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シナリオ詳細

炎翼の大虎

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 幸運な事にこれまで平穏無事な人生を歩んできた、とある商隊の青年は、突如として訪れた『死』の光景を前に、只々身を縮こませ、ガタガタと震えている事しか出来なかった。
「ガァァアアアアアアアア!!」
 眼前の怪物……自分達が引いてきた馬車より一回りも二回りも大きい、赤い虎。
 唯巨大なだけではなく、その身には激しい炎を纏わせ、背には大きな炎の翼を生やしている……そんな虎。怪物。
「クソ、皆逃げろ!! コイツは、ギ、ア、ギャアアアア!!」
 長年共に仕事をし、父の様に慕っていた商隊長が、怪物の鋭い爪に身を引き裂かれ、死んだ。
「グガァアアアア! コロス!! コロス!!」
「あ……嫌、助け……」
 つい数週間前から商隊に入り、将来は金持ちになってやると豪語していた不運な少女が、怪物の口から発せられた炎の砲弾に焼かれ、死んだ。
「うぅ……!! みんな……!!」
 青年はまだ死んでいない。怪物が馬車に襲いかかった瞬間、その衝撃で馬車から身を投げ出され、深い茂みの中へ吹き飛ばされたから。
 だけど身体は動かない。地面へ投げ出された衝撃で頭を強く打ったから、ではない。圧倒的な死への恐怖が、心と身体を支配していたからだ。
「ガァァアアアアアアアアア!!」
「クソ、やめろ、やめろよ……!!」
 青年のつぶやきは怪物へ届かない。青年は茂みの隙間から、仲間たちが虐殺される様を見ていることしか出来なかった。
「グルルル……ゼンイン、シンダ……」
 そしてしばらくの後、怪物はそう言い残して立ち去った。
「…………みんな殺された。これからどうやって生きていけばいいんだ?」
 ようやく身体の自由を取り戻し、ゆっくりと立ち上がった青年は、目の前の凄惨な光景を虚ろな目でずっと眺めていた。
 燃やし壊された馬車と、殺された仲間たちの無残な死体を。
「みんな殺された……俺だけが怪物に気づかれず、生き残った……なんでなんだ?」
 それは青年が、幸運だったからだろうか。


 ギルドローレットに、1人の青年がやって来た。フォルという名の青年である。フォルはイレギュラーズ達に、仕事を頼みたいのだという。
「俺の商隊の仲間……家族を皆殺しにしたあの怪物を、殺して欲しいんだ」
 フォルが言うには、つい先日フォルが所属していた商隊が、とある森の中で怪物の襲撃を受け、壊滅。フォルを除く全員が死亡し、馬車も積荷も全て焼き尽くされてしまったのだという。
「奴は巨大な、虎の様な姿をしていた。炎を全身に纏い、背からは翼を生やした虎だ。時折言葉の様な物を発していたから、それなりの知性はあるんだろうが……奴の振る舞いと眼からは、何かを殺したい、壊したいという欲求しか見えてこなかった」
 まあ、そもそも会話を交わす必要もないけどな、俺は奴を殺してほしいだけだ。と、フォルは吐き捨てる様に付け足した。
「俺は終始、奴がみんなを虐殺する様を見ていたから……ある程度の攻撃手段は把握している。鋭い爪による斬撃、口から発する炎の弾丸、背の翼から放たれる炎の風だ」
 しかしフォルが見ていたのは一方的な虐殺の光景だ。いざ戦闘となり怪物が本気を出せば、他の攻撃手段、回復手段等を使ってくる可能性は否定しきれないとフォルは言う。
「俺が把握している攻撃手段の中で一番ヤバイと思ったのは、爪の斬撃だ。俺は戦闘に関しては素人だけど、それでもあの爪の威力は本当にヤバイと分かった。当たれば大量出血する可能性も高あるだろう。奴に近距離戦を挑むなら、気をつけた方がいい」
 また、怪物は背から翼を生やしてはいるものの、飛行をする事はないだろうとフォルは言う。
「あくまで奴の翼は攻撃と、移動の補助に用いられるものの様だ。だけどあの翼のおかげで、奴の機動力は文字通り化物じみている。そのせいで身を潜めていた俺以外、誰も助かることは無かった……そんな忌々しい怪物だ」
 そこまで説明し終え、フォルは疲れきった様な溜め息を吐いた。
「俺が知っているのはこれだけだ……頼む、確実に奴を殺してくれ。それでせめてものみんなへの弔いに……そしてなにより、二度とあの怪物に誰も殺される事が無い様に……頼む」
 そう言って、フォルはイレギュラーズ達に深く頭を下げるのだった。

GMコメント

 のらむです。燃え盛る大虎と正面からバトって貰います。

●成功条件
 炎翼の大虎の討伐

●戦闘場所
 木々と雑草が生い茂るとある森の中。時間は日中。ローレットの調査により大まかな居所は分かっており、問題なく到着する事が可能。

●炎翼の大虎
 殺戮欲にまみれた怪物。馬車の大きさを優に越える様な巨体と、言語を発する程度の知性を有している。
 戦闘能力、攻撃手段等はオープニングの通り。

 以上です。皆様のご参加、お待ちしております。

  • 炎翼の大虎完了
  • GM名のらむ(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月27日 21時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

レーヴ・シュマン(p3p000345)
夢幻への送還者
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
リノ・ガルシア(p3p000675)
宵歩
アレクサンダー・A・ライオンハート(p3p001627)
百獣王候補者
真白 純白(p3p001691)
特異運命座標
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
アイリス(p3p004232)
呪歌謡い
ウルツァイト ボーラン ナイトライド(p3p004363)

リプレイ


 炎と死を撒き散らす怪物、炎翼の大虎。そう呼ばれる怪物が居ると森の中にて。イレギュラーズ達はローレットで得た情報を元に、炎翼の大虎を見つけるべく森の中を進んでいた。
「まずは、ヤツを探し出すところからじゃな。早々に見つけ出し、ヤツを倒すとするのじゃ」
 『百獣王候補者』アレクサンダー・A・ライオンハート(p3p001627)は歩を進めつつも、周囲を警戒していた。
「隊商の仲間の仇討ち、か。それもまたよかろう……その気持ちに、偽りはないようだからな」
 『夢幻への送還者』レーヴ・シュマン(p3p000345)は、依頼人フォルの姿を思い返す。フォルが語る言葉。そこに宿る感情に嘘は無いと、ギフトによってレーヴは知る事が出来た。
「これ以上犠牲者を出すわけにはいかない。ここで確実に仕留めよう!」
 『銀閃の騎士』リゲル=アークライト(p3p000442)は改めて決意を胸に抱き、道なき道を突き進む。
「…………情報通り、この先に怪物がいる様です。この辺りの植物は皆、怯えています」
 『流浪楽師』アイリス(p3p004232)は道すがら木々から得た断片的な情報を、仲間たちに伝えていく。
「怯えてる……って事は、人だけじゃなく木を燃やして回ったりしてるのかな。嫌だなぁ。『やはり早々に倒さなければなりませんね』」
 ウルツァイト ボーラン ナイトライド(p3p004363)の言葉に、AIであるロンゼデーライトが相槌を打つ。彼等にとってもまた、この森に潜む怪物は忌むべき相手なのだろう。
「……シッ、皆伏せて。奴の翼が見えたわ」
 慣れた足取りで悪路を切り開いていた『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)が、仲間たちを伏せさせる。その視線の遠く先には、たしかに大虎の姿があった。
「センテは取れそうだ。一気に取り囲んで……後はとにかく殴るだけだね」
 『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が言い、イレギュラーズ達は身を伏せたまま怪物の元に近付いていく。
「いよいよか。まさか虎とやりあうことになるなんてな……なに、やることは喧嘩と変わらないさ」
 相手が人だろうと燃え盛る虎だろうと、喧嘩ならば負けはしない。『白虎』真白 純白(p3p001691)は刀に手をかけ、奇襲に身構える。
「…………?」
 炎翼の大虎は、近くの茂みでガサリと何かが動く様な音を捉え、そちらの方を向く。
 だが、遅かった。次の瞬間、突如として銃声が鳴り響き、弾丸は大虎の身体を捉えた。そして大虎が反応するよりも早く、物陰から現れたイレギュラーズ達が大虎を取り囲んだ。
 

「ナ……!! キサマラハ……!?」
「おぬし、油断しておったな。その油断が、大きな命取りじゃ!!」
 アレクサンダーは大虎の側方から強襲。一気に接近し、その鋭い爪を大きく振り上げる。
「おぬし、このわしの、獣王の攻めに耐えられるか!」
 アレクサンダーの爪は大虎の身体を大きく抉り、炎と同時に血飛沫が舞った。この世界に訪れてから初の本格的な戦闘らしいが、その勢いは衰えていない様だ。
 この攻撃を皮切りに、イレギュラーズ達は次々と大虎の巨体に取り付き、その動きを一気に阻害する。
「ガァァァアアアア!! コロス!! コロス!!」
 大虎は殺意を込めた雄叫びを上げ、背の翼から炎の風を生み出す。
「……!! 確かにこれは熱いね、どうやら見た目だけじゃないみたいだ。『ですが、耐えられない程ではありませんね」』
 その熱風をマトモに浴びたウルツァイト。全身が一気に高熱を浴びるが、ロンズデーライトは全く以て冷静なままだった。
「『守りを固めましょう。敵の武器である機動力を削いでいる内は、こちら主体で立ち回れます』……分かったよロンズ! 皆を守るんだ!」
 ロンズデーライトの指示に従い、ウルツァイトは更なる攻撃に備え守りの構えを取った。
「確かに一撃一撃がかなり強烈な様ですね……援護します」
 後方に下がっていたアイリスは、浅くない傷を負ったウルツァイトに接近。マテリアルに自らの魔力を込めていく。
「ですが、それでも……あなたには誰も倒させはしませんよ」
 アイリスは大虎にそう告げると、マテリアルから鮮やかな緑色の光を放出。柔らかな緑はウルツァイトを包み、その傷を優しく癒やした。
「さて……アンタに恨みはないが、仕事なんでな」
 レーヴは大虎と一定の距離を保ちつつ、静かにライフルを構えた。仲間たちが大虎の動きを抑えているおかげで、射撃に集中する余裕が生まれた。
「……悪く思うなよ」
 引き金が引かれた。放たれた弾丸は木々の隙間を通り、狙い通り大虎の翼を直撃した。この翼を失えば、大虎は大きく機動力を失う事となるだろう。
「ガァァアアア!! ユルサンゾ、キサマラ!!」
「あら怖いわねぇ。だけどあなた、自分は狩る側で、決してそれは覆らないって信じきってるみたいだけど……偶には狩られる側も味わってみたら?」
 リノは軽く地を蹴り跳び上がると、大虎の身体に力強く盾を叩きつける。その反動で更に高く浮かび上がると、片手に持ったナイフを逆手に持ち替える。
「お互い楽しんでいきましょ」
 ナイフの刃が翼を捉えた。リノが思い切り振り切ると、大虎の翼に大きな傷が刻み込まれた。着実に、翼にダメージが蓄積されていく。
「ガァァアアアアアアアア!!」
 大虎は痛みと怒りが混じった様な叫びを上げ、身体を揺らす。その巨体に血が伝うが、身にまとった炎に熱せられすぐさま蒸発していく。
 戦闘の序盤は、イレギュラーズ側が大きく有利を取っていた。大虎よりも早く敵の存在を察知し、先手を取れた事も大きく働いた様だ。
「だけど、まだ油断は出来ない……おい、そんな大きな図体で俺1人を潰すことすらできないのか? とんだ見掛け倒しだな!」
 大虎の真正面に陣取っていたリゲル。剣を抜き、大虎の眼前に突きつけて挑発を行う。どんな攻撃が来ようが、それを受け止める覚悟は出来ていた。
「ナンダト……? ニンゲンゴトキガナマイキナ!!」
 大虎はギョロリとリゲルを睨みつけると、腕を振り上げ。その首元目掛けて一気に爪を振り下ろした。
「グ……!! 確かにこれは強烈だ。だけど、俺を倒すにはその爪は脆すぎる!」
 素早い一撃だったが、リゲルは盾を駆使して狙いを逸らし、爪の一撃を肩で受け止めた。そして尚も挑発を続ける。
「随分プライドが大きいトラみたいだね。あと身体も。だけど大きい分、思い切り殴れそうだね」
 イグナートは両拳を固く握りしめ、大虎との距離を一気に縮める。狙いはやはり、その両翼だ。
「それでも、テキカクに攻撃を当てるためにはテクニックが必要だよ……だけど攻撃をするために最も必要なのは、轢かずに殴り合えるスピリットだ!!」
 イグナートは地を蹴り、跳躍。そのまま大虎の翼に飛び込むと、速度を重視した拳の連打を叩き込む。鉄塊の様に硬い拳は、大虎の翼を力尽くて変形させていく。
「ガァアアア……!!」
 大虎の翼は見て分かる程にボロボロになっていた。しかしまだ、決定的に機動力を奪う程では無い。あと少し。
「頑丈な奴だな……だけどいい加減邪魔だろその翼。じっとしてろ、アタシが削ぎ落としてやるからよ」
 そう言い放ち、刀を抜く純白。その瞳には静かな、それでいて激しい覚悟が宿っていた。
「ニンゲンノオンナゴトキニナニガデキル!!」
 大虎は大きく牙を剥くと、純白に向け爪を突き出す。純白は軽く身を逸らし爪を避けると、爪は純白の背後の木に突き刺さった。
「言いたいことはそれだけか? だったらそうだな、こう返しておくか――大した事は出来ないが。バケモノを殺す事くらいなら出来る。アンタみたいな図体だけが取り柄な奴は特にな」
 すぐさま純白は木に突き刺さった爪に跳び乗ると、更に跳躍。そして刀を一閃した。荒々しい斬撃は傷だらけの翼の根本を断ち切り、ボトリボトリと2枚の翼は地に堕ちた。
「グ……ガァアアアアアア!!」
 そして翼を失った獣は咆哮する。全身に纏った炎は更に激しく燃え上がり、周囲の熱気が更に高まった。
「ユルサン……コロスコロス、コロス!!」
 いい加減この怪物も、自分が狩られる側に成り得るのだと気付いただろうか。


 翼を失った事により、並外れた敏捷性を失った大虎。だがそれと反比例する様に、大虎の怒りと殺気は高まってきている様だった。
 戦いが続くにつれてイレギュラーズ達の傷も徐々に蓄積し、ブロック役を入れ替えざるを得ない様な状況も発生していた。
「グルルル……スベテモヤス!!」
 大虎は大きく息を吸い込むと、口から図太い火炎の奔流を放つ。その火炎は広範囲に渡り、イレギュラーズ達の身を焦がした。
「中々素敵な一撃を喰らわせてくれたじゃない……しっかりお礼はしてあげなきゃね」
 腕を焦がされたリノはそう言い、大虎に笑みを向ける。目は笑っていなかったかもしれないが。
 そしてナイフを構え直し、リノは目を細める。大虎の一挙一動を見逃さぬ様、集中する。
「ステキな一撃と……ステキな時間を過ごさせてくれたお礼よ」
 リノは獣の如く素早さで一気に大虎の懐に潜り込むと、ナイフを一閃。大きく弧を描き放たれた斬撃は大虎の腹を深く抉り、戦場に再び血潮が舞った。
「グゥゥゥウウウウ……!!」
 その痛みに思わず苦痛の声を上げる大虎。しかしイレギュラーズ達は容赦はしない。一気に攻撃を仕掛けていく。
「見た目通りタフだね、キミ。だけど、流石にそろそろ限界なんじゃないかな」
 バン、と拳を打ち合わせ、イグナートは真正面から大虎を見据える。そして拳を構え直すと、一瞬にして大虎との間合いを詰める。
「翼を失った今のキミに、この拳が避けられるかな?」
 イグナートの拳が大虎の顔面に直撃した瞬間、空気が揺れた。大虎の超重量の巨体が一瞬浮かび上がった程の一撃は、大虎に凄まじいダメージを与えたことは言うまでも無いだろう。
「グ……ガ……!! キ、サマ……!!」
 大虎の憎悪がイグナートに向けられた。そしてその首を駆らんと大虎が動き出そうとする直前、
「ガァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
 アレクサンダーの『獣王の咆哮』が森に響き渡った。その咆哮は大虎の怒りを大きく買い、大虎の意識がアレクサンダーに向けられる。
「ナマイキナ……!! キサマゴトキコモノが、ナンノマネダ!!」
 大爪が振り下ろされた。身体を抉られ大量の血が流れ出したが、アレクサンダーは倒れてはいなかった。
「やはり効いたか……しかしこうなれば、最早時間はかけてられぬ……こうなればその首、かっ食らってやるのじゃぁ!!」 
 アレクサンダーは大傷の痛みを無視し、大虎に向かって飛び込んだ。そして言葉通り大虎の首筋に食らいつくと、無理矢理その肉を食い千切った。
「いい加減倒れろ。アンタはもう十分暴れただろうが」
 身体を揺らしアレクサンダーを振り払った大虎に、今度は純白が飛びかかる。狙いはたった今アレクサンダーに刻まれた首筋の傷。
「ちょっと痛いだろうけど、我慢しな。こうなったのはアンタの責任だ」
 落下の勢いを乗せた純白のかかと落としが、大虎の首筋に直撃した。
「グァアアアアアアアアア!!」
 傷を抉られた大虎は、再び森に雄叫びを轟かせた。最早全身は傷だらけ。流れだした血の量も尋常では無いが、それでも大虎はまだ生きている。
「ですが、あともう少しの筈です……もう回復はほとんど出来ません。後はもう、押し切るだけです」
 戦闘中、常に仲間の回復に徹していたアイリス。しかしここで攻勢に出るべくマテリアルを構え、魔力を集中させていく。
「皆さんを守る為に、あなたはここで倒させて貰います」
 そしてアイリスは魔術を詠唱。すると大虎の上方に白く巨大な魔法陣が浮かび上がり、そこから降り注いだ眩い光条が、大虎の全身を瞬く間に貫いた。
「もう皆ボロボロだ……!! だったらもう退く訳にはいかないね。皆に手をだそうっていうなら、まず私からにしろ! って奴だね! 『その覚悟があるなら、止めはしませんよ』」
 多くの傷を負い、一時的に後ろに退がっていたウルツァイト。しかし最早万全なブロック役がいないと判断し、再び大虎の真正面に飛び出した。
「バカメ、ナラバノゾミドオリ、キサマカラコロシテヤル!!」
「…………ん痛い!! 凄く痛い! けど倒れない! 私は馬鹿かもしれないけど、元気で丈夫な馬鹿なんだよ!! 『確かに』」
 大虎の爪の一撃をマトモに喰らったウルツァイト。身体を削られ、大きな火花が飛び散ったが、それでもウルツァイトは元気に立ち続け、ロンズデーライトは変わらず冷静だった。
「殺す殺すと言う割には、まだ1人も倒せていない様だな。早くしないと、先に私達がアンタを殺してしまうぞ? それも、そう遠く無い話だ」
 大虎の殺気と炎は昂ぶり続けているが、大虎の肉体は既に限界を迎えつつある。それを冷静に察知したレーヴは、再びライフルを構え、集中を研ぎ澄ます。スナイパーとして、この場面で弾を外すわけにはいかない。
「……呪うなら、己の不運と傲慢さを呪う事だ」
 そしてレーヴは一瞬にして弾倉内の全ての弾を撃ちきった。全ての弾丸はレーヴの計算通りの軌道で大虎の左目を貫き、完全に潰した。
「グ……グァアアアアアア……!! アリエヌ……ナゼワタシガ、コンナヤツラニ……!! ナゼダレモ、コロセナインダ……!!」
 炎翼の大虎(最早翼は無いが)にとって、他の生物は須らく自分にとって単なる殺害対象であった。反撃され、自分が殺されかけている状況など、全く想定していなかった。こんなの理不尽だ、とすら感じているかもしれない。
「もう誰1人だって殺させはしない、絶対に逃がさない……騎士の誇りにかけて!」
 大虎の爪や炎によって身体はボロボロだったが、リゲルは決して臆さずに、剣を構えた。
「グガァァァアアアアアアアアア!!」
 大虎の口から放たれる炎の奔流がリゲルに迫る。しかしリゲルは退くどころか、炎の中に突っ込み、剣を振り上げた。
「……これで終わりだ!!」
 一瞬の出来事だった。炎の中から飛び出したリゲルは首元に飛びかかり、剣を振り下ろす。それで全てが終わった。大虎の大きな頭部が胴体と切り離され、地面へゴトリと落ちた。
「ガ……ア……」
 転がった大虎の首から小さな声が漏れたかと思うと、ゆらりと倒れてきた胴体に潰され、何も聞こえなくなった。
 イレギュラーズ達はしばらく口を開かなかった。繰り返し受けた傷の痛みからか、討伐に成功した安堵からか。
 だが何にせよ、イレギュラーズ達は勝利を手にした。誰も倒れること無く。それは確かだった。

 戦いの後、森の中――フォルの仲間たちが殺された場に、アイリスの鎮魂歌が響き渡っていた。
 アイリスの歌声は周囲の草花と共鳴し、瞬く間に周囲に色とりどりの花が咲いた。せめてこれが、犠牲者達の手向けになれば良いと。
「希望の光になれるように、毅然としていなければ……それが特異運命座標に選ばれた俺達の使命なんだ」
 その光景を目にしながら、リゲルは決意を新たにした。この混沌の中には、これ以上の悲劇も多く存在しているだろう。その中でも決して、希望を失ってはならない。
「……さ! 帰ってショクハイと行こうよ!」
 全てが終わった。イグナートは仲間たちに明るく呼びかけると、一同は森を後にした。
 依頼完了。只々己の欲の為人々を焼き殺した炎翼の大虎は、イレギュラーズ達の手によって討伐が成されたのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 これにて依頼完了です、お疲れ様でした。
 またのご参加、お待ちしております。

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