PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<幻想蜂起>ひとつの首さえ切ればよい

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●大雨の日に傘を捨てるのはなぜ
「やあ、こんな場所に呼んで悪いね」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)は木製の椅子に背をもたれ、テーブルに置かれた皿のナッツを指でつまんだ。
 隣にはエール。天井から下がった明かりで影がゆれ、右へ左へ影を作った。
「たまには『現場』で依頼の話をするのも、悪くないだろう?」
 景色を引いてご覧頂けようか。
 バーカウンターの向こうに杭打ちされた店主。棚を覆うおびただしい血液。
 胸と両手をそれぞれ棚に打ち付けたからか、左手側は崩れて酒瓶が大量に足下で割れていた。
 あからさまに眉間に皺を寄せ、首を小刻みに振るショウ。
「ま、食欲のわく場所じゃあないかな」
 ナッツを皿へと戻した。

「この店主は貴族へのコネが深くてね。サロンに酒や料理を卸したり、晩餐会の仕切りをやったりしていたんだ。
 幻想国内で貴族にこびを売るってことはさ、できるだけ長生きをするってことさ。
 本当ならこんな昆虫標本みたいな姿にならずに済んだんだ。本当ならね」
 チラシを手に取る。
 『市民よ立ち上がれ。王を討つときである』と書かれたチラシだ。ご丁寧にフォルデルマン三世の似顔絵をグロテスクにコラージュしている。
 こんなチラシが今、店外の路上に沢山転がっていて、風が吹けば飛んできそうな有様だ。
「皆も、もう知ってるだろう? 幻想国民が暴発的な蜂起を起こしたのさ。
 あちこちで武器をとっては小さな抵抗を繰り返している。ここの店みたいにね」
 とはいえ、戦い慣れた兵士を抱える貴族たちにいくら武器を持って襲いかかったとて、全員文字通りつるし上げられるのがいいところだ。民衆もそれをよく分かっている筈なのだが、不思議なことにあちこちでそんな自爆まがいの蜂起が頻発しているというのだ。
「この土地の大貴族フィッツバルディ氏はおかんむりさ。『楯突くものを蹂躙せよ』と腕を一降り! バババババーッ、ドカーン! 民衆ミートボールのできあがり! ってね。
 けどそんなの、畑の虫をはたけごと吐き払うようなものでしょ?
 貴族たちだってうすうす分かってる。だから、レオンが手を回したのさ」
 ショウが次に出してきたのは、ショウが主流派貴族連中に送った手紙の写しだった。
 要約すると『貴族の力で焦土と化すくらいなら、ローレットが最小限の被害で片付けてみせますよ』とある。
 この後あっちこっちに顔を出して頭を下げたり胸を張ったり忙しい仕事をこなしたのは想像に難くない。結果としてどうやら、蜂起鎮圧はローレットが代行することで話をまとめることに成功したようだ。一部例外を除いて。
「ローレットが活躍できれば領地の傷は浅くすむし、貴族は力をさかずにすむ。
 ま、幻想が焼け野原になって困るのはローレットだしね。必要な行動さ。善行? まあ、そうかもね」

 皆、うっすらとだが分かっているのだ。
 この事件が、『サーカス』に絡む狂気の事件であることに。
 放置すれば真なる首謀者は喜び、王国もローレットも血と肉に沈むだろう。
 その企みをくじくには、起こってしまった事件を最小限の被害にまでとどめなければならないのだ。

●より少ない首をあげよ
「さてお待ちかね、このチームに依頼された仕事だよ。
 目標はフィッツバルディ領地商業連合の現会長『ポンパドール』氏。
 彼は今回のプロパガンダをうって人員を集め、暴動やストを起こしている。
 今は武器を集めて広い邸宅で戦争の準備中さ。
 勿論、戦いが始まればあっちこっちがこの店と同じになる。ローレットの足場も危うい。
 フィッツバルディ氏はいっそそうしちゃうつもりかもしれないけど、困るよね?
 だから交渉を持ちかけた。
 『旦那様? 首謀者のポンパドール氏の首をあげてごらんに入れます。さすれば愚かな民衆は結束を喪い、たちまち降伏させることができましょう』ってさ」

 要約すると、当チームは武装した民間人が大勢たまっているポンパドール氏の邸宅へ侵入し、見事ポンパドール氏の首をとらねばならない。
「民間人といっても、パン屋がモンスターを殴り倒せる時代さ。油断してたらたちまち全員タコ殴りにされるだろうね。
 だから、できるだけこっそりと侵入しなきゃならない。
 チーム全員でじゃあないよ。そんなに大勢が一度に動いたら目立ちすぎるしね。
 『正面から入って注目を集める担当』『中枢へ侵入して首をとる担当』を別々に用意しよう。
 やり方は任せるけど、失敗すればかなり痛いよ」

 ポンパドール氏の邸宅は高い鉄柵に覆われた土地にあり、柵内を武装した手下が見回っている。空の見張りもあるから、空から近づけば丸見えになるだろう。
 正面の広間をはじめとする広い部屋には蜂起に参加する人々が集まっている筈だ。
 屋敷内の地図は無いが、広めの通路と無数の部屋でできているのは間違いない。
 そしてポンパドール氏の部屋は三階の中央だ。たどり着くには通路を通らねばならないし、高確率で手下と遭遇するだろう。

 もしポンパドール氏の部屋にたどり着けたなら、戦闘が始まるだろう。
 ポンパドール氏は戦闘力を少ししか持たないが手練れの用心棒が二人ついている。これを倒し、首をとらなければならない。
「一見難攻不落だけど、工夫次第で穴をつける。
 イレギュラーズたちはそれだけ広い技術と知性をもってる。だから任された。
 そうだろう?」

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:ポンパドール氏の首をとること
 副要素1:殺害人数をできるだけ減らすこと

 現状(メンバーの技能や個性が不明な状態で)提案されている作戦は
 表ゲートから突入し戦闘→別働隊が隠密能力をもって裏から侵入→表のメンバーができるだけ屋敷内へ食い込むことで屋内警備を集中させる→ポンパドール氏の部屋に侵入し、ボディーガードを倒して首謀者を殺害→即時離脱。
 この状態だと表ゲートでの戦闘アレコレは勿論裏からの侵入時に巡回警備を殺す必要があったりするので、殺害人数はそれなりに多くなります。
 ここからどれだけ減らせるかが副要素に絡んでくるでしょう。

【依頼特徴】
・暗殺(1):対象人物を暗殺することが成功条件です
・陽動:暗殺を成功させるための陽動を行なう必要があります
・屋内戦闘(一部のみ):部屋や通路で戦う場合は限界射程が短く、大抵はR0~1の攻撃しか行なえません。

【エネミー】
●武装民間人
 蜂起した民間人たちです。
 武器をそれぞれ装備していますが、戦い慣れていないので戦闘力は低めです。
 しかし数で攻められればつらいことになるでしょう。
 遠くから見た限りでは野外に20人。屋内は不明。
 仮に正面から殴りかかった場合かなりの損害を覚悟すべし、とのこと。
 また少なからずサーカスの影響をうけておかしくなっているので穏やかに済ますのは難しいだとうとも。

●ポンパドール氏の用心棒
 もといSP。大柄で戦闘になれている。
 ナイフ使いと拳法使い。
 それぞれ近接格闘に優れ、ポンパドールに害をなす者を容赦なく殺害できる。
 交渉ごとは一切通じない相手。
 速やかに倒し、そしてポンパドールの首をとるべし。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • <幻想蜂起>ひとつの首さえ切ればよい完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月05日 21時10分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ジュア(p3p000024)
砂の仔
ミルク・ココナッツ・ヨーグルト(p3p000600)
ケント(p3p000618)
希望の結晶
アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)
幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る
祈祷 琴音(p3p001363)
特異運命座標
神宿 水卯(p3p002002)
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)
ShadowRecon
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
シュリエ(p3p004298)
爆殺人形

リプレイ

●雨粒はいつも下向きに流れる
 パン屋から煙があがり、宝石店は血にまみれている。
 路上には引き裂かれたゴミ袋とその中身が散乱し、鼠がちょろちょろと這い回っている。
 煉瓦壁に貼り付けられたチラシを一枚はぎ取って、『とにかく酒が飲みたい』祈祷 琴音(p3p001363)は金属製のドリンクボトルに口をつけた。
 チラシはこちらを指さす男の絵と共に『フィッツバルディの圧制に天罰を! 君の力が必要だ!』と過激なフォントで書かれている。
「……」
 琴音は目を細めボトルを高く傾ける。
「暴動、か。彼らは意見を武力で伝えることしかできないのかな」
 足を止める『砂の仔』ジュア(p3p000024)。
 『幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る』アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)が手にしたチラシを畳んでしまった。
「革命など結局は支配者が変わるだけです。首謀者ですら踊らされているのは喜劇ですが……」
「けど、一人の命がなくなるだけで多数の安寧が得られるなら、それにこしたことはない。明日からまた平穏な日々が送れるように……」
「ん、さくっとね」
 軽い準備運動をする神宿 水卯(p3p002002)。
 振り向けば、町はいつもの賑やかさを失い、まるで死体のように転がっている。
 道のまんなかで止まるミルク・ココナッツ・ヨーグルト(p3p000600)の姿がどこか異様にうつった。
 隣に立った『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が膨らんだ腹を撫でる。
「全員まとめて焼き払おうってんじゃねえんだ。張り切っていこうや」
 ゴリョウやアイリスたちは改めて町の風景を目に焼き付けた。このまま放っておけば、本当に『こんな風』になってしまうのだ。
 いわば、外科手術のようなもの……なのかもしれない。

 剣を鞘に収め、ぐるぐるとヒモで固定していく『希望の結晶』ケント(p3p000618)。
「戦う者全てに死が付随する必要はない。今回、討ち取る必要のある首は一つだけ。ならば、本当にただ一つだけで済むよう尽力しよう」
 本件のみに限って言えば、蜂起の首謀者であるポンパドール氏を殺害することが『最小限の外科手術的処置』となる。
 そうすることを強く求められた分けでは無いが、彼らは自分たちの着地点をそこに定めていた。
 ただ善きことを成したいとおもう者もあれば、ただ生活環境の悪化を軽減したいと考える者もあるだろう。動機はどうあれ、より優れた処置であることは間違いない。
「一人の犠牲が仲間を救う……うむ、泣ける話だにゃ。ポン何とか氏には強制自己犠牲をしてもらうにゃ」
 『リグレットドール』シュリエ(p3p004298)は形だけ悲しむふりをして、ちらりと横の『Calm Bringer』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)を見た。
「任せてよ。ボス(レオン様)の御心を汲み、速やかなる鎮圧を……」
 拳銃を抜き、口づけをするように顔の前に翳すルチアーノ。
 暗殺。
 それは多種多様多芸多才なイレギュラーズたちの中にある、才能のひとつだ。
「被害を最小限に抑えつつ首謀者の首を取り蜂起を収束させる」
 『ShadowRecon』エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)はライフルにセーフティをかけ、一度背中に固定した。
「それにしても……サーカスの公演以来事件が頻発していたが、ここまで大きくなるとは」
 一連の事件群。どこかでケリをつけねばならぬ。
 そして目下、ポンパドール氏の蜂起を止めるのだ。

●詐欺は熱いうちにうて
 『ポンパドール氏の邸宅は高い鉄柵に覆われた土地にあり、柵内を武装した手下が見回っている。空の見張りもあるから、空から近づけば丸見えになるだろう』というのが情報屋の話だったが、それに加えるべき情報がある……とアイリスたちは思った。
 門の前に立つ男たちはギャンブルや酒の話で盛り上がり、妙に賑やかだ。
 近づくアイリスたちに目を向けたが、最初の視線は『面倒ごとをふっかけてくれるなよ』の視線であった。
 とても、フィッツバルディの居所へ押しかけて盛大な戦を始めようという空気には見えない。
 アイリスが仲間をつれて立ち止まると、門番の彼らは面倒くさそうに言った。
「なんだ? 蜂起に参加したいなら中だ。仲間に入るのか? 入らないのか?」
 そう。加えるべき情報はこうだ。
 『彼らに王を殺す気力などない』。

 貴族への不満を爆発させるべく参加しました。
 そのように述べたアイリスたちを、屋敷前まで出てきた男が小さく頷くように聞いていた。
 彼はサキリサと名乗る古物商の男で、他の連中よりもよく動くことからポンパドール氏の下につく準リーダー的存在だと分かった。
「わかるぞ。民には生活があるんだ。税金を使って食料を配るべきだ。いや、資産を全て配るべきだろう。王やフィッツバルディが文句を言うなら、顔面を殴ってでも分からせてやる! あんたもそうだろう!?」
 ケントはこっくりと頷き、探険を胸に掲げた。
「これは友の形見。彼は不当な理由で貴族に殺された。この蜂起の際、共に立ち上がっただろう彼の想いも連れて行かせて欲しい」
「勿論だ、その友達の分も戦おう!」
 どうやらサキリサは他のメンバーと比べてえらく温度差があるようだ。それだけポンパドール氏に近いということだろう。
「妾達は役に立つにゃー? なんたってこの彼がいるにゃ! 超強そうな彼がっ!」
 ケントの屈強そうな鎧を指さすシュリエ。
 『お前はどうだ』と目を向けると、琴音が酒瓶を掲げて降った。
「王を討てば私達だってあいつらがいつも飲んでるような良い酒を楽に飲めるようになるんでしょぉ!だったらやってやるわぁ!」
 琴音の外見はまるっきり『飲んだくれ』だった。
 服装も聖職者というよりもっと裏側の仕事を思わせる。
 庭にはそういった連中が何人もたむろしていて、昼間から高そうな酒を飲んでいる。身なりと釣り合っていないところからして、ポンパドール氏の施しか、もしくはどこかの店から奪ってきたものだろう。
 サキリサはかえって信用し、深く頷いた。
「疲れたし、どっちにしても中に入れて少し休ませて欲しいにゃー。入口辺りでも座れたらいいからにゃ? ねぇねぇ、お願いにゃー」
 だからか。シュリエの頼みも簡単に聞き入れたのである。

「アイリスたちは中に入れたみたいだな……」
 ゴリョウは大きな木箱の裏にミルクと共に身を潜めていた。
 覗き込むようにして門番たちを眺めている。彼らはこちらに警戒の目すら向けず、酒や風俗店について語らうばかりだ。
 狙ってやったかはともかくとして、賛同者のフリをして潜入する作戦はうまくいった。
 蜂起がポンパドール氏による扇動であり、彼を失えば速やかに沈静化が可能なほど末端と温度差があること。
 そしてチラシを配る程度には既存コミュニティ内での人集めが済み、外部コミュニティへ参加を促す段階にあること。
 さらには一人を集団でリンチにかけるタイプの暴動を起こし、力が下向きに働いていること。
 それらが、今回の作戦の成功につながっていた。
 逆に言うと今回の蜂起が『強い絆で結ばれた既存コミュニティのみの仲間たち』が『本気で王を討とう』としていた場合、門前払いを食らっていただろう。
 そうなったらなったで正面から殴り込みをかけるだけなのでリスクは少ないが、一度仲間に入った方が起こせる混乱は大きい筈だ。
「……」
 ちらりとミルクを見る。近くの街路樹や草にまぎれようと努力しているらしい。
 自分を見る。まるっきりの異世界オークである。
 この分なら、自分たちが門番に『仲間に入れて』と頼んでも受け入れられたのでは。
「いやいや落ち着け。イレギュラーズとして顔が割れてたら終わりだ。そういう意味じゃ今回は『たまたま知らなかっただけ』だ。このまま、うまくいってくれよ……」

●カームブリンガー
 さて、ここでひとつ困った話をせねばならない。
「この鉄柵、どうしようか」
 ルチアーノは拳銃に手をかけたまま、鉄柵の外にある塀……の更に裏で瞑目した。
 柵の内側は見張りがうろうろと回っている。定期的な巡回ではなく、なんとなくてらてらと見張りっぽい役割を果たしているだけにすぎない。
 そのため、塀の裏で気配を殺したルチアーノには気づかなかった。
「よじ登れば超えられるけど……見張りが気づくよね。始末しちゃう?」
 短剣を握る水卯。いつでも相手の首を切るような構えだ。
「声をあげさせずに倒すのは……無理じゃ、ない……かな。多分」
 ジュアがバングルに手を添える。いつでも弓に変化させられるようにだ。
「一人が沈黙しても、もう一人がな……」
 壁からちらりと顔を覗かせ、空を見上げるエイヴ。
 飛行した見張りが屋敷を上から眺めている。
 幸い四人ともしっかりと気配を殺しているので気づかれてはいないが、戦闘が始まれば確実に気づかれてしまうだろう。
 誰にも気づかれず高い柵を越えるのも彼らのスキルでは難しい。
 この先をシミュレートしてみたが、『立ち止まって隠れる→ポンパドールの手下が居なくなったら移動する』を繰り返してもどこかで遭遇してしまうだろう。
 例えば通路。例えば忍び込んだ部屋。それを事前に察知するための嗅覚や聴覚、もしものためのエネミーサーチも備えているが……。
「注意をどこかにそらす手段を用意するべきだったかな。ジュアが囮になろうか?」
「いや、焦るようなタイミングじゃないよ」
「ここで息を潜めて待てばいい。第一……」
「囮なら、じきに現われる」
 四人は塀の裏で行き潜めつつ、ここからのプランを一旦変更した。
「『騒ぎ』が起きたら突入を開始。多くの手下は騒ぎに集まるだろうから、遭遇する少数の敵だけ倒して強行突破する。騒ぎが起こればポンパドールも部屋に籠もるはずだ」
「そこを叩く、か。いいんじゃない? 幸いこっちのメンバーは多いし」
 問題は、作戦の性質上屋敷一階から逃げてくる手下たちがいるであろうことだが……。
「鉢合わせたら、誰か一人が足止めに回ろう」
「じゃあもしもの時、誰から順番に抜けるかじゃんけんで決めよっか」
 最初はグー。とやりながら、四人は時を待った。

●ドサクサまぎれにナイフを立てろ
 はじめは、ガラスの割れる音だった。
 ケントが突如探険の柄でポンパドール邸の窓ガラスを破壊し、ガラス片をまき散らしたのだ。
「おいおいどうした。喧嘩か?」
 周りの人間はだらだらと起き上がる。仲間として潜入したのがよかったのだろう。この時点ではまだ誰もケントが敵であることに気づいていなかった。
 どころか、散ったガラス片の掃除を彼にやらせる方法を考えている始末である。
 すると突然、トイレから走って飛び出してきたアイリスが『毒ガスだ!』と叫んだ。
 慌ててトイレを見れば、色の付いた煙がもくもくとあふれ出ている。嫌な臭いも鼻についた。
 だらだらしていた連中もこれには流石に驚いて立ち上がり、二階や野外へとかけだしていく。
 ただ毒ガス騒ぎを装った所でこうはなるまい。『力が下向きに流れている』ことや、自分たちが曲がりなりにも国家にたいする反逆を働いていることが影響しての混乱だ。
 煙は異様に勢いを増し、煙に呑まれた者は実際に苦しみを訴えて倒れたりもした。
 実はアイリスが煙に紛れてヴェノムクラウドを放っていたからなのだが、それに気づけないほど彼らは混乱していた。
「慌てないでぇ」
 扉を開いて建物から飛び出した者の後頭部を、琴音が思い切り酒瓶で殴りつけた。
 砕け散る瓶。血を流して痛みに転げ回る男。
 門番たちが流石に事態の深刻さに気づいて駆け寄ってきたところで、その背後へゴリョウとミルクが襲いかかった。
「さぁ、暴れるぞー!」
 ミルクは身長の高い女性の形に変化すると、門番へと攻撃をしかける。
 一方でゴリョウは門番たちの間をすり抜け、ボーリングのフォームでテーブル天板を転がした。
「ぶははッ! さぁパーティの始まりだぁッ! 受け取れェ!」
「テメェ! なんのつもりだ!」
 手下たちが銃を乱射してくる。
 琴音は転がるテーブルの裏に滑り込むと、回転にあわせて走った。
 テーブルとすれ違うケント。彼の手には剣。
 それを取り囲む男たち。
「裏切ったのか!?」
「…………」
 ケントは黙って剣を抜く。
 ――と、囲む男たちを霊力の衝撃で吹き飛ばすシュリエ。
「にゃっはっはー! 皆死んでしまえにゃ、ひゃっはー!!」
 ヴェノムクラウドで駆け寄る手下たちを払いのけると、わざと悪人のような顔をして笑って見せた。
「おやおや~? 毒ガスが効いたかにゃ、早く外に出ないと大変にゃー」
「貴様ら……そんなものあるはずないだろう! 戻れ!」
 逃げ出す手下たち。
 彼らに呼びかけるサキリサ。だが声が届くほど、命令が浸透するほど結束の強い集団ではない。蜘蛛の子を散らすように、手下たちは外や上階へと逃げ出していった。
 ミルクはまだ門番と戦っている。彼らをすり抜けられずにいるようだ。
 一方でゴリョウはどさくさに紛れて体型を変え、上階へと走って行く。が、それをサキリサが立ち塞がることで阻んだ。
「見てない顔だ。上には行かせん!」
「言いくるめが通じる相手じゃなさそうだ――ぶははっ!」
 ゴリョウはメイスを振り上げた。

 さあ、暗殺チームの出番だ。
 鉄柵を勢いよく駆け上った四人は、音に気づいた手下たちをにらみ付けた。
「ここは任せて」
 ジュアはバングルに手を翳すと、弓へ変形させて集まる手下を近い順から打ち抜いていく。
 一階の窓ガラスを破壊しながら屋内へ転がり込む水卯とルチアーノ。
 逃げてきた手下と鉢合わせするが、戦闘をしている暇はない。
 エイヴが窓の縁を台にして対物ライフルを乱射。
 ぎゃあと悲鳴をあげて混乱する手下たちの中を、ゴーグルをつけたルチアーノと水卯が駆け抜けていく。
 同じく飛び込んで、階段の上から射撃をして牽制するエイヴとジュア。
 後続の連中を彼女たちに任せ、ルチアーノは目的の部屋前へと駆け込んだ。
 扉の前に突っ立っていた手下にタックルを仕掛けながら零距離射撃。
 壁を走る勢いで迫る水卯が、扉を蹴り破って突入した。こんな入り方をしたのは、扉のすぐそばに誰かの気配を(音で)察知したからだ。
 無理矢理に蹴り飛ばされたのはボディガードたちだった。拳法使いが起き上がり、鋭い蹴りを繰り出してくる。蹴りで対抗する水卯。
「階下は毒ガスで満ちてるよ! 暴動計画をブッ潰してやりましたぁ! フィッツバルディ様万歳! 国王陛下万歳! アッハハハァ!」
 ここぞとばかりに悪ぶったルチアーノが、拳銃を天井に向けて乱射した。
 敵意をむき出しにして飛びかかってくるナイフ使い。刃をクロスした拳銃で受け止めるルチアーノ。そんな彼の顔面を殴りつける拳法使い。
 ――と、その時点で二人ははたと気づいた。
 水卯が疾風の如く走り、腰を抜かしたポンパドール氏に体当たりを仕掛けたことを。
 否、ポンパドール氏の心臓を短剣がひとつきにしたことを、だ。
「あ、ああ……!」
「動くと痛いよ」
 水卯は的確に相手の意識を経ち、命を絶った。
 そして、窓めがけて勢いよく走る。
 重りをつけたロープの端を投げるルチアーノ。先端を握る水卯。
 窓を破って野外へ飛び出し、ロープでブレーキをかけ、そのまま屋外へと逃げていった。
「僕達を敵に回したのが運の尽きだったね。バイバイ!」
 更にルチアーノはポンパドール氏の身体にロープを巻き付けると、自らもロープを伝うようにして野外へ飛び出した。『つっかえ』になって止まるポンパドール氏の死体。
 鳴り響く笛。
 ジュアやエイヴもロープを使って二階から離脱し、逃げていく。

 混乱が収まったのは、それから暫く後だった。
 何人かの死体の中にポンパドール氏のものがあったことに気づいた彼らは一様に顔を青くし、後からやってきたフィッツバルディの兵に降伏したという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ミルク・ココナッツ・ヨーグルト(p3p000600) [重傷]

あとがき

 お疲れ様でした。
 ちょっとだけひっかかりはしたものの、うまい具合に隙を突いた工夫や適切なアイテムチョイスによって大事には至らず、見事目的の首をとることに成功しました。
 このグループの蜂起は沈静化し、町もやがて元の姿を取り戻すでしょう。

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