PandoraPartyProject

シナリオ詳細

隣り合わせの非日常

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


ㅤ山中。

ㅤ人が住むのに適さないからこそ、人の道から外れようとする者にとってそこは唯一安息を得られる場所となりうる。

ㅤそこで暖をとる野盗の集団も同じだ。

「お頭ぁ、今日も大漁でやしたねぇ」

ㅤ下っ端の一人がお頭を持ち上げる。明確な上下関係があることが伺える。

「あぁ、やっぱりこの辺の村は実入りがいい。暫くはここを拠点とするべきだなぁ」

ㅤこんな辺鄙な場所、憲兵が来るにも期間が開くだろう。それまではこの辺りの村で資源を蓄え、憲兵がやってくるその前にトンズラすれば問題ない。

ㅤこの野盗、頭領が普通の野盗よりは頭が切れるらしく、特に引き際を見極めるのが上手かった。だからこそ、これまで憲兵に討伐されることなく生き残ってくることができたのだ。

「わかってるかお前らぁ!ㅤ村人は資源!ㅤ生かさず殺さずが鉄則だぞぉ!」

ㅤお頭の言葉に、下っ端たちは一様に頷くのだった。


ㅤこの世界に置いて、野盗の存在などさほど珍しくもない。
ㅤそれこそ、路頭に迷ったものの行き着く先として最も確率の高い選択肢が野盗であるほどだ。

ㅤ野盗の襲撃は、いつ何時でも起こりうる。

ㅤいつ何時でも起こりうるからこそ、それは日常と隣り合わせなのだ。



「やぁ、久しぶりだね。初めまして、僕だよ」

ㅤ片手には読みかけの本。ページを捲る手は止めず、しかしこちらを見据えたまま、グラスはいつもの調子で声をかけてきた。

「今回の依頼は野盗の討伐。とてもシンプルだ」
「最近、近くの村に度々野盗が出没するようになってね」
「このまま憲兵がくるのを待ってもいいんだが、そうしている間にも村は被害に遭い続けるだろう」

ㅤグラスは捲り続けていた本にしおりを挟み、パタンと閉じる。

「そこで、君たちイレギュラーズに力を貸してほしい」

ㅤもちろん、野盗の処遇は問わない。殺してしまっても構わないし、憲兵に突き出してもいい。自らの手によって更生を試みてもいいだろう。
ㅤその辺は君たちの自由だよ。

ㅤそう言い切ると、グラスはこちらへと本を差し出すのだった。

NMコメント

ㅤ七草です。

ㅤ今回は単純明快な戦闘依頼です。好きなように野盗をぶっ倒しましょう!

●目標
ㅤ辺りの村を襲撃している野盗の一味を討伐しましょう。野盗の生死は問いません。

ㅤ野盗を倒したくらいのタイミングで近くの村に憲兵が到着しますので、そこで野盗を引き取って貰えます。

ㅤですが、村に野盗が現れなくなれば成功ですので、必ずしも憲兵に突き出す必要もありません。
ㅤ頭領が討伐されると、下っ端は散り散りに逃げ出しますので、そこだけ注意していただければ。


●討伐対象
・頭領
ㅤ野盗達のリーダーです。それほど強い訳ではありませんが、頭が切れます。下っ端に指示を出しながら戦うことになるでしょう。

・下っ端×30
ㅤ頭領以外の野盗です。数だけ多い雑魚です。頭領の指示があれば連携をとれますが、頭領が討伐されるととたんに連携が取れなくなり、逃げ出します。


●場所
ㅤ山中にある野盗のアジトです。木々などによって若干視界は悪いですが、まぁ問題はないです。なんならなぎ倒して視界確保して頂いても構いません。逆にそれらを利用して暗殺するのもアリでしょう。

ㅤ山中があまり好ましくない場合は、野盗が村を襲撃してきたタイミングで返り討ちにするのもいいかもしれません。


ㅤ以上です。よろしくお願いします。

  • 隣り合わせの非日常完了
  • NM名七草大葉
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年10月04日 22時30分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ランデルブルク・クルーガー(p3p008748)
遍歴の
ノア・ザ・ミドルフィンガー(p3p009034)
望月 凛太郎(p3p009109)
誰がための光

リプレイ


ㅤ近くの村々を襲撃する野盗を討伐するべく、“3人”のイレギュラーズは野盗の根城である山中付近にて集まり、その時を待っていた。

「こりゃまた随分とステレオタイプな野盗だ」

ㅤ依頼書を読み返しながら、ノア・ザ・ミドルフィンガー(p3p009034)は呟く。

「だからこそ村が受ける被害もストレートに嫌なものだね」
「まあなんというか……ここまで普通の依頼だと逆にすごく珍しく思えてしまうな」

ㅤ俺も随分混沌世界に馴染んでしまったというわけか、泣けるぜ、と自嘲気味に呟くのは『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)だ。

ㅤ実際、魑魅魍魎がごときモンスターを日々相手取るイレギュラーズにとって、野盗、つまり特殊なスキルの無い対人戦というのはあまり経験したことの無いものだったのだろう。

「野盗の討伐か……人を相手にするのは初めてだな。いつかはやらなきゃなんだって分かってたけど、少し怖い」

ㅤ『キトゥン・ブルー』望月 凛太郎(p3p009109)もその一人だった。争いの無い世界から召喚された彼にとって、自身と同じ“人”という存在を相手取るのに恐怖を覚えるのも仕方がないことだった。

「でも、村人達はもっと怖くて、辛い目に合ってるんだ」

ㅤしかし、その程度で挫けるようならイレギュラーズは務まらない。
ㅤ凛太郎は震える手を固く握り、拳をつくる。

「ま、今回は単純明快に人助けだ!頑張っていこう!」

ㅤそんな凛太郎を励ますように声を上げるノア。それに世界も答える。

「そうだな……さて、そろそろ向かうぞ。全員準備はいいか?」
「もちろん!」
「ああ!」

ㅤまず先陣を切ったのは凛太郎だ。

「……不壊之誓を此処に、アンブレイカブル!」

ㅤ自らを鼓舞するように声に出し、凛太郎は敵のアジトに正面から乗り込んだ。

「おいおい、何もんだぁ?ㅤ憲兵はまだ着くはずがねぇんだが……あぁ、三人?」

ㅤ突然の訪問者に距離を取りながら答える男。おそらくこいつが頭領だと当たりをつけた凛太郎は、脇目も振らずに殴りかかる。

「はっ!ㅤお前らお客様だぞぉ!ㅤちょっと揉んでやれぇ!ㅤ油断はすんなよぉ!」
「わかりやした!!」

ㅤその一撃を回避し、更に距離を取りつつ頭領が声を張り上げる。
ㅤと、同時に五人の下っ端が一斉に襲いかかる。

ㅤいくら普通の人間とはいえ、大の大人五人による暴行。痛くないはずが無い。辛くないはずが無い。

ㅤしかし、凛太郎は屈しない。不屈の精神で、何度倒れても起き上がり、五人の男相手に拳を振り抜いた。

「……絶対に屈しない、屈してなんかやらない!ㅤ俺には強大な魔力も、卓越した剣の腕もない。でもな、根性だけは……誰にも負けてたまるかよっっっ!!!ㅤさぁ、根比べだテメェら、俺かテメェら、最後にどっちが立ってるか試してみようじゃねぇか!!!ㅤ村人達の無念、恨み、全部テメェらが抱えて逝きやがれ!!!」

ㅤ殺意を込めて凛太郎は声を張り上げる。

「若いのはいいが、一人で抱え込みすぎるなよ!」
「まったくだな。先走るのは良くないぞ」

ㅤそんな凛太郎に続くようにノアと世界が続く。

ㅤ世界は直ぐに空中へと陣を描き、調和の光を凛太郎へと飛ばす。すると凛太郎の傷は瞬く間に癒えていった。

ㅤノアは手袋を脱ぎ捨てると、自身の指先を噛み切り、血を垂らす。すると、その血が落ちた点を起点に、光が漏れる。凛太郎と世界は身体が軽くなる感覚を覚えた。

「たかが三人に逃げ腰とは意気地が無いね! 少しは気概を見せたらどうだい!」

ㅤノアが声を張り上げる。その挑発に、頭領の周りにいた十五人を除いた全ての下っ端が、ノアの方へと襲いかかった。

「舐めてんのかクソアマぁ!ㅤぶっころ──」

ㅤしかし、その言葉を最後まで口にすることは許されなかった。突如として白目を剥いた野盗の男は、そのまま後ろへと倒れ込み、そして動かなくなった。

「お、おいどうした!?」
「っバカ!ㅤ持ち場から離れんな!」

ㅤ頭領の周りにいた下っ端の一人が駆け寄るが、悪手だ。頭領が怒号を飛ばすが、もう遅い。

「がっ!?」

ㅤその下っ端も同様に突如として不可視の攻撃を受け、一撃必殺のもとその場に倒れ込んでしまった。

「み、見えない攻撃だ!ㅤお前ら!ㅤ気ぃ抜くをんじゃねぇぞ!ㅤあいつらの中に魔術師が混じってる!」

ㅤ不可視の攻撃……それは魔術師のものであるか──否。

「ちょっと蹴りますよ……っと」

ㅤそれは不可視でもなんでもない。超スピードによる目にも止まらぬ一撃。
ㅤ野盗討伐に名乗りを上げた四人のイレギュラーズ、その最後の一人である『遍歴の』ランデルブルク・クルーガー(p3p008748)によってそれは行われていた。

ㅤ分かってしまえばなんのことは無い、ただ尋常ではない速さによってヒットアンドアウェイの奇襲を行っているのみ。

ㅤ対処法などいくらでも存在するはずだ。

ㅤそう、それは分かってしまえば、の話である。

「ちくしょう!ㅤどっちが魔術師だ!ㅤ詠唱も無しにどうやって魔術を使ってやがる!」

ㅤ不可視の攻撃は魔術によるもの。そんな固定観念の植え付けられているこの世界の住人にとって、超スピードによる奇襲など土台理解できない話であった。

ㅤましてやここは敵味方入り乱れる戦場。
ㅤ全体を俯瞰して見ている頭領であっても、それに気づくことは出来なかった。

ㅤ木の影から次の奇襲の時を伺うランデルブルグ。ダメージを喰らわぬよう、慎重に、尚且つ機会は逃さず。その様はまさに猛禽類の如し。

(食い詰め者の行きつく先はどこも同じで、オジサンのやることも騎士団だろうとローレットだろうと同じ。
ㅤどこも似たようなモンで、野党の対処にも慣れたものっていうのも考えもんだよなあ)
「……いやだねぇ」

ㅤその呟きさえも、空を切る。


ㅤ戦況はこちらに傾いていた。すでに幾人もの野盗の死体が積み上がる戦場。
ㅤ頭領という優秀な司令塔がいるとはいえ、ただの烏合の衆に対して、精鋭である四人のイレギュラーズ。

ㅤこうなることは自明の理であった。

「……チッ」

ㅤそれは頭領にとっても同じである。凛太郎が五人の野盗相手に渡り合っているのを見てから、既に頭領はその選択肢を頭に浮かべていた。

「全員退散!ㅤバラけて逃げろ!ㅤ逃げ切ったやつは“あの場所”に集合!ㅤ死んだやつは気にするな!!」

ㅤその合図と同時に、洗練された動きでバッと散開する野盗達。
ㅤとっさに挑発を行おうとしたノアだったが、常に距離を意識していた頭領に対してその挑発は届かず、一手遅れてしまう。

「逃げるのか!!」

ㅤ凛太郎が卑怯者と叫ぶ。しかし、そんな言葉頭領は聞き飽きている。

「ああ逃げるねぇ!ㅤ死んだら元も子もねぇだろうがぁ!ㅤ俺は例え一人でも逃げ切ってやるよぉ!!」

ㅤそう嘯くや否や踵を返し、イレギュラーズ達とは真逆の方向へと逃げる頭領──

「……まったく、ここまで簡単に引っかかるとはな」

ㅤ──そこは既に世界のテリトリーだ。

ㅤ頭領が一歩踏み出したそこには、地がなかった。

「うおっ!?」

ㅤそれは単純な落とし穴。しかして巧妙に偽装されたそれに気づけるものはごく僅かであろう。

ㅤ落とし穴だけでは無い。網が降ってくるもの、足に縄が巻き付くものなど、様々なトラップが、野盗を襲う。
ㅤ結局、頭領を含めた生存者全員が世界の罠によって捉えられてしまった。

「ああ、罠を仕掛けておいたんだ。捕り漏らしがいても困るからな」

ㅤあっけに取られる凛太郎とノアに世界が答える。
ㅤ木の影から現れたランデルブルグも抗議のような視線を向けた。

「そういうのは事前に言って欲しいぜ。オジサンうっかり落ちそうになっちゃったよ」
「すまないな。伝え忘れていた」
「……ま、奴さんは捕縛できた訳だし良しとするか」

ㅤあっけらかんと謝罪する世界に、ランデルブルグは首を竦めながら答えた。


「さて、と。こいつらは憲兵に突き出すってことでいいかな?」

ㅤ生きている全ての野盗を縛り上げた後、ノアがそう提案する。

「チッ、殺せよクソアマ」

ㅤ頭領が吐き捨てる。

「殺さないさ。貴様等にはしっかり牢屋で反省してもらう」

ㅤ抵抗出来ない者を殺す。それではかつての異能力者、自身を殺したアイツらと同じになってしまう。
ㅤそんなことは、しない。

ㅤノアは、神にはならない。

「どうだい?ㅤ異論はあるかい?」
「まぁ、俺は別に構わん」
「オジサンもいいと思うよ」
「……ああ」

ㅤそもそも興味が無さそうな世界。皆の意見に従うというランデルブルグ。どこか放心気味の凛太郎。

ㅤ三者三様の答えが帰ってきたが、皆憲兵に突き出すことに異論は無いようだ。

ㅤしかしそこで、ただ、と凛太郎が呟く。

「ただ、その前にこいつらの墓を作ってやりたいんだ」

ㅤ此度の戦闘で死んでしまった野盗達を示す凛太郎。その表情は何かを堪えているようにも見えた。

「コイツらにも、こうなってしまった何かがあるのなら。死んだ後ぐらい、ゆっくり安らかに眠って欲しいなって思う」

ㅤそれは憐憫なのか、後悔なのか。平和な国から来た彼にしか分からないことがあるのだろう。

「……俺自身のエゴだって言うのは、分かってるんだけどな」

ㅤ自嘲気味に呟く凛太郎。

「いや、いいんじゃないのか」

ㅤ世界がそれを肯定した。世界とて、境遇は違えど現代日本出身。凛太郎の気持ちは少なからず分かるのかもしれない。

「……うん。オジサンも賛成しとこう」

ㅤランデルブルグも何かを思ったのか、その意見に賛成した。

「いいのか……?」
「ああ、もちろんだ。私も手伝おう」

ㅤ神に祈ることまでは手伝えないがな、とノアが笑う。

ㅤ墓を作るという行為。それはいうなれば、依頼とは関係の無い行為。凛太郎一人ででも出来ればいいと思っていた事だった。

ㅤしかし、この場の全員がそれを肯定した。



ㅤ墓を作り終えた四人。
ㅤ凛太郎が手を合わせ、祈る。

ㅤ……来世はこんな事をする必要のないぐらい、幸せになってくれ。

ㅤそう思ったのは、きっと凛太郎だけじゃ無いはずだ。


成否

成功

状態異常

なし

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