PandoraPartyProject

シナリオ詳細

トイソルジャーズ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 その晩、子どもが1人死ぬ事になっていた。

 渋滞で両親の帰宅が遅れたその日、邸宅に泥棒が入ったのだ。
 べつに首を絞められたとか、刃物で刺された訳ではない。
 そんな大層な事の出来ない、狡くて弱い、ただのコソ泥2人。
 だが、転寝から目覚めたその子どもは両親が帰宅しと思って寝室へ近付き、泥棒2人と鉢合わせして発作を起こしてしまうのだ。
 走り出して階段から転げ落ちたその子は、コソ泥が呼んだ救急車が到着する前に死亡する。


「可哀想だと思わない?」境界案内人ポルックスがずいと身を乗り出した。
「まあね」「べつに」「全然」相手からの返事がどんなものだったとしても、彼女が続ける言葉は変わらなかっただろう。
「で、あなた達に彼を助けて欲しいのよ」
 
 ポルックスが提示した任務の内容はこうだ。
 最優先は“この日死んでしまうはずの”アンディ君の保護、生存。コソ泥はただの小悪党なので、多少痛い目に遭わせて追い払う程度でよい。

 イレギュラーズは拍子抜けして顔を見合わせたかもしれない。大した依頼じゃない。捕縛するなり、なんなら命をとるにしても相手がコソ泥なら4人もいらないくらいだ。イレギュラーズが頷こうとした時、ポルックスが肝心な部分を付け足した。

「ただし! ぬいぐるみの姿でね!」
「……は?」
「アンディ君は、強いショックを受けるとパニックを起こして予期せぬ行動をとってしまうのよ。だから知らない大人達が自分の家で格闘してるところなんて見せられない。幸いにも、この日はアンディ君が遊び散らかしたぬいぐるみが家中に転がってるから、あなた達にはそれになってコソ泥を彼の眠ってる部屋から引き離し、そこで奴らを追い払ってもらう。あ、アンディ君にもぬいぐるみが動いているとこを見られちゃ駄目よ。びっくりして発作が出ちゃうかもしれないから」

 何か釈然としない。いやもっと他にやりようがあるだろうと喉まで出かかるが、ポルックスはにんまりと笑い、彼らを追い立てるように背を押す。

「どのぬいぐるみに変身するかは任せる。派手な攻撃スキルやギフトは制限されるものがあるから、ぬいぐるみ選びも重要よ! さ、頼んだわよ!」

NMコメント

 どうも、かそ犬と申します。
 死んでしまうはずの子を運命を変えて、彼を救って下さい。
 世界観としては1980年代アメリカに似た世界の地方都市郊外。広い庭のある邸宅の午後8時頃です。叔母がアンディ君の世話をしていましたが、時間の都合により彼を寝かしつけた後、帰宅してしまって今はアンディ君独りです。廊下は灯りが点けっぱなしで、使っていない部屋は真っ暗です。
 アンディ君の部屋は2階の一番左奥。コソ泥は1階右奥のバスルームの窓から侵入してきます。
 

〇アンディ君
 5歳の男の子。身体が弱く、ぬいぐるみ遊びが大好き。精神的に強いショックを受けると発作を起こして、突然走り出したり、自傷行為に及んだりと予期せぬ行動に出ます。イレギュラーズは彼に気付かれぬように任務を果たさなければなりません。
〇ニック&アレン
 長身、ちょび髭の中年男性と背が低い筋肉質の若者のコソ泥コンビです。番犬にもビビる小心者で、人を傷つけるような真似はしませんが、子どもをクローゼットに閉じ込めるくらいはやるかもしれません。アレンは基本的にニックの指示に従います。


 以下の中から変身するぬいぐるみを選んで下さい。ただの「ぬいぐるみ」ですが、特異運命座標の精神が入る事によってそれぞれ特殊能力を得ます。一度入ると乗り換えは出来ず、2人以上で同じぬいぐるみを選ぶ事も出来ません。

【ティグレ】虎のぬいぐるみ。子猫程度の身体能力を持ちます。地肌に噛み付けばそれなりに痛いでしょう。ステルス能力も高めです。
【マーズマン】タコ型エイリアンのぬいぐるみ。きつい指パッチン程度の威力の光線銃を持っています。またサイコキネシスでマグカップ程度の重さを動かせます。足は遅め。
【サメ】サメです。背びれだけ出して床を透過移動する事が出来ます。誰かを背に乗せると極端に遅くなります。噛み付きはティグレよりも威力がありますが、小回りは効かないので連続攻撃には向いていません。
【ジャッキー】カンフー着を着た東洋人のぬいぐるみです。跳躍力や移動能力が高く、もっとも機敏で手先も器用です。ゴムボールを思い切り投げ付けた程度の威力のキックが出せます。
【ルナ】可愛くない顔の三日月のぬいぐるみ。空中を浮遊し、目を合わせる事で5秒間相手を忘我状態(意識が混濁して行動不能)に出来ます。体当たりは小3のパンチくらいの威力があります。
【フライデー】仮面の殺人鬼のぬいぐるみ。怪力で、泥棒達の足を掴めば転ばせられるでしょう。足は非常に遅いですが、誰もいない部屋にワープ(先回り)する事が出来ます。アイスピック攻撃はアイスの当たり棒で突かれるくらいの威力です。
【スライム】スライムのぬいぐるみ。足元に先回りして踏ませれば確実に転倒させる事が出来ます。移動は最も遅いですが、ジャンプしての長距離移動が可能です。落ちている玩具のブロックを体内に取りこんで踏ませると激痛を与えられるでしょう。拳を作りだし、やはり小3程度のパンチが出来ます。


●プレイング
 基本方針は脅かしたり攻撃したりして、コソ泥を追い出す訳ですが、何せぬいぐるみですから、失敗を楽しみながらわちゃわちゃと頑張って下さい。
 初期配置はコソ泥が1階バスルーム。イレギュラーズはランダムで、1箇所に2人以上いる事はありません。また、ほとんどの攻撃スキルや一部ギフトはぬいぐるみの状態では使えない可能性があります。それを踏まえて以下の項目も必ず記載して下さい。

【仲間との連携】単独行動もOKですが、仲間と連係するならまずは合流するべきでしょう。どういった連携を試みるか内容を書いて下さい。
【アンディ君への対応】もしも物音で起きてしまったアンディ君にイレギュラーズが見つかった場合、何らかのフォローが必要です。幸い、彼はまだ寝惚けています。彼が発作を起こさないよう、どう誤魔化すか記入して下さい。


 以上です。筆者の傾向としてアドリブ多めとなります。
 ご縁がありましたら宜しくお願いいたします。

  • トイソルジャーズ完了
  • NM名かそ犬
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月29日 22時20分
  • 参加人数4/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
緒形(p3p008043)
異界の怪異
雨紅(p3p008287)
愛星
ノア・ザ・ミドルフィンガー(p3p009034)

リプレイ


 『躾のなってないワガママ娘』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)が瞼を開けると目の前には闇が広がっていた。目が慣れるまで待ってから見回せば、どうやらバスルームのようである。賊の侵入口は此処だったはずだ。
 自分は“マーズマン”ことタコ型エイリアンのぬいぐるみになっていて、足が8本あるという奇妙な感覚に戸惑っているうちに小さく声がし、静かに外気が流れ込んできた。続いて床へ2人分の重量が伝わる。
 2人組の泥棒――案内人に聞いた。確か、ニックとアレン――だ。
 メリーはじっとして、ただのぬいぐるみの振りをした。実力行使は現状を確かめてからでよい。
「ここはどーします?」
「脱衣所なんかいい」
 声の後で扉が細く開き、数秒外の光が差し込む。男達はただのぬいぐるみに気付く事はなく、部屋は再び闇に包まれた。
 メリーは超聴力を行使し、彼らの気配を追ってみた。近くの扉を開けて中を覘いているようだ。飛行と物質透過の異能も試してみたが、こちらは上手くいかなかった。飛行は僅かに身体が浮く程度だし、透過にはもの凄く時間がかかりそうだ。いつもは無意識にできる自分の身体の末端までの認識が今は怪しいからだろう。
 仕方ないわね、とメリーは小さく溜め息を吐いた。異能は制限され、いつも一緒のぬいぐるみ「モグタン」もいない。心もとないが、ぬいぐるみがぬいぐるみを抱えていては怪し過ぎる。「これでなんとかするしかないわ」



 侵入者は二手に分かれ1階の部屋を探っていた。その一方は、背は低いが筋肉質の若者アレン。ゲストルームのような部屋の扉を開けた意外に小心者の彼は、中を見て思わずびくっと身を引いた。部屋の中央に守護神よろしくぬいぐるみが鎮座ましましていたのだ。
 そろりと近寄って見れば、有名ホラー映画の殺人鬼をデフォルメした、確か名前を“フライデー”。
「ビビらすんじゃねえよ、殺すぞ」
 彼がフライデーをひょいと持ち上げ、顔を近づけて悪態を吐いた瞬間、ただのパイル生地であるはずの仮面の奥で“赤い単眼”が瞬いた――気がした。
 刹那、人形が持っていたアイスピックを男の左鼻に突き刺し、アレンはあァッと悲鳴を上げてぬいぐるみを放り出す。
「いっだ……!! な、なんだ?」
 涙を拭い、急いでぬいぐるみを目で追うが、そこにはもう何も落ちてはいなかった。

「あれ……」
「声を出すなよ」
 声に気付いて部屋に入ってきた長身ちょび髭の中年ニックが弟分の頭を小突いたが、振り返った彼の顔を見て驚く。
「なにやってんだ。鼻血が出てるぞ」
「いや、なんか……人形に、刺されて……」
「はぁ? おまえ」
 薬でもやってんのか、と言おうとしてニックは言葉を飲み込んだ。この小心者にそんな度胸はないはずだ。
「来い。キッチンがあった。意外に金とか隠してる」

 男達の足音を超聴力で確認しつつ、既にキッチンへ先回りしたフライデーの中で『異界の怪異』緒方(p3p008043)は楽しげな声を漏らす。
「さあ、恐怖の夜のはじまりさね」



 2人の声と足音を確認してから廊下へ出たメリーは、すぐに電話を発見した。マーズマンの念動力を使い、電話台から電話帳を引き寄せる。当然文字も数字も理解できないが、警察や消防などの緊急番号など大体ページの先頭の方に決まっている。試しに幾つか掛けてみれば、すぐに分かるだろう。
 そう、念動力で受話器をゆっくり持ち上げて――――「ん?」
 ふらふらと浮き上がった受話器を、トラのぬいぐるみ“ティグレ”が猫パンチで玩んでいたのだ。
「ちょっと……何してるのよ!」
「はっ! これは失礼を。ついネコ科になりきってしまって。緊急番号を確認されるのですね。では私がお手伝いしましょう」
 メリーの呆れ声に我に返った『刑天』雨紅(p3p008287)が恥じるように言って、にゃぁと鳴いた。



「ないっすねえ」
 キッチンでチョコフレークの箱までひっくり返して調べていたアレンが諦めたように呟くと、ニックが聞こえよがしに舌打ちをする。
「じゃここは俺が見る。リビング探してこい」
「へ~い」
 そう頷いて出て行こうと振り返ったアレンが、うわっと声を出したので、ニックの声はさらに鋭くなった。
「あのな、大きな声を出すなって」
「いや。だって……このぬいぐるみ」
 アレンが指差したテーブルの足元にはフライデーが置かれていたのだ。
「さっきの部屋で俺を刺したやつですよ。なんでここに……」
「何言ってんだおまえ大丈夫か本当に。そんなもん、同じのが2個あったに決まってるだろ。子どもがあちこちに置きっぱなしにしてるんだよ。いいから行け」
 無造作にフライデーを持ち上げたニックはプラスチックのゴミ箱に彼を放り込み、蓋を閉めて、行けと身振りでアレンを追い払った。
「全く……ビビりにも程があるぞ」



 扉の隙間からリビングを覘いたアレンはそろりと中へ身体を滑り込ませた。リビングはかなり広く、壁際に設けられた階段は上階へと続いている。情報通りなら子どもが上の階で寝ているはずだ。灯りが点けっぱなしなのは起きた時に恐がらせない為かもしれない。アレンは鼻血を吹いたスカーフで念の為に顔を隠し、引き出しを漁り始めた。
 そして、ふっと目が合う。
 顔の高さに浮かんでいた三日月のぬいぐるみ“ルナ”がぎょろりと剥いた目と。
「うお! うお! うおお!!!」
 尻餅を突いて後退るアレンの声がこれ以上大きくなる前に、ノア・ザ・ミドルフィンガー(p3p009034)は、ルナの異能を行使した。目を合わせた相手を忘我状態にする一種の催眠だ。
「子どもが寝てるんだ。邪魔しないでもらおうか!」
 ノアの体当たりは脱力しきったアレンのまたしても鼻っ面を捉えた。痛みで正気に戻ったコソ泥はううッと低く唸り、それでも恐怖に顔を歪めながら、懐中電灯を振るって彼女を叩き落とそうとする。
「か、神よ!」
「神、だと」
 アレンが漏らした言葉は、ノアの怒りを大いに刺激した。神は人を助けない。神は悪を罰しない。神なぞいない。天にましまさぬヤツに代わって、私が人を助けてやる。
「喰らえ!」
 懐中電灯を躱したノアの体当たりが再び顔面に命中し、アレンは背を向けてダイニングへと逃げ出した。



 キッチンのニックは聞こえてきた弟分の悲鳴に、はあぁっと苛立たし気な溜め息を吐いた。幻覚でも見てるとしたら、本気で拙い。
「全く」そう嘆いたところで、視界の端を何かが横切ったのに気付く。
 にゃぁ。
 なんだ猫か。
 しゃがみ込んだニックは棚の影に猫の姿を見つけ、そして何かおかしいと気付く。頭が大きい。ていうかバランスがおかしい。まるで、ぬいぐるみ、だ。
「シャ――――ッ!」
 すっかりネコ科になりきった雨紅がニックの顔に飛びついて爪でばりばりと引っ搔くと、男はいでぇッ!!と自分も大声を出し、必死に振り払う。瞼を引っ搔かれたニックは目をしばたたかせていたが、彼の頭上にはメリーが秘かに浮かせていたタバスコの瓶。ぽたりと垂れたその一滴は見事、傷口へ吸い込まれた。
「あ”……いっでぇぇ――ッ!! 目がッ、目があ!」
 顔を押さえながらキッチンから飛び出していくニック。男の後ろをメリーのマーズマンと雨紅のティグレが追う。
「追うわよ!」
「はい。少し楽しくなってきました」



 ダイニングへ逃げ込んだアレンの目にまず入ったのはテーブルの上に立つぬいぐるみ。
ああッと小さく悲鳴を上げたのは、それが捨てられたはずのフライデーだったからだ。
「どこへ逃げようというのかね」
 緒方が不敵に笑うと、小恐慌をきたしたアレンは懐中電灯でフライデーを殴り飛ばし、さらに振り回してそこら中へガンガンと叩き付ける。追い掛けてきたノアが回りこんで目を合わせ、強制的に忘我状態にして動きを止めさせた。
 ノアはふよふよとフライデーに近付き、緒方をじろりと睨む。
「脅かし過ぎだ。子どもが起きてしまう」
「これは失礼。ちょっと興が乗り過ぎてしまってね」
 これだからかみさまってやつは、と皮肉を言うノアに緒方はにやりと笑い、何か言いかけたがそこへニックが駆け込んできた。

「どうした! 何ぼうっとしてる」
「あ、あれっ。いやあのぬいぐるみが……」
「何? それより凶暴な猫みたいのがいる」
 にゃぁとまた鳴き声がしたので、ニックはびくりと肩を震わせ、辺りを見回した。その彼の頭に叩かれたような痛みが走る。振り返ると、明後日を向いたアレン。
「なんで今叩いた?」
「は? 叩いてないですよ」
「……もういい。2階を探してさっさと出て行こう」
 言われて階段を見やったアレンの後頭部を今度はぴしゃり。
「俺やってないのに、なんで叩きます?」
 さすがにムッとして兄貴分を睨むアレンをニックが何もしてねえよ、と睨み返す。
「いいわ。もっと険悪になりなさい」
 2人は、物影から光線銃で交互に狙撃したメリーの横を通り、リビングの階段へ向かおうとする。
 2階へ行かせるのは拙い。
 先回りしていた緒方が姿を現すと、すっかりフライデーにビビっているアレンが飛び上がった。彼が悲鳴を上げる前に、ふにゃぁァと顔に飛びついた雨紅が彼の鼻にがぶりと噛み付く。驚くニックの意識を現れたノアが飛ばし、その隙にメリーが目の傷に再びタバスコを一滴。

「あ”ぁいででッ!」
「バケモンだ!」
 悲鳴を上げて転がるように逃げ出す2人組。遠くからはパトカーのサイレンの音が聞こえてくる。
「ママ~?」
 一件落着と気を抜きかけた4人は、階段の上の子どもに気付いてぎょっとした。物音でアンディ君が目を覚ましたのだ。
「動いてる? ね、なんで動いてるのお?」
 寝惚け眼の彼の裾を雨紅が咥えて寝室へと引っぱり、メリーと緒方はその背を押した。
「これは夢だよ」漂いながらノアは囁く。
「夢え?」
「私達が見てるから、ゆっくりベッドにお戻り」
 
 もうすぐパパとママは帰って来る。
 それまでもう少し、夢の中で。

成否

成功

状態異常

なし

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