叩き込まれる大量のプリン・シェイク! 鉄人の名の通り、大量の鉄分を含んだ特製プリンシェイクだ! どろどろとした液体が、ヴァレーリヤの喉を! 食道を! 凌の辱する!
「飲んだか! 飲んだな!? よし!まずはメインディッシュ!」
 それは、ライスとプリンの素敵な融合。丁寧に焼き上げた至高の逸品。
「『プリン☆ザ☆ドリア』!」
 腹持ちのいい一品は、空腹によるモチベーションの低下を抑制する! これを食べれば三日三晩はお腹いっぱいになること間違いなしッ!
「ひ、ひゅー……ひゅー………」
 これを食べろと? と言いたげなヴァレーリヤであったが、
「はい、食べてください! 食べるのも特訓です!」
 とキラキラした瞳でヨハンに言われるので、退路は断たれていた。
「さぁ喰え! 喰うのだヴァレーリヤ! デザートも用意してあるぞ!」
 用意されたデザート――それはパフェ。そう、食事とは、噛み砕き、飲み込み、意で消化するまでエネルギーを使い続ける。そこで消化に優しく、一気にエネルギーとなる糖分の摂取は必要――。
「『チョコレートプリン☆パッフェ』!」
「そして、副菜にこれです! 僕の得意料理ゆでたまご! これをプレイングの余った字数分作っておきました!!!」
 その総数は六個である。最後は「ゆでた」と書いた所で字数が尽きてしまったので、半熟卵一つとしてカウントさせてもらいます。
「皆ひどいよ! ゆで卵とプリンばっかりじゃないか! こんなのヴァリューシャが可哀そうだよ!!!」
 と、ヴァレーリヤが突っ込むよりも先に、マリアはいきなりキレた。
「ですがマリアさん! ゆでたまごはトレーニングには欠かせない料理なんです!」
「プリンもだッ!!」
 ヨハンの言葉に、マリアは小首をかしげる。
「そ、そうなの?」
「はい! ゆでたまごは筋肉をつけるためにはうってつけの食材! トレーニングをする際には必須の食べ物なんです!」
「プリンもだッ!!」
「な、なんだって? それは本当かい!?」
 マリアが衝撃を受けたようにのけぞるのへ、
「うん、まぁ、嘘はいってないかな」
 ゼファーが苦笑しながら頷いた。嘘はいっていない。確かに、ゆで卵は筋トレ後にはお勧めの食べ物である。
「そ、そんな……」
 がくり、とマリアはうなだれた。これ以上、ヴァレーリヤにプリンとたまごを食べさせたくはない。しかし、これも特訓の内なのだ。今はつらいかもしれない。しかし、これもまた、ヴァレーリヤの為になる。ヴァレーリヤがトラになるためならば――!
「うう……ヴァリューシャ……ごめん……ごめんね……」
 マリアはくずおれると、しずしずと泣き始めた。
「マリアさん……これが終わったら、ヴァレーリヤさんにたくさんお酒飲ませてあげようね……!」
 慰めるように、秋奈はマリアの肩を叩いた。マリアは涙ながらに、なんども、なんども、うん、うん、と頷くのだった――。
「ひゅひゃっひ?」
 私は? とヴァレーリヤが呟いたが、それはそれとして大量の卵とプリンを食べさせられる現実は回避できなかった。ヴァレーリヤの心・技・体がそれぞれ1上がったような気がした。

●決勝戦だよ! ヴァレーリヤ!
「勝ち進んでしまいましたわね……」
 慄然とした様子で、ヴァレーリヤがつばを飲み込んだ。
 『鉄帝国ガチムチ女子プロレス大会』当日。ヴァレーリヤはローレット特別枠としての実力をいかんなく発揮し、激闘を繰り広げ、気づけば決勝戦までコマを進めていた。これまでの激闘が思い起こされる。皆さんもぜひ、10戦にも及ぶ激闘の数々を捏造してふりかえってもらいたい。Twitterとかで。
「というか、私、今回初めてまともにセリフを発した気がしますけれどさておき。皆さんの特訓、ネタではなかったのですわね……!」
 くるり、と仲間達に振り返るヴァレーリヤに、マリア以外の全員が一斉に目をそらした。いたたまれなかったのだ。
「へぇ、あんたが決勝まで勝ち進んだヴァレーリヤって言うんだ」
 ふと聞こえるのは、澄んだ声。例えるなら二枚目キャラ担当女性声優みたいな声。それとともに現れたのは、一人の……決勝戦の相手、クレメンチーナ=イリイーニシュナ=リャザノヴァ。
 それは人と言うのはあまりにも筋肉質すぎた。大きく、分厚く、巨大すぎた。それはまさに筋肉の塊だった。
「あ、はい」
 ヴァレーリヤの目が点になる。
「決勝、楽しみにしてるよ」
 ぐ、と力強く、クレメンチーナがヴァレーリヤの手を握る。めっちゃ痛い。痛い。力強すぎる。
 はっはっは、と笑いながら去っていくクレメンチーナの背を看つつ、ヴァレーリヤは呟いた。
「え? あれと戦うんですの?」
 それから、ぎぎぎ、と音を立てて仲間達の方を振り向くと、
「貴方達、実は私をこっそり生命保険に入れて死ぬのを待っているとかではありませんわよね?」
 マリア以外の全員が一斉に目をそらした。いたたまれなかったのだ。

「え? マジで戦うんですの?」
 呆然と呟くヴァレーリヤをよそに、ゴングは高らかになった。立ちはだかるクレメンチーナ。デカい。デカすぎる。肩にメロンでものせてんのかい。
「ヴァレーリヤ! 関節技! 関節技よ!」
 ゼファーが声援を送る!
「こう、相手の指を握って、逆方向にぐって!」
 それは些か本格的過ぎる。
「剣呑すぎますわね!?」
 ヴァレーリヤが悲鳴を上げつつ、しかし果敢にアタック! 相手の腕に抱き着き、こう、腕を! 逆! 極めて!
「無理! 曲がりませんわよこれ!!」
 さながら大木に子供が抱き着くがごとし。抱き着いたからなんだというのだ。
「こうなったら……傘よ! 用意した傘をつかなさい!」
 ゼファーが叫ぶ! ナチュラルな凶器攻撃使用指示だ!
「いや、ゼファーさん! このシナリオ悪依頼じゃないから! 悪名あがるタイプの依頼じゃないから!」
 思わずつっこむ秋奈である。
 一方、リング上のヴァレーリヤは確実に圧され始めていた。頼みの綱の関節技は発揮できず、そうなれば残された手段は、単純に力対力のフィジカル対決――しかしフィジカルに関しては、クレメンチーナに分がある……!
「私、このまま死ぬのかしら――。
 あの人の理想も実現できず、こんな場所で……」
 敗北濃厚か! 誰もがそう思ったその時!
「は? 私のヴァリューシャ(自称)に何してるんだい? 熊殺しか何だか知らないけどね!! 私は虎だぁぁぁぁぁ!!!!」
 トラが吠えた! これまでのヴァレーリヤ虐待に我慢して目をつぶってきたマリア・レイシスが、ついに我慢の限界を迎えたのだ! その身を蒼の雷が走る! 俗な言い方をすれば、マジギレしていた。
 蒼の虎が走る! リング上に飛び乗り、クレメンチーナに対して鋭いドロップキックを見舞う!! 観客たちの歓声! 突然の乱入者に、観客たちもノリノリだ! 皆ノリがいいのである!
「ヴァレーリヤ! こっちだッ!」
 と、リングサイドから、マッチョ ☆ プリンが声をあげる! 這う這うの体でヴァレーリヤが近寄ってみれば、そこにはプリン酒なる酒瓶があった!
「さぁ、ヴァレーリヤさん!
 飲もうね!
 飲もうね!
 飲もうね!
 飲もうね!
 飲もうね!
 飲めば飲むほど強くなる!!! 最終決戦奥義『ラードゥガ』!!!」
 ぽん、と酒瓶のふたを開け、ヴァレーリヤの口に突っ込む。酒瓶が空になる。次を突っ込む。酒瓶が空になる。
 酒瓶を突っ込んだ! 空になった! 突っ込んだ! 空になった! 突っ込んだ! 空になった!!!
「おほほほ、酒場で私にケンカを売るとは良い度胸ですわねえ?」
 飲めば飲むほど、アルコールが肝臓を痛めつければつけるほど、ヴァレーリヤの肉体が最盛期のそれへと変貌していく! お酒さえあればいつだってフルパワー! それがヴァレーリヤなのだ!
「ヴァレーリヤさん! これを使ってください! 鉄帝ニシン汁にマスタードと味噌を混ぜ込んで虹色にした特製毒霧です! さぁ! これを口に含んででナニコレくっさ、ヴォェ!!」
 えずきながらさけぶヨハンから、虹色の液体を受け取りつつ、口に含むヴァレーリヤ! 一気にクレメンチーナへと接近すると、躊躇なく毒霧を吐きかける!
「これが神の鉄槌ですわ! 今日こそが審判の日! 裁きが……貴女を……うっぷ……ていうかこれ臭っ!」
 毒霧に目をくらませたクレメンチーナへ、容赦なく手にした酒瓶で殴りつけるヴァレーリヤ! 子供たちの悲鳴!! 一方、マリアはその反射神経を生かし、ヴァレーリヤの吐き出した虹色の毒霧をふき取り、
「ヴァリューシャは実質毒霧なんて吐いてない。いいね?」
 念を押していく! 観客席から同意の叫びが上がった!
「決めますわよ! マリィ! これが!」
「私達の! タイガーVDMだぁぁぁぁ!」
 二人は同時に飛び上がると、クレメンチーナへと向かってのツープラトン・ドロップキックを見舞った! 毒霧と、度重なる酒瓶の殴打に消耗していたクレメンチーナ、これにはたまらずダウン! レフェリーが飛び掛かり、バンバン叩くリングマット! そしてガンガンとなるゴングの音!
「勝者! タイガーVDM!!!」
 響き渡るレフェリーの叫び! 観客たちの悲鳴!! 響き渡るブーイング!
 リングマットの上で挑発ポーズを決める二人! しかし、惨劇はここで終わらない!
「お代わり、お酒のお代わりはどこですの! 早く持って来なさい!!」
 酒の入ったヴァレーリヤを止められるものはもはやいない! そして、その横には今虎もいるのだ!
 酒を求めて徘徊する二名の襲撃を迎え撃つローレットのイレギュラーズ達――響き渡る歓声!
 さあ、ここからエキシビション・マッチ、ローレットバトルが始まる――のだが、それを書き記すだけの文字数が足りないのであった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 リクエストありがとうございました!
 ごらんのありさまだよ!

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