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シナリオ詳細

<幻想蜂起>箱の中の兎たち
<幻想蜂起>箱の中の兎たち

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●小景
 幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』の公演以来、レガド・イルシオンは不穏な空気に包まれていた。
 頻発する猟奇事件、繰り返される惨劇……。
 原因は不明ながら、徐々に人々の心は荒み、燻る不満は燃え上がりつつあった。
 それは当然と言うべきか、かねてから存在していた国上層部への怒りへと変わっていったのだ。
 幻想国民も決して馬鹿ではない。支配と搾取でこの世の春を謳歌する王侯貴族は褒められた連中では無いが、強力な軍備を持ち、戦い慣れている彼等に武力蜂起を行う愚をよくよく理解している。だからこそ、これは通常では起き得ない事件なのだ。
 各地で民衆が武装蜂起したなどと……。
 幻想国内で積もり積もった不満が爆発し、民衆の一部が暴発的に蜂起したのだ。
 サーカスの影響疑惑以外に『何らかの外的要因』も存在したのかも知れないがその辺りは定かではない。
 蜂起は連鎖的に起きているが、全く無計画に近いもので、とても貴族達に敵うようなものではない。
 このまま貴族任せにしたのでは猟奇事件とは比較にならない位の犠牲者が出るし、国中にそんな痛みを与えたら、存在する疑いの強い『魔種』や『原罪の呼び声』に与する事になるのは間違いない。
 貴族はこの『暴挙』に大いに怒っており、即時の軍派遣による完全鎮圧を決めたが、そこにローレットが待ったをかけた。
 要約すれば今回の反乱封じはローレットがやるから軍派遣は待て、と。全てではないが主流派の貴族と交渉し上手く行ったという事だ。
 レオンはイレギュラーズにこうも言う。
「お貴族様方に任せれば被害者の山だ。クライアントの意向は無視出来ないが、うちが請け負えば相対的に大量の市民も救われる。
 ついでに言えば今回の仕事はサーカス事件を解決する為には必要不可欠だ。
 つまり、てこでもなけりゃ動かない王様をどうにかするにはね。たっぷり恩を売った『貴族(てこ)』が最低限必要なのさ」
 イレギュラーズの活躍次第では領地の傷は最小限で済み、貴族は軍費を失わずに済む。
 市民の犠牲を防ぎ、この先の布石を打つ。この『より悪い事態』はレオンが望んでいた事態となったのだろう。

●箱の中の兎
「噴飯ものですわ」
 そういう横顔は優雅そのものだった。『暗殺令嬢』リーゼロッテ・アーベントロートは、領地下で反乱が起きようと、その美貌には一点の曇もない。むしろ楽しんでさえいるようだ。
「さて、皆様へ御用があるのは私ではなくこちらの方ですのよ。挨拶なさい」
「は、はいっ」
 初老を通り越した男だ。身なりからして貴族らしいが、リーゼロッテに比べると貧相さが目立つ。彼は疲れきった顔でイレギュラーズを見渡し……。
「アーベントロート領の小貴族をやっております。私は代々……」
「長い」
 男の話をぶった切り、リーゼロッテは立ち上がった。失礼、とつぶやくとスカートの端をついと持ち上げる。するとスカートの中からバサバサと紙片が落ちてきた。リーゼロッテは席に戻り、カップを傾ける。拾って読めということらしい。
 お嬢様のおおせのままに、とあなたは紙片を拾い、目を通す。地図とターゲットの経歴などの情報がメインだった。男の身の上も載っていた。代々町長をやってきた一族だ。しかしその屋敷を反乱軍に奪われてしまった。監視の網をかいくぐり、ほうほうのていで自分の町を抜け出し、リーゼロッテの元へ泣きつきにきたようだ。
短い間によくぞここまで調べ上げたものだと、あなたは内心舌を巻く。
 地図は一枚。どうやら男の屋敷らしい。一階が五部屋、二階が三部屋。屋敷の周りはぐるりと煉瓦塀が囲んでおり、出入りができるのは正門だけ。
「その屋敷を取り返すのが今回のミッションですわ。そうすれば私達も面目を保つことができることでしょう」
 反乱軍は全員で二十五名。そのうちリーダー格が五名。ドノヴァン、ゲイル、ラス、オリバー、ジャック。武器は剣と銃。近距離にも遠距離にも対応している。やっかいなことに彼らは固まっておらず、思い思いに屋敷の中をうろついているらしい。さらにやっかいなことに、槍で武装した残りの二十名が庭まで見回りをしているとのことだ。
 特筆すべき点は、見回りもリーダー格の男たちも、自分の力量をよくわきまえている。つまり、鎮圧に来たイレギュラーズの姿を見たら、全員大声を上げてその場から逃げ出すだろうということだ。
「私としては殲滅をお願いしたいところですけれども、成功する確率は低いでしょうね。何故って貴方方が戦っている音を聞いてさらに逃げ出す輩が増えるでしょうから。ですが案ずることがありませんわ」
 ――カッ。
 地図の上にナイフが刺される。正門の位置に。
「兎たちがどれほど逃げ回ろうと、出口は一箇所しか無いのですから」
 にっと笑う彼女の怪しくも美しい笑顔。
「出口で貴方方と鉢合わせしたなら、兎たちもさすがに腹をくくって戦闘になると思いますわ。皆殺しにしてくださいまし。もっとも、どうしてこんなことになったのか、私はそちらのほうに興味がありますけれども」

GMコメント

みどりです。向かってくるやつより逃げるやつのほうが厄介ですよね。金属製スライムとか。

目標
 蜂起理由の聴取または敵の殲滅

敵の状態
 反乱を起こしてはみたものの、自分で自分達のしでかしたことにビクついています。そのため士気が低く、イレギュラーズ達を見るとまず逃走します。強さは槍持ちの見回り役がイレギュラーズの半分くらい。リーダー格でとんとんです。数が多いので気をつけてください。

  • <幻想蜂起>箱の中の兎たち完了
  • GM名赤白みどり
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月05日 21時05分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ロザリエル・インヘルト(p3p000015)
至高の薔薇
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
白綾の音色
ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)
ノベルギャザラー
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
新納 竜也(p3p000903)
特異運命座標
紫月・灰人(p3p001126)
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
ジェック(p3p004755)
ガスマスクガール

リプレイ


 その屋敷には煌々と明かりがついていた。
 まるで外敵に怯えるかのように、明るくさえしていれば我らを害する者は去るといった原始的な願いが込められているかのように。だがそんな淡い期待など関係なく、イレギュラーズたちはそろった。口元に皮肉な笑みを浮かべて。
 空中にピンと銀色のものが踊る。『ノベルギャザラー』ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)のコイントスだ。落ちてきたコインを握り込んで手のひらを開けば、結果は吉。
「サクッと終わりそうな予感。肩の力抜いてラク~に行くか」
「どうだろうね」
 地元の友人、ジュノーが首をひねる。
「……依頼によると顔を合わせたら、みんな逃げ出すって話だから……入り口に殺到されたら、さすがに耐えきれないかもッス……」
『落ちぶれ吸血鬼』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)も首肯する。
 それに対して『ガスマスクガール』ジェック(p3p004755)がウインクをした、かもしれない。何せ常時ガスマスク装備だから。
「ヤッパリそこは気にナルよね。追い出すトキに頭数減らしもヤッテオクよ。屋敷内をグルッと回る過程である程度殺して、カズも減らせたらイイね」
「最終的に、全て殺すことも令嬢の言葉、ですが……殺すことはいつでもできます」
『白き旅人』Lumilia=Sherwood(p3p000381)が両の瞳に憂いをたたえて続けた。
「無謀であること明らかで、士気も低い。それでも彼等が蜂起してしまった理由をはっきりさせなければいけません」
 静かな決意をにじませる彼女。
「え、ころ? 殺すってころころするってことじゃないよな? な?」
 紫月・灰人(p3p001126)がどっと汗を吹き出した。
「いやいやいや、ごく普通の高校生にゃハード過ぎない? メチャクチャビビってますよ? つか無理だよなー俺そんな武器もねぇし? 腕力とかもそんなねぇし? ねぇよな?」
「あるだろう」
「え? あんの?」
 割って入ったのは『特異運命座標』新納 竜也(p3p000903)。灰人が彼を振り返ると彼はけだるげに答えを返した。
「この世界へ召喚された以上、並の人間よりも大きな力を持っている。お前が本気を出せば素手でクマの首をちぎり取ることも……クマはちょっと無理かシカならがんばれば……いやシカも種族によっては厳しいかもしれんな……ま、とにかく」
「人一人倒すくらいの力は既に持っているということだ。灰人に足りないのは勇気だ。それさえあれば今回の相手と互角以上に戦える」
 竜也に続いて『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)が口を出した。その言葉の意味を受け止め、灰人は拳を握る。
「勇気ね……。まぁ気分良くねぇしそーいうのは他に任せる……なんつーのも虫のいい話か。仕事選んで受けた以上俺もキッチリやんなきゃフェアじゃねぇな」
「じゃあ俺は横でサボっていよう。がんばれ」
「え! それアリなの?」
「もちろんジョークだ。ちゃんと働くさ。なまけたいのは本心ではあるがな」
 竜也の言葉にこけそうになる灰人。
 その隣で『暴食麗花』ロザリエル・インヘルト(p3p000015)はうっとりと屋敷を見上げていた。
「はあ……窓越しに人の気配がするわ。あれ全部食べちゃっていいのね。うれしい。かつて私のことを徒党を組んで討伐しに来た人間たちのことを思い出すわ。みんな食べちゃったけれど。今日もばっちり全員殺しましょう! 25人も! 楽しみね!」
 静まり返った夜の淵、彼女の瞳が月明かりよりも爛々と輝く。
「さあいっちゃいましょう、食べちゃいましょう、一人残らずぜ~んぶ美味しく召してあげましょう!」


 正門をぶち破ったとたん、近くにいた見回りの兵が大声を上げた。
「侵入者だ!」
「イレギュラーズが来たぞー!!」
 バタバタと足音が暗闇へ遠ざかっていく。どいつもこいつも全力疾走だ。これはこちらも全力で走らねば追いつけそうにない。とはいえ急ぐ必要はないのだ。今は屋敷側へ逃げていった彼らだが、追い詰めていけば嫌でも正門へ集まらざるを得なくなる。ジョゼ、Lumilia、ジェックの囮班は悠々と敷地へ入った。
 ジョゼが天を仰ぎ見る。
「まーためんどくさい依頼受けちまったな……。何に感化されたか知らねーけど、場所考えろよー。ここはあの『暗殺令嬢』の領地だぞ。おかげでロマンがねぇ食えもしねぇ仕事がオイラに回ってきたじゃんか。せめて、面白いモノ見つけられたらなー」
「バッカよねぇ、あのオジョーサマに牙むくナンテ。ま、そのオカゲでおまんまにありつけるアタシらがドウコウ言うことじゃナイけど」
 ジョゼとジェックの言葉にうつむくLumilia。しゃくしゃくと芝生を踏みながら三人は歩いていく。手入れの行き届いた庭園だ。どうせなら晴れた日にピクニックで来てみたかったなどとLumiliaは思う。
「ソレにしても本当に反撃にコナイね。フツーなら先生お願いシマスってリーダー格の一人や二人を連れてくるモノだけど」
 庭は不気味なほど静まり返っている。屋敷に目をやると、時折窓辺に人影が見えた。右往左往しているようだ。敵は相当に浮足立っているらしい。庭の探索は適当におさめ、三人は屋敷に狙いを定めた。どうせたいした戦闘にはならない。散開して探索したほうが有利だと判断した三人は、ジェックは勝手口へ、Lumiliaとジョゼは正面玄関へ回った。どちらの扉も侵入者を拒むように固く閉ざされている。
 ジェックは距離を取ると、勝手口の蝶番を精密に撃ち抜いた。ジョゼが下段の構えから逆袈裟に扉を一刀両断する。ガタンと音を立てて扉がずれる。それを蹴飛ばすと、彼女たちは室内へ踊りこんだ。とたんに酸鼻な臭いが鼻を突く。
 三人が見たのは死体の山だった。執事やメイドたちが頭をかち割られ、あるいはばっさり切られている。幼いメイド見習いの姿もあった。邪魔に思ったのか、部屋の隅に集められており、引きずった跡が赤く染まっていた。
「おっと、意外なお出迎え。そりゃそうか。屋敷を制圧したってことは、ここに居る奴らを全滅させたってことだもんな」
「……臆病な彼らを何がこうまでさせたのか。なんとしても理由を聞き出さなくては」
 頭をかくジョゼと決意を新たにするLumilia。勝手口ではジェックも家政婦の遺体を発見して、短く口笛を吹いていた。
「さーて、兎狩りとイキマショウかね」
 ジェックは新たな扉を開けた。
 槍を持つ男たちが室内を物色していた。ジェックの姿を見て固まる。
「ハイハ~イ。イレギュラーズさんデスよ。これから全員無理なく極楽あの世行き片道ツアー開始デース」
 耳をつんざくような悲鳴が上がった。

「来たようだ」
 ランドウェラが呪符を手にとった。
 屋敷の方から男たちが門を目指して次々と駈けてくる。そこでイレギュラーズたちが待ち伏せしているのを見て取り、絶望に顔を染めた。一瞬足を止め、やぶれかぶれで突っ込んでくる。すぐに門のあたりは十人を超す槍兵で混戦となった。
「…あ、ちょ、数多いッス…。…ヤバ…」
 クローネのマジックライフルを走る魔導機関に魔力が充填されていく。暗い青から明るい緑、そして白に達した瞬間、クローネは引き金を引いた。マギシュートだ。一人の男が首から上を割れはぜさせて、赤い中身をぶちまける。そしてどうと倒れた。
 だが敵は次から次へ波のように襲いかかってくる。一人ひとりは大した強さではないが、集団となると脅威だ。
「…前衛~足止めいけますか~…?」
「範囲攻撃がほしいところだな。ただ俺たちが巻き込まれる可能性が……まー、最悪、俺ごと撃てばいいんじゃね!」
 吠えた竜也が、すっと目を細める。
「おっと、その顔はお嬢様の調書で見たことがあるぞ。たしかゲイルとオリバーとか言ったな。安心しろ、殺さずにいてやる」
 大いに動揺した男二人へ視線を投げつけ、ガッチリと足止めする。
「お、俺達のことをどこまで知っているんだ」
「何もかも、だ」
 彼らの素性は既に調査済みだ。灰人が半泣きになりながらゲイルへ殴りかかった。
「なんでこんな事をしやがった! 俺は馬鹿だしガキだ! だからぜんぜん解らねぇ! ……こんな大勢の人を巻き込んで、いいわけねぇだろうが!」
 フリーオフェンスからのスーサイドアタックを叩き込みながら、灰人は魂の底からあふれる感情を言葉に変え、拳と同時に叩きつける。浮かんでくるのは情景。家族達の温かい笑顔やパブの飲み仲間。隣近所の知り合い。そして手にかけた屋敷の人びとの死に顔。ゲイルが何故革命に至ったのかはまだわからない。そのもどかしさを力に変え、灰人は拳で殴りつける。
 ランドウェラがつぶやく。
「なるべく全員生かしたいところだが……」
 槍の猛攻が前衛の灰人と竜也を襲っていた。特に竜也は足止めに忙しく防御もままならない。一本の槍がザクリとふとももに刺さった。
「痛ぅ……!」
 槍を引き抜いた激痛で倒れかける竜也。しかし、やわらかな緑の光が竜也を包み込んだ。大穴の開いていたふとももが緑の抱擁で癒やされていく。あふれでた血が補われ、傷跡が消えていく。
「謀反を起こすような奴らがどうなろうと興味はないが時間をとられるのが癪に触る」
 ランドウェラは緑の抱擁を撃つと続けざまに次の呪文の詠唱に入る。
「青なる青、緑より濃く黄色より淡い同一にして異なる色よ、その本流を衝撃へ変えて顕現せよ、今ここに!」
 ボッ。
 衝撃波が兵の腰から上を刈り取った。噴水のように血が吹き出し、よたよたと歩いた後、どさりと倒れる。
「忙しいから命にこだわってはおられんのだよ」
「そのとおりよ、こんばんは人間の皆さん! 全員殺すわ! そして食べる!」
 殺気満々のロザリエルが華やかに微笑んだ。茨の鎧で身を固めた彼女に隙はない。遠間から両手で大きく弧を描き、焔の薔薇を呼ぶ。槍を持つ男たちをターゲットに、目を奪われるような大輪の薔薇が輝きながら飛んでいく。着弾し、爆発が起こった。
「ぶはっ! 本当に巻き込むやつが居るか!」
「あらごめんあそばせ、ふふ。でも少しはましになったでしょ!」
 竜也をも巻き込んだ爆発は彼の周りの敵の数を減らしていた。だが手薄になったのは一時、すぐに次の槍持ちが前衛へ襲いかかる。どうやら囮班の数減らしはうまくいかなかったようだ。ジョゼに言わせるとこうだ。
『だってアイツら、オイラ達の顔を見るなり逃げ出すから攻撃しようにもできなかったんだよ、ま、許せ』
「ふふん、私は生意気な人間どもをガッツリ殺れるから大歓迎だけどね!」
 ロザリエルが茨を神速で伸ばし、槍兵の頭を精密に撃ち抜いた。右の眼球をえぐり取り、手元までたぐり寄せるとぺろりと舐めて口へ運ぶ。口中で眼球を飴玉のように転がし、彼女は妖しく笑った。
「ひどい目にあわせてあげるの、息をするのも忘れるくらいに! 人を殺すと元気が出るわね! やっぱり私はこの瞬間のために生きてるって実感するわ!」
 門へ詰めかける槍持ちたちはまさに狩られるための兎だった。だが、彼らは長い歯の代わりに危険極まりない槍を持っており、それが恐怖にかられてでたらめに突き出されるものだから反応が難しい。灰人と竜也がその身に何度も槍の穂先を受け、ついにふたりとも地に倒れた。
 脱兎の勢いで槍持ちが門からあふれる。
「まずい、足止めしろ!」
 ランドウェラが檄を飛ばしながら、前へ出てゲイル相手に威嚇術を使う。足止めがなくなりフリーになったからといって逃がす訳にはいかない。ゲイルは威嚇術の直撃を受けて昏倒した。
「……はあ、この際ごそっと死んでも仕方ないッスね…。…かの暗殺令嬢サマからのご依頼だ…今回は依頼主が依頼主だけに失敗出来ないんでね…ああ、胃が痛い…」
 クローネのマジックライフルが輝きを増す。最低ラインの情報源は手に入れた。あとはひたすら殺るべし。クローネが放った魔力の弾丸はオリバーの心臓を貫き、派手な赤い花を咲かせた。
「……屋敷を乗っ取った反逆者の殲滅と…お嬢様が気になるから事情の聴取ッスか…。…で、反乱を起こした奴らですが…最近流行りのアレでしょうかね…何にせよ運の無い奴らだ…。…同情はしませんが…。お、あいつはドノヴァンってやつじゃないッスか…おとなしく死んでもらいましょうかね…逃したらこっちがタダじゃ済みそうに無いんでね……!」
 ロザリエルは歓喜の渦の中にいた。その心根を表すかのように焔の薔薇の花びらが散る。
「あははっ、あははははは! こんなに殺しちゃっていいの? こんなに食べちゃっていいのね! 今夜はダンシングオールナイトよ、あはははっ!」
 門から離れていこうとする槍持ちへ次々と炎花一輪を投げ込んでいく。炎にまかれた槍持ちたちが倒れていく姿は彼女を喜ばせ、さらなる喜悦の高みに押し上げる。彼女の範囲攻撃を恐れて槍持ちたちの歩みがにぶった。そこへ容赦なく仲間の攻撃が雨あられと降り注ぐ。
 さらに。
「あちゃ、倒れてるヤツいるじゃん」
「これはオイラも予想外」
「ご無事ですか皆さん!」
 囮班が屋敷から駆けつけてきた。彼らは戦況を見て取ると速やかに散開し、攻撃態勢をとった。
 残るは槍持ちが五人、そしてドノヴァン、ラス、ジャック。
「そいやっ」
 ジョゼが手負いのドノヴァンへ肉薄し、上段から正中線を切り下ろした。まっぷたつに切り裂かれたドノヴァンがはらわたを吹き出して倒れる。
 ラスがLumiliaを銃撃。銃弾が肩をかするが、彼女の集中を砕くことはできなかった。Lumiliaは詠唱を続ける。
「凍れる静寂よ、我が招きに応じた姿となりて、我と汝の怨敵を凍てつかせたまえ……フロストチェイン!」
 ラスへ反撃の鎖が襲いかかり、蛇のように巻き付いた。一瞬の後、ラスは氷の彫像になっていた。
 残されたジャックは逃げようとした。でもどこへ? 周りはイレギュラーズで固められている。とっさに槍持ちを盾にできるほど彼は邪悪でもなかった。そんな彼をジェックのスナイパーアイが捉えていた。
「ホンット悪いんダケドね~。キミたちもイッパイ殺したじゃん? 自分だけは見逃してくれナンテ、甘いこと言わずに、死んで?」
 こめかみを1mmたりともずれることのない精密な射撃がジャックを襲った。弾丸は脳を破壊し、頭部を通り抜け、血しぶきを撒き散らした。残るは震える槍持ちのみ。
 実質25人全員を相手にしていた大乱戦。勝利したのはイレギュラーズだった。


「残党はいなかった。屋敷の中はカラだよ」
 万が一、敵が潜んではいないかと屋敷を見て回ったジェックが言った。
「まあ居たトシテモ踏み潰すケドね」
 笑顔(多分)で物騒なことを言うジェック。
 ジュノーがロープで捕縛したゲイルを引っ張り出して活を入れる。なんとか話せる状態になった彼はぼんやりとイレギュラーズ達を見回した。
 ランドウェラが高圧的に言った。
「問おう。なぜ蜂起した」
「そ、それは……」
「言っておくが僕は気が短い。長話は無用だ。仲間には申し訳ないことをした。だが相応の事に加担してると理解してるかね?」
「あなた方の素性はすべて握っています。名前、住居、職業、そして家族。……守りたければ、協力していただくしかありません」
 Lumiliaも一歩踏み出す。
 観念したのか、ゲイルはうつむいたままぼそぼそと話し始めた。
 税金の重さや、労役の辛さ、貧乏のつらさ。たしかに彼の経歴は貧乏子沢山を地で行っている。しかし。
「それなりに満足して生活していた。そうなのでしょう?」
 Lumiliaの問いにゲイルがうなずく。
「ではどうして……」
「わからねえ……。わからねえよ。パブでいつものメンツと飲んでるうちに、その、いけそうな気分になったんだよ」
「気分!? 気分で蜂起したのか」
「そんなもんだろ! よその街の噂も入ってきてよ、仲間内で盛り上がってよ、こんなにあっさりうまくいくなんて思わなかったんだよ!」
「死ね」
 ランドウェラが短く吐き捨てた。
 Lumiliaが愕然とし、ジョゼもつぶやいた。
「呆れてものも言えねぇ……。後先考えねぇやつらだと思ってたら本当に考えてなかったのかよ」
「コイツら御令嬢のもとに連れて行ったほうがイイんじゃない? イイ薬になると思うよ。劇薬ダケド」
「…いや、やめといたほうがいいッス。逆に不興を買っちまいそうッス…」
 徒労感があふれだし、イレギュラーズたちはそれぞれにため息をこぼした。
「お前らに何がわかる、俺達だってサーカスを見に行けるような身分になりたかったんだ!」
「サーカス? おまえ、あのサーカスを見に行ったのか?」
「行けるわけねえだろ! たしかにこの村からも何人か見に行ったが、そいつらはこの蜂起とは関係ねぇよ!」
 事件を起こした張本人はサーカスとは関係ない、少なくともこの件に関しては。因果関係が解らず、渋い顔をするイレギュラーズのなかで、ロザリエルだけが目を輝かせている。
「尋問終わり? 食べていい?」
「ああ、報告にいくのもめんどうになるような依頼だ。せめて空腹を満たすのに使ってくれ」
「わあ~い、それじゃ……」

 い た だ き ま す 。

成否

成功

MVP

ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸

状態異常

なし

あとがき

おつかれさまでした。
蜂起理由を見抜いたランドウェラさんがMVPです。
ちなみに兎の脳みそはスプーン一杯くらいだそうです。
またのご利用をお待ちしております。

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