PandoraPartyProject

シナリオ詳細

お月見フィーバー 増殖団子

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ちょっとした人助けのつもりが、大惨事に……ということは滅多に怒りはしないものだが、その滅多に起きないことが、とある町の食品工場で起こっていた。
「いいから食うでございます!」
 ローレット競技場の管理運営責任者のダンプPが叫ぶ。
「ひょんなこふぉいってふぉ……ぶふぉぉっ!!」
 ついに限界を迎えた男が、口いっぱいに詰まっていた団子をを噴きだした。それがきっかけとなって、他の七人も団子をぷぽほぽんと勢いよく噴きだす。
 工場内には壊れた機械がとめどもなく生産する団子と、男たちが噴き出した団子でいっぱいだ。すでに床は見えず、団子はずんずん積み上がり、ダンプPも男たちも溺れかけていた。
「だらしがないでございますよ。みなさん、大食い自慢でしょ?」
「も……ものには限度というものが……」
 月見用のお団子を作る機械が壊れたのは、ウサギの魔物のせいだった。二足歩行で器用に手で機械を操作してるが、魔種ではない。
 そのウサギの魔物は、大量に作り出された団子の山の向こうにいる。
「この白くてもちもちしたお月見団子を食べてしまわないと、魔物を倒して機会を止めることすらできないのでございますよ!」
 ウサギの魔物も真っ白、お団子も真っ白。
 おわかりだろうか。
 そう、まずは工場内にあふれる真っ白な団子をどうにかしないと魔物の所までたどり着けないし、保護色でお団子に紛れて逃げられてしまうかもしれないのだ。
 だが、しかし。
「も、もうだめ。食えない……」
 ダンプPが集めた男たちは、床を這い、転がりながら、工場の外へ逃げ出した。


「ダンプPからのSOSを受け取った。すまん、急いで向かってほしい」
 『未解決事件を追う者』クルール・ルネ・シモン(p3n000025)が集まったイレギュラーズに提示したのは、魔物退治の依頼だった。
「敵は一体。ウサギ型の魔物だ。ただ厄介なことに、魔物を倒す前に団子を大量に食べなくてはならないらしい。あ、どういうことかオレに聞くなよ。オレにも解らん。ダンプPがそういってるんだから、そうなんだろう」
 食べなくてはならない団子は、ごく普通の月見で食べる団子ということだ。飲み物はないらしい。
「魔物が立て籠もっている工場の外に、ダンプPが集めた男たち八人が食いすぎで苦しんでいる。彼らを回復させれば、戦力が倍……って、だからオレに聞くなよ。とにかく団子を食いつくさなければ戦うことすらできないらしい。胃薬を持って向かってくれ」

GMコメント

●依頼条件
・工場内にあふれている月見団子を、あらかた食べること。
・月見ウサギの討伐

●場所
幻想のとある町のとある食品工場。
魔物が機械を暴走させて、大量の月見団子が作られています。
工場内は大量の団子で埋まりかけています。
団子の山の奥で、魔物が機械を操作して月見団子を作っています。

●敵 月見ウサギ……1体
2足歩行です。工場の最奥にいます、たぶん。
体の色は白。目は赤です。
鉄の杵を所持。ぶん回してきます。武闘派。
【ムーンサルトアタック】……物近単。空高く飛び跳ねて急降下でウサギキック!
【ムーンライトハニー】……神近列。魅了

●月見団子。白いです。
 ごく普通の月見団子。美味しいよ。でも数が半端なく多いよ。
 とくにそれを食べたからと言って変な事にはならないようですが……。
 食べすぎると体が重くなって動きが鈍るでしょう。
 あと、食べている最中に飽きがくるかも。要対策。

●その他
 お手洗いは工場の外に1か所のみ。男女兼用です……。
 ダンプPは工場の真ん中で埋もれています。助け出しても戦力にはなりません。
 工場の外にダンプPが集めた大食い自慢の男たちが8人、倒れています。
 
宜しければご参加ください。

  • お月見フィーバー 増殖団子完了
  • GM名そうすけ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月29日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

奥州 一悟(p3p000194)
彷徨う駿馬
リア・ライム(p3p000289)
トワイライト・ウォーカー
パン・♂・ケーキ(p3p001285)
『しおから亭』オーナーシェフ
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
タルト・ティラミー(p3p002298)
あま~いおもてなし
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
甘露寺 結衣(p3p008114)
ヴェルグリーズ(p3p008566)
約束の瓊剣

リプレイ


「うむ。頼もしいメンバーが揃ったな」
 『『しおから亭』オーナーシェフ』パン・♂・ケーキ(p3p001285)は依頼を受けて集まった仲間の顔を順に見て、満足げに溜息をついた。
 八人中、半数の五人が何かしらお菓子と縁の深いものだったからだ。
 そのうちの一人に数えられた『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は、ちょっと困った顔をして首の後ろをかいた。
「いや、俺は単に甘いものが大好きだって公言しているだけで……一悟たちと変わらないけど」
 そうだよ、と『彷徨う駿馬』奥州 一悟(p3p000194)が勢い込む。
「オレも甘いもの大好きだぜ。育ちざかりの胃袋でガッツリ食うから、オレも頼りにしてくれよオーナー」
「そうッス。イルミナも頑張っちゃうッスよー!」
 街灯の灯りをメガネのレンズで弾いて、『機心模索』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)がずいっとパン・オスの前に進み出る。
 『特異運命座標』ヴェルグリーズ(p3p008566)も負けてはいられない。
「月見団子がくっついて大きな塊になっていたら、俺の出番だ。頑張るよ」
 月見団子は、お月見のお供えとして作る。作ってすぐ食べる事はせず、暫くの間かざっておく為、白玉団子よりも固めで時間がたってもダレない。とはいえ、積み重なればどうしてもくっついてしまう。
 いざとなったら『本来の姿』に戻って団子を切り分けるつもりだ。
「俺なら切ったものがくっつきづらいから、どんどん食べごろサイズに、しかも美味しく分けられるしね」
 混沌に召喚される以前は有名老舗和菓子店のお嬢様だった甘露寺 結衣(p3p008114)が、月見団子の材料について考察する。
「うるち米から作られた上新粉か、うるち米ともち米をブレンドしたものでしょうか。もし、白玉粉で作られていたなら……工場の奥は団子がくっつきあってすごいことになっているでしょうね」
 お菓子の妖精『あま〜いお菓子をプレゼント♡』タルト・ティラミー(p3p002298)が憤慨しながら言う。
「どっちにしても食べなきゃならないことに変わりがないわ。それにしたって……作るだけ作って消費もし切れないかもしれない量を放置するとか、お菓子作りのおの字も知らないような奴はお菓子の妖精としては放っておけないわね!」
 『トワイライト・ウォーカー』リア・ライム(p3p000289)が、腕をあげて前方の大きな建物を指示した。
「あれかしら、例の団子工場。こんな時間に明かりがついているし、なにより扉の前に大きなお腹をだして転がっている連中がいるし」
 ああ、あれだ。そういうなり世界は、歩きながら魔法陣が描かれた布を広げて、精霊の召喚準備を始めた。
「取りあえず頭数は必要だしな。ここにお菓子の精霊を呼ぼうと思う」
「ボクならもうここにいるけど?」、とタルト。
「いや、そうじゃなくて……タルトの仲間というか、呼び出すのは団子の妖精?」
 なんでもいいじゃない、とリアは二人の後ろから会話に割り込む。
「手伝いが増えるのはウェルカムよ。工場のあの大きさからしたら、かなりの量を食べなきゃならないでしょうしね。私はあの男たちを蹴り起こしたら人を集めに行くわ。ご近所さんを呼んでお月見パーティーといきましょう」
 パン・オスは背中の大剣を降ろすと、様々なハーブを詰めた小箱を取りだした。
「では、オレはおもてなしの準備をするか。一悟、団子を食べる前に少し手伝ってくれ」


 工場の扉は完全に閉まり切ってはおらず、隙間からぽろり、ぽろりと一粒ずつ、団子が転がり出ていた。土にまみれて茶色くなった団子の数は多くはないが、放置すれば大変な数になるだろう。いま製造中のものも含め、工場の中にある団子はあらかた食べなくてはならない。考えるだけで胸やけがする。
「お月見団子食べ放題、そう考えれば十分嬉しい仕事じゃないか……量が少々規格外だが」
 世界は精霊たちを連れて、パンパンに膨れあがった大食い男の腹をまたぐと、工場の重い鉄扉に手をかけた。
 イルミナも手伝い、左右に開く。
「わわ、団子が雪崩たッス!」
 飛びのいたイルミナの前を、小さな団子がゴロゴロ転がっていく。
 戸口に転がる大食い男たちの体が防波堤の代わりになった。
 リアがそのうちの一人に蹴りを入れて起こす。
「さっさと起きなさい。休憩時間は終わりよ。すぐに大食いを再開しろとは言わないから、団子をせき止めるための板を探してきてちょうだい」
 オレも一緒に探しに行く、と一悟がいった。
「その前にオーナーが入れるハーブティーを飲むといいぜ。あっちに用意するから行こう」
 ヴェルグリーズは呻き声をあげる別の男の腕を取って、体を起こさせた。
「キミは……飲む前にトイレに行く? 連れて行ってあげるよ」
 パン・オスは、工場の外に積み上げられていた木箱を机代わりにして、持ってきたハーブでお茶を入れたり、バジルでソースを作っていた。
 お茶や料理で使う湯は、結衣の魔力コンロで沸かしている。
 調理の合間に、パン・オスは工場から運び出されたきた月見団子を一つ口に入れた。
「うむ。悪くない」
 タルトは湯気で羽が湿気ないよう気をつけながら、パン・オスに近づいた。
「ハーブティー以外に、お飲み物が必要かしらね? ボクのギフトでスムージーとかあまぁい抹茶オレくらいなら出せるわよ♪」
 バジルを刻むシェフの手元を、興味深げに覗き込む。
「……お団子にバジルソース?」
「ああ、みんなもそれぞれ味変させるものを持って来ているだろうが……こういうトッピングも悪くないだろ?」
「いいんじゃない。リアちゃんが呼ぶ人たちの中には、甘いのが苦手って人もつきあいで来るかもだし☆」
 結衣は魔力コンロにかけた小豆の鍋をかきまわした。優しい味わいのおしるこを作ろうというのだ。ちょっと時間はかかるが、案外簡単に作れる。
「持ってきた分だけでは、足りなくなりそうですね」
「あんこなり、みたらしなりは団子の製造場所だしどこかしらにあるでしょ?」、とタルト。
「ボクも持ってきたけど少量だし、工場にあるもの使わせてもらうつもりよ」
「そういえば、世界とイルミナが香料やら小豆餡やらを探しに中に入って行ったぞ」
 タルトは世界たちを追いかけるべく、あわてて工場の中へ入って行った。
 結衣は鍋から小豆を少しすくって小皿に移した。茹で具合を確認しながら、それにしても、と工場の開け放たれた扉へ目を向ける。
「ウサギはお月様での餅つきに飽きてしまったのでしょうか?」
 うーん、とパン・オスが唸る。
 ウサギの魔物がなぜこんなことをとしでかしたのか、直接対決して聞きださなければ分からないだろう。そも、月に見えるウサギの影と魔物に関係があるのかもわからない。
 それは結衣も分っているようで、ひとりで話を続けた。
「……そういう事ではないですよね、兎に角……お団子を皆さんと一緒に美味しくいただきましょう」
「ああ、そうだな。おーい、一悟とヴェルグリーズ! 準備ができたぞ。大食いファイターたちも復活した。じきにリアが町の人を連れてくるだろう。どんどん団子を運んで来てくれ」
 探してきた板で入口に堰堤を作っていた一悟とヴェルグリーズは、こっそりため息をついた。
「食べながら給仕か……ウサギと戦う前に疲れちまうぜ」
「しょうがないよ。ある程度は食べないと、魔物にたどり着けないんだから。さあ、愚痴ってないで団子を運ぼう」


 世界とイルミナは工場の入り口付近で必死になって団子を食べながら、奥に向かって進もうとしていたが、あまりの多さに探索をいったん打ち切ることにした。
 なにせ――。
「一個の大きさは直径が約三センチ。毎分十五個ずつ生産されているッスよ……!」
 月見団子としてはやや小ぶりながら、それでも数が数である。いくら食べてもなくならないどころか、少しずつ増えて、世界とイルミナの足を押し流す。
 外に出ようと体を回したところへタルトが飛んできた。
「ボクも味変の素材探索を手伝うよ☆」
 タルトは天井付近まで飛んで、工場の中を広く見まわした。
「左奥に湯気があがっているよ。あそこで団子を茹でているんだね。ここから十メートルほど向こうだ。あ、湯気の向こうにドアが見える」
「そこが食材の倉庫だ。妖精たちもそうだって言っている」
 世界には自身の探索技術に加え、召喚した妖精たちの助言があった。とっくに倉庫の場所を突き止めていたのだが、団子に阻まれて近づけなかったのだ。
「工場の裏から回ったほうが早そうッスね」
 やはり一度、工場の外に出たほうがよさそうだ。
 タルトはその前にもう一度、工場内を見まわした。
「製造ラインを逆に辿って、あ、天井に月が!! ……って、あれはライトの光?」
「それ、クルールが言っていたダンプPじゃないか。元々この依頼を持ってきたという」
「すぐに助けに行きたいところッスが、もう少し団子の下で頑張ってもらいましょう」
 三人は団子を食べながら、一緒に工場の外へ出た。
 工場の前には、即席の机と椅子がたくさん並べられ、たくさんの人が大食い男やイレギュラーズたちと一緒にわいわい言いながら、団子を食べていた。
 上は八十近い高齢者から下はよちよち歩きの子供たちまで。すべてリアが連れてきた町の人々だ。
 満にはやや足りぬ大きな月と、涼しい風にのって草むらから運ばれてくる虫の声が、味気ない工場前の道に秋の風情を添えている。すぐそこに魔物がいるにもかかわらず、みんな月見を楽しんでいた。
 リアが三人を見つけて寄ってきた。
「貴方たち、味変の素材を取りに入ったんじゃなかったの? パン・オスたちが、人が増えたのはいいけどソースや餡が『足りなくなってきた』って困っているわよ」
「中からは取りに行けない。いまから裏に回る」
「そう、ならなるべく早くお願いね」
 リアはもっと人を集めてくるといって、その場を去って行った。
 タルトは味変の素材を二人に任せ、町の人たちに飲み物を出すことにした。リクエストを聞きながら、出せるものはどんどん出して行く。
「一悟くんとヴェルグリーズくんも何か飲む?」
 頬を団子で膨らませた一悟は、某炭酸飲料をリクエストした。
「○ーラが欲しい」
「……ごめん。それ、大人の事情で出せない」
 チョコレートやクリームの甘いトッピングに飽きて、パン・オスのバジルソースをかけた団子をスライスチーズに挟んで食べていたヴェルグリーズは、タルトに虚ろな目を向けた。すでに胃袋の限界が近い。元の姿に戻った時に、シャープなラインでいられるかどうか――。
「俺にはワインを」
「ごめん、それも出せない。基本、ギフトで出せるのはノンアルコール商標なしでボクが知っている甘い飲みものだけ。二人とも抹茶オレで我慢して」
 おしるこを子供たちに配っていた結衣が、空になった盆を胸に抱いて振り返った。
「私にも一杯。抹茶オレをくださいな」
 お安い御用とばかりに、タルトは出した抹茶オレを手渡す。
「どーぞ」
 抹茶オレをひと口飲んで、あとはまたモクモクと口を動かしていたヴェルグリーズだったが、ふと団子をもった手を止めた。
「よく見るとこれ、まん丸じゃないな」
 それは、と結衣が説明をする。
「ピンポン玉のようなまん丸では、死者の枕元に供える「枕団子」と同じになってしまいます。なので、真中を少し窪ませているんですよ」
「へー、よく知ってるなぁ。さすが老舗和菓子屋の次期女将だぜ」
 一悟が褒めた。
「ありがとうございます。でも、私が店を継ぐとは決まっていませんよ。それに……」
 それを決めるのは元の世界に戻ることができたあとのこと、と結衣はほんの少し、寂しそうに笑う。
 つられて一悟とタルトも、しんみりとした顔になった。
「そうか。三人ともこの世界の出身じゃなかったな」と、ヴェルグリーズ。混沌を救うことができれば元の世界に帰れるさ、と希望を込めて一悟の肩を叩く。
「あ、うん。オレたちだけでなく、オーナーと世界、それにイルミナもウォーカーだ。みんな別々の世界から……。考えてみれば、めちゃんこ不思議な縁だよな。オレたちの出会いって」
「――あ、噂をすればなんとやら☆」
 タルトが明るい声をあげた。
「世界くんとイルミナちゃんが、味変の素材をもって戻ってきたよ♪ それにリアちゃんも! また町の人をたくさん連れてきた」
 それを聞いて、虚ろだったヴェルグリーズの目にも光が戻る。
「よーし、もうひと頑張り。団子を食べて、ウサギをやっつけに行こう」


 世界は様々な香料を調合し、飽きたもう飽きた、と呻いている大食い男たちの団子にふりかけてやった。
「これでまた食えるよな。オレたちはそろそろ悪いウサギを成敗しにいくから、あとを頼む」
 みんなで団子を食べた結果、工場のなかで溢れていた団子はかなり減った。
 団子に埋もれていたダンプPは自力で脱出し、文字通り工場の外へ転がり出てきた。
「ああ、助かった……イレギュラーズのみなさーん! もうひと頑張りでございます。魔物は団子の壁の向こうですよ!」
 重くなった腹を抱えるようにして、一悟がダンプPを蹴り転がす。
「育ち盛りの胃をもってしても、もう食えねぇよ。てか、なんだよ団子の壁って」
 ウサギの魔物がいると思われる附近の団子は案の定、ヴェルグリーズの予想通りに重みでつぶれてくっつきあい、ひと塊になっていた。
 一悟とリア、それにタルトは飛んで壁を越せるが、戦力の分断は得策ではない。
 ほかにも団子を作っている機械を辿ってウサギの元へ行くこともできるし、工場の裏に回って穴をあけ、ウサギを強襲する手があったが、どれも「ダメでございます!」とダンプPに止められていた。依頼主から、機械を含め工場の建物を壊さないで欲しいと言われているらしい。
 イルミナは団子の壁に近づくと、ごうん、ごうん、という微かな機械音に耳をすませた。
「聞こえてくる音から推測すると、壁の厚みは一メートル弱ッスね」
 リアがため息を強くつく。
「ヴェルグリーズ、さっさと切り崩してちょうだい。切り崩した団子は私が新しく連れて来た町の人、それに世界が呼んだ精霊たちが食べてくれるでしょう」
「もちろん、やるよ。でもその前に……みんな工場から出ていってくれないか?」
 ヴェルグリーズはみんなを工場から追いだすと、中から扉を閉めた。無いとは思うが、元に戻って刀身がふっくらしていたら、精霊剣の誇りに傷がつく。
 扉の隙間から覗こうとしたタルトを、結衣が止める。
「でも、なんだか『鶴の恩返し』みたいですね。覗きたくなるのもわかります」
 暫くすると、扉が左右に開いた。
 十五個ずつきれいに盛られた団子が整然と床に並ぶ向こうに、人の姿に戻ったヴェルグリーズがいた。片手剣を構えて、宇宙服のような衣装を着たウサギを威嚇している。
「よし、行くぞ」
 パン・オスは背中に腕を回して大剣を引き抜いた。ずんずん進んでウサギの前に立ち、よく通る声で挑発した。
「月から転げ落ちたまぬけなウサギは貴様か? このパン・オス様が月まで蹴り飛ばしてやろう」
 長い耳をつんと立たせて、魔物が鉄の杵を振り回す。ぶぅ、ぶぅ、と鳴いて突っかかってきた。
「おいおい、ちょっと待てって」
 世界はおかしな白衣の隠された能力を使い、四次元的ポケットにヴェルグリーズが切り分けた団子を詰め込んで、戦闘の場を広げていく。
 鉄の杵をパン・オスが大剣で受けて横に流す。すれ違いざま足蹴りを食らわせようとしたが、逆に脚を蹴り跳ばれてしまった。
 世界は腕を大きく動かして、虚空に白蛇の陣を描いた。
「食べた直後に激しい運動をして腹が痛くなるのは御免だ。一撃必殺でいくぞ」
 陣から飛び出した魔法の白蛇がウサギの後ろ脚を捕え、絡みつく。
 魔物は太ももに鋭い牙を突きたてられた瞬間、チッ、と鳴いた。片足で着地した後、全身をばねのように伸ばして高くジャンプする。
 天井近くで体を捻り、白い脚で円を描くと、踊りながら手にする楽器で攻撃的な魔法音を飛ばすリア目がけて落下した。
「――!」
 ウサギの踵はリアの鎖骨を捉え、砕いた。
「リアさん! このォ……よくもやってくれたッスね!」
 イルミナは蒼い光を放つエネルギーフィールドを纏った腕を降りぬいて、ウサギが掲げた鉄の杵をへし折った。
 一悟が炎を纏ったトンファーでウサギの腹を焼く。
「おい、お前。なんでこんなにたくさん団子を作ってたんだ。なんか目的があるのか?」
 ウサギは質問には答えず、イレギュラーズに顔を向けて目をぱちぱちさせる。
「か、かわいいー」
 ウサギのすぐ前にいたイルミナとタルトが目をハートにした。
「見かけに騙されてはいけません!」
 リアに治癒符をあてて介抱していた結衣が叫ぶ。
 世界はブレイクフィアーを発動して、二人に掛けられた魅了をといた。
「危なかった~。お返しに本当の甘味ってぇやつを教えるわよ! ロケットにパイでしっかりと味わいなさい!」
 えい、と、スナック菓子を全力でぶん投げた。
 ウサギの魔物は攻撃を口で受けると、ボリボリ音をたててスナック菓子を食べだした。
 ヴェルグリーズは片手剣をくるりと回して、紫の縁を持つ月を描いた。
「その調子で、作った団子も自分で食べてくれればよかったんだけどね」
 月に視線を釘づけにしたまま動かないウサギの首を、一振りで切り落とした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

おつかれさまでした。
ウサギを撃退、残っていた団子も町のみんなと月見をしながら食べました。
工場にも目立った被害がでず、すぐに再稼働できるようです。
依頼主がとても喜んでいました。
大食いたちに出した分と同じだけの賞金をイレギュラーズにもだしてくれています。

それではまた。
別の依頼でお会いいたしましょう。

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