シナリオ詳細
かっこよく技名を叫ぼうぜ!
オープニング
■勇者にもある程度の見栄えは必要なのです
無数にある世界のうち、一つの世界。ここもまた、大多数の世界と同じように人と魔が争う戦乱の世。
長年続いた因縁の戦い。しかし、今まさに人間族の希望、勇者と。魔族の長、魔王が激突しようとしていた。
「ゆくぞ魔王! 覚悟しろ!」
人々の想いを胸に抱く勇者は今まさに、恐怖の象徴たる魔王へ挑もうとしていた。
のだが……。
「……待て、勇者とやら」
「なんだ、命乞いなら聞かんぞ!」
勇者を一目見た瞬間、こめかみを押さえる魔王。手で勇者を制するが、対する勇者は意気盛ん。
「……お前のその格好はなんだ」
その格好。
魔王の示すところはただ一つ。勇者の着ているものがただの村人の服であり、武器がただの竹槍だった事だ。
「格好など些細な問題!」
「いや、ちょっとは気にしろ。してくれ。……そもそもそんな格好の人間に我が配下共は負けたのか」
別の意味で頭痛がしてくる魔王であった。こんな情けない格好の人間に、自慢の配下が次々に敗れていたなどと考えると。
いや、逆に考えれば。こんな格好なのにここまで来たということは、とても強いのではないのかこの勇者。
「次はお前の番だ! この勇者アアアアが成敗してくれる」
「いや本当待って。もう一度名前を言ってみろ」
「アアアアだ!」
自信満々に胸を張って言い切る勇者に、本気で目眩を起こしそうになる魔王であった。格好だけでなく、名前もふざけているとは。
絶対に負けられない戦いがここにはある。(魔王側の心境)
「ゆくぞ! 必殺、アアアア突きぃ!」
「ダサイわぁぁ!!」
一瞬の間に敵の懐に踏み込み、急所を一突きするという勇者の必殺技が炸裂!
……しそうになったのだが、あまりのネーミングセンスの悪さにブチギレた魔王が一蹴。
「……ああ、もっとまともな奴が現れないものか」
■ということで、勇者になってきて下さい
「……うん、この名前は流石に酷いと思う」
境界案内人のカストルが、なんとも言えない表情で本から顔をあげる。集まったイレギュラーズも皆同じような面持ちであった。
いくら強さに格好は関係ないとはいえ。それで倒されてしまっては負けた側も浮かばれないというものである。
既に魔王以外の配下は全敗しているようだけど。
「……ま、まあそういう訳だから。この勇者は復活してもう一度魔王に挑むみたいなんだけど……皆が合流して一緒に戦ってあげてくれないかな」
かっこいい技名とか考えておいてね!
そう付け加えたカストルの笑顔が未だ引きつっていたのは……きっと気の所為ではない。
- かっこよく技名を叫ぼうぜ!完了
- NM名以下略
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年09月26日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
■勇者の矜持
「ああ、アンタかい? 一人で魔王に挑んでる勇者ってのは?」
「む、そうだが。貴殿達は一体?」
村人の布の服に竹槍。話に聞いた伊で立ちの男を見つけ話しかける『酔いどれた青い花』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
ヤツェクの顔を一度見つめ、不思議そうに首を傾げる男。勇者アアアア。ふざけた名前とみすぼらしい格好だが、たった一人で魔王軍と戦い続けている勇者である。
「あーし達は勇者の噂を聞いてやってきたの!」
「よかったら、なかまにしてほしい、な」
見た目少女の『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)と『宵闇の調べ』シセラ・デュセス(p3p009105)が勇者の左右から顔を見上げ、いかにもお願いといった風に手を合わせる。
「何を言う。そなた達のような年若き少女を危険な目に遭わせられるか」
「ごもっともなご意見だが、この二人は本当に強いんだぜ。そこは俺が保証する」
二つ返事とはいかないのは当然だろう。夕子もシセラも戦いなどできそうにもないくらいの少女にしか見えないのだから。
しかしそこは、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)がフォローを入れる。世界の隣ではヤツェクも頷いていた。二人の男の顔を順番に見つめ、それならば、とようやく承諾をする。
「それではよろしくお願いしよう。ただ、無理はしないでくれたまえ」
「それはゆうしゃも、だよ」
握手を求める勇者に手を握り返すシセラが、彼の身を案じる言葉を発する。知らない人が見れば、この格好の彼が勇者など信じられないだろう。
「そうそう。もうちょい立派な武器とか防具とか買えばいいだろ」
「強いだけってのも良いが、格好も少しは気にした方がもっとスタイリッシュだぜ?」
近くにある武具屋を横目でみやりながら、男二人がそれとなく装備の変更を求めてみるが。
「私は強い。だが一人だった。ならば身を守る術の限られる民達が、強い武具を持つべきだろう?」
「……その志は立派なんだけどなぁ」
顔はイケメンだし、心はまっすぐ。なのに勿体ないなぁとぼやく夕子であった。
■魔王との再戦
勇者の転移魔法で一瞬にて魔王城、玉座の前にまでやってきた一行。当然そこにいた魔王は慌てふためいた。まさか唐突に勇者が、頭数を増やして現れるなど思っていなかったからだ。
「な、ななな。急に現れるのも驚いたが、仲間がいたのか!?」
「いたってのとは少し違うな、お嬢さん。おれたちはついさっき仲間になったばかりさ」
くい、と帽子のつばを指先で持ち上げながらヤツェクはニヒルに笑ってみせる。年齢と経験を重ねた男特有の、渋いかっこよさを演出しながら、だ。
「揺蕩流拳術――それはまをほふり、じゃをうつ、そのいってんのみをもくてきにみがきあげられた『神拳』。まのおう、けっこう。うちほろぼしてみせましょう」
小さな体に大きな闘気を溜めながら、シセラは彼女にしては珍しく長く、かっこつけた口上を放つ。その圧に多少は圧されたか。魔王も拳を握り構える。
「色めく恋は乙女の源泉(パワー)! 世界の危機もなんのその! 猛る正義の魂よりも、明日の恋路が燃え上がる!」
何故か桃色のオーラを纏いながら、夕子がびしっと魔王を指差す。その目は、「わかってんのよ、魔王っちの心根は」と語っており。それに見つめられた魔王はそわそわと視線を泳がせていた。
「……ところで勇者よ。本当、頼むからせめてこれにだけでも着替えてくれ」
「断る。そなたが身につければ良い」
三人が魔王の気をひきつけている間に、こっそりと。世界が街で買い付けた鉄製の鎧を身につけるように勇者に働きかけていたが取り付く島もない。そもそも世界は鎧を身につける趣味もないのだが。
ではせめて技名だけでもなんとかしようと頭を捻る世界だが、自称センスのない男なので何も浮かばない。
「ゆくぞ、魔王! 今度こそは打倒してくれる!」
「せめて技名はなんとかしろぉ!」
世界の嘆きは届かない。
勇者が床を蹴り出すと同時にヤツェクは背負ったギターを手に取る。まずは一曲、踊ろうかとばかりにマーチを奏で始める。
「ほう、これは良い曲だ!」
「ちからがわきでるです」
勇者が、シセラが。足に力が宿るのを感じ取り更に疾く駆ける。勢いのついた勇者の竹槍を手で払いのける魔王だが、勇者の影から繰り出されるシセラの拳には対応しきれない。一発、軽めだが確かに入った。
「一式・彗星の旋律! ……まだまだつづくのですよ」
勇者の影に隠れながらも笑みを崩さないシセラは挑発的に技名を叫ぶ。それだけで魔王の精神に追加ダメージが入ったようだ。主に目の前の勇者がかっこいいのにダサイというのを再認識させた意味で。
「……こ、こんな小さな子どもにこんな威力(センス)が……」
「センスと恋心に、性別も年齢も関係ナッシング! カーバス、ローミ、ユルガルタス。カルトス、ハンス、キシス!」
あ、呪文は適当です、かしこ。とどこかへ向けて夕子がこっそり注釈を入れた。誰にだろう。目の前の魔王には届いていないようだから、魔王ではない誰かにであろうが。
さておき。ヤツェクのBGMをバックに、夕子の指先にピンクのオーラが集まる。そのオーラに乙女心とかなんやかんやを乗せて、魔王に叩きつける必殺技!
「轟け乙女の恋心! 今必殺の! ソニックストラァァァイク!」
「ぐ、ぬぅぅぅうう!!」
多少不順な想いが混ざっていようとも、夕子のその一撃は並の重さではない。その重みを両手で受け止めながらも踏ん張る魔王もまた並ではないのだ。
「ってーか、誰が、誰に恋してるって!?」
体を支える足が震えるほどにダメージを負いながらも、夕子の突き出した拳を掴みジャイアントスイングから投げ飛ばす魔王。飛ばされた夕子は勇者にキャッチされ、世界の治癒術を受けていてピンピンしている。
ゼハー、と肩で息をする魔王が顔を真赤にして叫ぶ。その様子に勇者以外の誰もが一度はきょとんとした顔をし、すぐに指を動かす。
魔王と、勇者を順に。
つまりは、魔王が勇者に恋してると言いたげに。
「ちちちちち違う……もん」
大声で否定しようとしたものの、両手の人差し指をちょんちょん突き合わせながら小声になる魔王。彼女にどういう感想を持ったかは人それぞれである。なお、勇者はなんの感慨もない様子。先程受け止めた夕子を下ろすと再び竹槍を握りしめる。
「戦いの最中に敵から目を離すなど、侮辱のつもりか!」
「違うから! それ違うからな!」
放っておけばいいんじゃないかと薄々思っていた世界ですら思わず突っ込む程に、勇者は鈍感で愚直であった。
■かっこよく叫べ!
「『銀河を駆ける青い疾風』!」
シセラと魔王が格闘戦を繰り広げる横合いから、風の刃を放つヤツェク。ギターが奏でるBGMも絶好調だ。
「そういやお前さんは、何かないのかい?」
同じく後衛で味方のサポートに徹していた世界にこっそり問いかける。そう、彼は最初からずっと仲間の回復や支援に徹していて、勇者や魔王にツッコミと称して叫ぶことはあれど技名を口にしたことは一度もないのだ。
「……俺はこっちの方が性に合ってるんでね」
「そうかいそうかい。ま、そういう縁の下の力持ちってのも一つのカッコよさだとおれは思うぜ」
前で激しく戦う者達から目を離さず。それでもどこか通じるモノがあった二人である。
「零式・泡沫の幻!」
両の手に込めた雷の闘気を一瞬の目くらましに。尚且迸る力を思い切り魔王の腹へと打ち付けるシセラ。その威力と、技名に遂に魔王が膝をつく。
「く、は……!」
「チャンスだよ、勇者! 魔王にトドメを!」
動きを止めた夕子が、傍らにいた勇者に声をかける。幾度となく魔王に打ち払われそれでも諦めずに振るわれた竹槍はボロボロで。それでも、彼の信念と同じく砕けていなかった。
「『勝てばいい』なんて二流の考えよ! ここまでその竹槍を愛し、使い込んできたあなただからできる一撃があるはずよ!」
「ゆうしゃ……!」
「スタイリッシュにな!」
「ここで決めろよ!」
イレギュラーズの声援を胸に、勇者が竹槍を構える。魔王もここまでか、と諦め頭を垂れる。
四肢に力を込め。魔王の心臓めがけて放たれる必殺の勇者の一撃!
「アアアア突きぃ!」
「だからダサイぃぃ!!」
「学習しろぉぉ!!」
その技名に反応した魔王が、最後の力で竹槍を粉砕し、優劣は逆転してしまった。世界の最大級の嘆きの叫びはかの名画も超えたであろう。
「……くっ。しかし、武器などなくても、このアルフォンス・アーガルム・アーク・アインベルツの名にかけて貴様は……!」
「……待て。お前さん今なんて言った?」
竹槍砕けど闘志は砕けず。徒手空拳で魔王に殴りかかろうとする勇者を、ヤツェクは引き止めた。何か聞いてはいけないものを聞いた気がしたのだ。
「……アルフォンス・アーガルム・アーク・アインベルツの名にかけて」
「かっこいい名前あるじゃん!?」
「アルフォンス……かっこいい」
驚愕の声をあげる夕子と、きらきらと光る眼差しを向けるシセラ。そして世界は一つの答えへと至る。
「……勇者アアアアってまさか」
「私の名は長いとよく言われたのでな。国の名も背負っているから当然なのだが……うむ、省略したのだ」
「お前、心底バカだろ」
呆れたとばかりに世界が投げやりになった。今もまた聞いてはいけないことを聞いた気がしたが、スルーした。
スルーできなかったのが魔王なのだが。
「……国名を背負ってって……」
「うむ、私は次期国王。第一王子だ」
「めちゃかっこいいじゃん!?」
夕子が、絶句した魔王の心情を代弁した。
それから。拳で語り合ううちに通じる物があった勇者と魔王は種族全体を越えての和解を宣言することとなる。
なお、魔王の名だが……生まれてからずっと魔王と呼ばれていたが為に名無しだったという。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
はるか昔に見た動画が元ネタです以下略です。もう今は見れないんですけどね。
そんな事はおいといて。今回は皆さんでかっこいい技名を考えてかっこよく戦ってください。そうすれば魔王も満足してくれる事でしょう。
以下敵と味方紹介
敵:魔王×1
人に近い姿をした女性型魔王。ちょっと勇者と戦った末に芽生える恋心とかに憧れていたらこの有様だよ! になったある意味悲惨な魔王。
格闘戦が結構強い。魔王の癖に魔法は苦手。
特殊スキル・かっこいい相手に負けたい:ダサイ技名を持つスキルを全て無効化し大威力で反撃する。なおその基準は魔王当人のものによる。
味方:勇者アアアア×1
魔王に負けて再戦に燃える男。でも装備は村人の服に竹槍。そんな装備で魔王の下までいけるので実は結構強い。
でも致命的にダサイ。でも無駄にイケメン。
武術も魔術も強いです。回復スキルも適時使用してくれます。
以上となります。
かっこよく叫びたい方集まれ! 技名思いつかなくても、PPPの攻撃系スキルは大体かっこいい名前だと思うので、それをそのままかっこよく使えばいいよ!
余談ですが、竹槍って某ゲームの初期武器にもあるくらい由緒正しいものだと思うんですけどね……。
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