PandoraPartyProject

シナリオ詳細

啼き叫べ、アンドロメダ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●間に合わなかった英雄
 ぴちゃん、ぴちゃんと雫が滴り岩を穿つ洞窟の中。
 金属がぶつかる甲高い音が反響している。

「くっ……! まさか上の姉達まで襲ってくるとは!」
「あーら、先に襲ってきたのはそっちでしょう?」
「やぁね、寝込みを襲うなんて」
「ほんともうびっくりしちゃった」

 鏡の盾で攻撃を弾き、翼の靴で鋭い攻撃を躱しているのはペルセウスであった。。
 必死に耐える彼を嘲笑っているのは、ステンノー、エウリュアレー、メデューサの三姉妹であった。
 そう、彼はゴルゴーン『三姉妹』を相手にしていた。
 本来の神話ではメデューサを殺した彼はその血から生まれた天馬に跨り、上の姉たちの追跡を振り切るのだが、どういうわけかペルセウスがメデューサの寝床に忍び込んだ時には上の姉達が傍におり、ペルセウスを見つけたのだった。
「このままでは……!」
 今はかろうじて攻撃を防いでいるがこのままでは――。
 嗚呼、故郷には母が待っているというのに。

● 啼き叫べ、アンドロメダ
 荒波が打ち付ける岩礁に鎖で縛りつけられた美しいかんばせの少女が一人。
 白い柔肌に食い込む鎖が痛々しく、その鎖を解こうと抗っているのはアンドロメダだ。
 ざぷん、と海から巨大な影が浮かび上がる。
「ひっ……!」
 血走った目がアンドロメダを捉えた。餌と見定めたならば迷うことなく化け物は猛スピードで彼女に迫る。
「助けて! 誰か、誰かぁ!!」
 泣き叫んでも聞こえるのは唯波が打ち付けられては壊れていく音と、荒い息遣いだけ。
 化け物鯨が口を開けた。
 グロテスクな赤い肉の塊が眼前に迫りアンドロメダの瞳から光が消えた。
 ――誰か、助けて。
 哀れな少女の願いは飲み込まれた。


「よう、今回はアンドロメダ座の話だぜ」
 星座神話の本をぱらぱらと捲り、境界案内人『朧』はあなた方を出迎えた。
 アンドロメダ――その昔彼女の美貌は神にも勝ると豪語した母親の言葉に神々の怒りを買い、化け物の生贄にされようしていたところをメデューサ狩りの英雄、ペルセウスに助けられたという話だ。
「ところが、また神話が歪んじまってる」
 朧はあなた方に一つの挿絵を示した。
 そこには哀れにも化け物に飲み込まれ命を散らした乙女の姿が。 
 どういうことだとあなた方が問えば、朧はそうさねと一つ頷いた。
「どうやら、アンドロメダを助けに来るはずのペルセウスが間に合わなかったらしいな」
 メデューサの首を持ちその呪いによって彼女を救い出した英雄ペルセウス。
 彼の助けがないとアンドロメダは餌となってしまう。

「というわけでお前さん達にはペルセウスがアンドロメダのところに行けるようにしてやってほしい」
 ま、石にされても死ぬことは無いから安心しな。
 朧はひらひらと手を振った。

 

NMコメント

初めましての方は初めまして、そうでない方は今回もよろしくお願いします。
 星座のモチーフ大好きな白です。
 今回はアンドロメダ座の神話をベースにしたシナリオになります。
 以下詳細。

●目標
 ペルセウスがアンドロメダの元へ向かえるようにする。
 メデューサの討伐。
 
 本来の神話ではメデューサの首を持ち、天馬に跨りエウリュアレー、ステンノーの二人の姉の追跡を振り切ります。そしてその後岩に磔にされたアンドロメダを見つけ化け物鯨を退治し、彼女を救い出します。
 が、今回はどういうわけか三姉妹全員を相手にすることになってしまった様です。
 いくら英雄といえどこのままではじり貧です。
 結末が同じ(メデューサの首を持ちペルセウスがアンドロメダの元へ行く)ならば、途中の道筋が変わっても構いません。
 語り継がれた神話のうちの一つとなるでしょう。

●舞台
 神と人が暮らす星座の神話の世界です。
 今回は『アンドロメダ座』の話の舞台です。
●敵
 メデューサ
 お馴染み人を石に変える化け物です。
 ペルセウスはアテナに授けられた盾のおかげ石になりません。
 彼女の首を切断し天馬を産ませ、袋に首を入れるところまでが目標になります。
 彼女は不死ではない為、首を切られると死にます。

 ステンノー
 メデューサの姉です。鋭い爪や武器を使って攻撃を仕掛けます。
 不死身です。殺せませんのでうまく立ち回りましょう。

 エウリュアレー
 メデューサの姉です。不思議な呪文や弓を使って攻撃を仕掛けます。
 不死身です。殺せませんのでうまく立ち回りましょう。


●サンプルプレイング
 なんてこった、このままじゃアンドロメダどころかペルセウスまで死んでしまう。
 なんとかしなくては。怒りを付与して三姉妹の気を引くぜ。
「おばさん、皺増えてんぞ!!」

 こんな感じです、それではいってらっしゃい。  

  • 啼き叫べ、アンドロメダ完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月11日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

小金井・正純(p3p008000)
ただの女
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
マリア・ドレイク(p3p008696)
守護竜
酒匂 迅子(p3p008888)
ゴーストオブお正月島

リプレイ

「果てさて、また不可思議な神話の世界ですか。個人的には、星々に至る方々の邪魔はしたくありませんが、そうも言ってはいられません」
 以前は琴座、今回はアンドロメダ。星を祀るものとしてこの歪んだ神話を再び矯正せんと洞窟に脚を踏み入れたのは『ヘリオトロープ』小金井・正純(p3p008000)であった。

「やれやれ、まさか神話の代役に抜擢されるとは思わなかったぞ」
 だが今回のオーダーはペルセウスをかの姫の元へと向かわせること。その為にメデューサを討つこと。
 この程度ならば何とでもなるさと『魔剣鍛冶師』天目 錬(p3p008364)は笑った。
 かの鍛冶の神、ヘファイストスの如く立ち回って――とそこまで考えたがあまりよくない例えだなと錬は頭を振った。

「うーん、困ったことに重傷になっちまったぜ。にゃはは、めんごめんご」
 悪びれもせず酒の匂いを漂わせ、包帯だらけの手で頭を掻いているのは『ゴーストオブお正月島』酒匂 迅子(p3p008888)であった。
「神話の厄介ごとはすべて酒が解決する。これ鉄則だぜ、へへへ」
「いや、そんな訳にはいかないでしょ……」
 呆れながらに即座に迅子にツッコミを入れたのは『地を這う竜』マリア・ドレイク(p3p008696)である。
「洞窟に入る前に、ちょっと待っててくれてたら、いろいろと絡め手ができたのに。ペルセウスさん、モテモテね」
 だが彼に本当に愛されるべき人は今頃海の上だ。蛇姫たちにはご退場願わねばとマリアはつま先を地に打ち付けた。

「あはは、もう疲れてきたんじゃないのぉ!?」
 英雄を嘲笑う下卑た声が洞窟に響き渡る。肩で荒く息をし、膝をつくペルセウスを三姉妹は見下ろしていた。
「それにしてもいい男よねぇ、食べちゃおうかしら」
「あら、お姉さまったらずるいわァ。私にも頂戴な」
 卑しい手がペルセウスへと伸ばされたその時だった。

「にゃはは、そこの別嬪さん達、俺とお酒でもどう~?」
 ――なんとも間の抜けた声がした。一斉に三姉妹が降りむくと秘蔵の蜂蜜種をふらふらと揺らしながらこちらに寄ってくる謎の女(言動はおっさんそのものだが)にどよめきが起こる。
「え、なに……? あんたの知り合い?……」
「いや……知らない……」
 思わずエウリュアレーがペルセウスに問いかけてしまい、律義に彼が答えるくらいには謎の存在であった。
「いやぁ、しかし別嬪さんだなあ。あんまりにもその美貌直視したら石になっちまうからさぁ……これどうぞ」
 そして躊躇いなくメデューサの頭に白い禿男のマスクを被せた。
「やだ~! 超かわいい~!」
「あらそう? ありがとう~! ……じゃないわよ!! なんなのよアンタ!!」
 見事なノリツッコミの後メデューサはマスクを地面に叩きつけ、迅子を睨みつけた。
 が、にへにへと笑っている迅子は瞳を閉じていたため石にはならなかった。
 そしてその直後に、メデューサの後頭部に鮮やかな一撃が入る。
「がはっ……!」
 カンテラの灯りがマリアの美しい顔を照らし出す。
「案外鈍感なのね、貴方」
 蛇には獲物の温度を感知する機能があると聞いたのだけど?
 不敵に笑う唇に、メデューサの頭に血が上る。忌々しい目の前の女を石にしてやろうと睨みつけたがマリアは剣の先に括り付けた鏡で即座に動きを判断し躱した。
「小癪な!」
「ちょっと、メデューサ!! あたしのお肌に何してくれてんのよ!」
 奇襲に混乱したメデューサは闇雲に腕を振りかざすが近くにいたステンノーの肌を引っ掻いた。
 ぎゃいぎゃいと言い争いを始めた姉妹をマリアは鼻で笑った。
「メデューサさんによっぽど嫌われているのね、あなたたち」
「なんですって……!」
「おっと、睨みつける相手が違うぞ。お嬢さん」
 メデューサが視線を移すと穏やかな微笑みを湛えた錬が鏡を片手に立っていた。
「古来より魔眼相手に使われて来た物は東西を問わないものだ、存分に見つめなおすといい」
 東洋の地では古来より鏡は魔を払うものとされていた。
「アンタが迅子と戯れている間に改造させてもらったよ」
 その辺にある唯の鏡でも神秘の炎を用いた鍛冶師の腕に掛ればソレは魔にも対抗できる盾となる。
「そしてこれは俺の国の太陽神が神器として扱っていた物を模倣したものだ。紛い物には違いないが……化け物にはこれで十分だろ」
 万物を照らし数多の命を見守る太陽神の鏡、神聖なる鏡を大量に展開しそれらが一斉にメデューサを映し出す。
「あ、ああ……!」
 思わず後退り頭を抱えて蹲るメデューサに錬はあくまで穏やかに続けた。
「さぁ、いいのか? これだけ鏡があれば何かの拍子に愛しのお姉さままで石にしてしまうかもしれないぞ?」
「そんなのなんだっていうのよ!」
 エウリュアレーが錬に矢を射かけるが鏡の一つがそれを反射し反対にエウリュアレーの目を眩ませる。

 なにが起きている――?
 徐々に圧されていく三姉妹を理解ができないと言わんばかりの表情でペルセウスは見つめていた。その彼に正純は手を差し出した。
「ペルセウス、差し出がましい真似かもしれませんが、援護致します」
「貴方達は? 一体なぜ私を助けてくださるのですか?」
 ペルセウスの問いに正純はただ黙って微笑みを返すだけであった。
 これが、天の助けかとペルセウスの心を覆っていた絶望の闇が取り払われていく。
 脚に力を入れもう一度立ち上がる。そこに立っていたのは正純がよく知る英雄ペルセウスであった。
 立ち直った彼の姿を見て、正純は指を動かす。
 目標は、ゴルゴーン三姉妹。
「天高く駆ける誇り高きシリウスよ、魔を討ち払い勇気ある者に加護をお与えください」
 
 星の巫女の清らかな声を聞き届けたかのように洞窟に一筋の眩い光が差し込んだ。
 太陽? いや違う。これは――星だ。
 伝説の狩人の名を冠する誇り高き星座の一つ。『天狼星』が煌めいた。
 獲物を狩る天狼のように激しい冷たい光がメデューサ達を包み込む。
「なに!? なんなの!!」
 神聖な星座の輝きが錬が張り巡らせた数多の鏡に反射しさらに強力になってかの三姉妹の目を焼いた。
 絶叫し、打ち震える三姉妹。
「貴方はメデューサの首を。そして、助けを求める彼女のもとへ!……いや、これは言っても伝わりませんね」
「……わかった!」
 正純の声に勇気づけられたペルセウスは再び剣を取った。
「これで最後だ!!」
 星の加護を受けた勇者の剣を誰が止めることができようか。
 少なくとも、『倒されることが決まっている化け物』には不可能であった。
「ギャアアアアア」
 悍ましい断末魔が木霊する、姉二人が駆け付けようとするが足を氷で打ち付けられてはかなわぬことであった。ペルセウスは急いで袋へメデューサの首を詰める。
 迸る鮮血から一対の白い翼を持つ天馬が生まれ、ペルセウスに乗れと合図をした。
「貴方はこの後一人の女性を助けるわ、その時にでもプレゼントしてあげなさい」
 マリアが首飾りをペルセウスに投げ渡す、それをペルセウスはしっかりと受け止めた。
「行かせるか!」
「させません!」
 エウリュアレーが天馬ごとペルセウスを撃ち落とさんと弓を構えるが、正純の放つ銃弾の雨が阻止した。それでもまだと食らいつくステンノーの爪はマリアの足と錬の陽光く砕かれる。

「目標は達成したわ! 退却するわよ!」
 マリアの一声で即座に退却を始める特異運命座標を喰らわんと口を開けたステンノーとエウリュアレに迅子が狙っていたのかはともかくのめのめと蜂蜜酒をボトルごと突っ込んだ。
 喉を焼くどろりとした蜂蜜とアルコールのが姉妹の足を鈍らせた。
 
 荒波が打ち付ける岩礁に鎖で縛りつけられた美しいかんばせの少女が一人。
 鎖に縛り付けられたアンドロメダを餌と認めた化け物鯨が口を開けた。
 ――誰か、助けて。
「これでも喰らえ!!」
 どこからともなく勇敢な声が海を割った。
 いつまで経っても襲ってこない痛みにアンドロメダは恐る恐る目を開け、驚愕した。
 海には自分を飲み込もうとした化け物が口を開けたまま石となっている。
 そして真っ白に輝く翼を持った不思議な美しい馬に――はっとするほど美しい青年がいた。
 何かの首を袋にしまった青年は、アンドロメダを振り返りその美しさに頬を染めた。

「あなたが、助けてくださったのですか」
「はい、そうです。ペルセウスと申します」
「なんて素敵、私はアンドロメダと申します。本当にありがとうございました」
 花咲く乙女の笑顔に見惚れながらペルセウスはマリアが言っていた事を思いだした。
 アンドロメダの細い首にそっと首飾りを掛けると、まぁと嬉しそうにアンドロメダははにかんだ。
 
 そういえば、あの方たちは何だったのだろう。神が咄嗟に遣わせた御使いだったのだろうか。
 アンドロメダを乗せ白馬で故郷へと戻る最中ペルセウスは自分を助けてくれた四人のことを思い出していた。

「……いやぁ、一時の夢のようなものとはいえ、あの御二方の仲人みたいなことが出来るとは。普通に感激ですねぇ」
 姉妹の手から逃れ、酒盛りに興じていた正純はうっとりとあの後二人がどうなったのか思いを馳せる。もちろん二人はこの後夫婦となるのだがまさか神話の人物の仲を取り持てるなど。
 社に帰ったら日記付けようと正純は画策していた。
「ふふ、けっこう持って帰ってこれたわね」
 無造作にポケットに手を突っ込んで、戦利品を検分するマリア。
 脱出する際にやれ指輪やら、金貨やら、宝石やらをいただけるだけ頂戴してきたのだ。
 どれだけ隠していたって宵闇に光る猫の目は誤魔化せない。
「だーから、いったろ神話の厄介ごとはすべて酒が解決するってぇ」
「いや、それは言い過ぎ」
 迅子の戯言に苦笑いで返す錬。だがあながち今回は酒も役に立ったことは違いない。
 わいのわいのと騒ぐ特異運命座標のはるか上空を、天馬が駆けて行ったことには誰も気が付かなかった。
 
 
 
 


成否

成功

状態異常

なし

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