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シナリオ詳細

<瘴気世界>優等生には指南役がいない

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●生意気な実力者?
「あの、もっと骨のある冒険者いないんすか……?」
 自分の身長を優に超える大剣を抱えた青年がぼやくように呟いた。
 とても大きな施設に沢山の人。全員がそれぞれの武器を持っており、頑丈なカカシに対して攻撃をする者や一対一の模擬決闘をする者もいる、いわば修練場だ。
「わ、わわ……既に10人も……?!」
 修練場を案内する女性がバインダーで名簿を確認しながら、既に戦闘不能にされた腕の立つ冒険者を見て驚くような声を上げる。その隣に立つ少し生意気な青年だが、どうやらこれは彼がやったらしい。
 修練中の冒険者見習いでありながら身体能力が優れており、指南するべき冒険者側がのされてしまったのだ。
「ええと、実は最近、上級の冒険者の方々がほとんど出払ってしまっていて、見習いの指南にお呼びすることが難しいんですよ……」
「指南に呼ぶのも至難……ってことか」
「……」
「……笑うところだぜ?」
 スッと冷えた空気に案内の女性が苦笑いしたところで、青年は何か思い出したように手を叩いた。
「そういえばこの前、突然伝説級の冒険者が現れたって噂になってたよな? そいつら呼べないのか?」
「えっと、確かに大型魔獣を瞬殺した冒険者はこの前……、ですが」
「水臭いこと言うなよぉ、頼むって」
「はぁ……ダメもとで、冒険者組合に掛け合ってみますね……」

●準冒険者への指南
「以前イレギュラーズの方々へ大型魔獣の討伐を依頼しましたが、大型魔獣を討伐したという事実は世界に対して大きな印象を与えたようです。私としては交流の機会も増えて嬉しい次第ですが、頼られることも多くなりそうです」
 どこか嬉しそうな様子の【境界案内人】イヴ=マリアンヌは、いつものように本を読みながら一枚の依頼書を取り出した。以前、その世界で出現した大型魔獣を討伐してからイレギュラーズのような存在が噂や情報誌で広まっており、今回は指名式に依頼が回ってきたとかなんとか。
「今回は見習い冒険者、といっても冒険者複数がかりでも相手にならない優等生の指南役を求めているみたいです。本当は一対一が鍛錬の基本らしいのですが、本人の希望で四人いっぺんに……と」
 依頼の内容はそれだけではなく、依頼書の片隅に手書きで『世界を知らないこの子が死なないように、強さを教えてあげてください』という文字まで書かれていた。
「きっと色んな方から期待を寄せられているのでしょうね。それだけにきっと良い動きはみせるでしょうけど、くれぐれもやりすぎないようにお願いしますね」

NMコメント

 初めましての方は初めまして、牡丹雪と申します。
 この物語は『The world of miasma①』の続編になりますが、物語は個々で完結する&<前回までのあらすじ>を作るため、前作の確認はあまり必要ありません。
 また、このシリーズは今回から<瘴気世界>というタイトルになります。

●目的【冒険者見習いに稽古をつける】
 修練に励む見習い冒険者『ラナード』ですが、優等生ゆえに指南役が見つからず困っているそうです。噂によると性格にもやや難があるとか何とか。
 性格含めて叩き直してほしいとの依頼です。

 また、修練後はラナードがコロニー内を案内してくれたりします。
 どこか気になる場所があれば連れていってくれます。

●ロケーション
 大きな修練場を貸し切りにしてくれるそうです。
 他に人もいないのでかなり動けるスペースがあります。

●敵対する相手の情報
・見習い冒険者『ラナード』
 身長はやや低め、それよりも大きな大剣を軽々と使いこなす青年です。
 能力は全体的に平均以上で『筋力増強』の特殊能力を使用しますが、それを込みでもイレギュラーズ1人に対して無力であり、攻撃しすぎると死にます。
 また、性格はややねじ曲がっているので初対面ではほぼ確実に舐めてかかるでしょう。

 イヴの話によれば、優等生ゆえの憂鬱もあるのだとか何とか、根は良い人だそうです。

●世界観のおさらい
 かつて世界の均衡を保っていた6人の精霊たちはあまりの退屈さに人類を生み出し、それを繁栄させた。だが、人類を生み出す過程の中で邪悪な力を持つ魔獣も生み出してしまい、やがて史に残る大戦争が起きてしまう。瘴気により荒廃してしまった跡地から逃れるべく人類は地底へと生活圏を移動した。
 そう願った精霊が導いてくれた際に偉人が受け取ったとされる高純度の精霊石を用いた5つの疑似太陽により、まるで地上にいるような生活を送っている。のちにその疑似太陽に惹かれるように人々は巨大なコロニーを築き、5つの国が出来上がった。
 人類は精霊に最初に生み出された種族であるため、精霊石の魔力を浴びつつ魔獣の灰を食べながら生きている。

~イヴの本より『世界について分かっていること』
・この世界の人間は息絶えると灰になる
・魔獣には核が存在し、様々な生活に役立っている
・魔獣を狩る冒険者という存在がいる
・精霊は6人の筈だが、どういう理由か1人欠けている
・灰を加工した食品は見た目通りマズい
・人間にも魔獣と同じ核が存在する

●前回のあらすじ
 前回の冒険では、大型魔獣を討伐し世界の観光、探索を行いました。
 その結果により、大型魔獣を討伐できる新たな冒険者の登場が世に知れ渡り、イレギュラーズがこの世界で冒険をする際は『英雄級の冒険者』として扱われることになります。
 また、冒険により新たな事実や謎も生まれました。(世界観と世界について分かっていること参照)

●プレイングについて
 ここまでの情報量が多いため、目標のおさらいとプレイング例になります。
 本シナリオは指南パート→自由行動パートの2パート行う予定です。
 自由行動パートはコロニー内を案内してもらったり、自由に探索することもできるので、気になることや場所等が書いてあるとそれに沿って動く形になります。(美味しいもの以外はだいたいあります)

●アドリブについて
 本シナリオではアドリブが多めに含まれることがあります。
 アドリブがNGの場合、通信欄かプレイングに一言ご記載いただければ幸いです。

  • <瘴気世界>優等生には指南役がいない完了
  • NM名牡丹雪
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月19日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ンクルス・クー(p3p007660)
山吹の孫娘
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女

リプレイ

●捻くれた優等生
「断る!」
 修練場全体に、ラナードが駄々をこねる声が響き渡る。
 そんな彼をよそにイレギュラーズたちは戦闘の準備を進めているが、そのやり方が気に食わなかったらしい。『白い死神』白夜 希(p3p009099)はそんな彼を宥めようと訓練の理由を説明した。
「だって、冒険者はパーティー組むって聞いた、から……守る対象があった方が、実践的……でしょ?」
「俺は上でも一人だ! 勝手に決めつけんじゃ——」
「怖いのか?」
「あ?」
 今にも怒りが爆発しそうなラナードに『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は、やれやれといった表情をしながら彼を挑発した。
「失敗するのが怖いのかって聞いてんだ、優等生。お前が本当に優秀ならこれくらい簡単だろう? そもそも教えを乞う身に拒否権なんて無いんだが」
 世界の挑発に、ラナードは歯を食いしばりながら黙ってしまう。
 この勝負を放棄することは敵前逃亡も良いところ。生意気で捻くれていようが、世界が言いたいことが理解できない馬鹿ではない。
「……わぁったよ、受けて立ってやる」

●鬼の模擬修練
「くそ、こいつら無茶苦茶すぎだろ!!」
 簡単にいえば、ラナードは優等生というだけの動きはしていた。
 希が用意した両手両足不均等な重さのウェイトバンドを装着しながら、かなり重そうな大剣を軽々と振り回す。加えて器用ですばしっこく、状況判断能力もそれなりだった。
「フリック 頭頂 弱点。頭頂 叩ク ラナード 勝チ」
「叩かせる気なんて毛頭ないんだろう?」
 修練の方法は簡単なものだ。世界を含め、彼が簡易式召還陣で召還した人型の巻藁を守りながら『此岸ノ辺の墓守』フリークライ(p3p008595)の頭頂に一撃、掠りさえすればラナードの勝ち。逆に巻藁を破壊されるか、世界かラナードが戦闘不能になればラナードの負けというもの。
 もちろん、このままではどう頑張ってもラナードに勝ち目はないので、巻藁に攻撃するのは希だけ。更に守られる世界はラナードの援護にまわっていた。
「ラナードくんが勝つにはまず私を突破しないといけない! けど、そんな攻撃じゃ掠り傷すら付かないかな?」
 巻藁や世界は希の攻撃からある程度逃げることに対し、フリークライはその場から一歩も動かない。そのかわりとして、『鋼のシスター』ンクルス・クー(p3p007660)がその守護をしていた。
 最初、ラナードはぶった斬るつもりで大剣を振ったのだが、その攻撃はンクルスにダメージを与えるどころか反動でラナードが吹き飛ばされたのだ。
「ほら、さっきの威勢、どうしたの?」
「くそっ!」
 そうしている間に巻藁を破壊しようと斬りかかる希の剣を、ラナードは素早く阻止しにいかなければならない。戦いにくさを実感し始めた頃だろう。
「どうしたー優等生、もうへばったのか?」
 状況を打開できなさそうなラナードに、世界は容赦なく嫌味を飛ばす。
 本気でやってしまえば一瞬で希が巻藁を破壊して勝利してしまうのだが、そうならないように上手く調節しているのが彼だ。その上での嫌味は悔しくて仕方がない。
「うるっせぇ! お前わざと負けるように動いたりしたら許さねぇからな!」
「やれやれ、今の俺はただのか弱い住民なんだがな……」
 手加減をしている希とラナードの小競り合いはほぼ互角のように感じられた。
 もう少しだけ本気を出しても良いと判断した希は、彼を試すために巻藁にスローイングナイフを投げつける。当たれば即破壊だ。
「っ!」
 だが、希がナイフを投げようとした瞬間にラナードは持っていた大剣をぶん投げて盾になるように地面に突き刺し、ナイフが巻藁に当たるのを防ぐ。
 虚をつかれたとはいえ、素晴らしい反応速度だ。
「凄い、けど……獲物、無く……っ!」
 正直いじめるつもりでいたが、思っていた以上に良い動きを見せたラナードに希が感心するような言葉を漏らしたのもつかの間、瞬間的に筋力増強を発動したラナードの拳が彼女の装備していた片手剣を吹き飛ばし、流れるままのミドルキックが炸裂した。
「少し、ううん……結構驚いた」
「っ……!」
 それでも渾身の一撃は希に届かなかった。顔面を狙った強烈な蹴りは指一本で受け止められてしまい、ダメージすら入っていない。
 だが、希は少し諦めた様に一歩引いた。
「もう少ししてもいい、けど……これで私は戦闘不能。そう仮定して、フリークライくんに攻撃、しにいってもいい」
 ラナードが巻藁を守ることを放棄していたらそれは変わっていたかもしれないが、守る意思がきちんとある彼は他にも学ばなければいけない事が沢山あるのだ。

●修練の行く末
 希が攻撃を中断した今、フリークライの頭に一撃入れればラナードの勝ちだが、まずはそれを守るンクルスの堅いガードを突破しなければいけなかった。
 だが、現状のラナードではダメージを与えることは愚か、攻撃するたびに自分がダメージを受けるのだから闇雲に攻撃することができない。
「そろそろ全力で来ないと、そろそろフリークライさんが退屈そうですよ!」
「フリック 退屈 ラナード 突破デキナイ?」
 どうすればあのシスターを突破することができるか。考え続けて頭がパンクしそうになっているラナードに、世界は彼の肩を叩いた。
「仕方ないな、ちょっとは助言をくれてやろう」
「んだよ、いきなり……」
 唐突なことに困惑するラナードを置いて、世界は話を続けた。
「あのシスター相手に、おまえのただの攻撃でまともなダメージを与えるのは不可能に近い。まぁ口で説明しただけでできるなんて微塵にも思っちゃいねぇが、態勢を崩せ」
「てめっ、本当に覚えてろよ? 今度一発ぶん殴ってやるからな!」
 余計な一言に更に怒りつつ、世界の助言でラナードは何かを思いついたらしい。瞳がまっすぐンクルスの方を向いている。
「作戦会議は終わったかい? 今度はちょっと期待してもいいのかな?」
「ああ、舐めてかかると本当に痛い目見るぜ!」
 ようやく攻撃の姿勢を見せたラナードは筋力増強による驚異的な瞬発力でンクルスの目の前まで詰めると彼女に重い一撃を放つ。
 しかしその攻撃はまた安直な……。
「うーん、ちょっと期待したんだけど? ……っ?!」
 真正面からの正直な攻撃にンクルスがちょっとがっかりした様子を見せた瞬間、彼女の視界がぐるりと回った。
「やっと隙を見せたな。初撃は囮だぜ!」
 後方から眺めていた世界は、あごに手をあてながら“ほう”と呟く。
 初撃は油断をさせるための囮、その瞬間に大剣を捨てて素早くンクルスの懐に潜り込むと、強烈な足払いを繰り出したのだ。常に手加減をしていて、かつ油断していればイレギュラーズでも態勢を崩してしまうほど強烈な攻撃だ。
「ぶっ壊れても文句は……っっ?!」
 そこまではよかったのだが、初撃で大剣を捨ててしまったラナードはンクルスの顔めがけて筋力増強を込めたパンチをしてしまったのである。当然、ぶっ壊れるのはンクルスではなくラナードの拳だ。
 後ろで眺めていた世界はやれやれと頭を抱える。
「いってぇぇ!? なんて硬さだよ……!」
「あはは、少し詰めが甘かったかな? でも今のフェイントは良かったよ! あとでもう一回コンボの練習をするとして、私はこれで戦闘不能。フリークライくんの頭を叩く絶好のチャンス!」
 それっぽい演出をしながらンクルスは戦闘不能の意を伝えた。
 本当に戦闘不能になるまで続けたら終わらなくなっちゃうからね。

「回復するぞー?」
 ラナードが拳に受けたダメージを世界が回復させつつ、修練は終盤を迎える。泣いても笑っても、彼がフリークライの頭を叩くことができるか否かに勝敗がかかっていた。
「ン.フリック 大キイ。ラナード 小サイ。体格差アル ドウスル?」
「どうせおまえも、一筋縄ではいかないんだろ? だが、的が大きいのは助かるぜ」
 自身の数倍も大きなフリークライと対峙したラナードは呟くようにそう言うと、筋力増強で身体を強化し素早く頭を斬りにかかる。
 だが、防御に集中したフリークライは鉄壁を誇る要塞だ。あっさり腕でガードされると、反撃の毒撃を受けてしまう。
「っ……毒かよ」
「フリック 攻撃 勿論。油断 ラナード 死ヌ」
 フリークライはその場にどっしりと構えたまま動かない。だが、その頭を叩くには自分から近づかないといけないわけで、ほぼ確実にガードされる上に毒攻撃をされては理不尽な難易度を誇る。
「フリック 本気。ラナード 毒 ドウシヨウモナイ。ドウスル?」
「うるせぇよ。どうもこうも、おまえの頭をぶん殴——うっ」
 初撃で受けてしまった毒が全身に回り始めたのか、ラナードは咳き込み灰のようなものを吐き出した。体力の消耗も激しい。
「諦メル 大事。ラナード 勝テナイ 絶対」
 毒を受けてしまった時点で持久力も耐久力もないラナードに勝ち目は無いのだ。
 それでも彼は負けを認めない。ここまで来て、そんな簡単に認められるわけがなかった。
「勝テナイ敵 引クコト 大事。ソレデモ 戦ウ?」
「黙れ。これが本番なら、逃げれば俺は味方を見捨てて逃げる屑だ。俺はそんな屑に成り下がりたくない」
「…………」
 毒に苦しみながらも剣を向けるラナードに、フリークライは少し黙ってしまう。
「逃げるなら、死んだ方が……」
 流石にスタミナと体力の底が尽きてしまったのか、ラナードは地面に倒れ崩れた。手加減していたとはいえ、イレギュラーズ相手によくやったと言えるだろう。
「フリック ヤリスギタ……」
「んーや、こいつにはいい矯正になっただろ。解毒して回復させときゃ、すぐに起きるさ」
 結局良い所でラナードの負けになってしまったが、イレギュラーズが行った修練は彼に大きな成長をもたらしただろう。
 彼が良き冒険者になる、その時を願って。

成否

成功

状態異常

なし

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