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シナリオ詳細

<幻想蜂起>押しひしがれた反逆

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


●ある貴族
 ゲイヤ家の当主は独自に金で雇った傭兵たちを広間に集め、指示を出すと最後にこう言った。
「もし、女子供がいれば人質として屋敷へ連行しろ。
 ──あとはそうだな。男も女も、片目、片手が無くとも、働くことはできるだろう」
 その日、使用人たちのほとんどは自室での待機を命じられたが、数名の少年たちは当主の手伝いとして傍に控えていた。
 震える少年たちに気付いた当主は意地の悪い笑みを浮かべて言った。
「そうか、お前たちはあの村出身だったな。無論、きちんと仕えているお前たちに何かしようと言うわけではないし、お前たちの家族の扱いは考えてやるぞ。
 だが、裏切った時は……わかるな?」


●トリコット村
 小さな領地だった。
 そこを治めるゲイヤ家は貴族と言ってもほとんど力は無かった。かつてはもう少し広い領地を持っていたこともあったが、先王フォルデルマン二世が崩御した後、暴走し始めた他の貴族たちとの喰い合いに負けて剥ぎ取られてしまった。
 今、ゲイヤ家が支配するのは屋敷に近いトリコット村を始めとしたいくつかの小さな村だけであり、その財はもう一般的な貴族のそれとしてはささやかなものだった。
 だが、だからと言って、ゲイヤ家の人々が残った領地の村人たちを大切にしたかと言うと勿論そうではない。
 選民的な思想はゲイヤ家の人々の心にもしっかりと根付いていた。それどころか、彼らの矜持は今の生活を良しとはしておらず、それゆえに村人に対する先を考えない高圧的で横暴な振る舞いは悪化の一途を辿っていた。
 そんな状況下で村人たちが領主への反乱を企てるのはなんら不思議ではなかった。
 ゲイヤ家の屋敷に近いトリコット村で、ついに反逆の火が吹き出したのだ。

 各地で起こる反乱封じのひとつとして、ギルド『ローレット』からイレギュラーズたちは駆り出された。
 しかし、まだ暴動は起きてはいない。
 トリコット村に立ち寄った旅人によって反乱の兆しありと通報があったのだ。
 ──鉈や鍬、銃を持った様子のおかしい村人たちが続々と「森の館」と呼ばれる古い建物に集まっている。
 森の館はトリコット村とゲイヤ家屋敷の間に広がる森にあった。双方からのちょうど中間地点になる。
 時刻は既に夜だったが、通報を受けたイレギュラーズたちはなんとかトリコット村付近まで集まることができた。
 あとは、旅人から説明を受けた森の館までの道を探して村人を取り押さえるか、領主の屋敷付近で待ち伏せすることができれば……彼らがそんなことを考えていた時だった。

 一人の少年を乗せた早馬がイレギュラーズたちの前に現れた。

「トリコット村へ向かっている皆さまですか!?」
 ゲイヤ家の下男、エリオと名乗った少年は焦った様子で馬上から叫ぶ。
「お願いです、村の皆を助けてください!」
 エリオはトリコット村の出身だった。
「……ローレットとは別のルートでゲイヤ家にも反乱が伝わっています。
 領主様は、独自に傭兵を雇い、森の館に向かわせました。反乱を企てた村人を手酷く処罰するつもりなのです。あくまでも、『イレギュラーズの派遣は知らなかった』と言い張るつもりで!
 どうか、村の皆を助けてください!!」

GMコメント

●目的:ローレットの方針に従い、できるだけ穏便に反乱を治める

●NG行為:領主の傭兵を殺す、重傷を与えること

●ステージ:森、森の館(夜)
・森の館平屋の三十人の村人が入れるほどの大きな建物
古く放置されており、損傷しても構わない
周囲の下草は刈られ手入れされており、館が燃えてもおかしなことをしなければ森に燃え移る可能性はほぼ無い

・森
暗くイレギュラーズたちとゲイヤ家傭兵本隊には不慣れな木々の生い茂る深い森
トリコット村の村人、エリオ、ゲイヤ家尖兵たちは周辺地理を把握している
ただし、村人は降参するまでは非協力、エリオに関しては「PCが想像できること」を参照


位置関係
ゲイヤ家――(森――「森の館」――森)――山の麓(イレギュラーズ出発地点)


●ゲイヤ家傭兵について
エリオの密告があったためにイレギュラーズたちは間に合うことができたのであって、傭兵たちはイレギュラーズたちが来る前に作戦を始められると踏んでおり、作戦開始後にイレギュラーズたちと遭遇してもどうとでもいいわけができると思っている
また、万が一、イレギュラーズが間に合い、敵対行動をした際は村の反乱軍の一味として対処するよう指示されている

傭兵たちは尖兵と本隊の二部隊に別れていることと、下記の作戦行動をエリオから聞いている
1.尖兵(三名程度)が建物に近づき直接放火
2.次いで本隊(八十名程度)が松明を持って周囲を包囲、ゆっくりと包囲網を狭めながら逃げ出して来た村人に攻撃する
※建物が燃えた場合、本隊は森の館周囲を広く包囲し、ゆっくりと包囲網を狭めつつ逃げ出して来た村民を攻撃する
※建物が燃えない場合、本隊は異常を察知して即座に森の館へ向かう
※包囲網は村民を前提としたものであり、イレギュラーズたちなら一点突破は可能
※不慣れな土地であり本体の連携は素早くない


●PCが想像できること
・現時点から森の館までは道に不慣れなPCたちではゲイヤ家傭兵の尖兵の数分前に辿り着くのが精一杯
・エリオに道案内を頼めば、ゲイヤ家尖兵たちより遙かに早く着くことができる
・ただし、エリオは即帰還しなければゲイヤ家の当主たちに密告がばれ、
エリオ自身が重い罰を受けること、現在ゲイヤ家に居る彼の同郷の者たちが作戦中に罰を受けることは想像に難くない
(即帰還した場合はばれない)


●PL情報
森の館にて
村人:三十名程度(うち約半数は戦闘に不向きな老人、子供、女性含む)
・村人たちは老若男女問わず興奮しており会話は不可能
・敵と判断すると実力差を考えず襲い掛かり追いかけてくる
・半数以上の戦闘不能で降参するが、それまでは必死で戦いを挑むので鎮圧までに時間がかかる

  • <幻想蜂起>押しひしがれた反逆完了
  • GM名
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月10日 21時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
巡離 リンネ(p3p000412)
魂の牧童
ジェニー・ジェイミー(p3p000828)
謡う翼
御堂・D・豪斗(p3p001181)
例のゴッド
ツカサ・カルデローネ(p3p001292)
異世界転生勇者少女(おっさん)
秋嶋 渓(p3p002692)
体育会系魔法少女
無限乃 愛(p3p004443)
魔法少女インフィニティハートC
明日乃 ひかり(p3p004493)
魔法少女プリマジュエル

リプレイ

●イレギュラーズ
 『魂の牧童』巡離 リンネ(p3p000412)はある意味深く感心した。
「いやー、すごくこの国らしい。なんともこの国らしい事情だね」
 幻想の現状は彼らも良く知っている。それが時に危ういバランスで成り立っていることも。
「とはいえ、私も無駄に人死にが出るのは好きじゃないんだよね。死神とはいえ無益な虐殺をされてもね? いや、死なないかもしれないけど。死ぬ方がマシなことになるかもしれないけれど」
 エリオはぎょっとした顔で、一見、幼い少女に見えるリンネを見た。
「まあ、やりきれないわね。わたしには大きな問題をどうにかする力がない。でも、今日をしのぐことが無駄とまでは思っていない。それに、クソ野郎どもの思う通りにしたくもない」
 『断章の死音』ジェニー・ジェイミー(p3p000828)が厳しい口調で言う。
「急ぎましょう、案内は僕が……」
「いや、いい」
 エリオの申し出を『異世界転生勇者少女(おっさん)』ツカサ・カルデローネ(p3p001292)はバッサリと拒絶した。驚く彼にツカサは言葉を続けた。
「覚悟があって密告しに来たんだろうけどよ、屋敷にいる同郷のやつらにはそんだけの覚悟があるかわかんねぇ。アンタの密告の所為で罰を受けたとかになると、アンタは同郷の奴らからも攻撃を受けることになりかねない」
 ぶっきらぼうな少女勇者の言葉に狼狽えるエリオ。
 『魔法少女インフィニティハート』無限乃 愛(p3p004443)はイレギュラーズたちが今さっき手早くまとめた作戦を簡潔にエリオへ説明すると最後に付け加えた。
「エリオさんは屋敷で吉報をお待ちください」
 黙って経緯を見守っていた『神格者』御堂・D・豪斗(p3p001181)がエリオの背中を叩く。
「ブレイブボーイ、ユーのソウル、確かに受け取った! 後はゴッドとフレンズ達に任せるがよい!」
 そして、迷うエリオの瞳をしっかりと見て豪斗は己の胸を叩いた。
「必ずやその願い、我らが届けようぞ!」
「うん、エリオさんは伝えてくれただけで十分だよ」
 『魔動機仕掛けの好奇心』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)もまた彼に帰還を促す。
 その中で『魔法少女プリマジュエル』明日乃 ひかり(p3p004493)は悩んでいた。
(ボクは一体、どうすればいいんだろう。村人さんも領主さんも、間違った事をしようとしている。でも、今はどうしたら良いのかも分からない……)
 その時、飛び出した影に思わずぶつかりそうになりひかりは慌てて謝る。
「あ、ごめんなさ……」
「迷妄斬り裂く愛の光! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!」
 愛の突然の名乗りに言葉を失う一同。
「──わかりました。お願いします!」
 それで何か納得したのだろうか、エリオは馬首を返してゲイヤ家へと戻って行きました。
「……さて、行きましょうか」
 振り向いた愛は真顔であった。
「え、ええと。そう、ですね」
 同じ魔法少女として、自分もとにかく先に進まないと! ひかりはそう捉えて改めて仲間と共に森に向かう。
「──出来るだけ穏便に済ませろとか、面倒クセェ仕事だな。ま、村人を殺せとか言われるよりはましか」
「ともあれ、穏便に解決できるように穏便になんとかしようかな、うん穏便に」
 ツカサの隣でリンネが軽く身体をほぐす。
「避けられる衝突であれば避けるのが一番ですからね!」
 秋嶋 渓(p3p002692)がにっこり笑って拳を合せた。
「どうも空気がおかしいですし! 早く平和になるといいな!
 それに、あぁなによりー」
 渓の笑顔がふっと消えた。
「イレギュラーズはこんなところでは止まらないのだから、これは可能であることなのだから」
 真剣な眼差しの渓へ、今度はイレギュラーズたちがそれぞれの笑みで応えた。
「村の人たちの気持ちもわかるけど、これ以上ひどい目にあわせるわけにはいかない!」
 チャロロの決意の声と共に、彼らは森へと踏み込んだ。
 チャロロが照らすカンテラの灯りを、彼が目印として落としているリボンの切れ端が反射する。明るい色のそれは茶色の夜の森の中でも目についた。
 また、ツカサもまた同じリボンを木々に括りつけていく。
「村人たちの説得はマーシナリィ達の包囲を抜けた後! 帰りのルートは今ゴッド達の辿るルートを用いるが限られたタイムの中では善しと見た! 目印を残し、それを辿る……マーシナリィ達よりはスピーディに移動できよう!」
 先を急ぎながら、豪斗が作戦を確認する。
 同じくカンテラを腰に付けたジェニーが、来る途中に集めた木々を抱え、列の後方から先の闇を指した。
「あれか……話の通りなら尖兵ももうじき来るはず」
 世闇に黒々とした建物の陰が浮かんでいた。
(村人の被害を最低限でおさめる。村人には死んでも手は出させない……)



●森の館
 館は建物の外に居ても、室内の村人たちの異様な熱気がわかるほどだった。
「殺気……」
 チャロロの呆然とした呟きが合図だった。
 イレギュラーズたちは役目に応じて素早く分散した。
 まず、豪斗がおもむろにドアを開き中へと踏み込む。
 唐突に、躊躇いも無く館の中に入って来た来訪者に村人たちは一瞬、呆気にとられた。
「ヴィレジャーたちよ! ユー達の企みは既にゴッド達のアイにとまっている! ゴッド達を倒さぬ限り、ユー達は先に進む事は出来ぬぞ!」
 豪斗が朗々と発した名乗り口上はいかつい村人の怒りを煽った。唸りにも似た声を上げて豪斗を追い回し始める。
 異常に気付いた村人たちが館の外に顔を出すのを見計らった他の仲間たちも名乗り口上を上げる。
「オイラたちはローレットの者だ! あなたたちを止めにきた!」
 チャロロが叫ぶと、ツカサも名乗り口上を上げる。
「おい! てめぇら!よく聞け!! てめぇらごときがいくら群れたところで何の意味もねぇんだよ」
 ジェニーは入口から遠い場所に道中で集めた木々を積んでいた。
(……尖兵が異常に気付き、森の館が放火されないと本隊の動きが早くなる)
 庭先で他の仲間たちが館からおびき出した村人を引き連れて次々に元来た道へと走って行く。
 銘々に武器を持って飛び出して来た人々は老若男女様々で──どうも名乗り口上のせいだけではないようだった。
(今から反乱を起こそうとしているんだ、気が立っていて不思議ではないはずだけど)
 窓から見える範囲ではもう室内には誰も見えない。満を持して矢を放つと、老朽化した建物に移って炎が上がる。
「ゴッドのフレアに包まれてそのライフを終えよ!」
 とんでもない言葉をスキルに乗せて、最後に出て来た言っていた豪斗。彼は村人に追われながら笑って館を飛び出す。
「これで完了か。──孤児院に放火するよりは、楽なものさ」
 羽ばたかせたジェニーは独り言ちて翼を村人たちに向かって低く飛んでいく。
 ツカサは彼で全員の様子を確認しながら煽り続けている。
(釣り出すほうが楽だし、ここまで似たような能力持ちが揃うのも珍しいだろ。この状況を利用しないとな)
「悔しいか?悔しいなら俺を倒してみろよ!」
「全員か?」
 チャロロは自分たちを追いかけ回す村人たちを見まわして確認する。
 豪斗が叫んだ。
「アングリーは長くは続かぬ! 適宜ゴッド達の名を以って誘導する! 脱落者なきよう注意しつつ進め! 特にボーイズ&ガールズやオールドメンには気を配るのだ!」
 そう、一刻も早く。
 ところが、走り出した豪斗へ矢が射かけられた。
「ゲイヤ家だよね!」
 狙撃者から村人を守ろうと渓は飛び出し、走って行く村人たちを庇おうとその身を晒した。
「ローレットの手伝いだ……って言っても引いてくれないかな」
「火を点けてくれたことには感謝するが、それは無理だ」
 傭兵の男たちは苦笑を浮かべ武器を構えた。
 渓もまた、構えを取る。


 指輪の宝石をイヤリングに嵌め込むとひかりは魔法少女へ変身した。
 ひかりのギフト《プリマプリズム*ドレスアップ》だ。
「赤い光は勇気の証!プリマルベライト!」
 そのまま彼女も名乗り口上を上げ村人を引き付ける。
 交互にスキルを使い、村人たちの怒りを持続させて導くために。
 ……話し合うことができない状況が歯がゆい。
 目の前にチラチラと灯りが見えた。
「──傭兵たちの囲い!」
「出番だねー!」
 リンネが仲間を追い抜いて灯りの前に躍り出る。
 下草を鳴らして飛び出した少女に傭兵たちは驚きの声を上げる。
「はいストップ、そこまで! こちらはローレット、ローレットがここにいるよー。わかるね? つまりこれは私達の仕事だよ?」
「……ローレットの話は知らんことになっている。判るだろう、退け」
 嘲笑うかのような相手の態度にリンネはめげずに続ける。
「こっちは正当に受け取った仕事としてここにいるんだよね。それを邪魔されると困るんだよね。お引き取り願える?」
 先約だよー? わかる? と揶揄うように傭兵たちの周囲を回るリンネ。
 だが。
「待て、村人がいるぞ!」
 闇の中とは言え、大勢の村人に気付いた一人が叫ぶ。
 村人の幾人かもなんとなく傭兵に気付いたが、先を走るイレギュラーズを追っていて立ち止まることはない。
 傭兵たちは武器を手にリンネを無視して村人へ斬りかかる……!
「この力は誰かを照らす光となるために!」
 尖兵たちの囲いから離脱してきた渓が村人との間にその身を滑り込ませた。衝撃に顔を歪めるが、抱えた新人用の盾でなんとか相手の攻撃を滑らせた。
「愛という心の灯を持たず、互いの連携も拙劣。夜の森の闇の中で丸腰になれば、熱狂する村人の前に立ち塞がる気概など残るものでしょうか? 見ものですね」
 両手の指の間に胡椒と石鹸を挟んだ愛が微笑み、それで敵に攻撃をしかける。
 いつの間にか村人の腕を掴んで駆け出していたひかりは目の前の兵士を突き飛ばし、退路を開く。
 だが、兵士も何がなんでも連れて行く気らしい。
「ボクはなんで、こんな事を……!」
 また葛藤が過ったが、すぐにそれは氷解した。
 周囲で戦う音がする。闇の中で戦う仲間たちが見えた。
(嗚呼、そうかボクは……)
「先へ!」
 ひかりが叫ぶ。
「フレンズ達よ、任せた! 我らは奴らの目に村人たちが止まらぬようスピーディに駆け抜ける!」
 豪斗が叫ぶ。
 低空飛行をして木々の枝の下を飛ぶバウンティフィアーで粘り強く傭兵の数人を追い立てるジェニー。会話での平和的脱出がうまくいかなかったリンネもまた挑みかかる。
「……っ!」
 流石に傭兵たちは強かったが、それでも、まだ状況を把握しているぶん、こちらが有利であり、直接対峙した人数の面で利があった。



●レガド・イルシオン
「……うむ、完全に諦めたようであるな!」
 森を抜けたところで傭兵たちの追撃が無いことを確信した豪斗は立ち止まった。
 遅れて傭兵たちと交戦していたリンネたちも森から転がり出る。
 仲間たちも同様に、今度は村人たちへと向き直った。
 村人たちも武器を手にその場にバラバラと広がる。
「……わたしたちだって大概ひどいのは分かってるけどね。でも、このままじゃ酷く失敗するだけだ」
 真剣な瞳で彼らへ語り掛けるジェニー。
 だが、村人の目は変わらず狂気のような怒りに支配されていて、獣のような唸り声が漏れている。言葉が通じるようには思えない。
「頭に血が上ってる奴らにはちょっと痛い目を見てもらうしかねぇか」
「はいはーい、穏便にね」
「穏便に全力でだ」
 素早く状況を判断したツカサが村人の中でより逞しくタフそうなターゲットを選ぶ。
 リンネと渓も顔を見合わせて笑みを交わすと、改めて疲れ切った身体を奮い立たせた。
「これより愛をもって、丁寧に説得します」
 愛が宣告する。


 主な戦力だった村の戦士たちが倒れると、途端に彼らの動きは鈍った。
 ギフト《漢の美学》で村人からの攻撃を受けて、耐えていたツカサが大きなため息を吐く。
 戦意が衰えたのを感じたひかりは構えたメイジオーブを下げる。
(計画を邪魔したと責められるかな)
 これだけのことがあっても変わらず殺意を見せる村人たちの姿に、ほんの少し、彼女の中の弱気が顔を覗かせた。
 だが、即座に頭を振って弱気も振り払って、ひかりは訴えた。
「貴方達に死んで欲しく欲しくなかった!! お願いだ、今はボク達を信じて耐えて欲しい」
 仕方ないとは言え、ここへ来るまでの言動のチグハグさはわかっている。それにこの苦難の地で彼らがこれからどうすればいいのかという答えをひかりは持っていない。それでも、彼女は彼らを救いたい一心で語り掛けた。
(貴方達が誰かを恨みながら戦って、傷付くのは嫌だ! ボクは貴方達を助けたい! でもそれは力でじゃない、心でだ!)
 両眼を固く瞑って必死に訴えるひかりの隣にそっとチャロロが並んだ。
 気配に気付いて顔をあげたひかりへチャロロが小さく頷いた。
「……あの領主は、反乱を起こそうとしたあなたたちに、もっとひどいことをしようとしてたんだ。館が燃やされるのを見たよね? ああまでして捕らえようとしてたんだ。
 これ以上、なにもしてあげられないのは心苦しいけど、今はひとまず落ち着いてほしいんだ」
 チャロロもまたひかりと同じく村人たちを苦境から救う術を持ってはいなかったが、それでも、ひかりにの演説に注目して動きを止めた村人へ静かに語り掛ける。
「このままでは手酷く処罰される。もう降参すべきだ」
「ユー達の想いはゴッドが受け取った! ブレイブボーイの為にもここは武器をおさめよ!」
 ジェニーと豪斗が更に促すと村人たちばバラバラと武器を落としてその場にへたり込んだ。
「……なんで、こんなことを……」
 誰かがポツリと呟いた。
 彼らだって武装し戦い慣れた貴族相手に武装蜂起を行う愚は良く知っていた。
 だから、今までだってずっと耐えていたのに。
 なぜか前後のことなど考えられずに耐え切れなくなったのだ。
 放心状態の村人たちからはもう戦意は感じられなかった。
 ──鎮圧に、成功したのだ。
「貴族たちもちょっとは民衆のことを考えてほしいよ……。こんな連中ばかりじゃ反乱が起こるのも当たり前だね」
 疲れたようにチャロロが呟く。
 一方、愛は悠然と自分が丁寧な愛(物理)を叩き込んだ村人たちへ語り掛けた。
「貴方たちは愛の生き証人、これからも是非その誇りを胸に」
「……ア、ハイ……」
 力無くだが誰かがぼそりと答えたため、彼女は満足げに笑った。
「あとは、ゲイヤ家の方と傭兵の方々にも愛の偉大さを思い知って頂きましょう」
 清々しく言い放った彼女の言葉の意味を理解できた者はいなかった。


「なんだこれはっ!?」
 すごすごと戻って来た傭兵たちから一通の手紙を受け取ったゲイヤ家当主は、それを読んで激昂した。
 それは愛が館付近に残した手紙であり、そこにはただ一言『愛を知れ』と書かれていた。
 ……それが「恥を知れ」と読めるのはなぜだろう。
 彼は手紙を踏みつけると、悔しげに叫んだ。
「ローレットのならず者共めがあああ!!」
 召使用の控えの間でその様子を見ていたエリオたちはこっそりと手を打ち合わせた。


 ──ゲイヤ家の怒りがイレギュラーズたちへ向けられた隙に、トリコット村の村人たちはローレットの判断で取り調べを理由にゲイヤ家とは縁の無い村へと一時的に移された。
 また、エリオたちの関与についてはゲイヤ家では把握していないままだ。
 幻想(レガド・イルシオン)が今のままである限り根本的な解決は難しく、すべては一時的な、暫定的な処置ではある。
 だが、それでも……今できることは成し遂げられた。
 エリオたちとトリコット村の村人たちは、傲慢な領主の暴力から救われたのだ。



成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

遅れてしまい、申し訳ございません。
まさかの名乗り口上リレーに驚きました。
お陰で、途中で村人との戦闘になることもなく囲いを突破することができました。
連携の結果だと思います。
ご参加ありがとうございました。

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