PandoraPartyProject

シナリオ詳細

紅葉狩り

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●赤く美しく染めて
 ――足りない。

 もっとだ。もっと赤く、もっと朱く、もっと紅く。より美しく染め上げよう。
 ああ、これじゃだめだ。まだ足りない。この程度じゃとても満足なんてできない。
 なら、もっと狩ればいい。もっと喰らえばいい。

 ”ソレ”は欲していた。より一層、己を彩るために。そのために欲していた。何よりも紅い色を。

 ――即ち、血を。

●人狩り紅葉
「桜の木の下には死体が埋まっている、なんて話もあるけどねぇ……」

 ふと現れた見慣れぬ境界案内人。怪しげな風体をした彼が一冊の本を懐から取り出す。

「まぁ桜は時期外れなんだけど、似たような類ではあるのかもしれない」

 ――なんたって木であることには変わらないんだから。

 そう嘯くと本を開き、誰ともなく語りだす。

「今回のお相手は1000の齢を経た紅葉の古木だ。とある森の奥で結界を張り、人や動物を誘い込んでは殺して喰らい。その血をもって自らの葉を紅く染め上げようとしている」

 まさしく血化粧というわけだ。

「そこで諸君にはこのはた迷惑な樹を切り倒してもらいたい。手段は問わないよ」

 すでに近隣の村からは行方不明となった人も出ている。皆、何らかの理由で森に立ち入り、件の紅葉に惑わされて帰らぬ人となってしまった。
 これ以上の被害を出さないためにも、早急に討伐する必要があるだろう。

「なに、場所については問題ないだろう。あちらさんは積極的に人を誘っているようだし、森の中を歩いていれば勝手にたどり着ける。けれどもいくら相手が木だからといても油断は禁物だよ」

 木である以上、今いる場所から動けないとはいえ、やはりそこは1000の月日を重ねた老怪。枝を振るったり、地中から根を伸ばして突き刺したりと普通の木ではまずありえない攻撃手段を持ち合わせているようだ。

「そんなわけで諸君。この紅葉の怪異を討ち取ってもらえないだろうか?」

 油断さえしなければそう難しい話でもないしねぇと、そう告げるなりパタリと本を閉じて立ち去ろうとする案内人。

「それにしても、血なんて時がたてば赤錆色に変わるというのに……それで己を染め上げようだなんて美しさを求める怪異にとっては皮肉な話だと、そう思わないかい?」

NMコメント

 特異運命座標の皆様、こんにちは。外持雨です。
 そろそろ秋だなぁということでここは季節を感じられるようなのを一つ。

●目的
 ・森の奥に立つ紅葉の古木の討伐(手段問わず)。

●舞台
 人里から少し離れた場所にある森の奥。鬱屈と茂った木々が囲む中、人狩り紅葉の周りだけ拓けている。

●紅葉について
 1000年の時を経て自我を持ってしまった紅葉の古木。森中に霧の結界を張り、迷い込んだ動物や人を己の元へと連れてきては惨殺。血で染められた葉は紅く濡れている。
 攻撃手段は主に枝を振り回し掴みかかる。地中から根を伸ばす。の二つになります。
 それほど強くはない(イレギュラーズ目線)のでさくっとやっちゃえばーさーかー。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。

  • 紅葉狩り完了
  • NM名外持雨
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月03日 22時20分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ライセル(p3p002845)
Dáinsleif
ラクリマ・イース(p3p004247)
白き歌
そよ(p3p008826)
巨腕の雨鬼
彼岸 月白(p3p009118)
此岸より臨む

リプレイ


 霧薫る、とはきっとこういった情景を指すのだろう。しっとりと服の袖を濡らしてくる深い霧に包まれ、雨上がりでもないのに青々とした森の草木が雫の珠を抱えている。どこか心休まるような、そんな光景。

 ――ただしそれは、その霧に混じって生臭い臭いが漂っていなければ、の話。

 立ち入るまではただの森に見えたというのに、一歩踏み入ればここがすでに相手の領域であることを否応にでも認識させられる。”誰か”が、いやこの場合は”何か”が見ているという、そんな薄気味悪い予感。

「美しい景色が見られるかと思ってみれば、人狩り紅葉とは……」

 折角の景色も安心して楽しめないのなら意味はない。早急に討伐してしまわなければと意気込む『此岸より臨む』彼岸 月白(p3p009118)。

「ええ。例え長く生きた森の一部、それも守るべき木々と言えど容赦はしません」

 『冷たい薔薇』ラクリマ・イース(p3p004247)もまた、件の紅葉を切ることに異論はない。だが彼の表情はどこか複雑そうなである。

 足元の草を踏み分けながら、ただ漠然と歩いているだけだというのに、次第に血の臭いが増していく。
 自分たちが誘われているというのは理解していても、なおのこと引くわけにもいかず、ただ足を進めていくしかない。

「どうやら近いようだねえ。ラクリマ」

 魔剣の柄へと手を伸ばしながら、『Dáinsleif』ライセル(p3p002845)は己が恋人の名前を呼んでと注意を促す。そこへ、

「着いたわよ」

 ただ一言、『巨腕の雨鬼』そよ(p3p008826)が告げたと同時。

 ――フッと、霧が晴れた。


 一瞬で霧が晴れると同時、視界に飛び込んでくる一面の紅。
 幾程の歳を重ねたのか、そこに聳えるは巨大な一本の紅葉の木。幹の横幅だけで軽く人の背を越すほどの大樹。

「ご覧よラクリマ。紅葉が綺麗だねえ」

 ライセルが暢気にも告げた通り、見事に紅く染まった枝葉は綺麗ではある。だが漂ってくる死臭は、むせ返るほどの血の臭いは、如何に美麗であろうとも誤魔化せるものではない。
 間違えようがない。これが人を餌食に己を彩る紅葉なのだと。

「さあ掛かってこい! 俺が相手だ!」

 勇ましい掛け声は開戦の狼煙。ライセルが吸血の魔剣、Dáinsleifを鞘から抜き放つと同時、敵意を察したのか、無数の根が地中からイレギュラーズを襲う。
 だがその槍が彼らを貫くことはない。

「させません」

 刹那、極小の冬が訪れる。凍てつき、霜の降りた根が硝子細工の様に砕け散っていく。崩壊していく氷像の中央に、ラクリマはただ静かに君臨する。

 しんと染み渡る静寂。だがしかしそれも長続きはしない。再度大地を割って現れた根の束が今度はラクリマを背後から狙う。

「させるものか!」

 考えるよりも先に身体が動く。守りたいもののために、ライセルは自らが盾となることを選択する。

「俺は、負けない!」

 割り込んだ彼の身体を木の根は容易く切り裂き、貫いていく。だが彼もまた負けじと、鋼の翼を盾にしながら、手に持った剣を振るう。おかげでラクリマは無傷ですんだが、ライセルの方はそうはいかない。幸いにも傷は浅いが、全身の痛みが身体の動きを鈍らせる。力が抜けていく。膝が言うことを聞かない。

「まだだ。まだ、俺は!」

 傷を負ってなお、ライセルは立とうとする。守りたい誰かが背後にいるのだから、膝をついてでも倒れることを己に許さない。
 だが同時にまた、紅葉の動きも止まる。その理由は気配から察するに、おそらくは歓喜。

 ――この獲物もまた、血を流す。

 自らの糧にできるという歪んだ喜び。

 その空隙を月白が舞うように振るった刃が斬り拓く。ライセルの血を吸った根が微塵となって散っていく。

「さあ、早く立つのよ。アレはそう長く待ってくれそうにないわ」

 負傷したライセルを手早く回復していくそよ。だがしかし、彼女の顔色はあまりよろしくない。この場所はあまりにも相性が悪い。土地に染み込んだ血に、怨嗟の声に、今にも酔いそうなほどだ。

「それでは気を取り直して……すべて、斬り伏せてしまいましょう」

 残った周囲の根を切り払い、再度立ち上がったライセルとともに並び立つと、月白は力強く宣言する。


「凍り付け」

 己が恋人を傷つけられて、ラクリマにあるのは怒りだ。だが燃え滾る憤怒は抑え込み、思考は真冬の湖面のように澄み渡っている。

 ――根が飛び出してくる。

「凍てつけ」

 ――根が突き出される。

「凍れ」

 反撃の暇など与えない。土から出てくることも許さない。土の中に捕らわれたまま停止しろ。

「……これ、私の仕事ないんじゃないかしら」

 呆れたように呟くそよ。
 向こうの方で根や枝と斬り結んでいるライセルや月白が怪我を負うたびに彼らを回復していく。だがここはラクリマの独壇場。動いている根はもうほとんど見当たらず、回復役としての彼女の仕事はまるでない。仕事がないのは確かに良いことではあるのだが……

「でもなんだか癪だし、ほんの少しだけお手伝いしようかしらね」

 ほんの少しのお手伝い、それは相手にとっての悪いことが重なるようにとのお呪い。ただし彼女が行った場合、それはもうある種の因果への干渉だ。二度あることは三度ある。普段であれば不運だったで済ませても、それが続けばもはや運命そのものを弄る行為に等しい。

「恐ろしい御仁だ……」

 迫りくる根や枝を、ライセルと共に斬り伏せていた月白がふと振り返ると、そこにあったのは霜の降りた大地。この一帯をすべて白く染め上げるほどの威力。それがたとえそよの後押しがあったからだとしても味方である月白も寒気を覚えるほど。自身が根を斬り伏せていくよりも何倍も速く。霜が、冷気が、大地を侵食し、根を辿って幹を、枝葉をも凍らせていく様には薄ら寒いものを覚えずにはいられない。

「先達の技はこれほどとは……私も精進しなければ」

 そう言いながらも最後の悪足掻きとして振るわれた枝を軽く切り払い、刀を鞘に納めてふと見上げる。

 ――視線の先、そこには紅かったはずの紅葉の樹が白銀の氷像と化していた。


 ――静謐。

 時すらも凍ってしまったかと錯覚するような静けさの中、ラクリマはただゆっくりと足を進めていく。
 目指す先は紅葉。樹を凍てつかせてもなお、恋人を傷つけられた怒りは収まっていない。その手にあるのは蒼剣のオスティアス。
 おもむろに振りかぶり、横向きに一閃。ただそれだけで停まっていた時が動き出す。
 一息で振り抜かれた剣の軌跡からヒビが伝わって行き、やがて轟音と共に真白に染まった大樹が崩れ落ちていく。

「ラクリマ、怪我はないかい?」
「大丈夫。それにコレからはもう、意識の欠片すらも感じられない」

 いつの間にか傍に佇んでいたライセルへと振り返る。すると瞬時に険しい表情が解けていき、一変して浮かぶのははにかんだ微笑み。

「そう? なら紅葉狩りに行こう! こんなのじゃなくて、もっと普通のを」

 そう言い放つやラクリマの手を握りしめ、颯爽と歩きだすライセル。まだ少しばかり早いとはいえ、すでに秋の息吹はこの森に訪れているのだ。探せば真に綺麗な紅葉や銀杏も、きっとみつかることだろう。

「ちょ、ちょっとまって」
「え、恥ずかしいの? ならマントを貸してあげるね」
「いえ、そうではなくて……ってマントを二重にしてどうするんですか。その、マントじゃなくて……手で、手が良いのです……」

 先の怒りはまるで嘘のように。そこにあるのは恋人の一挙一動に振り回されるだけの微笑ましい姿。
 わいのわいのと騒ぎながら、二人で賑やかに探検に出かけていく。

「あらまあ、まったくお熱いことね。月白君も慣れてないにしてはよく頑張ったわ」
「いえ、まだまだ力不足を痛感いたしましたよ。ですがおかげでいい勉強になりました」

 そんな和やかな光景を目に収めると、月白は踵を返す。もうこの場に用はないのだから、いつまでも留まっている意味はない。帰り際に少しばかり寄り道をしても罰は当たらないだろう。そんな考えを抱きながら歩き出す。

「ああでも。せめて貴方たちの魂に救いがあらんことを」

 ただ最後に、救われなかった人々に、哀れな犠牲者たちに安らぎを。そうそっと祈ると、そよもまたこの場を後にする。

 ――ゆっくりと人の気配が遠ざかっていき、安穏とする広場。ただ残り香のような氷の欠片は、吹き抜ける涼やかな秋の風がゆっくりと溶かしていった。

成否

成功

状態異常

なし

PAGETOPPAGEBOTTOM