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シナリオ詳細

燃えすぎよドラゴン

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●燃えすぎた男
 奴を救って欲しい。
 異界の岩地へと召喚されたイレギュラーズは挨拶もそこそこにそう切り出された。
 目の前には白髪の老人と孫くらいの年頃の娘――――そして彼らの視線の先には、功夫の構えのまま全身から凄まじい炎を噴き出し続けている青年の姿。

 どういう事かと尋ねれば、うむと白髭を撫でてから老人が答える。
「奴の名はドラゴン。我が不肖の弟子よ。この世の万物と心身を一体化させる五行の行の途中で、“火”の気に飲まれよった」
 五行の行? “火”の気? 
 よく分からない単語が出てくるが、ようは修行に失敗して暴走中という事だろうか。

「奴は幼くして親を盗賊どもに殺され、復讐を誓って儂の元へやって来たのだ。復讐は、すなわち怒りだ。奴は火の気に触れる内に滾る怒りを制御できなくなったのだ。未熟者よ。まだ早かったのだ。奴の未熟を見抜けなかった儂もまた未熟者よ」
「お願いします、特異運命座標さん! ドラゴンを助けて」
 話しぶりからして、この老人が師匠、そしてすがるような表情でイレギュラーズを見詰めてくる娘はもしかしたら青年と恋仲なのかもしれない。
「あの炎を纏っている間は近付く事すらできん。奴は今、無意識下で代謝を制御しているだろうが、近付くだけで水も食い物も蒸発してしまうし、いずれは死んでしまうだろう。あんた方、どうにかして炎を鎮められんだろうか」
「私達もずっと呼び掛けているんですけど、聞こえているはずなのにあの通り、構えを解かないんです。きっと心の底に押し込めていた怒りに飲まれかけて苦しんでいるんだと思うんです。なんとかならないでしょうか」

 そう言われてもと思案してみる。
 試しに枯れ草を拾い上げて放ってみれば、一瞬で蒸発してしまった。とはいえ輻射熱は無く、おそらく触れるまで熱を感じないだろう。
 “火”の気が具現化した不可思議な炎。
 それを鎮めて、青年を正気に戻せるのはあなた達特異運命座標だけだ!

NMコメント

 どうも、かそ犬と申します。
 功夫青年が衰弱死してしまう前に、彼を救ってあげて下さい。

 舞台は中世中国といった感じの異世界。武侠もので描かれるような世界観です。
 青年は地・水・火・風・空の五行と心身を一体化させる修行に挑んでいましたが、元から強かった復讐の念が高まり過ぎ、火の気だけが増大してしまいました。炎が彼自身を傷付ける事はありませんが、他の気が弱くなり過ぎているのでいずれは衰弱死してしまうでしょう。

 火炎を鎮静化する方法は問いません。戦いを挑んで失神させてみる、昂った感情を鎮めるよう説得してみる、泣ける話をする、火以外の気を高めるように何かする等々、色々試してみて下さい。
 ドラゴン青年は興奮状態ですが、深層で暴れないよう自分を抑え込んではいます。しかし見知らぬイレギュラーズに攻撃されれば反撃はしてくるでしょう。
 ドラゴンの攻撃には【火炎】【業炎】【炎獄】【致命】【懊悩】が付与されていると思って下さい。但し気の不調和により、HPは高くありません。やり過ぎて殺してしまわないように注意も必要です。

 筆者の傾向としてアドリブ多めとなります。
 ご縁がありましたら宜しくお願いいたします。

  • 燃えすぎよドラゴン完了
  • NM名かそ犬
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月23日 22時20分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
ブラッド・バートレット(p3p008661)
0℃の博愛
溝隠 瑠璃(p3p009137)
ラド・バウD級闘士

リプレイ


 火山噴出口のごとき吹き荒れる炎の前に揃った4人の特異運命座標。
 さて、と『貧乏籤』回言世界(p3p007315)が歩み出て、炎に顔を近づけた。熱は感じない。本当に輻射熱はないんだな、と呟く。老人が言う五行とはすなわち自然界の精霊力と言い換えられるはずだ。それなら試してみたい事があるが、まずはその前に、だ。
「シューヴェルト、何か分かるか?」
 “フラグスカウター”で炎の中心の青年の様子を観察していた『貴族騎士』シューヴェルト・シュヴァリエ(p3p008387)が世界へゆっくりと顔を向けた。
「……このまま放っておけば、あと1、2時間程度で死んでしまうだろう。4人で戦えば彼を気絶させる事が出来るはずだ」
「交渉術の心得はあります。まずは説得を試みるべきでしょう」
『0℃の博愛』ブラッド・バートレット(p3p008661)の言葉に世界は頷いた。
「ああ。だがその前にやってみたい事がある。皆少し下がってくれ。瑠璃もいいか?」
 世界に言われ、好奇心剥き出しで炎を見詰めていた『ラド・バウD級闘士』溝隠瑠璃(p3p009137)が、慌てて数歩退がる。
 その微妙に名残惜しそうな表情に苦笑してから、世界は簡易式召喚魔法陣を展開した。召喚された水の精霊を見て、老人達が驚きの声を上げる。
「こ、これをどうするつもりなんじゃ」
「まあ、見てなよ」
 世界の命に応じて水の精霊が上空に出現させた巨大な水塊が、ドラゴン青年の噴き出す炎へどうっと降り注ぐ。
 火には水――シンプルな正攻法だが、故に試す価値有りと思えた。
 果たして水は炎に接触する側から蒸発させられていく。ジュウッッという凄まじい蒸発音に、さらに凄まじいのは水蒸気。
「何も見えませんが、どうなっているのですか?」
 一帯が真っ白な世界に包まれても慌てず騒がず冷静なブラッドの言葉に、世界はしばし答えなかった。最初から予想できた事態だ。もう少し様子を見るべきだと思ったのだ。
 しかし、さらに10分ばかり続けてみても火勢が弱まる気配はない。根比べしてみるかとも考えたが、やはり他の手段に訴える時用に時間と彼の体力は残しておくべきだ。
(何より湿度で俺の不快指数がマッハで溜まるのがよろしくない。眼鏡も曇る)
「中止だ。お手上げ。他の手段を探そう」
 世界は言葉通り軽く手を上げてみせた。


「それでは全体の方針としては、まず説得、応じなければ攻撃し気絶させる、でいいだろうか?」
 今度は風の精霊を召喚した世界が水蒸気を吹き散らすと、何となくしっとりした感じの顔で4人の話し合いが始まった。支配階級らしいリーダーシップを発揮し、シューヴェルトが自然に仕切り役に回っている。

「止むを得ないでしょうね。あとは拗れた時に上手く無力化できるかですが」
「相手の意識を絶つ拳技の心得はある。あちらの2人は僕が保護結界で守ろう」
 淡々と話すブラッドにシューヴェルトがちらりと老人と少女を見やってから答えた。避難してもらおうかとも思ったが、彼らの言葉が最後のひと押しになるかもしれない。
「俺は説得の方はパスだな。任せるよ」世界はといえば蒸し暑そうで気だるげに襟元をぱたぱたしている。「俺には火は効かんから援護しながら適当に立ち回るさ」
「なんだって、それは重要だな」
 シューヴェルトが驚いて世界に目を向けると、横から瑠璃が大声で口を挟む。
「ずるいゾ! 実は僕も火炎に耐性があるのだ! その驚かれるのは僕がやりたかったゾ!」
「そう言われてもな」
 瑠璃と世界のとぼけたやり取りを点、点、点といった感じで無表情に眺めていたブラッドは、会話が途切れるのを待ってから少女闘士へ話を振った。
「瑠璃君は彼を殺さずに倒せる技術を持っているのですか?」
「よく聞いてくれたゾ! 蹴り技で昏倒させる訓練は積んでいるゾ!」ふんすと鼻息荒く、得意気になった瑠璃が胸を張る。「最後は股間を蹴り上げて気絶させよう」
 ちらっと互いに顔を見合わせた男3人の声が思わず揃った。
「それは止めてやれ」


「やあ、ドラゴン君。聞こえるか? 僕たちは特異運命座標。君を助けに来たんだ。突然だが、僕たちの話を聞いてほしい」
 よく通る声でシューヴェルトが叫ぶと、今まで視界に入っているはずなのに見向きもしなかった青年の意識が、確かに彼ら4人へと向いた気がした。
 そこでブラッドが一歩進み出る。彼は聖職者だ。迷い、悩む者を導くのが務めである――一般的には!

「ドラゴン君。事情は君の師匠やお嬢さんから聞いています。俺は誰かを殺したい程憎んだ事はありませんが、大切な方を失くしただ呆然とする方は沢山みてきました」
 ブラッドは言葉を一旦切り、青年の反応を窺った。炎は相変わらずの勢いだが、声は届いているはずだ。
「そうだゾ! 僕もラド・バウで初めて負けた時は呆然としたゾ!」
「復讐は何も生まないとも復讐を止めろとも言いません。だがここで斃れてしまえば失った家族を想う事も、新しい家族を守る事も出来なくなってしまうはずだ。本当に望む将来の為にも落ち着きましょう」
 黙れ――――炎の中から声が響く。炎が彼の怒りと苛立ちに同調するかのように勢いを増し、ブラッドは(後ろの瑠璃も)一歩飛び退いた。
「あんた達に何が分かる? 目の前で親を殺されるのをただ震えて見ている事しか出来なかった俺の無念、苦しみ、怒りが!!」
「そうだゾ! D級闘士の大変さはやってる者にしか分からないゾ!」

 ん? とシューヴェルトが首を傾げ、隣に立つ世界を見やる。
「世界君……瑠璃君が話をややこしくしている気がするんだが……」
「気がするじゃなくてしているんだよ。あいつを下がらせた方がいいな」
「リベンジマッチをしたいのは君だけではないゾ! 真の復讐者とは! 復讐心を完璧に制御して真に必要な時に自滅しない程度に爆発させる者の事! ブラッドさんの言う通りだ! 君を案じている人達を思い浮かべるのだ。今は彼らの為にも心を落ち着かせるのだゾ!」
 説得が奇跡的にそれらしい結論へ辿り着き、世界とシューヴェルトが顔を見合わせた次の瞬間――――再び炎が爆発した。
「うるさいッ! 俺の気持ちなど誰にも! 分かりはしない!!」
 炎を纏いながら超人的な跳躍力で空へと跳び上がったドラゴンを見て、世界はがしがしと頭を掻く。
「交渉決裂だな」


 怒りに我を失った青年の矛先は、まず最も近くにいたブラッドへと向いた。燃え盛る流星のような拳が振り下ろされてくるのをブラッドは反射的に避けようとし、しかし結局ガードを固めたまま受け止める事にした。もしかしたら自分が1発殴らせれば気が済むのではないかと思ったのだが、強烈な衝撃に吹っ飛び危うく火だるまになりかけながら顔を上げると、ドラゴンはカバーに入ったシューヴェルトが牽制に振るった刀から飛び退いたところである。
「大丈夫か? ブラッド君」
「俺は大丈夫。自分で回復できます。それより彼は」
「駄目だな。1発くらいでは収まらないようだ」

「それじゃ仕方ないね!」嬉々として駆けてきた瑠璃が大きく回りこもうとするのを、ドラゴンは見逃さなかった。気合いと共に突き出した掌から炎の嵐が迸るが、瑠璃の腕には火炎を無効化する永久氷樹の腕輪。
「効かないんだな!」炎を掻き分けてぬっと飛び出した瑠璃のハイキックが頬を掠めると青年は再び大きく飛び退いて、頬に走った傷口の血を親指でぬぐいペロリと舐める。
「やるな、特異運命座標」
「そこは、やるな溝隠瑠璃でもよかったとこだゾ!」
 
 激しい打撃のコンビネーションを交換するドラゴンと瑠璃を横目に老人と少女の元へ辿り着いたシューヴェルトは、2人を展開した結界で保護した。
「お、おい。殺さんでやってくれ」
「騎士様、お願いです。彼を殺さないで」
 縋りつかんばかりの2人を安心させようと貴族騎士は微笑む。
「任せてくれ、全力を尽くす」
 ドラゴンは戦いながらシューヴェルト達3人に一瞬目をやったが、師と少女が防御陣らしき結界の中に入ったのを見て、逆にやる気を出したようである。
 まず善戦していた瑠璃を大きく吹っ飛ばすや、彼女を受け止めたブラッドもろとも火炎攻撃を浴びせる――が、その射線上に割って入ったのは世界。「残念。俺にもそれ効かねーんだ」
「ぬうッ!」
 ならばと炎吹き上げる拳で白衣の男へ殴りかかるが、今度は高めたオーラの鎧で防御を固めたシューヴェルトが飛び出し、代わりにそれを受け止める。
「どうした? こうして痛みを分かち合うのが家族や仲間だ。分かっているんだろう、本当は」
「だ、黙れッ!!」
 拮抗した力比べは数秒。騎士の影から横へ飛び出した世界が威嚇術を喰らわせ、よろめいた青年の腹へシューヴェルトが右拳を叩き込む。呻きながら大きく後退したドラゴンは忙しく周囲を見回し4人の位置を確認した。
 女と聖職者はまだ燃えながら倒れたまま――――ん?
 彼女らに“気”を感じなかったのだ。当然といえば当然。それはブラッドが投影した蜃気楼だったのだから!!
 隙は十分。背後に回り込んでいたブラッドの至近距離からの衝術に吹っ飛ばされたドラゴンは、待ち受けていた瑠璃のキックを頭部に受けて遂に意識を手放すのだった。


「落ち着いたか?」
 青年が失神すると次第に炎は収まっていった。世界の治療で意識を取り戻したドラゴンは、暴走中の記憶が甦ったか、自分を取り囲む視線に耐え切れず頭を抱えて小さくなる。
「お、俺はとんでもない事を……」
「自分を責めないでドラゴン。私達がいつでもついているから」
 涙目の少女が青年の手を握ったところで、世界ががしがしと頭を掻いた。
「ああ! なんだよ、羨ましくて俺の火の気が爆発しそうなんだが?」
「お主も修行していくか?」
「結構だ!」
 
 思わず笑いながら、そうか、と青年は噛み締めていた。
 有難う。俺はとうに独りじゃなかったんだな。

成否

成功

状態異常

なし

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