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シナリオ詳細

<無貌の海原>呑み込まれし世界

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 今宵、境界図書館の片隅は、芳しい潮の香に包まれていた。
 漂う香を辿ればすぐに気付くであろう、その先には静かな微笑を浮かべる、一人の人魚の女王の姿があった。その笑みはけれどもどこか困った様子で、どことなく寂しげにも見えただろうが。

「どうか、お助け下され」
 女王──境界案内人の尾の傍には、一冊の書物が転がっていた。
 女王の鱗と同じ青色の装丁に、抱える宝槍と同じ金色の題字を刻まれた本。中には見渡すかぎり美しい海の景色が広がっている──はずが、今は全てが永劫の闇に呑み込まれてしまったのである。

 理由は、女王にも判らなかった。本の頁も世界と同様、黒く塗り潰されていたからだ――これでは、読み解くことすら叶わない……しかし。
「この本の世界――『無貌の海原』を訪れる皆には、『星の砂』の力が宿っておる」
 そう、女王は語るのだ……暗闇に輝きを刻み込み、黒い頁に光の文字をもたらす力を。

 美しい海の世界は死に絶えて、澱んだ水の世界と化した。
 しかし、訪れた者が想像したならば、そこには何であっても現れるだろう。望めば海原に漕ぎ出すための船が“あった”ことになり、願えば水底には輝やく宝が横たわる。人が、魚の姿を取ることさえもできる……何故ならそこは『無貌の海原』――あるべき容を忘れた海なのだから。
 もちろん、何もかもが無制限に得られるわけじゃない……より広いもの、複雑なもの、大きな影響を及ぼすものを創造しようと思ったら、それだけ強い想像力が必要だ。けれども皆で少しずつ世界を積み重ねてゆくならば、それを足がかりに、さらなる世界を紡ぎ上げることだってできることだろう……そして。

「もしも、その想像力が世界を闇に包んだ者へと届いたならば――『無貌の海原』は、かつての姿を取り戻せるやも知れぬ」
 世界を覆う闇は祓われて、本来の海洋世界の光景が広がることだろう……その時、特異運命座標たちが生み出した部分もその世界の一部として残り、共に繁栄を謳歌するに違いない。

NMコメント

 本来の名も忘れられてしまった世界、『無貌の海原』へようこそ。椎野です。
 本ライブノベルシリーズの最終的な目標は「世界を閉ざす闇を払うこと」ですが、今すぐにそこまで辿り着く必要はありません。
 今回はシリーズの序章に当たるため、まだ、この世界に何があるのかさえ判っていません……それらを明らかにし、あるいは皆様自身の手で作り上げてゆくことが、現段階で目的とすべきこととなります。そうやってこの世界の“あるべき姿”を積み重ねてゆけば、必ずや皆様は最終目標へと到達できるでしょう。

 今回の物語は、星明りすらない大海原にぽつんと浮かぶ、小さな島から始まります。皆様が冒険を行なえば、皆様が『星の砂』で照らした範囲だけが“新しい姿”――皆様がプレイングで求めた世界へと変わります……それはまるで、見えた範囲を地図に書き込んでゆくのにも似ているかもしれません。

 プレイングに際しては、まず、「この世界をどのような世界、どのような物語にしたいのか?」をお考え下さるといいでしょう……冒険のための準備をしてゆけば、行く先には冒険と呼ぶに相応しい試練が待ち構えています。世界を覆う闇の謎を求めれば、謎を解くための手がかりが目の前に現れるかもしれません。
 どんな世界を作るのか、誰かと歩調を合わせる必要はありません。『無貌の海原』はあまりにも広く、異なる場所では全く違う世界になっていてもおかしくないのです……が、もしも既にある物事をベースに新しい物事を生み出せたなら、全く新たに同じ物事を生み出すよりも、少しくらいは効果的になることでしょう。

 現在の『無貌の海原』は、真っ暗な世界の中に小島があって、海と空があることしか判っていません。皆様の想像力で、この世界に彩りをお与え下さい!

  • <無貌の海原>呑み込まれし世界完了
  • NM名椎野 宗一郎
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月11日 22時20分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切

リプレイ

●はじまりの島
 一歩踏み出す毎に“描かれる”砂浜と暗闇の狭間を、『蛇霊暴乱』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)はじっと凝視した。闇に包まれ、今も未来(さき)も見通せぬのは、彼の故郷とまるで同じ。けれども死の中をただ一柱のみ生き残った神が照らす世界とは異なって、この世界にはいまだ新たに開く花がある。新たな命を宿すことができる。だとすれば――
「光あれ」
 神話のようにそれを求めたならば、アーマデルの足元から続く一筆書きに過ぎなかった砂浜は、不意に少しだけ大きく広がった。オーロラのような淡い輝きを作る光が、たおやかに揺れる波の模様を照らし出す。その先には何があるのだろうか……彼は期待を胸に歩き出す。

 そうだ、期待だ。同じく闇に閉ざされた海でありながら、『絶望の青』とはまるで違った冒険の舞台だ。
 だから、船が必要だ。それから、帰るべき場所を示すための灯台も。目を瞑り、見慣れた縄張りの様子を脳裏に浮かべながら進んだ『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)が再び瞼を持ち上げたならば、そこには海洋王国の片田舎にならどこにでもありそうな港町の波止場の風景が広がっていた。

 朽ちかけた『キングマンズポート』の案内標識の脇を通って、彼は自身の船へと乗り込んでゆく。
 そうなのだ……恐ろしく奇妙なことに、この船は紛うことなくキングマン一家のものなのだ。ここは本の中の異世界のはずなのに。
 これが星の砂とか闇を払うのがどうとかってことなのか? 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)にもようやく、『無貌の海原』における“法則”とでも呼ぶべきものが実感できてきたようだった。
「つまり、世界を創っていくようなものか。まあ厳密にいえば“創る”というよりは、俺たちが冒険することで“望んだモノが発見されてゆく”といった感じだろうが」
 そのつもりで辺りをしばらく散策すれば、波止場の周辺しか見えていなかったキングマンズポートの全容が、次第に光の中に現れてゆく。寂れた古い石造りの家々。その背に鬱蒼と迫るのは、豊かな南国の広葉樹の森。さらに磯と森の間を縫うように続く細い街道を進んでゆけば、そこには新たな漁村が“発見”される。海の幸と森の幸を採りながら素朴に暮らす、手足に鱗の生えた人々は、それぞれの作業の手を止めて見知らぬ訪問者を歓迎してみせる。
「こんな辺鄙な村までようこそ! 旅人さんはみんなビーチのほうか、せいぜいキングマンズポートのほうに行っちまうのに! ……その旅人さんも昨今じゃ、全く見かけなくなっちまったけどなぁ」

 漠然とした期待しかしていなくても裏切られることがない。それは常に諦念に囚われた青年にとって、初めての新鮮な感覚だった。
 だったら、折角だしもう少し我侭を願ってみるとしようか――世界がこの海の果てに関する言い伝えを訊いてみたならば、漁民たちは獲れたばかりの魚を振る舞いながら、こんな話を語ってくれた:

 ――北の岬を延長した先に、大潮の干潮の時だけ屋根が出てくる建物があるんだがよ。そいつは大昔に海の遥か彼方にあった、ナントカっていう古代帝国の神殿らしい。
 いやいや、俺たちゃ入ったことなんてないさ! せいぜい、ガキの頃におっかなびっくり近付いて、大人に大目玉を食らうくらいさ。忘れられた神様が祀られてるだなんて、どんな祟りがあるかも判りゃあしない……。

 ぶるぶると身体を震わせた漁民たちに丁寧に礼を述べると、世界はさらに遠くへと足を進めることにした。すると森と岩と海原ばかりだった景色は唐突に晴れ、一面の真っ白な砂浜が現れたのだった。

●海底神殿遺跡
 小奇麗なバンガローの幾つも並ぶビーチでは、『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)が文字通り羽を伸ばして砂浜を満喫している最中だった。
 闇に覆われた世界もここでは関係がなく、燦々と明るい太陽が照りつけている。白い砂も遠浅の海もそれを反射して、きらきらと美しく輝いた場所。浜辺の白と海の水の鮮やかな青色の対比は、ルーキスの色白の肌と青い翼と全く同じ色だ――ただし。

 太陽は確かに眩しいが、それ以外の空は闇に覆われたままだった。それに陸地も砂浜を囲う森から先は暗いままだし、海に至っては少し行ったところで、まるで断ち切られたかのように闇の中へと続く。
 確かに思い通りに色付いてくれたようだけど、この闇は随分としぶといみたいだな。そんなことを思いつつ、ルーキスはビーチチェアから立ち上がる。 一から世界を創造するなんてやったことがないから、砂浜以外のものをどうしようか悩んでいたせいか? だったら……次のものを想像してみよう。さて、何が良いかなぁ? そうやって悩む楽しい時間をしばし過ごした後に……彼女は、思いのままに海に飛び込んでゆく。

 澄んだ水の中は陽の光を浴びて暖かく、思い思いの形の珊瑚の間を色とりどりの魚が泳いでいった。その中をルーキスは飛ぶように泳ぐ。すると彼女の姿を見つけ、イルカたちの群れが寄ってくる。
 彼女は彼らに先導されるよう、浜を作る入り江の縁を延長した方向へと進む。するとそこには白亜の石材で作られた、大きな海底遺跡の姿が浮かび上がってきた。

 穏やかな海。けれども謎めいた海。
 遺跡の柱には古代の神々らしい、多種多様な半人半魚のレリーフが刻まれていた。
 果たして、その正体は――けれどもいまだルーキスの想像の及ばぬそれは、闇を湛えて横たわっている。
 その先を考えるのも、また一興。ルーキスはそっと瞼を閉じて、海の向こうの未知へと思いを馳せた。

●茫洋の大海
 そこにはアーマデルが胸を膨らませていた、ヒトの生命の営みの証があった。
 深さを増してなお朧げに水底の映る海の中、不意に姿を現したのは一隻の沈没船。この島では見かけぬ針葉樹材で全身を造られたそれは、あるいはその甲板で眠る数々の品は、恐れを知らぬ船乗りが、遥かな海原の先へと旅立った末にこの場所まで辿り着いた証であったろう。

 それは太陽の色をした、遊牧の民の胸で揺れる首飾り。
 あるいはそれはわずかに震え、静かに歌う結晶の歌姫。
 あるいはそれは黙して語る、武勇を刻んだ古い武器。
 あるいはそれは見も知らぬ、果実を醸した酒の樽。

 いずれも省みられることもなく、このまま朽ち果てるのやもしれぬ。けれども海中を往くものの手で目を覚まし、新たな旅を始めるのかもしれぬ。
 だが、アーマデルがそれを見つけた以上、それらはこの世界を取り戻すための糧にもなるだろう。何故なら、それらは彼に新たな場所を――船の帰るべき港を思い起こさせるからだ。
 船着場、それから、倉庫に酒場。あとは……ええと、何があるだろう? イカを並べて干すための紐???
 段々と逸れてゆく想像を慌ててアーマデルが中断させた時、彼は海原の向こうにちかちかと光る、より大きな島の、より大きな港町の灯台の明かりを見て取った。

 そして別の方角に進んだジョージのほうも、確かな生命の営みの証拠を発見していた。
 何もない海の上ばかりを船で進んで数日間。とうの昔に見えなくなったキングマンズポートの灯台の明かりの代わりに、たった一つの極星の輝きが彼を導いてくれる。
 時折身体を乗り出して、眼下に横たわる水へと触れる。闇に覆われてからは澱むばかりだったはずの海水は、どうやらジョージの船がその上を通ると、彼が願ったように活力に満ち溢れた水であることが“発見”されてくれるようだ。

 意を決してジョージはペンギンの姿に変化して、海の中へと飛び込んでいった。そして、闇に閉ざされた海洋世界よ、豊かであれかしと強く祈る。
 すると、彼の頬を不意に撫でるかのように、慌ただしい乱流が通り過ぎていった。イワシだ。無数のイワシの大群が、我が物顔で辺りを駆け巡っている。
 その一匹に食らいつき、ジョージはそれが満足のゆく味であることを知った。一方のイワシは驚いて、慌てて深く深くへと逃げてゆく。彼らの動きを追ってゆき、深く、深くへと潜り……ジョージは、遥か水底の巨大な巻貝の貝殻を見て取った。

 その殻は幾つもの穴が開き、忙しなく人魚たちが出入りしていた。さしずめ、あれは人魚の街か?
 未知が、冒険心をくすぐってゆく。果たして、彼女らは何を知っているだろう?

 無貌の海原への来訪者たちの冒険は、まだ、ほんの始まったばかりだ。

●探検報告
 特異運命座標の探索の基点となった島は、豊かな南国のサンゴ礁の島である。南部には小さな港町キングマンズポートが、北部にはバンガローの並ぶビーチリゾートが存在する他、島内には魚人の特徴を持った人々の漁村が幾つか点在するようだ。
 北東の岬を伸ばした海中には古代帝国の神殿遺跡が眠っており、半人半魚の神々の姿が彫刻されている。内部の様子は現時点では不明。
 また、島の南方の海深くには、巨大な巻貝を加工して作られた人魚の街がある。こちらもやはり、現時点では詳細は不明。
 海を西方に進んだ先には、どうやらより大きな港町を擁した島があるらしい。交易船も多数訪れる島のようだが、今はまだ遠目から眺めただけである。

 次なる探索が発見された未知に対して行なわれるのか、それとも更なる新天地に対して行なわれるのかは判らない。けれども次の探検も、必ずやこの世界の新たな姿を映し出すことだろう。

成否

成功

状態異常

なし

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