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シナリオ詳細

<Lonely Dance>王子様と希望のくちづけ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●哀しき星の王子様
 夜空が見える大きな天窓と、月のように眩しいばかりのシャンデリア。
 奏楽隊が奏でる優雅な旋律と共に、大広間の玉座から銀髪の男がゆっくりと降りてくる。

「僕のお城へようこそ。ずっと君を待っていたよ」

 星を散りばめたような美しい正装。優しい声音。
 王子様めいた姿のその人物は、普段のダメ人間丸出しの姿からは程遠いが――『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)その人だ。

 ここは蒼矢が見ている"夢"の世界。だからこそ彼は完璧な王子様で、都合の悪い事を忘れてしまったままでいる。

「君達と出会って、異世界を渡り始めてから一年。僕も一緒に成長する事が出来たよ。おかげでほら……すっかり"独り立ち"だ。
 僕はもう、一人でも立派に特異運命座標を導ける。足手纏いなんかじゃなくなったんだ」

 無意識のうちに紡いだ言の葉の中に闇が滲む。
"独り立ち"――。蒼矢は本来、ひとつの身体にふたつの魂を宿した境界案内人だ。

 夢想の城に描かれる完璧な自分。
 それは彼にとって、もうひとつの魂に対するコンプレックスが生み出した悪夢に他ならない。

 眠り姫が王子様の口づけで目を覚ますように、この王子様――蒼矢もまた、現実へ戻してやらなければ。
"いろんな異世界を一緒に巡りたい"
 口癖のように話していた彼の言葉は、嘘偽りないものだったのだから。

●誰かの悪夢は誰の夢?
 遡ること、数時間前。

「集まったわね、特異運命座標」

 蒼矢の同僚、境界案内人ロベリア・カーネイジは横髪をかき上げ耳にかけながら抱いた本を掲げてみせた。

「『誰かの悪夢』という本がここにあるわ。
 蒼矢のお気に入りの異世界だから、彼と共に向かった事のある特異運命座標もいるでしょうね。
 どうやらこの世界に、蒼矢の心が囚われてしまったようなの」

 別の異世界で長らく行方不明となっていた蒼矢。その身が境界図書館に戻って来れたのは、調査依頼を引き受けた特異運命座標の功績に他ならない。
 しかし発見された蒼矢は目を閉じたまま、依然として眠り続けたまま。さすがにロベリアも不審に思い、調べてみたという訳だ。

「私がこんなに手を焼いてる間、蒼矢は夢のお城で王子様ごっこしながら優雅な時間を過ごしていたのよ。
 おかしいじゃない? おかしいわよね。ふふ、全く傑作だわ――。さぁ、現実逃避してる馬鹿を今すぐ図書館に引きずり戻しなさい」

 彼女は終始笑顔だ。だというのに柔らかい空気は微塵もない。
 逃げるように異世界へ飛んだ特異運命座標を見送り終えた後、ロベリアは眠ったままの呑気な男を呆れ混じりに見下ろした。

「本当にいい寝顔ね。まったく……人の気も知らないで」


●鍵尻尾の記憶Ⅱ
――あたたかい。
 目が覚めるとそこは、ふわふわなブランケットの中。
 見知らぬ部屋に戸惑う私へ声が降る。

「お前さん、目ぇ覚ましたのか。大きな怪我はないみたいだが、医者いわく"暫く安静にさせてください"ってさ。
……って、言ったところでどれだけ伝わってるか、分かりゃしねぇな」

 なんと失礼な男だ。
 みゃあと私が不機嫌な声で鳴くと、彼はすまなそうに眉を寄せて笑った。
「機嫌損ねるなよ。落ち着くまではちゃんと面倒見てやるから」

 温かい寝床にまともな飯。部屋の中は狭苦しかったが、出入り自由でさほど困る事もなく。
 いつでも消えようと思えば気紛れに去る事も出来た。
……そうしなかったのは、家主の「おかえり」の一言が思いのほか悪くなかったからだ。

「ははっ。そこがすっかりお前さんの定位置になったな」

 あまり馴れ馴れしくするんじゃない。私は知っているぞ。お前が異世界から来たという事を。何やら祝い事があって、準備のためにここへ通い続けているだけなのだと。全てが終わったら、お前は――。

……。

 いつの間にか、ブランケットには私の匂いがついていた。

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 眠れる王子様を目覚めさせるお仕事です。

※Attention※
このシナリオは『<Lonely Dance>霧の国と飼われた赤』の続編ですが、前回参加していなかった方もお楽しみ戴けます。
https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/3899

また、『鍵尻尾の記憶Ⅱ』はフレーバーです。本編とは関係ないため読み飛ばしても問題ございません!

●目標
 蒼矢を夢から目覚めさせる

●場所
 異世界《誰かの悪夢》
 悪夢に囚われ人が迷い込む不思議な世界。ふわふわの雲の地面に綺麗な夜空。一度迷い込んだら目覚めたくなくなってしまう素敵な場所でもあります。
 今回はこの世界の大きなお城が舞台です。外観・内観ともに西洋風で、空を見渡せる大きな天窓の大広間があります。

●登場人物
『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)
 『誰かの悪夢』という異世界にとらわれてしまった境界案内人。普段はジャケット姿でカジュアルな服装ですが、今はお城の王子様として正装をしています。
 ドジな自分にコンプレックスを抱いており、自分ひとりで何でもやれる完璧の象徴としてこの姿になったようです。

『境界案内人』ロベリア・カーネイジ
 神郷 蒼矢の同僚である境界案内人。働き手が減って大変な中、蒼矢を助けようとサポートにまわっています。
 必要な小道具などがあればある程度は準備をしてくれるようです。

●その他
 目覚めさせる方法はいくつかあると思います。説得はもちろん、お城の護衛兵を殴り倒して無理矢理連れ帰る事もできるでしょう。
 ただ、集まった特異運命座標の中で助けるための方向性がバラバラすぎると上手くいかない可能性があります。
 どういう方法で目覚めさせるか、ある程度相談してからプレイングを書く事をオススメいたします。

 それでは、よい旅路を!

  • <Lonely Dance>王子様と希望のくちづけ完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月03日 22時20分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (4人)

回言 世界(p3p007315)
貧乏籤
ボーン・リッチモンド(p3p007860)
嗤う陽気な骨
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
しろがねのほむら
首塚 あやめ(p3p009048)
首輪フェチ

リプレイ


 天窓に向かい、白い湯気が立ちのぼる。

「クヒヒ! ティーパックをポットから引き上げる瞬間って興奮しません?
 首輪つけて水責めにあった奴隷を引き上げるみたいで」
「あやめさんの発想力は凄いですね。完全に盲点でした」

 話の内容はともかく、『首輪フェチ』首塚 あやめ(p3p009048)と『今は休ませて』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)。綺麗どころ2人が並んでお茶を楽しむ様子は、それだけで絵になるものだ。
 テーブルには彩り豊かなスイーツ達が所狭しと並べられ、添えられた紅茶は香り高く。

「お城のパティシエが、腕によりをかけて君達の為に作ったんだ。気に入ってくれた?」
「……」

 笑顔で蒼矢に問われ、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は怪訝な顔をしながらフォークを咥えた。啄んだショートケーキはお上品な甘さで、胃袋にいくらでも収まりそうだ。
 甘い物は嫌いではない。なのに釈然としないこの気持ち。

(まったく、大層楽しそうな事してるじゃねえかこの野郎。『誰かの悪夢』だって?
 アンタの救出に貴重な時間を割かなきゃいけない俺の悪夢だよ、くそっ)

 今回の依頼が目に留まらなければ、今頃は新しくオープンしたカフェで至福のひと時を堪能している筈だった。予定を返上して引き受けたのは、現実で眠りこけている目の前の男を叩き起こすためだ。それがまさか、不機嫌の理由を見透かされてこんな歓迎を受けるとは。

「カッカッカッ! いつもより不機嫌さ三割増し、ってところだなぁ世界の旦那」
「そんなに分かりやすいか?」
「いいや、俺も似たようなもんだからな」

『嗤う陽気な骨』ボーン・リッチモンド(p3p007860)は紅茶を啜り、周囲を視線だけで見回す。
 城の総力をあげた盛大なお茶会。その派手さたるや、たった4人を歓迎するには手厚すぎる程の迫力だ。あらゆる世界を渡り、綺麗な物を見てみたいというボーンの願いにかなう持て成しでもある。なのに感じる物足りなさ。

「どう思う、あやめちゃん」
「むぐ?」

 咀嚼していたマカロンをむぐむぐと飲み込み、あやめはうーんと小さく唸った。

「蒼矢さんの事も赤斗さん同様よく知りませんが……この世界の性質、及び今の言動から結構…自分に自信がない系だったりします?
 完璧を求める方って得てしてそういう方が多いですし。なまじ周りに自分とは違う比較対象がいたりするとそういう傾向が強い気がします」

 ローテンションなまま己の考えを口にした彼女だったが、仲間達が目を丸くする様を見て、おやと片目を瞬かせる。

「どうしました?」
「すみません。先日の妄想爆発トークみたいな方向で語ってくると思っていたので」
「前回の首輪パラダイスみたいな状況ではないので比較的マトモな私です!」
「まぁでも、蒼矢の旦那のコンプレックス……多分『未熟な自分への苛立ち』と『赤斗の旦那への羨望』などが絡み合った結果だろうが…それで"完璧な王子様ごっこ"で逃避するのは本末転倒だろうに」

 地位の高さとその人物のスペックは、必ずしもイコールにはならない。
 望まぬ魔王としての地位に苦しんだボーンにとって、今の蒼矢は皮肉の象徴に他ならず。

「そもそもの話だが、何で王子様が完璧の象徴なんだ?」

 もう何枚目かの空になった皿を積み上げ、世界は仏頂面で考え込む。

「普通の人より優れてるだろうけど、それでも人の子だよな? ミスもするし万能じゃないし駄目な所だって腐るほどあるはずだ」
「恐らく現実の王子様ではなく、本やおとぎ話に登場する王子様をイメージしているのではないでしょうか」
「……ああ! 成程な。でも俺に言わせりゃアレこそ不完全の極みだろ。物語に起伏を作るため、隙を見せたり弱みに付け込まれたりなんてよく見る光景だ。独り立ちしたいってんなら素直に別の何かになることをオススメするが」
「赤斗さんといい蒼矢さんといい、ちょっと本に毒され過ぎなところがあるかもしれません。でもそんな素直なところがいいところですよね」

 夢を見ている相手を起こすのは少々忍びないが、幸せな夢ほど放っておくと帰って来れないという事を睦月はよく知っている。ある意味、悪夢より性質が悪い。

「連れ戻しましょう、蒼矢さんを。『普段のあなたが大好きよ作戦』、実行です!」


 お茶を飲み終え一息ついた4人の元へ、煌びやかな王子が舞い戻る。
「ごめんね、皆。せっかく来てくれたのに……なかなか仕事が終わらなくて」
「カッカッカ! ちゃんと公務をやれてんなら、いい事じゃねぇか。それに洒落てて様になってるぜ、その恰好」
「本当かい? ボーンにそう言って貰えると、僕も自信がつくよ」
「嗚呼。だがよ……蒼矢の旦那。いつまでその『完璧な王子様ごっこ』を続けるつもりだ? 他の連中も心配してるぜ」

 オッドアイの双眸が見開かれる。突然突き付けられた現実に蒼矢は戸惑いを隠せず、困ったような笑顔で頬を掻いた。

「心配してくれるのは嬉しいけど……ここを離れてしまったら、僕は今までのドジな自分に逆戻りしちゃうんだ。だからずっとこの城で、誰にでも喜ばれる完璧な王子様を――」
「蒼矢さんは完璧になってどうなさりたいのですか」
「どう、って……」
「すべてにおいて満たされるという事は孤独になるということですよ」

 完璧だから崇められる。完璧だから――ひとりぼっち。
 祭具だった頃の孤独な日々を思い出し、睦月の瞳が微かに潤む。

「人は欠けているから手を繋ぎあえるのに、今の蒼矢さんはそれを拒絶していますね。そんなに自分が嫌いですか」
「……うん。だって僕は、赤斗ほど優秀じゃないし、皆に仕事を任せようとして、トラブルを起こしてばかりで――」
「僕も自分が嫌いですよ。だけどそれだけじゃダメです。一馬力は所詮一馬力でしかないのです」

 大きな波乱へ立ち向かうには、一人では難しい。
 だから人は手を取り合うのだと、繊細そうな白い手が差し出された。

「帰りましょう、蒼矢さん」
「……いいのかい、こんな僕でも。捨てたりしない?」
「それこそ今更だろ」

 ここに集まったメンバーは奇しくも前回と同じ――行方不明の赤斗と蒼矢の捜索にあたった仲間達だ。あっさりと見捨てるつもりなら、誰もここに立ってはいない。

「蒼矢の旦那。完璧な奴など居ないし、居たとしてもつまらないぜ。何より、お山の大将気取るなんて蒼矢の旦那には似合わない。誰よりも他者を思い遣れる旦那に戻ってくれよ。
 旦那の長所は他者の為に寄り添い、一緒に歩んで前を向かせるその献身な精神性だろうに」
「ありがとう、ボーン。けれど僕は、君が言うほど大した人間じゃないし、完璧なんて――」

 完璧"なんて"。

 蒼矢の言葉を掻き消すように城内の鐘が鳴る。それはまるで12時のシンデレラ。かけられた暗示を自らの口で否定した事で、魔法が解けていくかのように思考を現実に引き戻される。

「あれっ? なんで僕、完璧な王子様なんて目指しちゃったんだろう」
「嗚呼、残念です……我らが王子。覚めない悪夢を見続けていれば、ずっと幸せだったろうに」

 奏楽隊が演奏を止めて立ち上がり、給仕に勤しんでいた執事やメイドが特異運命座標達と蒼矢を囲みだす。各々が武器を手にするのを見て、あやめは唇の端をつり上げた。

「……クヒヒ! ようやく夢の裏柄が見えて来ましたねェ?」
「王子にはこの城を維持するため、完璧な夢を見続けて戴かなければなりません」
「今の彼が"完璧"ィ? いやはや可笑しいですね。私には『コンプレックス』という首輪を付けられた奴隷に見える物で」

 あやめが振るう舌は名乗り口上の役目を果たし、城の従者達をいっぺんに引き付ける。

「……そもそも、完璧などあり得ないもの。人という者は不完全だからこそ自分に足りないものを補おうと他者と関わり交わり営みを育んでいくものです。それを放棄する方を私は軽蔑します」
「先程から言わせておけば、貴様ッ!」
「だって何でも自分で出来るなんて方、面白味も無ければ助けたいとも思いませんし」

 攻めようとあやめの前でひと塊になる従者達。その様を見据え、ボーンは眼窩の奥――赤い炎を揺らめかせた。

『目覚めろ』

 ドォッ!! と床を突き破り、呼び声に応じた死者の群れが這い上がる。混乱に乗じ、鮮やかに逃げる特異運命座標。動きの遅れた蒼矢を、すかさず睦月が抱き上げる。

「ごめん! 重くない?」
「心配いりません。幼馴染をお姫様抱っこするための予行演習です」

 ホールの扉を蹴破り、廊下を走って目指すは出口。しかしその最中、精霊操作で辺りの情報を集めていた世界が、何かに気付いて舌打ちする。

「出口に結界が張ってあるらしい。解除できる者の条件は――"完璧な王子様"である事」
「つまり暗示が解けた蒼矢さんでは開けないって事ですか。結界の主はいい趣味してますねェ」
「おいおい、来た道を戻るのはナシだぜ。死霊も無限じゃねぇんだ!」

「大丈夫ですよ。ロベリアさん、お願いします!」
『高くつくわよ、私の助力は』

 何処からかロベリアの声が響くと共に、叫んだ睦月の足元へ薄紫の魔法陣が展開され――光の柱が全身を包む。

「目には目を、歯には歯を。王子様には……王子様です!」

 髪はマーガレットに。唇と目元に紅を刺して。
 白を基調にした礼装を纏う睦月の姿は、誰がどう見ても王子様だ。
 放たれた光翼乱破が結界を破り、抱いた蒼矢が敷居を跨いだ瞬間。城全体が蜃気楼の様に揺らぎ、夜空へと溶けていく。
 消えゆく泡沫の夢。その様子を静かに見上げる蒼矢へ、世界がぽつりと問いかける。

「戻りたいか?」
「ううん。僕が踏み出す一歩は、やっぱり皆と一緒がいい」
「それならさっさと、元の世界に戻るぞ……実は早く向こうで食べたいケーキがあってだな」

 まだ食べるのか、なんて笑いが巻き起こり、照れ気味の世界を囲みながら5人はゆっくりと歩き出す。未来へ続く、次の一歩へ――。

成否

成功

状態異常

なし

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