シナリオ詳細
再現性東京2010:人体模型オーガンジャー、参上!
オープニング
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練達にあり、とある世界の東京を模した区画……再現性東京(アデプト・トーキョー)。
その再現性東京2010街『希望ヶ浜』にある学園は、別世界の日本地域、東京さながらといった印象を抱かせる。
主に無辜なる混沌に召喚されながらも、この世界を受け入れられなかった者が多く住む地。
しかしながら、ここは混沌でしかなく、その理の元にある一地域であることに変わりはない。
例え住民達が拒絶しようとも、この地には新たな怪異が次々に生まれているのだ。
希望ヶ浜学園の学生寮にて。
「そんなの冗談なのですよ」
金髪ツインテールのメイ=ルゥ(p3p007582)は学友の言葉を笑い飛ばす。
年齢的に初等部に通うメイは同年代の少女達と寝るまでの一時を楽しく語らっていたが、高等部に置ける都市伝説を聞いて耳を疑った。
なんでも、夜に宿直を行っていた高等部の男性教師が廊下を走る音を聞いたのだという。
校舎に生徒が残っていたのではと、注意、補導を行うべく半ば腹を立てて音を立てた犯人の元へと向かったのだが……。
「なっ……!?」
目の前で起こっていたのは、その教師の目を疑うような出来事だった。
なぜか目の前では、衣服を纏った人体模型がポージングしていて。
「我等、人体模型オーガンジャー!!」
「オーガンジャーいる限り、この学園に悪は栄えない!!」
数は5人。赤、青、黄、白、ピンクの5人。
それらはどうやら人間の臓器をモチーフにしているようで、それぞれの臓器がクローズアップされて頭部と胸部に記されていた。
「むっ!? あんな所に怪しげな男がいるぞ!」
「我等の楽園を侵す者、これすなわち悪なり!!」
「悪は滅ぶべし、ゆくぞ皆!」
その人体模型達は高く跳躍し、男性教師を取り囲む。
「ひっ、ひいいいっ!!」
驚いて腰を抜かしてしまった男性教師へ、人体模型達は一斉に攻撃を仕掛けていく……。
彼は次の日、全身に殴打、切り傷などを多数負った状態で発見される。全治3ヵ月の重傷とのことだった。
「そんなのありえないのですよ」
軽く笑ってみせるメイに、友人達は少し拍子抜けしてしまう。
おそらく、友人達はちょっとした怪談話のつもりで語ったようだったが、メイが思った以上に怖がらなかったことを残念がっていたようだ。
しかしながら、メイの内心は違う。
(ううん……、なんかメイが思っていた通りの出来事が起こっている気がするのです)
人体模型が集まって、まさかの人体模型レンジャーの結成。
これはイレギュラーズとして是非調べねばと、メイは瞳を輝かせていたのだった。
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そんなわけで、メイの要望を受け、ローレットから正式に調査依頼が出されることとなる。
「聞いたところだと、事件はその1件だけではないようですね」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が調べた範囲では、直接被害に遭ったのは男性高校教師だけでなく、数人の学生が追われて怪我をしていたようだ。
また、夜妖らしきものが人体模型達によって討伐された跡も確認されている。
本人……というべきか、少なくとも人体模型達は正義のヒーローのように振舞い、自分達が悪と定めた相手を成敗しているらしい。
「全くもって、迷惑極まりない相手だと思います」
アクアベルもその存在をかなり辟易としていたようだ。
現状、それらは夜のみ活動している状態だが、昼間に出現すれば多くの人々が危険にさらされる。
「人体模型達は夜の高等部内を徘徊しています」
どうやら、彼らは高等部の敷地内を楽園と称して外には出ないようだが、今後もそれが続くとは限らない。
新たな被害が出る前に、『人体模型オーガンジャー』を語るこの傍迷惑なヒーロー達を本当の意味で成敗したい。
敵のデータを、アクアベルは各メンバーへと書面で手渡してからアクアベルは最後にこう語る。
「自分達の主観で悪と決めつける彼らを許してはなりません」
だから、その討伐をと、彼女は依頼を受けたイレギュラーズ達へと願うのである。
- 再現性東京2010:人体模型オーガンジャー、参上!完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年10月24日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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再現性東京、希望ヶ浜学園高等部。
「いやー、再現性東京ってすげえな」
夜に高校の敷地内へと入った一行だが、その途中で『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)が嘆息してしまう。
「ガキの頃聞いたような怪談がこれだけ現実起こりうるなんてよ」
「なんで依頼はいつも夜なんだ!ㅤ会長眠いよ!」
大きな欠伸をしていた『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)は個々の事件内容より、その時間帯が遅いことに辟易としていたようだ。
そんな茄子子を窘めつつ、メンバー達は夜妖を探す。
「夜に走り回る人体模型かぁ……私の学校でもそんな怪談あったなぁ」
長い黒髪を1本の三つ編みに纏めた眼鏡少女、『火ノ守』日野森 沙耶(p3p008801)も元の世界で聞いた話を思い出す。
「動く人体模型ね。ようは生きのいい食品サンプルみたいなものだろう?」
黒い短髪、ボーイッシュな『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)が仲間達へと問いかける。
「レンジャー活動、を……するそうです、ね?」
足にまで届く銀のウェーブヘアを揺らす『うつろう恵み』フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)が仲間達の話にそう反応する。
「レンジャー……。覆面で正体を隠しつつ悪を倒すといえば、義賊のようなもの、と捉えればいいのかしらね」
古代と呼ばれる時代の世界からやってきた『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)にとっては異文化過ぎて理解が及ばぬ部分もあるようだが、事前の情報からそう推し量っていた。
「ピンチになったら、合体しそう、というか……大きな人型の何かがでてきて、全員がいっせいに乗り込んで、戦ってきそうな感じの……夜妖です、ね?」
海種のフェリシアはレンジャーなる存在について、見聞きしたことがあったらしい。
「食品サンプルのような存在が正義の味方を気取っているって……ふふっ、実に愛らしく愉快な夜妖ではないか」
マルベートは今回の相手と愉しくやり合いたいようだが、他のメンバー達はそうでもないらしく。
「自分勝手な正義はただの迷惑行為なのですよ!」
静まり返る校舎で、金髪ツインテールの『シティガール』メイ=ルゥ(p3p007582)が叫ぶ。
ヒーローは自分の為ではなく、他人の為に戦うものなのだ、と。
「それを、こんな迷惑ばかりかけて……そんな悪い子達はおしおきなのですよ!」
「なんて卑怯な……本物の正義、見せてあげる」
すでに、重傷を負った教師もいることに真白な長い髪の『白い死神』白夜 希(p3p009099)も憤っていたようだ。
「たまに体を動かしたいのはわかるけど。人に危害を加えるのはダメ、だものね」
――キチッと成敗しないと。
沙耶も自分勝手な夜妖の討伐に意欲を見せるのである。
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校内を順番に回っていたイレギュラーズ一行は程なく、それらと遭遇することになる。
廊下を走る数人の足音。
メンバー達はそれを追いかけ、その行く手を先回りして。
廊下の前に立ち塞がる人影はそれぞれ、赤、青、黄、白、ピンクと異なる色を基調とした衣服を纏っている。
それらは皆人間ではなく、夜妖として自我を持ってしまった人体模型。
「ぬぬっ、怪しげな奴らめ!」
「何者だ!?」
正義感溢れる彼らは目の前に立ち塞がるイレギュラーズ達へと問いかけた。
すると、事前に打ち合わせていたイレギュラーズ達は皆でポーズをとって。
「学園の平和を守る、謎のシティーガール、メイレッドなのですよ!」
最初に名乗りを上げたのは、バーンと大きく手足を広げてポーズをとったメイだ。
「学校の平和を守るため、プールの底からやってきた……夜を練り歩く不思議系ヒーロー、きんぎょばちシルバー、です」
続いて、フェリシアがででーんと空っぽの金魚鉢を掲げる。
「沙耶ちゃんパープル!」
「ホワイトバッドネス。悪い白、ね」
その後、戦隊相手なら礼儀、お約束だろうと沙耶が霊刀「燎」に手をかけて口上を立てる。一方で、気乗りはしていなかった希は横向きで敵に睨みを利かせて呟く。
「学園の風紀は会長が守る!ㅤ会長ブラック!!」
「ワルの光が俺を呼ぶ! 伊達千尋ダークノワールブラックシュバルツ!!」
統率を働かせる茄子子は仲間と連携をとってここぞと名乗り、残りのメンバーを見ながら千尋も声を荒げる。
「ブラックが2人いるじゃないか!」
そんな夜妖達のツッコミは放置し、イレギュラーズの名乗りは続く。
「父と子と聖霊の御名において、静謐を乱す悪党は裁きましょう。ローマン・カーマインよ」
外套をばさりと舞わせるルチアはローマ人であることを主張する。なお、実際の外套の色は貝紫色だが、夜とあって細かいことは気にしない。
「……えっと、何にしようかな。ブラウンとでも名乗っておこうかな」
楽しそうにマルベートが言い放つが、夜妖達は彼女を見回して一言。
「どこがブラウンなんだ?」
「ブラウン要素がない? なに、気にしないで。人生そんなものだよ」
そう軽く流してみせた彼女を最後に、メンバーは名乗りを終えて。
「で……何だったっけ」
「みんな揃って……なんだっけ。チームの名前」
ルチアと沙耶が仲間と顔を見合わせると、すぐさまメイが大声を上げる。
「そう、メイ達は! 学校戦隊ガクエンジャー」
「希望ヶ浜マジ卍ャー!」
「……with 羽衣教会!! どっかーーーーん!!」
メイと同じ名前を言った者は皆無で、カンペを紛失したルチアを始めとしてほとんどが口パク。
唯一希が銃を構えるポーズをしながら別の名を、茄子子が後付けで自身の所属する教会名と効果音を叫ぶ。
ぷっくぷくー。
そして、なぜかフェリシアがサウンドエフェクト替わりにオモチャのラッパを吹いてみせ、千尋はヤンキー座りをして夜妖達へとガンを飛ばして決めポーズ。
「……………」
「……あれ?」
「えぇ……打ち合せ違うくない? バラバラじゃん……」
仲間達に視線を向けるメイ。希もポカーンとしている敵を尻目に呆れを隠し切れない。
「もー、皆さん全然合ってないのですよー」
「チームワーク皆無じゃないか」
「それで我等に挑もうとは片腹痛い!」
メイが仲間達へと声を変える間、夜妖達は鼻を鳴らし、イレギュラーズを笑ってみせた。
「偉そうに酷評してるけど……何者? 名乗れ人体模型」
そこで、無表情ながらもじと目で相手を見つめる希が食ってかかると、夜妖達はよくぞ聞いてくれたとばかりにポージング。
「我等、人体模型オーガンジャー!!」
「オーガンジャーいる限り、この学園に……」
ただ、その名乗りをイレギュラーズ達は最後まで言わせはしない。
「隙あり、トゥァッ!!!」
叫ぶ千尋が自己肯定感を極限まで高めてデキる男感を出す間に、とりわけ素早いメイが真っ先に不意打ちを仕掛ける。
「油断大敵なのですよ」
青い彗星の如く突進したメイは「ロケッ都会羊」で加速し、真っ赤な衣装を纏うハートレッドの身体に衝撃を叩き込むと、敵は大きく吹き飛ぶ。
ハートレッドの空いた穴にメイが入り、そのまま彼女はポーズを決めてみせた。
「ぐうっ、名乗りを上げているというのに、卑怯な!!」
「最近の戦隊はポーズを決めるのを待ってくれないものなのですよ!」
なんとか態勢を整えようとする人体模型に対してメイは現実を突きつけつつ、さらに仲間と共に攻撃を行うのである。
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オーガンジャーを名乗る夜妖となった人体模型達が名乗りを上げようとしていたところで、イレギュラーズ達は厄介な状態異常を及ぼすレッドを優先的に狙う。
「最後まで名乗ってこそ、レンジャーだろう!?」
「撃っちゃダメなんて聞いてない」
人体模型達が一斉に騒ぎ立てるが、壁を背にした希は平然と応え、全員の頭を狙い撃っていく。
続いて、沙耶もまた鍔鳴る『燎』を抜き放ち、レッド目がけて斬撃を見舞っていく。
「いつもはヒーラーだけど、今日の会長はAPヒーラー兼アタッカー!ㅤブラックだからね!」
すでに仲間達が奇襲を開始している中、茄子子は仲間達へと号令を発して体力気力を回復させながら、素早く戦略眼を働かせて戦況を見極める。
そして、やはりこちらの注意を引くレッドが最も厄介だと判断し、相手の運命をも作り変えてしまう。
「ふはは!ㅤ人に造られし模型ごときが人を倒すだなんてちゃんちゃらおかしいぜ!」
めっちゃ悪そうな態度をとる茄子子。これもブラックゆえである。
「ぐうっ……」
瞬時に不運に見舞われる人体模型レッドハートは自我をも失いかけていた。
フェリシアはその間に多くの仲間を、自らのエスプリ「英雄作成」の効果下に置いて強化してから、前衛メンバーの為にと英雄を讃えるその詩を歌って。
「これで、いかがでしょう?」
仲間全員に強化を行き届かせるべく、フェリシアは歌声を戦場へと響かせていく。
「身勝手な正義感も、ただの人なら道理を問えば正しい道へと向かうのだろうけれど……」
相手は夜妖であり、どうしようもないとルチアは認識して。
「少しだけ勿体ないけれど、引導はしっかり渡すわ」
ルチアもまたエスプリ「クェーサードクトリン」を有効に働かせるべく、初手は仲間達の強化支援の為に位置取りを気にかける。
後は味方へと立ち直しの号令を発してから、ルチアは皆を英雄へと変える全軍銃帯の号令を重ね、命中支援を行う。
仲間達が支援を行う間にも、レッドへと集中攻撃が続く。
「オラオラ!!」
自己強化を行った千尋はレッドへと速攻で止む事の無い連撃を浴びせかける。
相手がレンジャーとなっていても人体模型であることは変わらないと、千尋は模型のパーツを次々に取り外す。
「ああっ、何をする!」
熱血漢であるハートレッドは闘志を燃やしてイレギュラーズへと対するが、メイが自由にはさせずにさらに突撃していく。
「悪いですが、早めに沈んでもらうのですよ」
他のレンジャー達も攻撃してはいるが、とかく自由にさせたくないと、メイは速攻で勝負をかけて衝撃波で再度レッドを貫く。
「この俺が……!」
「「レッド!!」」
認めたくないと言わんばかりに崩れ落ちるレッド。人体模型達が一斉にリーダーを気にかけるが、イレギュラーズはすぐにバウルズピンクへと攻撃を集中させて。
魔門を開いたマルベートは黒きマナを迸らせ、双槍の斬撃と共に魔力の奔流をピンクへと浴びせかける。
「ああう……!」
イレギュラーズ達に不意を突かれてはいたが、桃色のオーラを発するピンクは不調を司り、イレギュラーズの勢いを削ごうとしてくる。
「ちょっと、卑怯じゃない!?」
「卑怯? 私ちゃんとバットネスって名乗ったし……?」
希がしばし、青、黄、白の3色を足止めすべく、バックステップやバク宙などして相手を翻弄しつつ大型狙撃銃D9099で曲芸連射。
「行かせないのですよ」
レッドを倒したメイも名乗りを上げ、敵を進ませぬようにと引き付けに当たる。
その為、メンバーはしばらくピンクの討伐に注力する事となる。
沙耶は敵の放つオーラを注視して避けつつ、刺突と斬撃の繰り返しで相手を追い詰めていく。
ボロボロになった相手目がけ、沙耶は猟犬の如く狙いを定めて刃を一閃し、トドメを刺したのだった。
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抵抗を続けるオーガンジャー達だが、チームの中核を失った彼らは総崩れとなり、効果的に戦うことができなくなっていた。
すでに、イレギュラーズとしては掃討戦の様相。
マルベートなどは戦場を駆け回って敵全体へと切りかかり、相手の身体から血を流させる。
人体模型ではあるが、体液が流れるのも夜妖になった故なのだろうか。
「ならば、我々も意地をみせねばならない……!」
残るブルー、イエロー、ホワイトも血にまみれながらそれぞれの得意な戦い方で攻めてくるが、すぐさまルチアが調和の力で仲間を賦活し、傷を癒す。
さらに、フェリシアも天使の歌声を戦場に響かせると、ルチアがそれに合わせて旋律を口ずさむ。
ハーモニーとなる歌声に仲間達が、夜妖達も聞き惚れてしまいそうになっていた。
また、フェリシアは既に不調をきたしていた仲間の回復も怠らない。
イレギュラーズは適宜態勢を整えつつ敵の虚をつき、さらに苛烈に攻め立てる。
千尋はなおも敵の模型のパーツを取り外し続け、周囲へと散乱させていて。
「どれが誰のパーツかわかるまい!」
「後悔するぞ!」
ヴェインブルーは鋭い爪でイレギュラーズの体を引っかき、血を流させようとするが、すでに疲労困憊で大きく肩で息をしている。
「自警団気取りも大概にしとけよ! 先生の言う事はちゃんと聞きなさい!!」
そんな相手へ、千尋はパーツのなくなった腹目がけ、渾身の一撃を見舞う。
「うああ、うぁぁ、ぅぁ……」
彼は見事にブルーをKOしてみせた。
続く討伐対象はストマックイエロー。そいつは胃液を撒き散らし、広範囲へとダメージを与えてくる。
「これ以上近寄らせはしない!」
だが、度重なるイレギュラーズの攻撃で、イエローも苦しそうな表情をしている。
それでも、沙耶は風の様に刃を振るい、相手の体勢を崩す。
ここでマルベートが相手の攻撃をいなし、両手の魔槍で攻め立てる。心底、イエローの胃液を食らいたくなかったのだろう。
「さあ、満たされる事のない偽りの腹を引き裂いてあげよう!」
その腹目がけて刃を突き立てたマルベートは、一気にその腹を掻っ捌く。
小さく呻いたイエローは目から光を失い、卒倒していった。
残る相手がホワイトだけとなったところでメイは再び攻撃に加勢し、一気に倒しにかかる。
「総入れ歯にしてやる」
同色対決とティースホワイトに目をつけていた希は予想もできないタイミングで銃撃を叩き込む。
不測の事態にも備えて戦いを繰り広げていた茄子子だったが、ここまでくればあとは倒すのみと判断して。
「ふはは!ㅤ人に造られし模型ごときが人を倒すだなんてちゃんちゃらおかしいぜ!」
再び悪そうな笑いを浮かべる茄子子は、いい感じにブラック感を醸し出し、科学術式を展開してホワイトの気力を奪っていく。
「この世に悪など存在しない!ㅤ善の反対はまた別の善なのだ!!」
「あうう……っ」
気力を奪われたホワイトは満足に喰らうこともできず、体力の回復もままならない。
そんな相手へと希が実に辛辣な一言。
「その出血量……歯周病じゃない? 近寄らないで臭い」
ホワイトの口目がけ、希は死の凶弾を撃ち込むと、大きく体を仰け反らせて最後のオーガンジャーは倒れていく。
まだ意識があることを確認し、希は最後に問いかける。
「貴方達、この学校のどこが好きだったの?」
「全てよ。こんな楽園で、正義の味方……素敵じゃない?」
「……ならわかるよね。廊下を走る悪い子にはお仕置きが必要。しばらく模型に戻って反省なさい」
正義の味方に扮したはずが、悪いことをしていた人体模型達は程なく、その動きを完全に止めてしまった。
そんな紛い物の命で、間違った正義感から行動していた夜妖達。
「それでも、彼らが正義をなそうとしていたのは確かなのだろう」
ルチアだけは、そんな彼らの死を悼み、祈りを捧げるのだった。
●
夜妖を討伐したイレギュラーズ一行は、校舎の屋上へと向かう。
「はい、これ。夜は冷えますから、ね?」
用務員室備え付けのコンロで温かいお茶を用意した沙耶が皆へと差し出す。
「あ、沙耶ちゃんお茶サンキュー。……うん、温まるぅ~!」
受け取った千尋はそれを一口。味はやや薄めだが、冷えた体を程よく温めてくれる。
「会長は一足先に寝るよ!ㅤ寝る子は育つからね! おやすみ!」
ぐびっとお茶を飲み干した茄子子は寝袋へと入る。
よほど眠かったのか、茄子子は星空をバックに寝息を立て始める。いい夢を見始めたことだろう。
なお、その星空は同じく寝袋にくるっと丸まったフェリシアがギフトで呼び寄せた幸運によるもの。
「調整まではできませんでしたが、いかがでしょうか?」
湯たんぽを抱っこした空を眺めるフェリシアはそう言っていたが、実に綺麗な星空。
メイもまたすでにサメさん寝袋に食べられた状態で天体観測……と思いきや、コロコロと転がって遊んでいたようだ。
「どこで見ても、夜の空は綺麗だね」
空で瞬く星々を見つめるマルベートもまたお茶をお替りしていたが、腹を空かせていた様子。
あの見た目で過食部位がないというのが、マルベートにとっては一番辛いことだったのだとか。
そして、沙耶と千尋も横に並んで星を眺める。
「いや~、そういやゆっくり星を見上げるなんて何年ぶりだ?」
元居た世界では、千尋はただひたすら前ばかりを見ていて、頭上を見上げることが無かったそうだ。
(あの時立ち止まって空見てたら、また違ってたのかな)
学校の屋上と星空と千尋。映画1本作れるくらいカッコ良すぎだとこの状況について彼は語ると。
「……青春っぽいっていうのかな。まるで小説の一節みたい」
沙耶もまた星空を見つめながら、ワクワクしていたのだった。
同じ時、希は校内を歩いていて。
「オーガンジャーの分も見回りするか……」
そこで出くわしかけたのは、宿直の先生。
(マズイ。他の人はまだお楽しみ中……ちぃっ!!)
希は仲間の邪魔をされぬようにと武器の入った楽器ケースでその教師を気絶させ、いずこともなく去っていったのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPはイレギュラーズのレッドさんへ。また、強烈な言葉が印象的だったあなたにも称号を付与させていただきました。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
こちらは、拙作「再現性東京2010:夜妖出現に法則性……?」においてメイ=ルゥ(p3p007582)さんがアクターアクションを起こしたことで発生したシナリオです。
●概要
全ての人体模型の討伐。
●敵……夜妖
◎人体模型レンジャー×5体
5体の人体模型が集まってチームを組み、夜な夜な活動していると噂されている夜妖達です。
基本的に肉弾戦メインですが、個々には以下のような特徴があります。
○ハートレッド
心臓をモチーフとしたチームリーダーです。
メンバーを鼓舞するだけでなく、
相手に怒り与えて引き付けるなど、熱血漢な一面があるようです。
〇ヴェインブルー
血管……主に静脈をモチーフとしたメンバーです。
相手を爪で引っかいて切り傷を与えて血を流させることもあります。
〇ストマックイエロー
胃をモチーフとしたメンバーです。
相手に胃液を吐き掛けて防御力無視のダメージを与えてきます。
〇ティースホワイト
歯をモチーフとしたメンバーです。
噛みついて相手から体力気力を奪ってきます。
〇バウルズピンク
腸をモチーフとしたメンバーです。
相手に不調を与えることを得意とし、足止、乱れ、不吉、麻痺、混乱と幅広く相手に状態異常をもたらします。
●状況
舞台は希望ヶ浜学園高等部。
夜になると、集団で敷地内、校舎や外を駆け巡る人体模型の集団が現れると学生達の中で噂されています。
この噂の真偽を確かめるべく、学校関係者に扮したイレギュラーズ達は夜の高校へと向かいます。
事後は用務員室にお邪魔してお茶を頂いてもいいですし、宿直室を借りて眠るのもいいでしょう。
屋上で星空を見ながら寝袋に包まるなどもいいですね!
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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