シナリオ詳細
ゴブリン・トレーニング!
オープニング
●強くなりたい
「冒険に出てみたいなー」
と、『お騒がせ』キータ・ペテルソン(p3n000049)がピンチをイレギュラーズに憧れ、片田舎の村から飛び出して(いや、たまに帰っているが)。
情報屋になろうと生きてからどれほどの時が流れただろうか。
3周年、いや、2周年か、キータにとっては。
いつのまにかポケットに入ったロリババアは……いや、なんだこれ? ロリババアってなんなに?
世界にはまだまだ未知が多い。
あのときに自分を助けてくれたイレギュラーズらはそれぞれ立派な成長を遂げて、リゲル=アークライト (p3p000442)なんて結婚までして、素敵なお嫁……お嫁さん?(美人だから多分そうだと思う、うん)までもらって、最近酒も飲めるようになったという。
「いつもの頼むぜ!」
「はいよ」
ちっちゃいコップで薄いビールを飲むキータであった。
「はあ……」
それと比べて自分はどうだろうか。
(俺、相変わらずだなあー)
イレギュラーズは海の向こうに行って、また怪物と戦い続けて。なんか大変なことになってると聞いて、でも、自分にできることなんてほんの僅かである。
何も成長していない気がする。
ふと、雑誌の広告が目にとまった。
『一週間でムキムキ! イレギュラーズじゃない方も非公式・ローレットトレーニング!?』
「! これだ!」
「待つんだキータ!」
リゲルであった。
「そ、そうだよな。50万ゴールドなんて大金持ってないし。あ、でも12回払いができる!」
「そうじゃない。そっちじゃないぞ。強くなるには、地道な訓練あるのみだ」
そういうリゲルは、並々ならぬ努力を重ねて強くなってきたのだろう。
(いや、もしかして努力してるという自覚もないのかも……)
こう、日常になっていそうだ。
「今日は俺が依頼を持ってきたんだ」
「へ?」
依頼書を広げて、微笑むリゲル。
「天義のとある区画に、ゴブリンが大量発生しているらしいんだ。
大丈夫。強さもそれほどではないのは分かっている。
もちろん、無辜の人たちを見捨ててはおけない。……良かったら、討伐を手伝ってくれないか?」
真剣なまなざしだ。
普通なら、こういうときに「手伝ってくれ」というような貴族はいない。
というか天義に来て気がついたんだけどすごい騎士じゃないこの人?
民と同じ目線に立つアークライト卿は、だからこそ慕われるのだろう……。
「分かった、やってやるぜ!」
●ゴブリン大量発生中
「よーし、どこからでもかかってこーい!」
「あっ、キータ、あまり前に出ると……」
そこに待ち受けていたのは、予想よりもずいぶん多いゴブリンの大群だった!
どどどどどと流れてくるゴブリンたち。ひい、ふう、みい。いや、もう多い。
「うわあああーー!」
「ご、ゴメン、キータ……!」
ゴブリンの海に流されるキータであった。
- ゴブリン・トレーニング!完了
- GM名布川
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年10月28日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●誰もがかつてはルーキーだった
「っと」
『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)は、テーブルの上から落ちかけた食器を華麗に受け止めた。
「何事もなくて良かったです。一般の人たちには危険ですから、建物の中にいてくださいね」
「どれ、勘定はここに置いておけばいいか?」
喧騒を耳にした『銀河の旅人』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)は、グラスを置いて立ち上がる。
「あっ、お客さんがた、今は外には……」
「いや、後でいいよ。戻ってくるんだろ? アンタら腕が立ちそうだ。そうしたら……」
「町の平和に乾杯、だな? そりゃあいい」
ヤツェクは帽子をかぶり直す。旧式のリボルバーを無造作に手にして、酒を飲んでいたわりには足取りは確かだ。
「戻ったら片付けのお手伝いをしますよ」
ランタンに明かりをともしたリュティスが、手早く町へと降りてゆく。その明かりに、『砂の聲知る』ラウル・ベル(p3p008841)が加わった。
「あ、遠くからでも分かったよ! ゴブリン退治にきたんだよね? 僕も精一杯頑張るよ。町の人たちを避難させなきゃ」
ラウルが笑えば、愛嬌のある八重歯が覗く。
(しかし、相手がそこまで強くねぇとはいえ、あのキータとかいうガキは大丈夫かね……)
『特異運命座標』ドミニクス・マルタン(p3p008632)はあたふたと戦いの準備をするキータを見ていた。
(まあ、危なそうならフォローしてやるとしよう)
ドミニクスは、一見してとっつきづらい風貌をしているかもしれない。その実、かなり面倒見は良いのだ。
(年長者の務めってもんだ、なあ?)
いざとなれば助けるつもりはあるが、おおっぴらに手を差し伸べることはしない。ヤツェクは、ドミニクスになんとなく似たものを感じた。
星々の明かりのように明かりは揺らめく。ヤツェクの頭をよぎったのは、星を数多駆け巡った若き日のこと。
(キータのような奴は覚えがある。何とか高い所に手を伸ばそうと頑張ってる奴だ。なに、駆け出しというのは誰にでもあるもんだ。そういう若いのに自信をつけさせるのも大人の仕事じゃないかね。違うか?)
●初心者マーク、ヨシ!
『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)の所作は貴族として洗練されたものだ。声をかけづらいなあ、なんて思ったのもつかの間。
「キータは久しぶりだな。元気そうで何よりだ」
親しみのある声色に、変わらないなとキータは思うのだった。
「久し振りのキータとの冒険だ、嬉しいものだな」
『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)は微笑み、それからきりりと顔を引き締める。
「とはいえ人々を守る為の任務であることには違いない。気合いを入れていこう!」
「お、おう……!」
『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)は、ポンとキータの背中を叩いた。
「!」
ずっしりとした漢の重み。
それだけで、期待している、と、伝わってくる重さだ。
(無理はさせられないが、頑張ってもらわにゃならねぇ場面もある)
「行くぞ」
「わかった。えっと、アイリスは戦闘は初めてだっけ? 俺についてきてくれ!」
「え?」
『藍情』アイリス・ラピスラズリ(p3p006943)は軽々と大剣を持ち上げていた。
「なんでもないです」
(緊張しているのね)
アイリスは瞬き、頷いた。
こんなにたくさんのゴブリンなんて大変だ。キータも不安に思っているに違いない。なら、お姉ちゃんとしては、元気づけてあげなくてはならない。
「大丈夫よ、やればできるわ」
やっぱり、イレギュラーズって強い。
(私も、私なりに頑張らなきゃ! だって、『お姉ちゃん』なんだもの!)
「俺、頑張る!」
あふれ出す姉力を前に、弟ポジションを享受するキータであった。
●ランタンの明かりを目印に
「はい。どうぞ。灯りを避けるみたいだから、持って行ってね」
てきぱきと手際よく進むアイリスの後ろをせっせとついていくキータ。
ほんとに初めての依頼なんだろうか。大きい武器ってかっこいいな。
義弘は思い切り扉を開け、その勢いだけでゴブリンを倒した。
百戦錬磨の義弘にとっては他愛ない相手だ。しかし、まあ、数は多い。
「羽の生えたゴブリン……ってのはよくわからねぇな」
丁寧に扉を閉め、義弘はふっと息を吐く。
「ゴブリン討伐はおなじみだが、羽が生えてるってのはな。それも、こんな街中だ」
「実際に目の前にいるんだから仕方ねぇ。とにかく殴り付けていくしかねぇ。湧き出てくるってのが厄介だが……」
「ま、地道にやるしかねぇってもんさ。何、ほかの連中も上手くやってくれそうだ」
ヤツェクはランプを手に暗がりを照らし、数体を誘い出す。義弘の耳と反射神経がそれを逃すはずもなく、一瞥する間もなく消し飛ばした。
「ポテト、皆、避難誘導は頼んだよ」
「ゴブリン退治がうまく行くようにおまじないだ」
ポテトの『駆狼幻魔』が体を包み込んでいく。
「! 体が、軽い……!」
魔法もかっこいいな、とちょっと揺らぐキータであった。
「それじゃぁ、私は避難誘導に向かうけど、何かあれば呼んでくれたら行くから!」
「よし、俺も突撃だぜ!」
「待て、よく見な」
突っ走りそうになるキータを、義弘が止めた。
ヤツェクが、それを補足する。
「そうだな、周りを見るといい。例えばラウルは上の方なら安全だと読み、住民を上へと誘導しているだろう?」
「でも、急がなきゃいけないんじゃ?」
「確かに急を要する事態ではありますが、焦っていてはそれが住民の皆様に伝わります。ポテト様は落ち着いていますし、アイリス様は、とても明るく、配慮しているように見受けられます」
なるほど、色々考えているのだ。
「わわっ!」
やってきたゴブリンを、ドミニクスの拳銃が貫いた。礼を言う前に、ドミニクスは次の獲物に狙いをつけている。
成る程。闇雲の狙いではなくって、自分に近い方からでもない。優先的に、避難の邪魔になるゴブリンを狙っている……。
「坂の上なら、来る方向もやるべきことも分かりやすい。
村人を守るのはお前さんだぜ」
「全部やろうとしなくていいんだ、キータ。そのために仲間がいる」
ドミニクスがその視力であたりを見通し、リュティスが果敢に暗がりを進んでいく。リゲルはゴーグルで視界を確保する。どんな匂いも逃さない。そして、聴覚であれば義弘が反応する。
イレギュラーズたちに、死角はなかった。
周りが見えるようになってくると、道の輪郭が見えてくる。
薄暗がりの町々に、ランタンの明かりがぽつぽつと満ちてゆく。
そういえば、もうすぐ収穫祭が近い。
●避難誘導
「こっちよ!」
アイリスが勇ましく名乗りを上げる。
続くショットガンブロウが、ゴブリンを弾き飛ばした。
ポテトは南瓜ランタンを手に、精霊たちが指し示す道を迷いなく進む。
羽ゴブリンを追い払って、家の中へと至った。
「よかった、無事だったのね」
アイリスがほっと息をつく。
「ラウルが誘導してくれている。あの明かりをたどって、安全な坂の上に」
そんな調子で、順調に避難を進めていったが、途中で頑固な住民がでてくる。
「ふん、ワシはいい。ガキどもが先だ」
そう言い張るのは、明後日の優しさだ。
「きっと先に避難した人が悲しむよ」
「むむむ……」
「お爺さん、お爺さんが避難してくれないと、お爺さんを心配してる人達も避難出来ないの。だから、一緒に避難しましょ?」
目線を合わせて、優しく語り掛けるアイリス。包み込むような姉の力に、頑固な老人もほだされてしまう。
「ねぇ、おじいさん、やっぱり避難したほうがいいんじゃないかしら」
「ふん、避難だと。我が神がなんとかしてくれる!」
「本当に神様がなんとかしてくれるなら良いのだけど。目の前にゴブリンが迫ってても、そうやってお祈りしてられるかしら?」
アイリスがにっこりと有無を言わせずすごむと、老人はたじろいだ。
(ええ、一人も残す訳にはいかないもの)
ここで引くアイリスではない。
「わかった。ばあさんだけでも連れて行ってくれ。ワシは……」
老人はちらりと車いすを見た。動けないのか。動こうとしないのは、これが原因か。
「任せて、お姉ちゃん頑張っちゃうから!」
『お姉ちゃんパワー!』があれば、こんなものもへっちゃらだ。可憐な幻想種は、ひょいとご老人を持ち上げた。
「!」
赤子の泣く声が響き渡った。
「すみません、すみません……っ!」
ポテトは、怯えさせないように柔らかく言葉を選ぶ。
「いや、こちらこそすまない。赤ん坊は泣くのが仕事だから謝ることはない」
「……こんな状態では、避難なんてできません」
「外が騒がしければ、赤ん坊もゆっくり眠れないだろう。気分転換に静かな坂の上に行こう」
避難、ではなくて、ただの散歩のように。
「それは素敵だね? ね、僕らといっしょに星を見に行こう。町もきれいだよ」
ラウルが微笑む。
「フン、ようやく覚悟を決めたか、うるさいガキめ! とっとといっちまえ!」
そう怒鳴るのは、素直じゃないご近所さんだ。
「女二人と赤ん坊だけだと不安だな」
「そうよね。頼れる人間がいてくれたら心強いわよね」
アイリスとポテトは顔を見合わせる。
「ね、みんな頼れるでしょ?」
ラウルは、目の見えない老婦人に手を貸していた。
「君に神のご加護があるなら、避難先に来てくれたらきっと多くの人が助かるね」
十字架を握りしめて震える青年には、否定せずに、それに寄り添って。
蛍の光が集まるように、上の方が明るくなっていく。
「一応、見回ってくるね」
ラウルはカンテラを片手に、再び街へと降りて行く。取り残されていてはたいへんだ。はぐれるのはとてもさみしいことだから。
「キータ君も頑張ってるかしら?
お姉ちゃんも頑張るからね、男の子なんだから、勇気出して頑張って!」
きらりと、綺麗な炎が舞いあがった。
●ゴブリン退治
リゲルは名乗りを上げ、勇ましく炎星-炎舞を繰り広げた。
(うわあ!)
群がるゴブリンは、むしろ、その剣山で痛手を負っている。
この角度であれば。
ドミニクスは素早く位置を変え、ハイロングピアサーで狙いをつけた。一直線。ピストルの弾が飛ぶ。
「おや、良い銃だ」
「わかるのか? アンタもな、なかなかだ」
ヤツェクはロートヴァインを”上”に向けた。ヤツェクの銃から飛び出す光線が、ここにいるぞと位置を示す。
「おおお……」
Elegantiae arbiterが、僅かに角度が最適じゃなかっただとか、余計なことを言った気がするが。
若者の夢を壊すモノじゃあない。キータがキラキラとした目でそれを見ている。
「よし、おれに続け」
おれたちは英雄だ。
英雄叙事詩が、仲間を奮い立たせていく。誰しも最初はひよっこだが、覚悟を決めれば英雄になれる。
(支援ならばおれの大得意だ)
仲間のためなら、いくらでも語り手となろう。
不意に、置いてあったランプが倒れた。
避難していく街の人間を、追いかけるようにゴブリンが追っている。その足音に、いち早く気がついたのは義弘だ。
「待ちな」
ゴブリンをそのままひっつかむと、そのまま振り回す。まるで嵐のように、渦巻きが生み出される。そのまま、別のゴブリンのもとへと放り投げて、ほろった。
逃げ出そうとするゴブリンであったが……。
そこには、既にリュティスがいた。
「一気に殲滅してあげましょう。覚悟はよろしいでしょうか?」
神気閃光。
多くのゴブリンが、耐えきれずに塵に帰った。
●頑張りどころ
「すごい、ピカピカ光ってるよ」
「わあ、みて、流れ星!」
声につられて、下を見る。
リゲルの流星剣だ。遠くからでもポテトは分かる。
さあ、今は攻勢だ。狼煙を上げるべきときだ。
ヤツェクの魔神黙示録が反撃を奏でる。
ヤツェクが設置したランタンが、巧みにゴブリンをあぶり出す。
義弘は誘い出されたゴブリンにめがけて、ショットガンブロウを放つ。ひるむこともなく、数体を相手取る。
(俺に攻撃が来れば、仲間はともかく、村人が襲われる可能性も減る)
疲れは見えない。
(よし、固まったな)
ドミニクスが構えを変え、SADボマーを繰り出した。その攻撃は、ゴブリンを一網打尽にする。
リュティスの冷静な思考回路は、素早く最善を導き出している。
死へと誘う不吉な蝶。それを追いかけたときが、ゴブリンの最期だ。リュティスの宵闇は漆黒に溶け込むようにして潜み、ゴブリンを鋭く射貫いた。
逃げ遅れた市民を、ラウルが探し出していた。
「みんな、大丈夫?」
「慌てないで。大丈夫です。私の後ろに隠れて、ゆっくりと避難してください」
「うん、ゆっくりでいいから、ついてきてね」
意図を察した義弘は、素早くゴブリンを脇へと押し込んでいった。
ずいぶんとあたりは明るくなっており、既にほとんどいない。
イレギュラーズたちは、既に攻勢に転じていた。
「はわ、はわわわわ」
「そら、そっちへいったぞ」
ヤツェクの銃が小さなゴブリンを撃ち抜く。足止めは得意とするところ。
「君の力が必要だ! 頼んだぞ!」
「わーっ」
(キータと冒険をしたころは、俺も駆け出しだった)
蛇に丸呑みにされた経験も、今では懐かしい。
(ここまでやってくれたんだ、ここでやらなきゃ)
いつも、リゲルだって怖くないわけじゃない。
(敵が強大でも恐ろしくても、一歩踏み出せるときは、守りたいものがあるからなんだ。
人々を守る為に剣を振るう、それが俺の生き方だからさ)
「やーっ!」
弱り切ったゴブリンは、キータの一撃で倒れたのである。
「や、やった!? みてた!?」
「ああ、良くやったよ」
ヤツェクはE-Aをなだめながらぽん、と帽子をかぶせてやった。
「っと」
ドミニクスの一撃が、撃ち漏らした一体を貫く。リュティスの一撃がそれに続く。
「油断禁物です。武器は手放してはなりません」
「あ、そ、そうか!」
●みんなのおかげ
だんだんと、空が白んでくる。
ゴブリンたちは、すっかりいなくなっていた。
「みんなお疲れ様。キータも頑張ってくれたお陰でみんな無事だ。有難う」
ポテトはにっこり笑って、ココアを差し出す。
ヤツェクはそっとブランデーを一滴。真似してみるキータであった。ほろ苦い。
「終わりましたね」
リュティスは給仕を手伝ったあと、ランタンを吹き消し、手際よく回収していくのであった。
「小さな油断が火事の元と言いますしね」
「あ、私もやるわ! 行ってくるわね」
「働きもんだな」
街の人たちが軽食をごちそうしてくれるらしい。そういえばそろそろ朝ご飯。ちょうど良い頃合いだろう。
「……おなかがすくのは辛いことですからね」
なんとなく実感を伴って言ったリュティスの言葉に、ドミニクスも「そうだな」と小さくつぶやいた。
「大丈夫だったかい?」
「うん。みんな、無事だったみたい!」
さいごまで駆けずり回っていたラウルが、笑顔で戻ってくる。大丈夫かと聞かれて、真っ先に町の人を心配するのがいかにもラウルらしい。
ポテトの天使の歌声が、仲間のけがを癒やす。
「キータ、今日は付き合ってくれて有難う。とても格好良かったし、キータのお陰で人々を守ることが出来た」
「ああ、よくやってたぜ」
リゲルとヤツェクに褒められ、キータは頬を掻き……。
「へへっ、ありがとな! 俺ってやっぱり」
と、言いかけてちょっと考える。
「とはいえ、無理をさせてしまったかもしれないね。キータは戦いが苦手でも、情報屋としての才能はある。いつもローレットの為に頑張ってくれて有難うな!」
「ああもう、昔の俺だったら自分の強さだって勘違いしてそうだけどさっ! 俺、分かったよ。まだまだ未熟だって。俺が戦えたのは、みんなのおかげだ。……ありがとな!」
キータが思い知ったのは、かっこよく前線で戦うことばかりが戦いではない、ということだった。
もちろん、それだってかっこいいのだけれど、欲しい位置に攻撃の手があることや、回復・支援というもののありがたみ。
さらには、必死に街の人たちを避難させる役割だって、立派なお仕事じゃないかとわかった。
それに、驚いたことに、避難した場所から戻ってくる人たちは、とても楽しそうだったのだ。綺麗な夜明けの星を見ただとか……暗い顔をしている人間は誰1人としていない。
「うん、俺も俺にできることをするぜ!」
情報屋の仕事を頑張ろう。
あと、こんど、かっこいい武器も買おう。
大きいやつ。もしくはビームが出る奴。アイリスがゴブリンをほとんど拳で倒していたことを、キータは知らなかった。
「うん、えらいえらい!」
「勿論強くなればやれることも増やせる。
更なる訓練を望むなら、俺がいつでも相手になるからな!」
「へへ、ありがとな!」
イレギュラーズに対しては小さな一歩かもしれないが、キータにとっては大きな一歩。ぐっと握手を交わすのだった。
「それじゃあ、あとの一杯といこうじゃないか」
ヤツェクが語るべき英雄の話はごまんとある。それに、どうやってくせ者揃いの住民たちを説き伏せたのか、聞いておきたいところである。
「朝食の準備もできましたよ」
リュティスとポテトが、香ばしいにおいをさせている。
「ありがとう、ポテト。それじゃあ、ご飯にしようか、みんな!」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ゴブリン退治、お疲れ様でした!
なんだかとてもキータを助けていただいた気がします。
表向きの励ましも、そっとしたさりげない支援も素敵ですよね。
ああ、いつか背中で語るような男になってみたいものです。
GMコメント
●目標
・ゴブリンの退治
・近隣住民の避難
●時刻と場所
時は夜明け頃。
うっすら明るくなってくる頃で、視界に問題はない。
天義の外れの町。
傾斜が多く、信心深い人たちが住む坂の町。比較的坂の上のほうは安全のようだ。
●登場
羽ゴブリン×大量
天義に湧いた大量の羽ゴブリン。主に道具は素手か拳で、ドアをべしべししています。
一般人には困難ですがイレギュラーズならば楽勝です。
暗闇から湧いてくるようです。明るいところが苦手らしいので、灯りを置いておいたら出現を食い止めることができます。
羽ゴブリン(小)
10匹に1体ほど混じるすばしっこい羽ゴブリン。すばしっこく狙いづらいです。
キータ・ペテルソン(情報屋NPC)
「や、やってやややややるんだぜ!」
へたれ情報屋。
一般人……よりはちょっと、多少、多少強いくらいです。
剣を握っていますが目をつむりがちで、お世辞にも強いとは言えません。
指示がなければ剣でゴブリンをぺちぺちしています。あんまり戦いの才能はない。
指示があれば従います。
●避難誘導
概ね善良な人たちなのですが、頑固です。
「もう朝になったの?」と状況を理解していない人や、
「ごごごごめんなさい子供の夜泣きがひどくてごめんなさい!」とドアをノックされただけでビクッとする人。
「ワシは女子供が避難を終えるまでぜったいにここを動かん!」という老人がいたり、「神のご加護があれば大丈夫に違いない!」と言う困った人がいたり、他にも足の悪い老婦人など、一筋縄では避難誘導に従わない町の住民がいます。
●キータ
「イレギュラーズってやっぱ特別なのか?」
「手っ取り早く強くなる方法ってねーのかなー」
なんてことをぼやいていますがイレギュラーズたちの努力は分かっており、これからも間近で見続けたいと思っています。
「すごく強大な敵に武器を構えて立ち向かっていく」ことはやっぱりまだできないので、どうしてそんな風に振る舞えるのかいつも不思議に思っています。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。いえ、ゴブリンの数こそ想定外ではありますが。
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