シナリオ詳細
<FarbeReise>太古よりの守護者
オープニング
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ラサは砂漠地帯であり、その砂の先にはまだ見ぬ遺跡が眠っている事がある――
例えばカノン・フル・フォーレが眠っていた『砂の都』の様に。
砂嵐に阻まれ、或いは隠されたモノがあってもなんら不思議ではない地なのだ。
そしてだからこそ……FarbeReise(ファルベライズ)という遺跡群が見つかったのも、また。ラサの歴史の中において起こり得る一つの出来事だったのだろう。
「ふぅむ……随分と広い遺跡だ。ここは一体どのような意味があって作られた場所だったのか……やはり噂の『秘宝』を管理する為の場所なのか……?」
そんなファルベライズに一人の学者が訪れていた――彼は新たに発見された遺跡を調査する人物であり『願いを叶える宝』が眠っているとされるファルベライズに興味津々であった。
その秘宝とは『色宝』(ファルグメント)と言われるモノである。
形は様々だが不思議な神秘を宿しているらしく『所有者の願いを叶える』と言われている――尤も、調査の浅い現段階においては真実か眉唾な所はあるが。ただ、いずれにせよそういう秘宝とされるモノがこのファルベライズにあるのは確かである。
「この地域一帯にも安置されているのだろうか……まぁ願いを叶える力などに興味は無いが……んっ?」
と、その時だった。歩き続ける学者の目に映ったのは――些か開けた場所。
中央部には何やら祭壇の様なモノがあり、更にその祭壇の中央には光り輝く宝玉の様なモノがあって……
「むっ! あれがさては色宝か――!? やはりこの地帯は秘宝を管理するための場所であったのかもしれないな……しかし随分とこれ見よがしだ。こういう場所には大概……」
何かガーディアンの様なモノがいたりするものだ、と。
呟いた直後に祭壇の周囲の砂地が盛り上がる――地中に潜んでいた存在がいたか――
「おぉう……これは、また巨大な……!」
それはゴーレムだ。人間よりも一回り二回り……いやもっと大きい石造りの存在。
彼らは遥か過去に造られた正しく予測通りの守護者。
此処に祭られし色宝を狙う輩共を打ちのめす意思が――今や再び起動した。
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「ファルベライズの話は聞いたかな?
今回の依頼はファルベライズ遺跡群の一角で発見された色宝の入手だよ――
邪魔をするゴーレムを排除して、なんとか帰還してほしい」
言うはギルオス・ホリス(p3n000016)である。ファルベライズの遺跡で見つかりつつある色宝は、ラサ傭兵商会連合が回収を行っているのだ――一つ一つに込められた神秘の地からはあまり大したことはないものの、これを大量に集められ悪用されては危険と判断して、だ。
ラサの傭兵達や商人に喚起するだけでは持ち逃げされる恐れが無いとも言えない。
故に信用ありしローレットに依頼が回って来た訳である。秘宝を確実に回収してほしい、と。
「今回の目的地はある学者が発見した場所でね。色宝は確かにあったそうなんだが……戦闘力の在るゴーレムが周囲を警護しているらしく、とても近寄れる所の話じゃないそうだ」
いずれもが巨躯。ゴーレムは全部で五体いるらしく、特に内の一体――色宝の傍に常についている奴が厄介なのだとか。なんでも光り輝く魔法の矢……というか練達で言う所のレーザー兵器の様なモノを射出してくるらしい。
ただ探知能力はあまり高くないのか、壁に隠れたり目に付かない様に移動を繰り返していたら、その場に居合わせた学者はいつの間にか逃げ帰れていたそうだ。走っても位置がバレなかったそうで、耳はあまりよくないのかもしれない。
「とはいえ中々宝だけを盗んで退散……とはいかないだろうけどね。ただラサとしては宝さえ手に入ればいいそうだから、別にゴーレム全て撃破する必要はないよ。上手く盗む事が出来たら敵が残ってても撤退してOKだ」
まぁ或いは全部倒してしまってもOKだが、それは戦闘の推移次第か。
いずれにせよ依頼であるというならこなすのみ。
さぁ砂漠の中にある遺跡の中へ進むとしようか――
- <FarbeReise>太古よりの守護者完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年09月30日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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「……さて。これが初仕事になるよ、よろしくね」
言葉短く。件の遺跡へと訪れた一人『揺蕩う器』ハリエット(p3p009025)は挨拶を済ませて遺跡の中へと足を踏み込む――丁寧な物のいい方なんて習っていない。こういう時、何と言うべきかも知らない。
故に彼女は今自らにあるモノだけで此処に来ている。必要な知識と、この体だけで。
召喚されて――まさか武器を手に取るなんて思ってもいなかったけれど。
「まぁ、メシにありつけるならなんでもいいか」
此度の依頼は『色宝』なるものの回収だという。ならばそれを果たそう。
「ファルベライズ――か。色んな仕事が来てるみたいね」
そして『砂食む想い』エルス・ティーネ(p3p007325)は微かに高鳴る胸の鼓動が確かに在った。色宝。願いを叶えるとされる秘宝が見つかっているのだと……ラサの仕事であれば奮起せぬ理由がなく。
「ふふ。太古に存在した遺跡……そして中央の祭壇。
ああ作られた理由などを詳しく調べたいね。可能ならゴーレムの残骸も回収したいものだよ」
周辺をうろついているというゴーレムたちに見つからないように慎重に歩を進めるのは『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)だ。やはりこういう歴史を感じさせる場所はどこか心が躍って仕方ない。勿論依頼の達成が優先である事を忘れたりはしないが――と心に刻み。
とにかく進んでいこう。ゴーレムは恐らく、正面衝突しては相当な硬さがある筈だ。
「流石にゴーレムと当たるのは辛いよねぇ。サクッと攪乱してお目当ての所に行こうか」
「――今の所周辺には見当たりませんね。でも、恐らくそう遠くはなれてはいない筈……」
だからこそ可能な限り避けるのが重要だと『観光客』アト・サイン(p3p001394)は紡ぎ『スノウ・ホワイト』アイシャ(p3p008698)はファミリアーで空から偵察を成す。此処には余人はいないだろうし、ゴーレムの特徴的な姿は視ればすぐわかる筈だ、と。
しかし願い。願いを叶える秘宝か。
見つかっている色宝はあくまで小さな傷を治す程度……と言う話だが。もし如何なる願いでも叶える力が宿っていたならば――何を願っただろうか。
お父さんが帰ってきますように。
お母さんが元気になりますように。
兄弟達が元気に大きくなりますように。
大切な人達が幸せになりますように。
「一つじゃ、足りないな」
自嘲する様にアイシャは微笑む。空は明るく、放った隼が良く見えて。
その時だ。見えたのは件のゴーレムが一体。
そう遠くない位置に存在している――先程は影か何かに居て見えなかったか。
「あれが太古の時代から此処を守ってきたっていう守護者か……いいね、堅くて強そうだ」
さすればやがて直に姿も見えてきて『撃劍・素戔嗚』幻夢桜・獅門(p3p009000)は思わず感情を吐露する程だ。
どうすれば斬れるか今すぐ試したい所だが――今は依頼中。他の皆を無用な危険に巻き込む訳にはいかないと、猛る気持ちを今は抑える。どうせそう遠くない内に刃を出す事になるのだ。
「まだ向こうはこっちに気付いて無いようだ。迂回して、避けるとしようかね」
「さすがに今回はゴーレム相手に宴会とはいかねーなー。せめて生身じゃねーと」
そんな獅門の言葉に継いで『ゴーストオブお正月島』酒匂 迅子(p3p008888)が呟くが――はぁ、つまんね。と口中でぼやく様に。事あらば宴会を行いたい彼女だが、ゴーレム相手ではそうもいかぬと。
まぁ巷で聞いた事のあるギルオスを一目見たくてここに来たところはある。依頼の説明であった事があるだけで、最早彼女にとっては収穫があったようなものではあるのだが……ともあれ。
作戦通りいくとしよう。極力避けて、目的地を目指す。
照りつける太陽が中々厳しいが、まぁイレギュラーズならこの程度――
「うぇー。アンジュ、砂漠きらい。水ないし。なんで水ないの?
こんなのいわしは干からびちゃうよ。砂漠はどうしていわしに厳しいの?」
しかし『いわしを食べるな』アンジュ・サルディーネ(p3p006960)にとっての基準はいわしである。新月の魔力が込められた香水で気配の遮断を繰り返しながらゴーレムに見つからないように進んでいるが――くそう太陽め。奴はいわしに厳しいぞ。
周囲に潜む精霊たちにゴーレムの大雑把な位置も聞けているので、足並み揃えて見付かないように進むのは順調だが……うおー急いで宝石を持って帰りたい所である。
砂を踏む。ゼフィラのブーツは柔らかく、音を小さくし。迅子は建物の影を見つけながら移動するのだ。物陰から物陰へと移る様に、祭壇目指して慎重に。
ハリエットとアトは忍び足で歩いてよし己が存在を消失させる。鈍いゴーレムの探知ならばまるで透明人間の様にも感じていよう。
「見つかったらダメ、なんて言われたら逆に緊張するけどね」
「……そうね、でも適度に緊張はほぐしておかないと、消耗ばかりしていたら後でガス欠を起こすわ。最初は慎重に……何か手がかりがないか注意しながら進みましょ」
それでも静かに静かにとハリエットは動いて。エルスは言う様に慎重に行動する。
ゴーレムは長くこの地に眠っていた個体。別の匂いがするか分からぬが、他とは違う気配を感じるかもしれないとエルスは優れた嗅覚で周囲の警戒も重ねる。さすればその時、獅門の耳がゴーレムの接近を捉えて――
「折角だから、仕込みも入れようか」
と、アトがそんなゴーレムの動きに対して仕掛けを施す。
アクロバットな動きで遺跡の壁を乗り越えて。ゴーレムが来るであろう場所に仕掛けるは、罠だ。こんな事もあろうかと持ってきていた風船を括りつけ、時間差で飛ぶ様に仕込んでやる。
目の前で露骨に動く何かがあれば気も引かれよう。元々はダークスーツで生意気にキメてやがったギルオスの背中に風船をいっぱいつけて浮かべてやるつもりの一品だった。え、マジ? やめてよこれ以上僕をいじめないでよ。
「なんか変な声が聞こえてきたするけれど――まぁともかく」
「ああこれで準備は良いだろう。戻るとしようか」
同時。ゼフィラもまた陣地を構築するかのようにアトの支援を行う。砂漠地帯であるからこそ塹壕は掘れば意味があるし、遺跡であれば瓦礫を集めてバリケードと成す事も出来よう。時間は十全には無い故、簡易だが設置する事に意味はあり。
再び跳躍。壁を乗り越え皆の下に戻って。
風船の罠に気取られている内に先へ進もう。足止めしている間に本命だ。
「――ああいました。きっとアレですね……事前の情報に在ったのは」
そしてアイシャが見た。色宝を守護ゴーレム――奴がいたのだ。
ここまでは壁や陰に身を隠しながら来れたが、流石にここから先はそうはいかない。奴との戦闘を回避する事だけは出来ないだろう。
故に覚悟を決めて一斉に侵入する。
『――』
侵入者を感知し、起動するゴーレム。
さぁ中々に硬そうな相手だが……その宝を今こそ渡してもらおうか。
長年の役目に――終止符を打ってやるとしよう。
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守護ゴーレムはこの個体だけ光を収束させ、敵を穿つ。
レーザーと見間違うかの如くだ。強力かつ強大な一閃は戦場に瞬いて――
「特になんのうらみもないけど、ばーんって壊しちゃうよ!
古来より海の王者であるいわしの力をみるがいい――!!」
同時。真っ先に動いたのはアンジュであった。
放つはいわし。娘の危機に駆けつけたパパの群れが敵対するゴーレムの身へ特攻をかますのだ。当然一匹や二匹では効果が無い故に、大量かつ大群を伴って。
ゴーレムより射出されるレーザーを躱して直撃する――
砕けるいわし。頑張るいわし。古代から存在しているゴーレム……それがどうした?
「それいうならいわしだって古代から姿変えてないし、よっぽどあなたたちより先輩だからね?」
歴史はいわしの方にこそあり。人に作られしゴーレムが調子に乗らないでほしい、と。
「さぁて遂に『お楽しみ』の時間だ。簡単にはぶった切られてくれるなよ?」
次いで獅門が闘志と共に。待ちに待ったと己が大太刀担いで前進す。
彼を迎撃すべく光帯が放たれるが――遅い。一切の怯みなく、より深く懐に入るべく跳躍だ。誰より真っ直ぐ、誰より華やかに。その硬き、装甲穿ってみせよう。
「どんなに硬くても全身全部そうとはぁ限らねぇだろ!!」
「ああ。どんな石人形だろうと弱点はお決まりだよ――そいつは関節部。
薄い所は必ずあるものさ。そこを狙ってやれば、やがては止まるよ」
天下に轟く御免の一撃。
硬い――しかし装甲の狭間が見える。隙間があれば芯に届こう。
一で無理なら二でも三でも、ああいつかその身の内にこの刃を突き込んでみせる。アトの言う様に、ゴーレムと言えど無敵の存在などでは決してないのだ。他の生物よりも硬い場所が多いだけで、弱点はある。
「更に言えば被弾する可能性の少ない首の部分なんてのは致命的だね! わお。こういう所があると考えると、人間タイプじゃない方が強いんじゃないかなぁ!」
跳躍。アトも獅門と同じように刃を『縫う』様に奴へと叩き込んでやる。
返しの一撃。ゴーレムの拳が飛んでくるが――予測の範囲内だ。アクロバットに動き回り、攪乱してやろう。その鈍重な体から繰り出される攻撃は強力だが、遅くもあり。
「――さて、ここかな?」
そして獅門やアドには当たらぬ様に。ハリエットの研ぎ澄まされた集中から、精密なる射撃が一発。目の部位を狙ってやる。上手くすれば光帯の射出機構を破砕する事が出来るかもしれない。
「まぁ一発でそう上手くはいかないだろうけど、やりようだよね」
高い集中を必要とするが故にあまり多くの回数は放てないが。
それでもハリエットは己に出来る事を――ただ只管に集中して。
「他のゴーレムは足止めも含んだとはいえ、時間が掛かれば駆けつけてくるだろう……その前にせめて倒しきれる見込みは作りたい所だね」
「回復はお任せ下さいませ。この身が在り続ける限り――全力でお守り致します!」
戦闘を回避し続けたが故にこそ、ゼフィラの言う様にゴーレムは全て健在だ。
足止めをした個体もいるが、そうで無い個体もある故に急がねばならない。一体増えるだけでも厄介になるのであれば……今回は攻撃に専念すべきだろうと、時間さえ置き去りにする光撃をゴーレムの顎へと。
同時。ゼフィラは保護結界も施しておく。
貴重な遺跡だ……またの機会の時には調査を主としたいと考えおり、余計な破壊は極力に抑えたい。
さすれば治癒はアイシャが万全を行うものだ。
天使の歌声が皆の身を癒す。ゴーレムの光帯は強力であり、時として複数人を焼く事もあるが――アイシャがその度に治癒するのだ。
決して倒せない。少しでも。一寸でも戦線を持たせてみせる。
「俺ぁ早く帰って酒盛りがしたいんだ。あんまりしつこく粘ってくれるなよ」
その隙に迅子もまたゴーレムへと接近する。酒気を帯び、不規則な動きで翻弄する様に。
切り刻んでやろう――祭壇まであと少し。このゴーレムさえ倒せば宝はそこに。
だが。
「ッ、来たわね――ゴーレムの援軍よ! 後ろッ!」
大鎌を振るって対応していたエルスが気付いた。こちらの布陣の後ろから、ゴーレムがやってきている。作られた拳が地を打てば、凄まじい衝撃が走るものだ。レーザーが前から放たれれば、土煙も上がって。
「全く。ゴーレムの攻撃っていうのは豪快ね……!
でも私だってここで諦めるわけにはいかないのよ……!」
それでもここまで来たのだとエルスは闘志を高める。
ゴーレムの増援が来た。しかしリーダーの個体は削られており、万全ではあるまい。
――ここからが腕の見せ所だと、地を跳ねた。
●
ゴーレムを全滅させる必要はない。色宝さえ取ればそれでいいのだ。
そもそもゴーレムは巨体でありブロックするにも人数を必要とする――マトモに相手をすればとても人数が足りないぐらいである。だからこそ援軍が現れてもなお、主目的は色宝を守っているゴーレム一体。
「後ろは俺が引き付けるさね。だからよ、急ぎで頼んだぜ?」
後方から現れたゴーレムは迅子が駆けた。
引付役になって、祭壇組を支援するのだ。一体が現れたのならば続々と現れるのも時間の問題だろう。幸い奴らに高い知性は感じさせられず――邪魔をする個体の排除を優先するはずだ。
激しい一打が彼女を襲うが、さてさて終わった後の宴会を考えれば。
「踏ん張り所だよなぁ……!」
まだ往けると、奮起して。
「目標のゴーレムは崩れ始めてる――倒せるまでそう遠くはない、筈」
「うー。隙を見てもう宝取っちゃっていいんじゃないかな? あ、無理? 厳しい? くそー地上の石塊のくせに、なんて忠義者なんだ」
ハリエットの続く射撃。アンジュのいわしの砲撃も引き続いて。
取れるなら取りたいのだが、中々ガードが堅いようだ。もう少し削らねば厳しいか?
――いわしの無念を力に乗せ一気に攻めるか、それともいわしの癒しを施しに回るべきか。
「動きを止めます……後方からゴーレムが続々増えている様ですし、奪取を!」
その時、アイシャが紡いだのはゴーレムを縛る簡易封印である。
迅子がせき止めている後方側だが、更に増えているようだ。なだれ込んで来れば奴らが新たに色宝を守護する者となるかもしれない。レーザーを打つのはコイツだけだろうが、キッチリガードされては面倒な事になりそうだ。
故に攻める。幾度も光帯を放たれているが、それがどうした。
「そっちも中々限界が近いだろ? 長年の役目からそろそろ解放されてもいいんじゃないかね」
瞬間、アトだ。光に焼かれながらも致命は負わぬ様に立ち回り。
引き続き奴の柔らかき点を穿つ――関節部を集中的に狙って孤注一擲。
踏み込む度合いをより強く。深く深く差し込んで。
「――まっ、たまには戦闘もできる観光客っていうのを見せとかないとね!」
ははっと笑いながら。
獅門とエルスもまたその姿に続く。ひび割れ始めているゴーレムに対し。
「随分と手古摺らせてくれたが……その首、貰い受けるぜッ!!」
「そろそろ終わりに向かいましょ――道を開けてね!」
放つ一閃。片や大天上より大降りし。
片や直死の一撃。魔性を込めた黒の大顎は――ゴーレムを呑み込まんとする程で。
『――、――――』
ゴーレムが軋む。妙な音が内部より。
最後の光帯を繰り出そうとして――しかし――
「まずい、離れろ! 爆発するぞ!!」
ゼフィラが言う。光撃を横から叩き込んで距離を取らす、が。
炸裂。弾き出そうとしていたレーザーが上手くいかず――内部で暴発したのか。
激しい音を鳴り響かせ、しかし跡形もなく消え失せていた。ああ、くそ。せめて残骸だけでも回収したかったのだが――とゼフィラは思考するが。
「やむを得ないか……色宝は!?」
今は宝だ。先程の爆発に巻き込まれてはいないと思うが。
「あった――これが……色宝、かしら?」
エルスの手の内に収まっているモノこそ色宝。
綺麗な、宝石の様な形をしている。手中にあれば確かに何かしらの神秘を宿しているような……不思議な雰囲気があるものだ。これに様々な伝承や傭兵達の浪漫が詰まっている。
「ラサのダンジョンはこれだからワクワクするの! 近頃は怪しい……鴉と言う存在もいるけれど、ひとまずこの地の色宝はローレットが確保したわね……!」
「これがお宝ってやつ? じゃああとは逃げるだけだね。ゴーレムが集まる前に、逃げよう」
ハリエットも確保の確認をすれば、ならば後は撤退するだけである。
ゴーレム全てを相手になどしていられない。え? 先輩たちの力ならできるかもしれないの? すごいなー。でも、余計な労力を掻ければ被害が増えるかもしれないから、逃げるのが吉であるか。
「……それにしても、小さな願いを叶える宝石か。あちこちで見つかってるって話だし、ずいぶん沢山あるみたいだが……何処かにこれを生み出す凄ぇデカい石とかあったりしてな」
刃を納めて走りつつ獅門は思考する。
これは一体何なのだろうかと。元は一つの大きな塊だったか、別たれたモノか。
それはこの先の調査次第でもあるだろうか――
「ダンジョンだからねぇ。ま、何があっても不思議じゃないさ。
理由はあるかもしれなし、ないかもしれない。ただそこにあった、というだけかも」
世の中なぜそこに在るのか、という理由が未だに分かっていない迷宮も多いのだとアトは語る。例えば果ての迷宮だって『分からない』の一つだ。
しかし、色宝。願いを叶えるという甘い蜜をぶら下げたモノ。
焦がれる程の望みがある人はこの甘美な宝石に魅入られてしまうかもしれない。
「……もしも」
願いがあり。しかしこの命を捧げてもその願いが叶わないのなら。
私もきっと――
そこまでアイシャは考えて。振り払う様に瞼を閉じた。
……後ろからゴーレムたちが迫ってきている。足は遅いので、止めなければ逃げ切れるだろう。
そうだ。立ち止まるな。
過去を振り返れば過去に捕まる。願いが叶うだなんて甘い蜜には騙されず。
これは依頼主であるラサへと渡すとしよう――
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
ファルベライズの依頼、これにてここの色宝は奪取に成功しました。
なぜ色宝などというモノがあるのでしょうね……その辺りは後々分かる事なのかもしれません。
それではありがとうございました!
GMコメント
■依頼達成条件
色宝の確保。
■フィールド
砂漠地帯の中にあるファルベライズ遺跡の一角です。時刻は昼。
元々は街か何かだったのか、家の瓦礫? などの障害物が各所に見られます。暫く進んでいると目標の祭壇のある地点へと到達するでしょう。祭壇の付近はある程度の開けたスペースがあり、中央に目標の『色宝』が存在します。
■防衛型ゴーレム×5
特定の領域内に侵入した者の排除に動くゴーレム。
いずれもが巨大な身をしていて、石造り。とても堅牢な様子と高い耐久力を感じさせます。
元々は眠りに付いていたようですが、起動してから五体の内四体は遺跡の中を歩いています(最も、祭壇から極端に遠くまで離れる様な様子はありませんが……)。一体が常に色宝を護っていて、その個体のみレーザー兵器の様な遠距離攻撃を宿しています。
この攻撃は着弾地点で爆発の様なものを生じる範囲攻撃型です。
またいずれのゴーレムもブロックには【3人】が必要となります。
あまり探知能力に優れていないのか、OPでの学者が逃げ切れた様に少なくとも『耳』はあまりよくないようです。割と近くで走る音がしても気付かれない可能性があるでしょう。しかし正面から戦うと中々にタフな性能があります。
■色宝
今回の目標物です。光り輝く宝石の様な形をしています。
小さな願い――例えば(あまり大きくない)傷を治してほしい――程度の願いを叶える程度の神秘を宿しているそうです。単体では精々この程度の効果ですが、数が集まり、それが悪人の手に渡った際の危険性があるかもしれないと、ラサは回収を試みています。
■ファルベライズ
FarbeReise。最近発見されたラサに存在する遺跡、並びにその土地の事です。
色宝が多く発見される地でもあります。
元々は何の遺跡だったのか……現段階では良く分かっていません。今後の調査次第でしょう。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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