PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<FarbeReise>マタドール。或いは、闘技場遺跡攻略作戦…。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●地下闘技場
 “ファルベライズ”。
 それはラサの砂漠地帯に存在する遺跡群を指す言葉だ。
 地下闘技場遺跡“アレーナ”もその1つだ。
 調査に向かった冒険家には、遺跡について以下のように語る。
「まず、闘技場内に4名以上の人が立ち入らないことには話にならない。そういう結界が張られているのさ」
 
 アレーナは円形の遺跡である。天井部に嵌められたガラス板により、太陽光を取り入れているようで地下だというのに明るい点が特徴だ。
 さて、肝心のアレーナの造りだが、それは至って単純明快。ダンジョンと呼ぶには、些か簡素に過ぎるだろうか。
 地上に露出した入り口を進むと、辿り着くのは円形の闘技場である。
 結界に囲まれた半径15メートルほどの第一闘技場。
 そして、第一闘技場を囲むように造られた第二闘技場の2段構成となっている。
 高さとしては、第一闘技場の方が、第二闘技場よりも10メートルほど高い位置にある形だ。
 第一闘技場には、下半身が牛、上半身が鎧を纏った人型のゴーレムが待機している。
 こちらの闘技場に立ち入るためには、4名以上が第二闘技場内に踏み入れる必要があるらしい。その中から選出された代表1名だけが、第一闘技場へ踏み込めるのだ。
 また、第二闘技場には都合6体の牛型ゴーレムが放たれていた。
 さらに、闘技場を囲むように造られた観客席には、所々に人型のゴーレムが配置されていた。
 おそらく観客代わりのように思われる。
 となれば、入り口から入る盗掘者たちはさながら哀れな拳闘奴隷か、それとも挑戦者と言ったところか。
 第一闘技場の床板には、無数の剣や槍、戦斧、鉄槌といった武具が突き刺さっている。
 鎧を纏ったゴーレムは、その中央に鎮座する形で配置されていた。
 第一闘技場の特徴として、周囲を囲む結界のせいで同時に1名しか立ち入れないというものがある。
 つまり、否応なく1対1での戦闘を強いられるということだ。
 また、第二闘技場に放たれた牛型ゴーレムの頭部には、スイッチのような物が設置されていた。
 それを押すことで、第一闘技場に設置された武器の1つがランダムにチャレンジャーかゴーレムを襲う仕掛けとなっている。
 また、1度閉じた結界を開くにも、そのスイッチが関係しているらしい。
 
 それらを語り終えた冒険家は、水を飲み干しこう告げた。
「ちょっとした罠や仕掛けならどうにでもできるが、ありゃ無理だな。俺じゃ力不足で、とてもじゃないが第一闘技場に長く留まる気にゃなれなかった」
 しかし、と指を立てて冒険家の男は話を続けた。
「牛型のゴーレムの動きは本物のそれに酷似していた。立ち入れば襲ってくる辺り、えらく凶暴だけどな……ともすると、乗馬が得意な奴ならある程度乗りこなせるんじゃないか?」

●午後の宴
「血の赤か、それとも栄光のサンライトイエロー? 挑戦者たちの未来に待ち受けるのはどちらの色なのかしら?」
 そう呟いて『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)は短い吐息を零してみせる。
「まぁ、見世物の一種だったのでしょうね。それか、処刑場かしら?」
 どちらにせよ趣味の悪い遺跡であるとプル-はそう判断したようだ。
 どうやら闘技場遺跡“アレーナ”は彼女の好みにほど遠いらしい。
「まず第一闘技場に入れるのは1人だけ。残るメンバーは第二闘技場で戦闘を行ってもらうことになるわね。目的となる色宝は鎧のゴーレムが所持しているわ」
 鎧のゴーレム……プル-によって“マタドール”と名付けられたそれは、多様な武器を持ち替えながら戦うという。
 その攻撃によって与えられる悪影響は【ブレイク】と【失血】である。
 機動力、攻撃力、防御力において高い水準を誇るが、言ってしまえばそれだけの相手。搦め手を用いない点は制作者の好みによるものか。
「毒で苦しみ死ぬ光景より、派手に斬られて死ぬ光景が見たかった……そんな所かしら?」
 と、ゴーレムを造った何者かについてプル-はそう分析していた。
 その性質ゆえか、遺跡としてのギミックも単調なものばかりだ。
 4名以上が第二闘技場に立ち入った時点で、第一闘技場を囲む結界が一部開放される。
 代表者が第一闘技場へ脚を踏み入れることで、結界は再度閉ざされ、その後第二闘技場には牛型ゴーレムが現れる。
 同時に現れる牛型ゴーレムは6体までだが、スペアが存在していても不思議ではないとプル-は告げた。
「結界を破壊することはできないけれど、牛型ゴーレムの頭部に付いたスイッチを押せば一時的に展開することは可能みたい。体力が危なくなれば、外にいる誰かと交代できるということね」
 もっともスイッチを押すと、第一闘技場内の武器がランダムで1つ射出される仕組みである。
 射出された武器はマタドールか挑戦者のどちらか目がけて飛んでいくと、遺跡を見つけた冒険者は分析していた。
「牛型ゴーレムの攻撃が直撃すると【窒息】状態になってしまうわ。それと、この牛型ゴーレムだけれど技能があれば馬のように乗りこなすことも可能みたい」
 騎乗するためには、牛型ゴーレムに接近し、その攻撃を回避する必要があるだろう。
 突進の勢いを利用して壁にでも当ててしまえば、容易にその背に乗れるかも知れない。
「目的とするのはマタドールの持つ琥珀色のペンダント。これがこの遺跡の“色宝”よ。攻略のポイントは、何になるかしら?」
 と、そう呟いてプル-はその細い顎に指を添えて思案する。
「マタドールへ挑戦する者の選抜? 挑戦者と外野がスイッチするタイミング? それとも、別の何かかしら? まぁ、その辺りは……」
 貴方たちの得意分野よね?
 なんて、言って。
 プルーは薄く微笑んだ。

GMコメント

●ミッション
マタドールの討伐。及び、色宝“琥珀色のペンダント”の回収。


●ターゲット
・マタドール(ゴーレム)×1
第一闘技場に控えた、下半身は牛、上半身は騎士型のゴーレム。
剣や槍、斧、鉄槌など様々な武器を使用する技能を持つ。
機動力、攻撃力、防御力において高い水準を誇るが、制作者の好みゆえか基本的には攻撃を重視した行動を取る模様。

武技一閃:物至単に大ダメージ、失血、ブレイク
 突進に乗せた一撃。

魔技一閃:魔至単に大ダメージ、失血、ブレイク
 魔力を纏った一撃。


・牛型ゴーレム(ゴーレム)×6(?)
第二闘技場に現れる牛型ゴーレム。
実際の牛と近しい動きをする。乗馬やそれに類する技能によりある程度のコントロールは可能。
非情に【怒り】が付与されやすい模様。
同時に出現するのは6体まで。スペアがいるかも知れない。
頭部に設置されたスイッチを押すことで、第一闘技場の仕掛けが起動する。

牛角:物近単に中ダメージ、窒息
 突進からの角による突き上げ。

●フィールド
地下闘技場型遺跡“アレーナ”
遺跡に入って進んだ場所には、広大な第二闘技場。
その中央、10メートルほど高く盛られた位置に第一闘技場が存在している。
第一闘技場は半径15メートルほど。
第二闘技場はその倍ほどの広さがある。
第二闘技場に5名以上踏み込んだ時点で、第一闘技場を囲む結界が開かれる。
第一闘技場に同時に入れるのは1名まで。
牛型ゴーレムに付属したスイッチを押すことで、第一闘技場内の武器の射出と一時的な結界の展開が行われる。
※結界は破壊不可能&内部と外部を遮断する。

  • <FarbeReise>マタドール。或いは、闘技場遺跡攻略作戦…。完了
  • GM名病み月
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年10月12日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
ヒィロ=エヒト(p3p002503)
瑠璃の刃
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
カイロ・コールド(p3p008306)
闇と土蛇

リプレイ

●闘技場遺跡“アレーナ”
 ラサ砂漠地帯、遺跡群“ファルベライズ”
 その中の1つ、闘技場遺跡“アレーナ”へ踏み込んだ8人の前に並ぶのは、都合6体の牛型ゴーレムである。
 円形の闘技場を囲む観客席には、無数の人型ゴーレムが配置されていた。
 錆び付いた声で「オォ、オォ」と喚くそれらは観客の代わりか。或いは、盛り上げ役なのだ。
 これから行われる、ゴーレムと人との闘いを煽るためだけに造られた存在。製造から長い年月が経っているだろうが、それでも未だに与えられた役割をこなしている。
「さぁやるよー、刮目し喝采せよ!!」
「これは……闘技場というより闘牛場ね」
 両手を広げ入場するは『咲く笑顔』ヒィロ=エヒト(p3p002503)。そんな彼女の後ろから『紫緋の一撃』美咲・マクスウェル(p3p005192)も闘技場へと踏み入った。
「観客までゴーレムとは味気ないが、いざ開演だ!」
 尾花栗毛の馬の半身。『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)の蹄が闘技場の床を蹴って駆けだした。その手に構えたライフルでまずは1体、牛型ゴーレムの額を撃った。
 銃声に興奮したというわけでもあるまいが、牛型ゴーレムたちが一斉に行動を開始した。円形の闘技場を好き勝手に駆けまわり、イレギュラーズへと襲い掛かる。
「俺達は剣闘士役というわけか。派手に魅せる闘いは得意じゃねえが、役目はこなしてみせるさ」
 うち1体へ狙いを定め『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)が駆けていく。現在、義弘たちの立っているのは第二闘技場。中央に第一闘技場が設置されている関係上、その形状はドーナツ型だ。
 その性質上、通常の円形闘技場と違い死角が存在し、そして移動可能な範囲も限られる。
 牛型ゴーレムの突進を、ふわりと回避し『遠足ガイドさん』レスト・リゾート(p3p003959)はくすりと微笑む。
「アレーナの華麗なる淑女の入場~♪ なんてね~」
 展開した日傘によって、レストは牛型ゴーレムの視界を塞ぐ。
 視界を塞がれた牛型ゴーレムは、そのまま闘技場の壁へと激突した。
「闘技場遺跡アリーナ……まさかこんな遺跡もあるなんてね。まぁでもそうね、どんな遺跡だって絶対攻略してみせるわ!」
 大鎌による一閃が、牛型ゴーレムの脚を切り落とす。
 それを成したのは『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)だ。
 姿勢を崩した牛型ゴーレムへ、エルスとレストはさらに追撃を加えていく。
 その様子を横目に見ながら『果てのなき欲望』カイロ・コールド(p3p008306)は吐息を1つ。
「戦いを見るのは楽しいですが、やるのは好きではありませんねぇ」
 掲げた聖杖から展開された燐光は第一闘技場へ向け駆ける『清楚(真 )』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)へと降り注いだ。

 長い階段を駆け上がり、辿り着いた先には半径15メートルほどの闘技場へとミルヴィは足を踏み入れる。
 直後、彼女の背後で結界が閉じた。闘技場内に立つのはミルヴィと、そして牛の下半身と騎士の上半身を持つゴーレム“マタドール”のみ。
「闘技場の華と言えばアタシ! 今回は敵も味方も魅せてあげるんだから!」
 左右の手に曲刀を構え、ミルヴィは不適な笑みを浮かべる。
 両手を頭上で交差させ凛と立つ。その姿は女性らしさと、闘志漲る戦士、2つの魅力を備えたものだ。
 なるほどまさしく、彼女はまさに華である。
 で、あるのならば。
 ならばこそ。
 華であるなら、散る瞬間こそ美しい。
 矛と斧とを両手に掲げ、マタドールが疾駆した。

●闘技場のマタドール
 跳躍する金の影。
 ヒィロの足元を1頭の牛型ゴーレムが通過した。
「これはモー、闘技場というよりもはや闘牛場だねぇ、美咲さん」
 口調は軽く。
 けれど、その頬には冷や汗が浮いている。
「弱らせて留めるのが理想だけど……まあ、もし追加が出たら、出ただけ倒せばいいのよ」
 壁に衝突し動きを止めた牛型ゴーレムを美咲が“視る”。
 ゆらり、と。
 美咲の瞳が妖しく揺れた。赤へ青へ緑へと、不規則にその瞳は色を変えていく。
 虹の魔眼を通し体力や気力を奪い取られた動揺する牛型ゴーレムの背に、ヒィロがトンと着地した。
「ほら、あっちだよ!」
 牛型ゴーレムの尻をヒィロが蹴飛ばす。
 地面を蹄で掻いた牛型ゴーレムは再度突進を開始。その進行方向には、赤い布を広げた美咲の姿があった。
「幻影で作ったものだけど……引付け効くかな?」
 牛型ゴーレムが頭を低くし、赤い布へと頭突きをかます。素早く身を躱した美咲だが、その脇腹を牛の角が引き裂いた。
 赤い布が掻き消えた、その直後……。
 響く轟音。
 2体の牛型ゴーレムが、正面から衝突したのだ。
「どーだ!  いつも一緒で以心伝心のボク達だからこその華麗な連携! って、美咲さん、怪我してるじゃん!?」
「平気だよ、これぐらい」
 ハイタッチを交わしつつ、ヒィロと美咲はよろける2体の牛型ゴーレムへと視線を向けた。

 赤紅に染まる瞳はひどく冷たく、そして鋭いものだった。
 幻想の刃が渦を巻く中、踊るようにミルヴィはその刀を振るう。
 迎え撃つは斧と矛による斬撃と刺突。
 褐色の肌が裂け、飛び散る鮮血はまるで花弁。
 一閃。
 ミルヴィの刀がマタドールの手首を裂いた。
 地面に戦斧が落ちるより疾く、2刀目の斬撃がマタドールの胸部を刻む。
 引き戻された矛の刃が、ミルヴィーの脇腹を裂いた。
 地に伏せるミルヴィ。
 マタドールは床に刺さった剣を引き抜く。
 振り下ろされる剣撃を、転がるように回避しながらミルヴィはマタドールの脚を裂く。
 ミルヴィの背を、マタドールの剣が深く抉った。
 唇の端から零れる鮮血。
 けれど、その頬には笑みが浮く。
「いくよっ」
 立ち上がる動作に合わせ、下段から上段へ向け振り抜かれた2本の曲刀が、マタドールの腰から胸にかけてを裂いた。

 牛型ゴーレムの背に乗ったまま、義弘は視線を第一闘技場へと向けた。
「そろそろやべぇか? ……2番手、用意はできるか⁉」
 義弘の合図を受け、ラダは無言で頷きを返す。
 馬の蹄で地面を蹴って、彼女は第一闘技場へと進路を変えた。
 その手に構えたライフルの、引き金にかけた細い指に力がこもる。それを確認し、義弘は牛型ゴーレムの頭部に付いたスイッチを叩いた。
 第一闘技場を囲む結界が開く。
 ラダの放った銃弾は、しかし局所的に展開された小さな結界によって弾かれた。
 血の雫を散らしつつ、ミルヴィは結界の外へ。顔の前で刀を交差させ、飛来する手斧を弾く。
 入れ替わるように、ラダは第一闘技場へと跳び込んだ。
 選手の交代を確認し、義弘は牛の角を両手でつかむ。
「さて……見た目はロデオか、牛泥棒か。ともかく、利用しない手はない」
 騎乗した牛型ゴーレムを操作し、近くを駆ける別の牛型ゴーレムへと突進させる。
「―――荒ぶる牛を従えて、縦横無尽に駆け回れ」
 その背を押すは、涼やかなカイロの歌声だ。
 暴れ狂う牛型ゴーレムを腕力で御し、激突の衝撃には歯を食いしばって堪え切る。
 1体の牛型ゴーレムの頭部が砕け、地面に倒れた。
 それを見下ろし、義弘は次の獲物を探すべく視線を左右へ巡らせる。

 血の雫を零しつつ、ミルヴィは牛型ゴーレムへ向け斬りかかった。
 レストの行使した回復スキルが降り注ぎ、ミルヴィの負った傷を癒す。
「猛る挑戦者達よ――怒れる牛を追い詰めて――泥人形の観客の心、震わせよ――」
 朗々と。
 カイロの歌う英雄の詩が戦場に響いた。
 魔力を帯びたその歌声は、仲間たちの勇気を奮い立たせる。
「それにしても楽しそうですね~?」
 牛型ゴーレムを乗りこなす義弘を見て、カイロは笑う。
 そんな彼の背後に迫る1頭の牛型ゴーレムが、その鼻から蒸気を零した。
「……っとと!?」
 牛型ゴーレムの突進をぎりぎりのところで回避しながら、カイロは壁際へと逃げた。

 半径15メートルの空間を、ラダとマタドールは駆けまわる。
 ラダの放った銃弾を、マタドールは巧みな足捌きでもって回避した。
 力強さではマタドールに、速度ではラダに軍配があがるだろうか。
 槍を構え、マタドールが突進を開始。
 ラダは銃を構えたまま、マタドールの動きに合わせて牽制の射撃を行った。脚に、腹に、胸部に弾丸を受けながらもマタドールは止まらない。
「1対1は不得手だが……」
 ライフルを下ろし、ラダは素早くナイフを引き抜く。
 一閃。
 飛翔するナイフが槍を持つマタドールの指に突き刺さる。
 指が砕け、マタドールが槍を取り落とす。
 マタドールは素早く地面に刺さった剣を握りなおすが……。
「マタドール相手に悪いが、私は強いて言うならカウガールの方でね」
 ラダの放った音響弾が、マタドールの構えた剣の腹に命中。
 剣を砕き、その身を背後へ弾き飛ばした。

 槍が飛び出し、結界が開いた。
 マタドールは手にした斧で飛来する槍を打ち払う。その隙を突いて、ラダはマタドールの膝へ向け弾丸を撃ち込むと、結界の外へと退避する。
 入れ替わるようにレストが闘技場内へと跳び込むと、日傘を広げ宙へと飛んだ。
「まあ! なんて立派なお人形なのかしら? あんなお人形が警備をしてくれたら、うちのホテルも安心なのだけれど~」
 間延びした声と共に、展開される魔法陣。
 ひらり、はらりと、血色の薔薇が舞い散ってマタドールの身体を覆う。
 めちゃくちゃに武器を振り回すマタドールだが、風に舞う花弁を切り落とすのは容易ではない。
「その素敵なペンダント、譲っていただけないかしら~?」
 体を薔薇に刻まれながらマタドールは花弁の渦から逃げ出すと、レストへ向けて槍を投擲。
「きゃっ!」
 槍が日傘に突き刺さり、レストの身体が闘技場へと落下する。

「他の遺跡には様々な仕掛けがあった。……ならばこの遺跡にだって闘技場だけではない、何か変わった仕掛けがあるはずだわ」
 第一闘技場へ視線を向けて、エルスは鎌を低く薙ぐ。
 鋭い刃が牛型ゴーレムの前脚を斬って、その巨体は地面を削りながら倒れた。
「不思議な生き物だけど奮って討伐していくわ!」
 その背に飛び乗り、エルスはスイッチを押した。
 瞬間、第一闘技場内ではレストへ向けて剣が飛び、結界の一部が開いた。
 そちらへ向けてエルスは駆けると、レストと入れ替わりに結界内部へと跳び込む。地面を蹴って、姿勢も低く疾走し勢いを乗せた斬撃をマタドールへと叩き込むが……。
「……やるわね」
 地面に突き立てられた槍により、エルスの斬撃は防がれた。

●暴力的な催し
 刀と鎌とが激しく打ち合い火花を散らす。
 脚部に損傷を負っているとはいえ、マタドールの身体は大きい。牛の下半身と騎士の上半身、そして素材を加味すれば、体重は300~400キロを超えるだろうか。
 エルスの鎌が背後へ弾かれ、その胸から胴にかけてを斧が裂いた。
 血を吐きながら倒れるエルスの意識を消費された【パンドラ】が強引につなぐ。
 直後、結界が展開されマタドールへ向け手斧が飛んだ。
 マタドールが1歩退ることでそれを回避した、その瞬間。
「これもラサの為っ! その色宝を大人しく譲ってくれると嬉しいのだけれど……!」
 血を吐きつつ、エルスは鎌を低く構える。
 鎌を覆う黒いオーラが蠢き形作るは顎。
 渾身の力を込めた斬撃が、構えた斧ごとマタドールの片腕を斬り飛ばす。

 ミルヴィと入れ替わりにエルスは第二闘技場へと退避した。
 血を流す彼女へ向けて、2頭の牛型ゴーレムが迫る。
「壊すよ、ヒィロ!」
「おっけー、美咲さんやっちゃって!」
 うち1頭の前にヒィロが飛び出し、そのターゲットを強引に自身へと変えさせた。
 鋭い角を振り回す牛型ゴーレムの突進を、ヒィロは読み切り、ギリギリのところで回避していく。そうして、牛型ゴーレムを壁際へと誘い込むと、その鼻先へ足を駆け空中へと身を躍らせた。
 頭部を蹴られ、姿勢を崩した牛型ゴーレムが壁に衝突。
 よろけたそれを美咲は“視た”。
 初めのうちこそ苦し気にもがいていた牛型ゴーレムだが、やがて力を失いその場にドサリと倒れ伏す。

 エルスへ迫る牛型ゴーレムは残り1。
 残りの体力を加味し、防御の姿勢を取ったエルスだったが……。
「こちらは私が……レストさんに回復してもらってくださいね~」
 その眼前に踊り出たのはカイロであった。
 血に染まった白い法衣に、牛型ゴーレムの角が突き刺さる。
 その額をカイロは聖杖で殴打した。
 ずるり、とカイロの脇腹から角が抜け、夥しい量の血が零れる。
「ぐ……ぅ」
 口の端から零れる血を拭い、カイロは笑う。
 その手に纏う淡い燐光を、脇腹の傷へと翳した。燐光はほどけ、魔糸となって穿たれた傷を繋ぎ合わせる。
 こうして強引に傷を癒しながら、彼はずっと仲間たちの盾となり続けたのだ。

 エルスの治療を終えたレストは、左右から迫る牛型ゴーレムを交互に見やって苦笑を浮かべた。
「あら~、挟まれてしまったわ~」
 なんて、妙に間延びした口調で顎に手を当て困り顔。
 頭を低くした牛型ゴーレムの同時攻撃を受けてしまえば、かなりのダメージを負うことになる。
 けれど、しかし……。
「2体程度になるまでは、倒しちまってもいいんだよな!」
 内1体の正面に踊りだした義弘は、拳を握り大きく1歩前へと踏み込む。
 牛型ゴーレムの顎へ向けて放たれるは全身全霊のアッパーカット。黒き髑髏のオーラを纏った一撃が、卯木方ゴーレムの頭部を砕く。
「ぬ、っぉぉおおおおお!」
 怒号と共に拳を振り抜く義弘の身体を、膨大な負荷が襲った。
 ミシ、と骨の軋む音。
 食い縛った唇の端からは血が零れる。
 上空へ弾き飛ばされた牛型ゴーレムの上半身は、粉々に粉砕されていた。
「ありがと~。さぁ、それじゃあもう1体はおばさんが片付けてしまうわね~」
 戦場に場違いなほどに朗らかな笑み。
 ゆっくりと日傘を掲げ、レストは笑う。
 牛型ゴーレムの突進に合わせ、彼女は日傘を勢いよく展開した。
 直後放たれる衝撃派が、地面を削り牛型ゴーレムの角をへし折る。
 瞬間、牛型ゴーレムに迫る黒い影。
 弾かれ、仰け反った牛型ゴーレムの首筋を、エルスの鎌が貫いた。

 逃げる馬と追う牛と。
 ラダを追走する牛型ゴーレムは猛り角を振り回す。
 牛型ゴーレムが地面を蹴って、跳躍した。巨体故にさほど高くは跳べないが、多少の距離はその跳躍により詰められるだろう。
 ラダはライフルを構え、馬の四肢を折りたたんだ。
 滑るように急ブレーキをかけながら、器用に身体を反転させる。
 ちょうど、ラダの頭上を牛型ゴーレムが通過する位置取りだ。ライフルの銃口をラダは牛型ゴーレムの後ろ脚へと突き付けるように構える。
「ゴーレムもかは分からんが、このケンタウロスの体は足1本でも使えないとまともに歩けなくてね」
 試してみよう、と呟いて。
 響いた銃声は1つ。
 発射された弾丸は、狙いたがわず牛型ゴーレムの膝関節を撃ち抜いた。
 地面に落ちた牛型ゴーレムは、立ち上がろうともがくけれど……。
 悲しいかな、体重を支える後脚を潰されてしまえば、立ち上がることも叶わない。

 片腕を失い、脚を潰されたマタドールの走りはひどく不格好。
 左右に身体を揺らしながら、元の速度も維持できず……けれどマタドールは、愚直に突進を繰り返す。
 なぜなら、そのように造られているからだ。 
 闘技場に入った敵を斬り倒す。それだけがマタドールの存在意義。
 そして……。
『――――――――――-!!』
 声にならない雄たけびを上げ、マタドールの放った渾身の斬撃はミルヴィの身体を宙へと高く打ち上げた。
 
 自身の零した血だまりに、ミルヴィの身体が横たわる。
 腹部に刻まれた裂傷からは、今もとめどなく血が溢れていた。
 だが、しかし……それほどの重傷を負いながら、ミルヴィは再び立ち上がった。傷口を塞ぐ燐光は消費された【パンドラ】による治癒のそれか。
「ふふっ、ここから逆転サヨナラ……これで勝てたら最高に盛り上がるっしょ♪」
 血の雫を散らしながら、ミルヴィは駆けた。
 迎え撃つマタドールの手には剣。
 振り抜かれた斬撃が、ミルヴィの頬を裂く。
 飛び散った血が、右の眼を潰した。
 タン、と地面を蹴ってミルヴィは跳ぶ。失われた腕の側へと、潜るように身を寄せて……。
 交差する斬撃。
 曲刀が踊る。【ロザ・ムーナ】と名付けられた剣舞が描く軌跡は円。月を思わせる一閃が、マタドールの首を刎ねた。
 一瞬、マタドールの身体は硬直し……。
 それは、長きにわたる役目を終えた。
 そうして、地面に転がるペンダントを手に取りミルヴィはそれを頭上へ掲げる。
『オォ、オォ』
 錆び付いたゴーレムたちの喝采を浴び、血に濡れた彼女は笑って見せる。
 なるほど、まさしく。
 彼女は正しく、戦場に咲く華なのだ。

成否

成功

MVP

ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥

状態異常

ミルヴィ=カーソン(p3p005047)[重傷]
剣閃飛鳥
カイロ・コールド(p3p008306)[重傷]
闇と土蛇

あとがき

お疲れさまでした。

マタドールは討伐され、琥珀色のペンダントは無事回収されました。
闘技場遺跡はその機能を停止。
依頼は成功です。

この度はご参加ありがとうございました。
此度の依頼、お楽しみいただけましたでしょうか。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。

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