シナリオ詳細
<FarbeReise>空飛ぶ絨毯、Fly Away
オープニング
●ならず者たち
ラサ傭兵商会連合、FarbeReise(ファルベライズ)遺跡群。
冒険者たちの熱狂に答えるように次々と未知の遺跡が姿を現している。
金の匂いとくれば、冒険者崩れのならず者たちが集まるのは世の習い。
はてさて、『願いを叶える宝』があるとはいうが……。
「っち、外れか!」
盗賊たちが遺跡へと押し入ったが、そこは、すでにもう誰かが入った後の遺跡のようだ。部屋の隅に残っている壺の底には多少の銅貨があり、調度品は豪華なもの……らしかったのではあるが、ここにはもう何もない。
「くそっ、もう誰かに持ってかれたに違いねぇ」
と、そのときだった。
「……う、うわ、なんだ!?」
「地震だ!」
地面が、揺れた。
いや、揺れているのは地面ではない。床だ!
波打つ絨毯。この部屋で一番高価なものは、つまるところ足下にあった。盗難防止の魔術のかかった、見事な朱色の絨毯である。
「こいつ!」
部下の一人がサーベルで縫い止めようとするが、ひらりとめくれてかわす。
絨毯はぶわりと浮き上がり、全てを吹き飛ばして逃げた。
「絨毯が逃げたぞーーー!」
「お頭、あれが秘宝に違ぇねぇ!」
●逃げる絨毯、追う盗賊
「! あ、アレじゃないッスか! あれじゃないッスかねぇ!」
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)はキラリとその目を輝かせる。
「ほら、あっちでひらひらしてるッス!」
「どこどこ?」
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は背伸びする。
「あった、あれだね。あなたが言ってたのは」
そう言って仲間を振り返る。
「あれは、文献にあった……空を飛ぶ絨毯、ですか……」
フォルテシア=カティリス=レスティーユ(p3p000785)はほっとしたように息を吐き、白い翼を震わせる。それにあわせてエナ・イル(p3p004585)の小さな翼もパタパタ揺れた。
「ええっ、あんまり嬉しくないですかぁ?」
「いえ、たしかに私の読んでいた文献とよく似たランドマークがありましたけれど、本当にあるだなんて……あまり思っていなかったので、驚いているのです」
フォルテシアは結構ネガティブである。
「これは……乗ったら目立つよね!? 配信数伸びるよね!? 体張っちゃうよー」
アイドルたるもの、スポットライトは浴びていたいものだ。ビスコは熱意に燃えている。
「それにかわいいですよねぇ。ボクも乗ってみたいなあ。フラーゴさんはどうですか? 高いところ、苦手ですか?」
「……ちょっと、乗ってみたい」
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)は少し考えてそう答えた。無表情ながら、好感触であるようだ。
「しかし……少々騒がしい方々がお見えですね」
砂漠にあってなお、抜けるような白い肌。夜乃 幻(p3p000824)はすうと目を細める。
何やら盗賊たちが必死に絨毯を追いかけている。
「行きましょう! 盗賊は懲らしめます」
ハンナ・シャロン(p3p007137)はぐっと拳を握りしめた。ハーモニアには珍しい武闘派である。
- <FarbeReise>空飛ぶ絨毯、Fly Away完了
- GM名布川
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年10月21日 22時25分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費200RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●逃げる絨毯、追う者たち
「空飛ぶ絨毯! むむむ、これは魔法という他ないッスよ……!」
『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)のあかぶちめがねが、ターゲットを見つけてきらりと輝く。アイ・レンズはきゅいんと作動音を立て、ふわふわと浮く絨毯を補足する。
「うん。あれが色宝だね……。乗ったら……楽しそうかも……」
『恋の炎に身を焦がし』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)のオッドアイは、絨毯の価値を一目にして見抜いていた。
大事なものは、いつも直感で”わかる”。
白い耳だけが楽しそうに揺れる。
「絨毯! 本当に絨毯が空を飛んでいます! 御伽噺そのままです……凄いですね……!!」
『武の幻想種』ハンナ・シャロン(p3p007137)は瞳を輝かせ、それから、はっとして愛用の武器を握り直す。
遊覧飛行を楽しむためには、まずは盗賊たちをなんとかせねばならない。
「あっ、あれだ! 目的のブツ!! 国民的RPGにあった乗り物!!」
『アデプト・ニューアイドル!』ビスコ(p3p008926)が、ぐんと盗賊たちをクローズアップする。
「そこの盗掘者! ローレットから来ました!! 素直に降伏すれば命までは取らないよ!!」
「なんだこらァ!」
ビスコちゃんねるは、目線の入った屈強な悪党たちをとらえる。
「むむ、やる気ですね! となれば、これはホンキ出さなきゃいけませんよね!」
口笛を吹くと、パカダクラがやってきた。
「ほっ!」
テッテレーという派手な効果音と共に、ビスコはパカダクラにしがみつく。これぞ、アイドル根性というもの。
「傭兵の牧場で必死に訓練したかいがありました。大河ドラマも夢じゃないかな!? おおっとお!?」
主演女優賞に思いをはせていると、パカダクラは見当違いの方向に走りだしそうになる。
「!」
落ちかけたビスコを、『静謐の勇医』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)が支える。
「大丈夫?」
「ありがとうございます! いや、アイドル的にはオイシイ……!?」
「ケガ、だめだよ」
「はーい!」
「頭ァ! すぐ行く」
「おう!
「いや、違う! 後ろから! すぐ来る!」
「後ろォ!?」
ぐんぐんとスピードを上げ、フラーゴラは馬に飛び乗った。
ブルーコメット・TS。フラーゴラの青い一閃が、すでに頭領に迫っていた。
「俺たちのお宝を横取りする気か、テメェ!」
「人聞きの悪いことをおっしゃいますね、お客様」
まるで蜃気楼のごとく。
『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)は、姿を現す。大きな花がふわりと咲き乱れ、また別の場所へと現れる。
優雅で、自在。空間の制限などそこにはない。
「ど、どうやって……!? どこから!?」
トリックがあるはずだと、盗賊たちは目を凝らす。しかし、分からなくなっていく……。
(おい、こっちは馬に乗ってるんだぞ!?)
唖然とするほかない。
腕へ、指先へ。視線は導かれていく。
どこからかトランプの一枚、『白昼夢』が取り出され、それは重りの付いたロープへと姿を変えた。
優雅に投げられた切っ先は、舞台の上で定められた筋書きをなぞるがごとくに……。
(やべえっ!)
我に返った頭領は馬にムチを打つ。だが、逃げ出そうとしても、ロープは深く絡みついていた。
その時だった。
「よーいしょっとぉ」
ふわふわとした影が、狙いを定めて頭領の上にどしんと落ちた。
『(自称)可愛い小鳥』エナ・イル(p3p004585)だ。
あくまでも軽い調子で放たれた、ブフェーラ・ディ・ネーヴェの一撃。
巨大なハルバードが、重力と共に振り下ろされる。
重量のこもった一撃は大地をえぐり、砂を揺らして地形を変える。頭領の馬は、突如出現した波に気をとられ、立ち上がって頭領を振り落とした。
「せえのっ」
エナはぱたぱたと羽を動かし、軽々と斧を持ち上げて再び空へと飛び立つ。
「お、おかしいだろ、その体格でどうやって持ってんだそれ!」
「え? 可愛さを鍛えた結果ですけどぉ?」
「ひいっ」
当たったら、いや、まともに当たらなくてもこの調子だと、死ぬ。
ばちばちとうなる雷撃が、盗賊の群れを二つに割った。
「そこの無法者、お待ちなさい!」
赤い馬、赫塊(かくかい)に乗ったココロだった。
乗り手のココロに、友は難なく答え、敵の群れへとも果敢に突っ切っていく。
「てめぇ!」
盗賊のサーベルを避けたココロは勢いで落下する。いや、違う、馬に横乗りし、姿勢を変えたまでのこと。バランスをとり、攻撃の準備を整えていた。
赫塊もそれを分かっていて、立ち止まることはない。
響く音が二つ。
盗賊が惑わされたのは、武器などなかったから。
ハーロニュー。ハートモチーフのブレスレットが、ただ揺れるだけ。
華麗なるワンツーパンチ。格闘術式『斬海脚』。そして仕上げに、のけぞった盗賊に回し蹴りを食らわせた。
見事な一撃は、相手の顎を打ち砕いた。
(やった)
赫塊は満足そうにいなないた。
「あっちは順調みたいですねっ、いいですよいいですよーちゃちゃっとやっちゃいましょうね! いきますよー! せーのっ」
ビスコの神気閃光がまたたき、盗賊の群れをなぎ倒した。
「おおっ、ナイスフラッシュッスね!!」
「へっへっへ。こーんなやつら放っておいて、さっさとお宝を追いかけましょうぜ、ボス!」
「お宝を追いかけるッ! ラジャー。イルミナ、出力あげていくッス!」
入力をセットすれば、狙いはおのずと定まる。イルミナの腕部から鋭い棘が生えた。ウィーク・ポイント。ばちばちとエネルギーが瞬いて、盗賊の革鎧に突き立った。
「ぐあ、なんだこれ!?」
「ハンナ・シャロン、参りますっ!」
ハンナは大地を蹴り、風に乗って浮き上がった。その動きは、盗賊には予想外だったことだろう。……ハンナは決して、力を振るうための体格に恵まれた戦士ではない。しかし、長く生きる間、その技を何よりも研ぎ澄ませてきた。
この身に宿るは悠久の命と不屈の魂。
「せいっ」
殲刃神楽が、イルミナの突き立てた杭を押し込み、弾き飛ばす。
「ぐああっ!」
「さあ、次、行きますよ!」
「かまうなっ! あの絨毯に乗れさえすれば逃げられる! お頭に続け!」
「そこ……止まってください」
『もうやだぁぁぁぁ』フォルテシア=カティリス=レスティーユ(p3p000785)は純白の翼で軽やかに空を舞い、敵に矢を向ける。
「物の価値も分からない貴方方にこの絨毯を渡すわけにはまいりません。さっさと引いてください」
「ふざけ」
拒否を言い終わる前に、正確無比に矢が放たれる。
フォルテシアとて、相手が言って聞くことがないのはうすうす分かっていた。この”実力差”がわかっていたら、挑んでくるはずもないのだから。
無駄は避けたい。それはフォルテシアの慈悲だ。
「ひ、ひいい!」
一人は逃げていくようである。
……今回の目的は絨毯の奪取。良しとしよう。数人を捕まえておけば、ほかの仲間もあとからお縄につくだろう。フォルテシアはふう、と息をつき、後ろから迫りくる敵に。
「……見えておりますよ」
フォルテシアは羽ばたき、くるりと一回転して、自分の背後に回り込んでいた敵に向き直る。
●華麗なるイレギュラーズと11人の部下、そしてお頭
「まだ、挑むのですね?」
純白の翼、憂い気に伏せられる睫毛。
フォルテシアのナイトメアバレットが、サーベルを弾き、正確に一体を貫いた。
「フォルテシア君、ナイスっ」
「よーし、ギアあげていくッスよ!」
イルミナのエネルギーが、高出力の刃を形どった。テネムラス・トライキェン。チャンスを引き寄せるように、連撃を食らわせる。
「ゆ。ゆるしてくれ、もうっ!」
ココロの一撃が、盗賊をKOする。
威嚇術だ。命まで奪いはしない。
(寝てるだけ、だね。綺麗な絨毯が血に染まるのは、ちょっと切ないから)
きっと、夕日はその色じゃない。
誇らしげな赫塊のたてがみを、ココロはふわふわ撫でる。
「ナイスですっ! その、人が死ぬのは非常に後味が悪いので……。ふん縛っておけば後から現地政府の警察がいい感じで何とかしてくれる、はず! ですよね!」
ビスコがぐっと拳を握った。
「死にはしないでしょうね」
フォルテシアのブラッドウィップが、敵をきつく縛り付けた。
「ぐあっ、てめぇ!」
「させないッスよ!」
フォルテシアへの攻撃を、イルミナが庇う姿勢を見せた。
好都合だ、と盗賊はサーベルを握り締める。
避けないならば、良い的だ。
がきん、と硬い音が響き渡った。
「なっ、こいつ、素手で……?!」
「へっへんっ」
テールム・アルムム・スクトゥム。エネルギーフィールドが展開し、イルミナへの攻撃を受け止めた。サーベルは刃こぼれし、真っ二つに折れる。
「ありがとうございますっ! お礼に、ビスコちゃん、歌いますっ!」
「おおっ、いいッスね、元気、出てくるッス、よっ!」
イルミナのエネルギーが、みるみる出力を上げていった。
ハンナは一瞬足を止め、深呼吸をする。
ディープインサイト。戦闘で立つ砂埃にまぎれて、死角に回り込んでいた。
「なっ!?」
「いきます!」
殲刃神楽が、隙間を縫うように一撃を見舞った。
風が味方し、足をとられることはない。
正確無比の一撃だった。
ハンナが9人目の盗賊を倒したのと同じころ。
「とうっ!」
エナはハルバードを構え、思い切り振り回していた。
戦鬼暴風陣が、辺り一帯を巻き上げて砂嵐を巻き起こす。
「し、しがみつけーーーー!」
絨毯に手をかけた部下が、風に負けて吹き飛ばされていく。
「ぐああー!」
「そしてぇー、せーのっ!」
エナちゃんタックル。
可愛さはぎゅうと圧縮された質量であり、勢いよくぶつかった。
「くそっ、まだ来ねぇのか、あの役立たずどもは!」
「頭ァ! 来ましたぜ!」
「でかした!」
「敵が、敵が!」
ほとんどぼろぼろになったボスが顔をあげたが、当然のごとく、やってきたのはイレギュラーズたちだ。
(わかってたよ、ね、赫塊。音はずっと聞こえていたから)
心配なんて、してあげない。
うそだよ、ほんとうは心配してた。
ココロのサンクチュアリが、夕陽に共鳴するようにきらきらと輝いている。
「はいはーい! おなじみ、ビスコちゃんです! おっと、クライマックスに間に合いましたね!?」
死んだふりをしていた盗賊を、フォルテシアの矢がけん制する。
「その手には乗りませんよ。……無事で何よりです」
「皆様、加勢しに来ました!」
逃げようとする盗賊の前にハンナの刃が立ちふさがった。
「チイッ」
「それではせーのっ」
ビスコのスーパーアンコールが、フラーゴラを奮い立たせた。
耳がぴこぴこと、リズムに乗る。
フラーゴラが、地面を蹴る、速度を溜めて、盗賊の親玉にぶつかっていく。
「アンコール、ええ、お応えしましょう」
幻の奇術『昼想夜夢』が、砂漠に幻想を描き出す。
蜃気楼のごとく揺らめいて、夢を魅せた。
なにもありはしない場所に、幻を見る。かつての栄華。
奇術は、途切れることはない。青い蝶の群れが敵に群がり、再びの幻想が辺りを包み込む。二度、三度、角度を変え、幾度となく繰り返される夢。
「はいはーい」
エナの一撃で、盗賊の親玉はきゅうと伸びた。
●逃走劇
絨毯がふわりと浮き上がり、逃げ出そうとしている。
「そうはいきません」
幻の手にかかれば、ロープは鋼鉄の棒とも柔らかなムチにもなる。形状を変化させ、絨毯へと投げた。正確な狙いだ。砂埃にまぎれて落ちてしまうが、二度、三度と投げるうちに、絨毯は引き寄せられる。
「通せんぼしちゃうッスよー!」
イルミナが立ちふさがったので、絨毯は慌ててかくんと進路を変える。
「待って、待って、置いていかないでー!! っとう!」
振り落とされてしまおうとも、アイドルはくじけない。ふるふると頭を振って砂をほろって、再挑戦だ。
「例え砂にまみれてもビスコちゃんはあきらめない!! ビスコちゃんたちが新しい主だ!!」
「同時に行きましょう! せーのっ!」
エナの体当たりで絨毯がぼよんと大きく凹む。力には、これでも自信があるのだ。
絨毯の行く手を、赫塊が追いかける。ぐるりと進行方向を変え、巻き込むように。迷路に誘い込むように。
「落ち着いてよ、わたしはあなたを助けにきたの!」
ココロの説得に、絨毯は後ずさりながらも少しずつスピードを落としていった。消えたかに思えたが。
「そちらですね」
幻のステッキが見事に絨毯を補足していた。ついにその姿勢は絨毯をとらえ、ひらりと、蝶のように降り立ったのだった。
「はっ!」
その隙を狙って、ハンナが勇敢に飛び乗った。絨毯は激しく波打ったが、ハンナは巧みに姿勢をかがめて、乗りこなす。
フラーゴラが続けて飛び乗った。なだめるようにぽんぽんとへりを叩いた。
「どうどう!」
「大丈夫……怖い盗賊はいなくなったから……」
そして、ぎゅっと抱きしめる。
「落ち着いてください。貴方を無理矢理連れ去ろうとして悪い者たちは私達が退治しました。私達は貴方を無理矢理どうこうしたりはしません。ですからどうか、落ち着いて……」
フォルテシアが呼びかける。次第に抵抗は弱くなっていく。そして、ふわふわと浮くだけになった。
(もう、大丈夫)
ココロは両手を広げ、包み込むように絨毯を抱きしめた。ゆっくりと、安心が、沁みとおってゆく。
●遊覧飛行と参りましょう
「ん……」
フラーゴラがほうきで埃を落とし、聖水を含ませたふきんでふき取っていく。美しい模様が顔を出す。
「燃えるような夕焼け……綺麗……。乗っても、いい……?」
絨毯は、乗りやすいようにすっと低い位置にやってきた。
「……乗って帰って良いんですよね! ね! いやー楽しみだったんスよー!」
「行こう」
ココロがそっと足をのせると、緩やかに沈み込み、包み込む。
「おっとっと」
こんどは真逆に、あまり縁によりすぎるとふわりとめくれて、安全を保ってくれる。
「何処へ行く? ネフェルストだって、何処へでも」
この日も、きっと良い一日になるのだから。
「ビスコちゃん的にも、まっすぐ帰るのはもったいないですねぇ……」
「この依頼のオーダーは、絨毯の奪還。急ぎではなかったはずでございます」
「寄り道? しようしよう! 何処だっていいよ、素敵な空だから」
「ッスよねぇ!」
顔を合わせて、みんなは笑った。
「どこがいい?」
「砂漠の空って、きれいだよね……」
「それでは、星空の綺麗な場所に行ってみますか?」
「……素敵だと思います」
ぐんぐんと高度を上げていく。空がこんなに近いことがあるなんて!
下ではフラーゴラの馬とビスコのパカダクラが、ゆっくりと主人についてきている。道をそれていく前のオアシスで、待っていてもらうことにしよう。赫塊は、元気についてくるようだ。
(ずっと見えなくなっても、そこにいるって、分かるよ)
「ふわー、本当に浮いてますよ、高いですよ、飛んでますよ! 見えます?」
「すごい、小さい、何もかも小さいです!」
「おぉー!! 誰かに乗せてもらって飛ぶ事なんて中々無いですが、これもまた良いものですねぇ……やっぱり空は良いものです」
エナはぷるぷると小さい翼を震わせる。
「ふわぁ……」
「気持ちが良いものですね」
フォルテシアとハンナが目を細めた。
砂丘をいくつも超えて、空高く。
「素晴らしいですね。仕組みが気になりますね……」
幻がそっと端っこをつまむと、ぺろっと避けるようにめくれる。
「おや、少しだけですよ」
悩んだように静止して、身を差し出した。
奇術師は謎の仕組みを解体し、新たな幻惑を身に着けるだろう。どこまでも、どこまでも、高みを目指して……。
「皆様とふわふわと絨毯に乗って空を飛ぶのは楽しいものですね」
\躍進! ビスコちゃんねる~/
美しい映像が、眼前に広がる。空は輝き、澄んでいる。
美しい蝶々が幾羽も飛んでいく。奇術師の魅せる夢であった。
こんな日は、きっとめったにない。
「今日は傭兵から素晴らしい砂漠の夕景をお届けします! うわーうわー綺麗な夕焼け! マジカルアワー!! 夢みたいな世界! ふかふかで意外と乗り心地良いな、この絨毯!!」
どうだ、と言わんばかりに絨毯が波打つ。
「あっ、映ってるッスか? いえーい! イルミナは最高に楽しんでるッス!」
「いえーい、どうですか? ココロ君」
「うん……わたしは普段は海に潜ってるから、こういう景色はとても新鮮。いつもは海に沈む夕日は真横に見えるけど、今日は見下ろせるなんて!」
「んー、やっぱり、可愛さを発揮した後のお散歩は気持ちいいですねぇ」
「まるで、本の出来事みたいですね」
フォルテシアがふわりとほほ笑んだ。
「ええ、良い日和です」
「やはり飛ぶことは気持ちが良いものです。こうして、皆様も一緒ですし」
観覧車の頂点を超えるように、ゆっくりと絨毯は高度を落とす。
小さく、ココロの友達が見えている。くるりと振り向いて、待機の騎乗動物たちのところに案内してくれるらしい。
(こうしてみると、絨毯、手放すのが惜しいなあ)
適度に倉庫から出して散歩とかさせてくれるような、理解のある人物であることを祈ろう。
(私たちがいなくなっても元気にするんだよ……)
答えてか、それとも風を受けてか。絨毯がふかふかと毛並みをそよがせた。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
空飛ぶ絨毯の捕獲、お疲れ様でした!
絨毯は価値ある主人に認められ、たいそう気分が良いようです。
しばし、雄大な景色をお楽しみください。
それではお空から、布川でした!
GMコメント
布川です!ご指名ありがとうございます。
ここはぱぱっと片付けて、遊覧飛行といきましょう。
●目標
盗賊から色宝、<空飛ぶ絨毯>を取り戻し、首都ネフェルストまで護送する。
(後半は遊覧飛行となるでしょう)。
●場所
FarbeReise遺跡群、砂漠地帯。
時刻は夕方~日が沈みかけた頃。
遺跡から逃げ出した絨毯を追いかける盗賊たちと鉢合わせします。
●登場
盗賊のお頭(馬)×1
盗賊のお頭。
馬にまたがり、絨毯を追い立てている。得意なものは二丁拳銃。
部下たち(徒歩)×11
思い思いにサーベルやら、ピストルをを片手にした部下たち。
粗雑で宝物には目がない乱暴者。
絨毯を追いかけているが、「珍しい品物」と思っているだけで、本来の価値は分かっているとは言いがたい。
<秘宝>空飛ぶ絨毯
美しい朱色に染まった色宝(ファルグメント)です。
盗掘からの保護のための魔術がかかっています。寄りつく者をはねのける暴れ馬モードになっています。また、今は身を守るために砂で汚れているように見えますが、本来はもっと美しい絨毯です。
乗る人数に応じてぶわりと広がって行きます。
盗賊を廃して乗りこなすことができればおとなしくなります。目的地を告げればすいすいと自動で移動していきます。
優雅な飛行が楽しめるでしょう。
【行動】
・結構な機動力でするすると飛行しています。
・暴れて広域に物理攻撃をします。
・かと思えば、砂に潜んでじっと動かず、追跡を逃れようとする動作をすることもあります。
・ひっくり返ると、慌てて起き上がります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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