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シナリオ詳細

Dear my memories

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

■拝啓、かつての私たちへ

 そばに小さい川が流れる小さな村にて子供たちが何かを口ずさんでいた。

 ゆらり、ゆらりとこぶねがゆれる。
 おもいをのせてこぶねはゆれる。
 ふるびたかわへとこぶねはすすむ。
 きおくのうみへとこぶねはすすむ。
 とどくといいね、つたわるといいね。
 かいずはまっしろ、かぜまかせ。
 
 その村で古くから伝えられてきた童歌を歌いながら子供たちが走りまわるのをほほえましく見守りながら縁側で大人たちは手紙を折って小舟を作っていた。
 それはお祭りの準備、この村では言い伝えによって過去と現在の境界が曖昧になるらしい決まった時期に過去の自分に手紙を書いてそれで紙の小舟を折って川に流すのだ。
 子供たちにとってはいつもより豪華なご飯が食べられる程度にしか思われていないがこれまでに酸いも甘いも嚙み分けてきた大人たちにとっては大きな意味を持つ。
 しかし、古くから続けられてきたこの祭りも昔は別の土地からわざわざこの祭りのために来ていた人もいたというのに近頃はどんどん参加者が少なくなって寂しく思う者も少なくなかった。

■境界図書館にて
「ねぇ、あなた達はタイムカプセルというものをご存じかしら?」
 境界案内人のポルックス・ジェミニが集められたイレギュラーズに可愛く首をかしげながら問を投げかける。
 様々な世界から集められたイレギュラーズにとってはそんな存在を知らない者も少なくないだろう。
「タイムカプセルというのはね、未来の自分に伝えたい事や物をしまっておいてその時が来たら開けるというとっても素敵なものなの!」
 ポルックスが興奮して腕をぶんぶんと振っている。
「でね? ある村には未来じゃなくて過去の自分に送るタイムカプセルみたいな伝承とお祭りがあるの! でも最近はあまり参加者がいないようで......」
 しゅん、と少し元気がなくなるポルックスだがすぐにいつものように戻る。
「だからあなた達に参加してもらって盛り上げようってことなの!」

NMコメント

 タイムカプセルってなんかいいですよね。
 こんにちは南瓜です。

■場所
 いつかのどこかの村
 
■目標
 過去の自分へ手紙を書き、船にして川へ流す。
 (混沌世界に来る前でも構いません)

 いつ頃の自分に届くか宛先を書くとそこに届きます。
 過去の自分を励ますのもよし!感傷に浸るのもよし!現状を報告するのもよし!
 船が届くかは神のみぞ知るってやつです!
 手紙が書き終わったら物珍しそうに近寄ってきた子供たちの相手をするのもいいですよ?
 ではよい旅路を!

  • Dear my memories完了
  • NM名南瓜
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月24日 22時30分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

クリスティアン=ベーレ(p3p008423)
夢想神威
樒(p3p008846)
水鏡の茜
隠岐奈 夜顔(p3p008998)
必殺の銃弾
ノア・ザ・ミドルフィンガー(p3p009034)

リプレイ


「おぉ、これはこれはわざわざ遠い地からお疲れ様ですのじゃ、ささやかながら宴会も用意しておりますので楽しんでくれると嬉しく思いますのじゃ」
 訪れた者達を見て顔を綻ばせ歓迎する村長らしきお婆さんから改めて今回のお祭りの内容を聞いたイレギュラーズ達は早速手紙を書くための道具を受け取り近くの縁側を借りて過去の自分に対する手紙を書き始めた。


「過去の自分への手紙かぁ……うーん……」
『夢想神威』クリスティアン=ベーレ(p3p008423)は書く内容に少し頭を悩ませてから筆を墨につけ、白紙の紙へ思いを綴ってゆく。

『混沌世界に来る前の、僕へ。
 まだ自我も何もない、あの時の自分へ。
 過去のまだ、何物でもない僕へ

 きっとそのうち名前を付けてくれて形を作ってくれるひとが現れるよ。
 この手紙を出したとしても、過去の僕は理解もなにも出来ないだろうけれど……
 ただ、水の様に揺蕩っていた過去よりも、今のほうがずっとたのしい。
 色んな事を教えてくれる人が居る、傍に居てくれる人が居る。
 それが何より幸せなことなんだって、思うようになるよ

 だから、今はまだのんびりしているといいよ。

 未来の僕より』

 丁寧に、だけど文字を書くこと自体が不慣れな為誤字だらけの手紙。
 それでもそれはきっと、届くのだろう。
 根拠はないが確かにそんな感じがクリスティアンにはあった。
 村の大人の人に教えてもらいながらたどたどしく、しかし丁寧に折った紙の船は初めて折ったにしては上出来だった。
 川辺に座り込み船を浮かべる。
 浮かべた船から手を離した時、楽しそうな自分の顔が水面に映っているのに気が付いた。
「早くおいでよ。こっちはとっても楽しいんだ」
 下流へと流れていく船を見ながらクリスティアンは過去の自分へと呼びかける。
「おにーちゃん! 遊ぼうよ!」
 すると、物珍しく興味を引いたのか子供たちが話しかけてきた。
「いいよ! 何して遊ぼうか?」
 子供たちの提案に乗りながらもう一度川の方を見るといつの間にか船は消えていた。


 『水鏡の茜』樒(p3p008846)は過去の記憶を引っ張り出していつ頃の自分に宛てて手紙を書くか悩んでいた。
 (過去の私に向けた手紙、ですか……)
 樒とて想像した事は何度かあったが、そのぐらいだ。その時はあれこれ考えて楽しんでいたが……いざ本当に書くとなると、迷うものである。
 数分後、第三の目も閉じて考え込んでいた樒が目を開け筆を取る。
 70年ほど昔に、私が引きこもっていた頃に向けて、手紙を書く。

 『過去の私へ

 突然のお手紙すみません。
 家に閉じこもっていて、何の娯楽も無いでしょう。よく知っています。
 知っているからこそ、私自身から楽しみを提供しに来ました。念のためですが、この手紙は悪戯ではありませんので、捨てずに最後まで読んでください。

 私は今、何も面白い事はないと、話す相手も不要だと、見るに値しない者しかいないと思っているでしょう
 正直に書きましょう。現在も大体そうです。私達獄人に向けられる目も、おかしな事になっていますし。
 ただ、面白い事は確かに起こりますよ。何せ海の向こうから人がやってきたのですから。
 彼らが来てから、この国は中々興味深い方向に向かっています。
 どうか自棄を起こさず、あと数十年待っていてください。面白い事は起こりますし、話す相手も見る相手にも困りませんよ。

 では、お元気で。

 今の私より』

 ……このぐらいですか。
 そして、これで船を……ええと、どなたかに手本となってもらいたいのですが……
 どうしたものかときょろきょろしていると子供たちがわらわらと集まってきた。
「どうしたー? 折り方わかんねーのか―?」
「教えてやるぞー」
「ここはねーこうするといいんだよー」
 子供たちに言われるまま折っていくと立派な船がそこに出来上がった。
「んじゃ川行こうぜー」
「浮かべよー浮かべよー」
 手を引かれ川に連れていかれた樒は川辺に座りそっと船を水面へと浮かべ手を放す。
 船は風を受け、ゆらりゆらりと川辺から離れていった。


 んー、過去への手紙かぁ……
 こちらも手紙の内容に頭を悩ませる『星影の双子』隠岐奈 夜顔(p3p008998)が居た。
 不思議体験が出来るのは凄く楽しいんだがいざ手紙を書くとなると、凄く困るよなーと唸る。

 思えば、碌な思い出がないんだよなー。
 過去を思い出して少し顔を顰める。
 自身が豊穣出身なのに鬼人種として、男女の双子として、特に差別も受けずに育った訳で恵まれていたことは理解ができている。
 だからこそ、差別を受けて苦しんでいた人達が故郷に希望を抱き、勝手に訳も解らない儀式なんて始めて、自分たちがその生贄になって、人って希望を抱いてしまえば簡単に命を投げ出せるものなんだと、あんなにいい笑顔で「幸せ」って言って自分を殺してしまえるものなんだと、それを目の前で見た……幼い頃の夜顔は、それが怖くて仕方がなかったのだ。

 上手く書けるかは不安だけど、その時の自分に『それなりに幸福に、なんとか生きてるよ』……とだけは伝えたいと感じ筆を取る。
 ダラダラ不幸を並べるよりかは、明るい方が何かといいに決まってるだろうと文字を綴る手に力が入る。
 それは嘘ではない。
 神使になって色んな所に行き、家族とは他愛のない話して喧嘩したり、長男だから死にやすいからって魔除けとかそういう意味で女装して生きて来たが、だんだん楽しくなってきたと夜顔は感じている。
「よし、書き終わった」
 手紙を書き終え、船を折り川へと流して一息ついていると、遊んでいる子供たちが目に入る。
「おーい混ぜてくれよー」
 暗い過去について考えるより、子供達と遊んでいた方が楽しいに違いない。
 入ってこいと手招きする子供たちの方向へ歩きながら先ほど船を流した川の方へと目をやった。

「あの頃の俺へ。心の傷は未だに残ったままだけど…それでも、俺は、生きて行けてるよ」


 ノア・ザ・ミドルフィンガー(p3p009034)は複雑な心境でこのお祭りに参加していた。
 過去への手紙という一種の時間遡行が行えるなんて、不可思議な事があるものだね。
 前の世界じゃ全てを投げ捨ててソレを欲しがった能力者もいたぐらいだってのに、こんな村じゃ祭りの催し事とはなんと皮肉なことか。
 他所は他所、ウチはウチ。湿気った顔は祭りに似つかわしくないと表情を切り替える。

 宛先はそうだねぇ、私が17の時かな。私が殺された日、丁度その朝と筆を取りすらすらと宛先を書いたところで内容が思いつかず筆が止まる。
 
 その時の私ってただの信仰心バリバリ学生だしなぁ、「お前は今日死ぬぞー」みたいな不穏な事書かれてる手紙なんざ、不審に思ってゴミ箱にポイするよ、ていうか私ならそうするとノアは悩む。

 だからまぁこう書いておくかな。

『頑張れよ。信ずるモノが消えようが、足は止めるな。誰かの為に動きたいのなら、手を伸ばせ。神でなく、お前の意志で全てを変えろ』

 多分、『私』はあまり読まない。ちょっと顔をしかめてソレで終わり。
 ……そして、昼には今までの信仰心を投げ捨てるだろうねと過去の自分の行動を予想する。
 だから、この言葉がその時の意志……にならなくても良い。ほんの僅かに意識に残ってればもうけもんだ。
 私は誰よりも私を知っている。それぐらいの意識だけでも私は立っていけるさ。
 頑張れよ、私。

……と、内容は短くなったけどこんな物で良いのだろうかと筆をおき、後は川に流すだけだと川辺へと歩を進める。
 川へと放した船はゆっくりと、しかし確かに進みだした。
 行きつくかどうかは……ふふ、『神のみぞ知る』ってね。


 暗い暗い夜の下で船は進む。
 やがて水が浸み込み徐々に沈んでゆく。
 そして海面から見えなくなる。
 その先は海の底か、それとも別のどこかか。
 それを知るものは今には居ない。

成否

成功

状態異常

なし

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