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シナリオ詳細

<豊来期>無二の対を求めて

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

⚫︎磐長の秋

 風がさびしげな色に染まりはじめる、こいの季節。
 コノハナコノコノたちは自分の生活けんをはなれて森のおくを目指します。
 はれの季節にすずんだ泉をこえた先、木々のみつどがグンと上がって、そこにはお日さまも入りこめません。
 暗くてジメジメとしたこのばしょを好むのが、イワナガコノコノです。
 木の根っこやかれた木のそばにころがった、小さな石にぎたいして身を守るせいしつがある——


 ——のですが、ふえすぎた天てきから逃げるうちに、すみかがどんどん森の深くまでいどうしてしまったようなのです。
 このままでは、コノハナコノコノたちは合流することができません。
 イワナガコノコノと番になれなかったコノハナコノコノは、はなの季節にさかせた梅や桜といっしょに命までちらすことになるでしょう。
 だれか、だれか、助けてくれるひとはいないでしょうか?


⚫︎導き出された分岐点

「読書の秋、なぁんて言うけど。ほんと、ようやっと涼しくなってきて捗っちゃうネ☆」
 自身より大きなライオンのぬいぐるみに腰掛けた紫頭の案内人は、積まれた本の山をぽんぽんと撫でてご機嫌だ。手にしているのは児童書だろうか。とてもカラフルな表紙は誰かにとっては覚えのあるものかも知れない。
「そうそう。この間助けたコノコノがまぁたピンチらしくて、手伝いに行ってくれる人を探してるんだよねぇ……コノコノって何ぞやーってキミでも一向構わないし、どう?」
 気軽な調子で誘う彼だが、聞いてみればとてもそんな悠長な話ではないようだ。


 コノハナとイワナガ。実は生まれた時には同じ蝸牛で、背負う殻と住処を選んで分かれていくのである。故に彼らを餌として狙う天敵は共通のもので、名前をコノコノカブリというそうだ。
 弱肉強食。食物連鎖。多少淘汰されていくのも自然の摂理で、絶滅するほどには至らない。そう、例年であれば。
 気象の影響か、コノコノカブリが増殖した今年。コノハナは森を進めば敵に捕食され、進まねば次の春が寿命となる。もはや前にも後ろにも未来は無い状態だった。

「まぁ例によって、絶滅したってオレもキミらも困らないよ。ただ、気になるなら紅葉狩りに行くついでだと思って、ちゃちゃっと済ませちゃえばいいんじゃないカナ☆」

NMコメント

LNも四本目ですね。氷雀です。
涼しくなったらなったで眠気に勝てなくなるのは何故でしょう……
今回はコノコノ達とさらに森の奥を目指しましょう。

⚫︎目標
秋の森を散策する。
コノハナコノコノがイワナガコノコノと合流する。

森の入り口から一直線の道の先にある泉(前回の舞台)からスタート。
ここにコノハナ達がうろうろしています。
そこからさらに進むと、どんどん森の雰囲気が暗く湿ったものに変わっていきます。
途中、コノコノカブリの縄張りを通り抜け、大きな岩がゴロゴロと転がっている地帯がイワナガ達の生息域です。

⚫︎世界
不思議な生き物達が暮らしている、自然豊かなところ。
少なくとも彼らの生息する地域には人が存在していないようです。

前回はこちら。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4024
読むと雰囲気は掴めるかと思います。
以後、この世界の物語は<豊来期>シリーズとします。

⚫︎コノハナコノコノ
前回イレギュラーズが救った蝸牛。
背中の殻の上に小さな盆栽のような木を背負い、今は紅葉が見頃。
春には桜や梅などの花を咲かせ、イワナガと番えなければそれが散るのと同時に死ぬ短命種。
好奇心旺盛な性格だが、動作はとてもゆっくり。
日向ぼっこと水浴びが大好きで、人間にはそこそこ慣れました。

⚫︎イワナガコノコノ
コノハナの番になる蝸牛。
背中に石の殻を背負い、暗い森の中で小石に擬態している。
殻の中にたくさん栄養を蓄えており、数週間まったく動かないこともある。
そして臆病で慎重な性格も相まっての長命種。
危険を察知するアンテナがとても敏感なので注意。
住処としても、食事としても、湿った落ち葉が大好きです。

⚫︎コノコノカブリ(幼虫)
硬くて黒い胴長の体と強靭な顎を待つ。肉食。
特にコノコノが大好物で、食べなければ成虫になれないとも言われる。
サイズはコノコノより少し大きい程度だが、噛まれるととても痛い。とっても痛い。服の上からでも余裕でめちゃくちゃ痛い。
具体的に言うと、無策で行けばダメージは無くとも噛まれて痛がる描写が入ります。

  • <豊来期>無二の対を求めて完了
  • NM名氷雀
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月23日 22時20分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
テルル・ウェイレット(p3p008374)
料理人
星影 向日葵(p3p008750)
遠い約束
バーデス・L・ロンディ(p3p008981)
忘却の神獣

リプレイ

⚫︎恋い焦がれる泉から

「さて、しっかりコノハナコノコノを守らないとですね」
 木々に囲まれた水辺。『料理人』テルル・ウェイレット(p3p008374)は以前とは少し姿の変わった蝸牛達に近づいていく。
 紅葉した小さな木を背負うコノハナコノコノは、表情こそ判らないものの右往左往している様子から困惑が見て取れた。事情を知ればそれも致し方無い。
「……そうですよね、結ばれるべき者と結ばれないのって辛いですよね。唯一無二の存在、そんな存在と結ばれるって素敵な事ですもんね」
 ちょっと羨ましいかもですが。そう溢した『天色に想い馳せ』隠岐奈 朝顔(p3p008750)は、初めての世界で出会った不思議な生き物を見るその眼差しに言葉以上の感情が滲むよう。
「コノハナコノコノイワナガコノコノノコノカブリ……ああいや、少し言いにくそうな名前だったから並べてみたら早口言葉にでもなるんじゃないかと思っただけだ」
 思わず口に出したくなったらしい『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)。よくよく聞くと少し噛んでいる。本当に。そんな戯けた様子を見せる彼だが、前回からの縁があるテルルと運搬方法など道中の対策を練り、拾った枝から虫籠まで作る姿は至って真面目だ。
「コノコノカブリでしたか。それなりに痛いというのも困りものですね……」
「なに、噛まれる事さえなければ紅葉を眺める簡単な仕事だ。あまり気負わなくてもいいだろう」
「現在の豊穣じゃあ、紅葉見る暇もないですからね……自然を楽しむのも目的の1つですし、ちょっと先輩方から、歩きながらこの世界の話を聞いてみたい気もします!」
 その指示に合わせられるよう横で聞いていた朝顔が少女らしい好奇心を瞳に宿しながら請えば、私達でよろしければ、とテルルが微笑んだ。
「タダいマ戻りまシタ」
 そこへ偵察のために先行していた『忘却の神獣』バーデス・L・ロンディ(p3p008981)が姿を現した。赤子を連れた灰色の獣は、森の中に小川が流れていたと報告する。それを目印にすれば迷うことなく奥まで辿り着け、川沿いに密集した木々も身を隠しながら進むのには良さそうだ。
「残念ナがら、コノコノカブリの縄張リが思った以上ニ広く、それヲ避けるルートは見ツカリませんデした」
 下手に踏み入って警戒を強められるのも好ましくはないと手前で引き返してきたようだ。そこから先は実際に向かってみるしかない。
「さてと、こいつらはこれでいいとして。俺たちが噛みつかれない方法も、まあ幾つか思いついたものをやっていこう」
 蝸牛が数匹ずつ収納された虫籠をそれぞれが持ったところで、世界はバーデスの助言と数種類のハーブから虫の嫌う香りを調合する。虫籠もそうだが、自然が豊富なので材料に困らないのは幸いだった。
「っと、コノコノが影響を受けたらまずいか」
 次に取り出したのは布に描かれた簡易式召喚陣。それを広げて風の精霊を召喚し、蝸牛の周りに香りが流れないよう風で調整してもらう。続いて呼び出した火の精霊には辺りの巡回を命じる。
「大体どんな生物も火を恐れるからな。火事にだけは気をつけるように」
 そう言い含めたら準備は万端。一行はひとまずバーデスの発見した小川を目指して憩いの泉を立つのだった。



⚫︎請い、木枯れる森の赤と黒

 サクサクと落ち葉を踏みしめる小気味良い音と共に小川の辺を散策する。
「コノコノ達の背にある葉と同様に、この森も以前と違い綺麗に紅葉しておりますね」
 テルルはひらひらと舞い落ちてくる葉のひとつを手に取って眺める。夏に訪れた時の青々と生命力に溢れた森の有り様を、隣を歩く少女に聞かせながら。
 ひと月ばかり前に過ぎ去った景色を想い、朝顔は胸いっぱいに吸い込んだ乾きぎみの空気に混じる、ほんのり甘くてほろ苦いような香りに目を細めた。
「少々肌寒く思う日も増えてはおりましたが、この森もコノコノも、こういう小さな所からも、刻々と世界は移り行くのですね」
 見上げた先に成る木の実を朝顔に指し示し、季節の移り変わりを実感するテルル。その後ろを歩く世界と、先頭を行くバーデスは景観を楽しむことより周囲の警戒に重きを置いていた。
「これだけ対策したんだから寄って来ないだろ、と思いたいところだが」
「……どうヤラ、そう簡単ニハ通してくれナイようでス」
 蝸牛の籠を抱えて上機嫌な赤子を守るように、バーデスは態勢を整える。世界が火の精霊を近くへ呼び戻し、敵襲だと察したテルルは杖を、朝顔は太刀を握る。小川を背に、迎え撃つ陣形が出来ていた。

 がさりと下草が揺れ、身構えた一同の前に飛び出してきたのは黒い鎧を纏ったような胴長の虫。あれがコノコノカブリかと前情報と照らし合わせたテルルは、突き付けた短杖に力を込める。
「お仕事のお時間です。申し訳ありませんが、ここは退いていただきますね」
 放たれた聖なる光は激しく明滅しながら捕食者達に直撃し、何匹かは早々に逃げ出した。
「命マデは取りまセン。散ってクダさい」
「そうだな、燃えたくなければ諦めろ」
 バーデスの咆哮に似た衝撃波による威嚇、世界の火の精霊の牽制でまた数匹が脱落する。それでも向かってくる勢いは止まらない。籠の中の獲物に齧り付くため、イレギュラーズに迫ってくる。それを見た朝顔はテルルに虫籠を預けると、すぅっと深呼吸をしたかと思えば天色の瞳で鋭く見据えて声を張り上げた。
「私を倒さぬ限り、コノハナコノコノを手に入れられると思うな!」
 言葉の意味など関係ない。波濤のように響く声と大太刀を両手で構えて立ち塞がる少女に、黒い捕食者達の意識は余さず引き寄せられる。食事の邪魔だと怒りに染まった強靭な顎で一斉に噛まれ、全身に走る激痛に気合で対抗する朝顔。テルルは苦痛を少しでも紛らわせようと攻撃の合間に回復術を施す。彼女らのおかげでコノコノカブリの動きは見えやすくなり、バーデスの威嚇術の狙いも定まった。一匹、また一匹と朝顔の体から落ちて逃げ惑う。
 確かに数は多いが、本来のイレギュラーズの能力ならばこんな小さな虫に苦戦することはない。理由があればただひとつ。特に示し合わせた訳でもなく、彼らに共通する不殺の意思だ。
「さぁ、私はまだ倒れてはいませんよ!」
 威勢良く煽ってみせる朝顔も同じこと。彼らだって、生きるために食べようとしてるんですから。口にする言葉とは真逆に、振るう刃に殺意は無く、むしろ人魚姫の慈愛のように自身を傷つける。テルルの癒しがあれども、内と外に蓄積する痛みは相当のものだろう。守るというその決意が勝敗の分かれ目だった。
 徐々に数が減っていくのを見て、イレギュラーズは移動を再開する。そしていつしか縄張りを抜け、残ったコノコノカブリもこれ以上は武が悪いと諦めたように撤退していくのだった。



⚫︎花咲く繁栄、永く不変の命

 景観はすっかり薄暗く湿ったものに変わり、苔生した岩が目立ち始めている。そこはもうイワナガコノコノの生息地のようだった。
「……気づいたらずっと警戒してばかりで全然紅葉見れてないな。これで無事絶滅せずに済むってんならそれで良くはあるんだが、なんだかなぁ」
 日の光を遮る木々も赤に黄にと色付いてはいるが、紅葉狩りというには陰鬱な雰囲気である。世界は肩の力を抜くついでにと溜め息を吐いた。
 テルルは木の根元に積もった葉を除けてみたり、水溜りを探してみたり、バーデスは前足で石をひっくり返したり、事前の情報などをもとにそれぞれイワナガの捜索に移っていた。虱潰しは骨が折れそうだ。
 一騎当千の働きをした朝顔はといえば、少し距離を置いて木陰に座り込んでいる。先の防衛戦の疲れもあるが、身長の高い彼女自身がイワナガにとっての警戒対象になるのでは、という懸念からだった。
「……時間をかけていいなら、自力で見つけるべきじゃないかなぁとは思ったりしますけど」
 コノハナ達を虫籠から放つと語りかける。
「だって自分の番ぐらい、他人じゃなくて自分で見つけなきゃでしょう?」
 言葉がそのまま伝わったかどうかは定かでは無い。しかし頷くように触覚を上下させた彼らは、背負った赤色を揺らしながらゆっくりと動き始める。最初にイワナガを見つけたのはその中の一匹だった。それを離れたところから見守っていた朝顔は、おめでとう、と眩しそうに呟いた。
 テルル達も倣って虫籠を開き、コノハナ達が探すのを補助する形を取れば、そう数も多くない隠れんぼは日暮れには終了の運びとなった。そろそろお別れの時間である。

「対と成ル者が無事ニ見つかったヨウで、何ヨリです」
 まだ遊びたいと愚図る赤子を尻尾であやしながら仲睦まじく寄り添う蝸牛達を見たバーデスは、読めない獣の表情に何かを過らせる。先程の朝顔に近しいものだったかも知れないそれは、誰にも悟られることなく即座に消えた。
「次はもっとのんびりさせてもらいたいところだな」
「今回はコノコノカブリを追い払うのに慌ただしかったですからね」
 前回のバカンスを思い出しながら、世界とテルルは顔を見合わせて小さく笑った。
「掴んだなら、決して離してはだめですよ」
 しゃがみ込んで目線を合わせる朝顔に、驚いたようにイワナガは石の殻へ引っ込んでしまう。しかしコノハナが体を擦り寄せると恐る恐る頭を出して小さな目玉で見上げ返し、お辞儀をするように触覚を揺らした。恩人であるということは理解しているようだった。
 そんなイワナガにコノハナは触覚をちょん、と触れさせた。それは誓いのキスのようで——
「末永く、お幸せに」
 ——さて、言祝ぐ声は誰のものだっただろうか。

成否

成功

状態異常

なし

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