PandoraPartyProject

シナリオ詳細

クルーズ船バルーンパニック!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング



 最近では、海洋は比較的穏やかな日々が続いている。
 今日も白い雲が浮かぶ空を水面に移すほどに海は穏やか。頭上ではカモメが気持ち良さそうに空中を飛んでおり、時折鳴き声を上げていた。
 そんな海洋の海で、波に揺られながらクルージングなど楽しむのもたまにはいいものだ。
 海洋、ローレットによる絶望の青の踏破、豊穣への航路の開拓後は海王種や魔物の出現情報もかなり減り、観光船を営む者が出始めていた。
「うわあ、日の光が煌めいてきれい……」
 水平線を見つめる女性観光者。そのはるか先には豊穣と呼ばれる地があるはずだ。
「たまには海の上で過ごすのもいいもんやねえ」
「そ、そうかな……?」
 傍では子連れの親の子の姿も。子供は初めて海を目にするらしく、少し体を震わせていたようだ。
 海種や飛行種がメインの海洋民だけでなく、貴族を中心に幻想などからも訪れており、海上での一時を楽しむ。
 これが思いの他好調らしく、運営会社もなかなかの利益を上げているのだとか。

 このサイシー号にも、多数の乗船客の姿があった。
 今回のクルージングは首都リッツパークを出港し、アクエリオ島まで向かってから港へと戻るルート。さすがに観光船では絶望の青……もとい、静寂の青まで向かう人はまだそれほど多くはないらしい。
 50名程度の観光客を乗せ、サイシー号はアクエリア島目指して舵を切ったのだが……。
 すぐに船は止まってしまい、なぜか錨を降ろしてしまう。
 さらに、乗船客だけでなく、乗組員達も驚く緊急事態が発生する。
「うわあ、なんだこれは!?」
「なに、この風船は!?」
 突然現れた人型の風船人形が自立して動き、サイシー号に乗る人々をことごとく押さえつけて身動きがとれぬようにしていたのだ。
 増え続ける風船人形達はこの観光船を占拠する勢いで増え、我が物顔で振舞うのである……。


 幻想ローレットへと入った依頼の中に、ちょっとした珍事件の解決依頼が舞い込んでくる。
 依頼者は、妖精を思わせるほどの小さな体躯をした2人の少女だった。
「あれ? ライにカクリ?」
「あっ、リリー、助けてほしいのです!」
 鍔付きの帽子を含めて全身青い衣服を纏ったリトル・ライは、ローレット内でリトル・リリー(p3p000955)の姿を認め、早速抱き着いていく。
「急を要する依頼だよ。リリーとじゃれ合うのはまたにして」
 少しばかり、いや、かなりのシスコンっぷりを発揮するライに、目隠ししたカクリは些か呆れ、彼女をたしなめる。
 やってきた小人の少女達が騒いでいたことでローレットに詰めていた者達が集まると、2人の小人達は事情を話し始めた。

 なんでも、海洋リッツパークの港を出た観光船が魔物らしき者達に占拠されてしまったという。
「魔物は風船を思わせる人型をしていて、自律行動をすることができる反面、攻撃を受けると一撃で破裂するほど脆いそうなのです」
「ただ、風船人形の力や知能はそれなりにあるようだから、押さえつけられた一般人はほとんど抵抗できないらしいよ」
 この事態の解決をと、観光船運営の会社から小型複製体集団「Little」に依頼が入ったらしい。
 しかしながら、お留守番役の博士ハルカが依頼を受けたものの、動けるリトルはライとカクリのみだったという状況だったらしい。
 彼女達もさすがに多勢に無勢とあり、リリーのいるローレットへと助力を求めに来たというわけだ。
「船の上を圧迫するほどに魔物が増えているのです」
「だから、わたしカクリ同伴の突撃班と、ライ同伴の狙撃班に分かれて船の制圧を考えているよ」
 船は港を出て僅か10~20m程度のところで碇を降ろして停泊している。
 その為、港にある高台や建物からでも十分、狙撃が得意な者なら甲板の敵を狙うことは可能だ。
 また、甲板に上がる突撃班が残る敵を蹴散らしながら犯人を捜すことになるだろう。如何にして捜索するか手腕が問われるところだ。
「状況は以上なのです」
「それでは、皆さん、よろしくお願いね」
 ライ、カクリの2人は改めて、リリーを含むイレギュラーズ達へと依頼の解決に助力を願うのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 今回はリクエストシナリオのご依頼、並びにご指名ありがとうございます!
 魔物に占拠された観光船の解放、及び、犯人の確保を願います。

●目的
 観光船サイシー号の解放、風船人形を操る犯人の確保。

●概要
 海洋の観光船サイシー号に多数現れた魔物によって占拠されてしまいました。
 この魔物を全て殲滅するのが目的ですが、いきなり相当数の魔物が現れている状況には何か裏があるはずです。
 討伐を進めながら、それを確認していただければと思います。

●魔物
〇風船人形×無数
 数は100体以上いるようです。風船の為、1撃で撃破でき、一般の風船が破裂する程度の衝撃が発生します。
 そのほとんどが人型ですが通常の人間程度に個体差があります。
 また、ごく一部、獣、鳥といった姿をしております。
 いずれも乗船客を捕えるよう動く他、敵対者とみなした者には殴り掛かったりのしかかったりと肉弾戦で攻撃もします。

●NPC
 小型複製体集団リトルの所属員で、今回の事件の依頼者でもあります。
 いずれも女性、全長30センチ程度。リトル・リリー (p3p000955)さんの関係者です。

〇カクリ……目隠ししている小人です。突撃担当。魔法で空中を飛び回りながら投げナイフを操ります。
 
〇ライ……青い服を着ている小人です。狙撃担当。今回は魔導ライフル装備。

●状況
 海洋を出港した直後の観光船が突然多数の風船に占拠されて、乗組員も乗船客も皆身動きが取れずにいます。なお現状、死傷者は一切発生していないようです。
 風船は自律して行動も可能なようで、船に乗っている者達を物量で圧倒し、押さえつけているようです。
 これらを撃破しながら、風船人形を操って船を占拠した犯人を見つける必要があります。

 作戦はリトル達の説明の通り、突撃班、狙撃班の二手に分かれて敵の討伐を目指します。
 具体的な作戦は皆様次第ですが、風船人形のみを狙う射撃班の腕、手早く戦場を制圧して犯人を見つけ出す突撃班の手腕の両方が問われることになるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • クルーズ船バルーンパニック!完了
  • GM名なちゅい
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月30日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

R.R.(p3p000021)
破滅を滅ぼす者
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
カノン=S=クロイツ(p3p007912)
あなたの後ろに♪
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
流星の狩人
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと

リプレイ


 海洋の港へとやってきたローレット所属イレギュラーズ達。
 一行は、依頼主でもある身長30cmほどの小人達、小型複製体集団リトルの所属員であるカクリ、ライの2人に引き連れられる形で、現場を目指す。
 故郷へとやってきた鷹の飛行種『風読禽』カイト・シャルラハ(p3p000684)はそんなリトル達を微笑ましい視線で見つめて。
「リリーみたいなちっこいのがいっぱいだな」
 そのリトルには、水色と緋色の瞳を持つ白髪の小人の少女、『緋色の翼と共に』リトル・リリー(p3p000955)も含まれている。
「まあ、一番可愛いのはリリーだけどな!」
 そのリリーは2人のリトル達と共同で当たる依頼とあって、テンション高くはしゃぎ気味だ。
 ライから妹のように懐かれ、カクリからは少し心配されていたそんなリリーの為、カイトもまた頑張る気構えである。
 ややシスコン気味なライより些か殺気立った視線を感じていたらしいが、カイトは頑張ってスルーすることにしていたらしい。
「……! リリーさんに似た人たちがいるね……。かわいい……」
 無表情な狼の獣種少女、『恋の炎に身を焦がし』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)は作戦に臨む小人達に瞳を輝かせる。
「小さくて可愛い子たち……」
 『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)もリトル達の姿に和みかけるが、すでに目的の為てきぱきと動くその姿に目を見張る。
(この戦闘に対する手際の良さ。……リリーさん達って何者なんだろ……?)
 そんなことをウィズィが考えていると、目の前……出港してすぐ、碇を降ろして停泊している観光船サイシー号の姿を視認する。
「って、今はそんな場合じゃないね……」
「ええ、兎に角目の前の人達を救うのに集中!」
 気になる小人達から、フラーゴラもウィズィもそちらの船の乗客の救出へと思考を切り替える。
「何スかアレ……」
 緑のメッシュが入った黒髪の青年、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)はその船の異様な状況に驚く。
 港から視認できる範囲でも、多数の風船が船を占拠しているのが分かる。
 それはある意味でメルヘンチックだと葵は感じたのだが。
「ただそれが全部魔物だってのが何かな……生産コスト低いのか……?」
 その事実に葵は思うことがあったようだ。
「海上のクローズドサークル。いや、どっちかっつーとシージャックかこれ」
 異世界転生して混沌の地にやってきた元男子高校生、『深緑の狩人』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)は弓を準備しながら、この状況をあれこれ考える。
「的が多いのはいいことだ、なーんて言ってられねー数だな」
 よくよく見れば、そのほとんどが人型をとっており、乗客を押さえつけているのが見て取れる。
 いきなりあんなのに襲われたら怖いだろうと、ミヅハは現状の乗客の心境を推察する。
「にしても連中、何を死体か分からんな。少なくとも、『破滅的』ではなさそうだが」
 全身のかなりの部分を包帯で覆う『破滅を滅ぼす者』R.R.(p3p000021)は、その風船人形達が乗客を襲いこそすれ、傷をつけている様子は感じられない。
 それだけに、R.R.には敵の目的をはかりかねていて。
「何にせよ、楽しんでいる人々を掻き乱す敵である以上は、滅ぼさない理由は無いか」
「犯人の目的もわかんねーし、被害の少ないうちに早く助けてやろうぜ!」
 R.R.に同意し、ミヅハも狙撃の準備をとリトルの1人、青い服を着たライと話し始める。
「そうっスよ、これ以上被害が拡大する前に何とかするぞ!」
 口調を変えた葵も高台の位置を確認し、そこから船上の敵の狙撃へと当たるようだ。
「リリーは突撃、かなっ。さ、カクリ、行くよっ!」
 一方で、楽しそうに、リリーは同胞である目隠しをしたリトルのカクリに声をかけ、小舟へと乗り移っていくのである。


 さて、観光船サイシー号に突如現れたという風船人形の対処の為、イレギュラーズのチームに依頼主の2人のリトル、計10名は狙撃班と突撃班に分かれて作戦に当たる。
 まず、足の踏み場もないほど船を占拠する風船人形を狙撃班が狙い撃ち、空いたスペースを利用して突撃班が船に乗り込み、狙撃班が見えない部分を含めた風船人形の対処に当たり、この事件を引き起こす犯人を探し出す。
 港の高台へと登ったR.R.、葵、カノン、ミヅハにリトルのライの5人は、船の状況を改めて確認して。
「それでは、始めるのです……!」
 ライの合図で、攻撃を始める狙撃班。ライ自身も魔力銃手にし、魔力を込めた弾を早速放つ。
「まず突撃班の動線確保……」
 改めて、高い場所からサイシー号の甲板を見下ろし、計算された狙いでサッカーボールを蹴り出す。
 ボールは早速、甲板手前柄の風船人形へと命中し、破裂していく。
 こと防御面に関して、風船である相手は一撃を与えれば破裂してしまう。
 今回は狙撃手としての元が求められる状況。おかげで、R.Rは幾分か戦いへと臨む。
「戦いに楽しみを見出す日が来るとはな、俺も変わったものだ」
 自らの変化を実感するR.R.は少し気分を高揚させ、地面へと伏せる。
 マスケット銃「鎮魂礼装【エコー】」に包帯を巻きつけたR.R.は破滅を纏った魔弾を放ち、次の瞬間、風船人形を破裂していた。
「んふふー、射的♪ 射的♪」
 飛んでいる風船を狙う機会など中々ないからか、カノンも気分良く構えをとる。
「えへへ、いっぱい撃っちゃうよー!」
 彼女が愛用しているのは、片腕に嵌めて使うアームド・ガン。
 これで片っ端から風船人形を撃ち抜こうとカノンは待ちきれない様子。なお、彼女は一部鳥や獣の形をした風船がいると聞いており、そちらを狙って発砲していく。
「背中は俺達に任せてくれ」
 ミヅハもまた鳥獣型の狙い撃ちをと考えており、突撃をはかるメンバーをサポートする。
「狩人としては、むしろこっちのほうが狙いやすいんだよな。腕の見せ所ってやつだ」
 海の嵐を切り裂いた伝承を持つ弓「天穿つアーカーシャ」を引き、ミヅハは早速風船の討伐を開始していた。

 一方、小船に乗って甲板の風船人形が減るのを待っていた突撃班。
 こちらはリトルのカクリやリリーがバックアップする形をとり、イレギュラーズが先行する。
 狙撃班が風船を破壊したことで、甲板へとロープを使って乗り移っていく突撃班。
「ワタシたちが来たからにはもう大丈夫だよ……安心して……」
 まだ、多数が風船人形に捕らえられたままの甲板上で呼びかけるフラーゴラ。
(大袈裟な物言いだけど、とりあえずパニックにならないようにさせなきゃ……)
 とはいえ、まだまだ風船の数は多く、フラーゴラもまた直接その迎撃へと当たっていく。
「一気に四枚抜きだぁ!」
 カイトも後ろにリリーの存在を感じながら気合いを入れ、炎を纏った羽を飛ばし、先手を取った風船に何もさせることなく破壊していく。
 ウィズィはこんなこともあろうかと、風船が近場で破裂した時に備えて用意した耳栓で鼓膜を保護しつつ、上空へと鳥のファミリアーを向かわせる。
 船上に怪しい人影がいないかとウィズィはチェックするのだが、残念ながら、一目でそれとわかる存在は現状確認できない。
「さあ、Step on it!! 手早く終わらせますよ!」
 大きなナイフ「ハーロヴィット・トゥユ」を手に、ウィズィも突撃していくが、その後ろからリリーとカクリも続く。
「後方支援なら任せて!」
「リリー、前に出すぎたらダメだよ」
 相手は一撃与えれば破壊できるほどに脆い相手。
 ならば、リリーは魔道銃「DFCA47 Wolfstal」で狙い撃つのみと、友達の心配をよそに風船人形を破壊していくのである。


 無事、突撃班が観光船サイシー号に乗り込んだのを狙撃班も視認していたが、まだまだ風船人形は多く、相手を狙い放題である。
「次は、あっちか!」
 狙撃にあって、葵だけはサッカーボールを使う。 
 両班の意思伝達手段はやや乏しい状況らしく、できるだけ突撃班の手を煩わせぬよう、葵はメンバーの動きを先読みする。
 甲板の上で動きやすいように。被害に遭う乗客を助けられるように。葵はガンガン風船を潰していく。
 R.R.は甲板上を動く敵を優先して狙い撃つ。
 必然的に乗客を抑える敵を多めに狙う形となり、突撃班の人質救出にも繋がるポジションだ。
「あんた達は破滅ではないかもしれんが、まぁ滅びを知れ」
 風船人形が苦痛を感じるかは分からないが、R.R.は一瞬で破壊してしまう。
 リトル、ライもまた人質救出を優先していたようだ。
 ただ、こちらは姉と慕うリリーと離れたこともあり、彼女の所在を把握せずにはいられなかったようである。
 一方で、一部違った動きをする風船人形を狙っていたのはカノンだ。
「さ、カノンと一緒に遊びましょっ♪」
 事前情報だけだと、鳥に獣がいると聞いていたのだが、それらがどう動いてくるのか楽しみにしていた彼女だ。
「狙い撃つよぉ!」
 船の上を見回し、早速浮遊していた1体をカノンは撃ち抜く。
 さらに超視力で次なる鳥獣型の発見に努める彼女だったが、自らも狙われる可能性を全く考えてはおらず。
 いつの間にか迫ってきていた鳥型が頭上から覆い被さってくる。その力は思った以上に強い。
 全身を掴まれたカノンは瞬く間に体力を削がれ、パンドラの力を砕いて抵抗する。
「そっちばっかり見てると危ないぜ!」
 そこで、ミヅハがハイセンスでカノンが襲われている状況に気付き、ワンホールショットとも呼ばれるアーチェリーの技で仲間を襲う鳥型を破裂させる。
「念のためと備えてよかったぜ」
 ミヅハはホッと一息つき、再び観光船へと確認する。
 敵の数は依然として多く、ミヅハは気力を使わず攻撃できる継ぎ矢を射ち、時間をかけずにサクサクと四つ足で移動する獣型を倒していく。

 突撃班も観光船の甲板で乗客の解放を進めて。
「手出しはさせないんだから……! 狼の爪牙、喰らえ……!」
 フラーゴラはハイセンスで感知した乗客に覆い被さる人型へと格闘で破裂させ、下で動けなくなっていた観光客を助け出す。
 さらに、船尾方面へと風船人形が集まるのを見て、フラーゴラは滅茶苦茶に暴れ、纏めて敵の数を減らしにかかる。
「こっちです!」
 ウィズィは風船を見つければ名乗りを上げ、引き付けに当たる。
 敵と判断すれば、風船は襲ってくる。それを利用し、茨の鎧を展開してウィズィは相手の自滅を待つ。
 ただ、その際、風船が破裂する音で乗客が驚くのが少し厄介だ。
「風船が破裂します! 皆さん耳を塞いで!」
 ウィズィは人々を驚かせぬよう配慮し、叫ぶ。
 風船が破裂すれば、彼女はすぐに状況説明。
「大丈夫です、ただ風船が破裂しただけ! 無害ですよ!」
 そんな親切丁寧なウィズィに、人々も好感を抱いていたようだ。
 カクリと一緒に仲間を追い、銃で狙い撃って風船人形を破壊していたリリー。
「出来るだけ数減らさなきゃ!」
 多少後手に回っていた部分もあったが、彼女はファミリアーとした海鳥を使い、仲間達と状況伝達できるよう試みる。
「……あれ、リリー、思ったより忙しい……?」
 とはいえ、この場には同じリトルのライやカクリがいてくれる。
 それだけに、リリーもしっかりと自分にできることをと奮起して。
「その分犯人見つかったらボコボコにしてやらなくちゃねっ。さ、行こ行こ♪」
 そんなリリーをカバーするように、カクリは立ち回っていた。
 カイトはというと、船の中へと物質透過で潜入しながら、風船の居場所を探る。
 捕まっている乗客を見つければ、カイトは爆翼を発して風船を割り、救助に当たる。
「俺が来たから安心しな!」
 自信満々に語るカイトは海洋での知名度は高い。ヒーローの助けに、乗客は目を輝かせていた。
(閉所のほうが風船も入ってきにくいしな)
 乗客はある程度集めておきたいと、カイトはできるだけ同じ客室へと乗客を匿っていくのである。


 目に見えて、風船の数は減ってくる。
 狙撃、突撃班双方が上手く敵を対処していたこともあるのだろう。
 ただ、風船人形も警戒を強めており、外敵の排除にと動いていて。
 ふわふわと近づいてくる鳥形に気付く葵は、どうやらそいつが自分を狙っていることに気づいて。
「えぇい邪魔だ、鬱陶しいわ!」
 葵は真紅のガントレットで直接殴り掛かり、破壊する。ライもまた銃弾を撃ち込み、別の鳥型の破壊に当たっていた。
「……そういえば、犯人についてなにもきいてないなー」
 ひたすら獣型を発見に努めて撃ち抜くカノンもそうだが、ここまで犯人の情報がない。
 レーダーで逐一スキルの使用について確認するR.R.。
 この段になれば、狙撃班から視認できる風船人形の数も減る。
 犯人はこちらに向かっている可能性も考えていたR.R.は、自らの周囲にも警戒を強めていたようだ。
「けど、これだけの数が怪しまれず、乗り込んでるってのはなんかおかしいよな……」
 相手が風船であれば、空気を抜いた状態で詰み込んだのだろうかとミヅハは考える。
 ただ、間違いなく犯人は船にいる。彼はそう確信していた。

 ある程度甲板上の風船を排除した突撃班は、狙撃班からは見えない船室方面へと移動する。
 乗客や乗組員の避難に当たるフラーゴラだが、多数に囲まれぬよう来がけながら、嗅覚を働かせて風船と犯人の匂いを嗅ぎ分けようとする。
 カイトは船室へと潜り込みながら、一ヵ所に集まる風船を発見して火災旋風を引き起こし、敵を一気に薙ぎ払う。
「連続爆破は気持ちいいな!」
「……でも、風船、ちょっとうるさいかな……」
 ハイセンスを働かせるリリーにはその音は大きすぎたようである。
 船内にはまだ風船が残っている。リリーは投げナイフで風船を破裂させるカクリに助けられながらも、自らはファミリアーでネズミを使役し、敵の捜索に当たる。
「何か物が発生源になってるのかな?」
 発見した人型風船へと銃弾を撃ち込みつつ、リリーは推論を巡らす。
(わたしが犯人でかつ身動き取れるなら……)
 風船人形の対処を続けるウィズィは犯人の状況に立って考える。
 その場合、ウィズィならまず間違いなく取り押さえられている乗客のフリをする。
 助けた乗客もウィズィは疑ってかかり、感情探知で一人ずつチェックして。
 そこで強く感じた『焦燥感』を、彼女は逃さない。
「…………見つけた!」
 容赦なく、ウィズィが眼光を向けた相手は……。


 程なくして、狙撃班も船へとやってくる。
「もう、大丈夫だよ……」
 乗客、乗組員全てに怪我はなし。フラーゴラがパニックを起こす人々の治癒に当たり、安心させる。
 風船人形騒ぎもようやく終息し、観光船に乗っていた者は皆、安堵の息を漏らしていた。
 ただ、ミヅハや葵、カイトらは残る風船をしっかりと排除すべく、船内隅々まで捜索し、潰し続けていたようである。

 さて、ウィズィが発見したその犯人。フラーゴラやリリーも直接ハイセンスの嗅覚で確認し、間違いないと断定したのは、なんと1人の人間種の少女だった。
「かわいい女の子だね♪」
 自身が一度風船人形に倒されたカノンだったが、可愛らしいその犯人の姿には目を輝かしていたようだ。
「どうして、風船の魔物を操ってまで船を止めたんですか?」
 じっとウィズィに見つめられる少女は泣きそうな表情をして。
「だって、海怖いんだもん……」
 はるばる幻想から両親に連れられてこの観光船に乗った少女だが、心底海に出るのが嫌だったらしい。
 風船で人形を作る力は元々持っていた彼女は今回もこっそりと沢山のしぼんだ風船を持ち込んでいた。
 ただ、いざその力を使って風船人形を作り出したものの、彼女の不安定な感情と魔素の影響を受けて魔物化したようである。
 そんな理由を聞いたR.R.は破滅が原因でないと判断して。
「まぁ、俺はあんたを滅ぼすほどの動機もない」
 罰を与えるのが彼女の親か、運営会社か。それはR.R.には興味のないことだ。
「ま、平常運転は可能だし、問題ないならそれでいいんスよ」
 かなり大事にはなってしまったが、事なきを得たこともあり、運営会社は寛大な処置をとって少女を港へと降ろすことにしたようである。
 彼女の両親はもう少し少女が大きくなって海に興味を持つようになってからまた観光船に乗りたいと、出直すことにしたようだった。

「本当に助かったのです」
「皆さんのおかけだよ。ありがとう」
 無事、事件も解決し、リトル達も感謝の言葉を口にする。
「こちらこそ、楽しかったよ」
 喜ぶリリーがあまりに可愛いと感じたのか、カイトが頭をなでなでしたり、翼でぎゅっと抱きしめたりする。
 そんなカイトへとライは冷ややかな視線を向けていたが、彼女は全く気にしない。
「だって、リリー大好きだしな!」
 屈託ないカイトの言葉に、リリーは思わず顔を真っ赤にしてしまっていたのだった。

成否

成功

MVP

ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ公開です。
 MVPは犯人を発見したあなたへ。
 今回はリクエスト、並びにご参加、ありがとうございました!

PAGETOPPAGEBOTTOM