PandoraPartyProject

シナリオ詳細

静かな泉を求めて

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

⚫︎木花の夏

 あめの季節もすぎて、あおぞらが広がるはれの季節。
 コノハナコノコノたちはやがて来るこいの季節にむけて、たくさん日差しをあびてグングン成長します。
 じまんの枝をのばして、数えきれないほどの葉っぱをゆらして——


 ——けれど、あまりにもお日さまがギラギラするものだから、みんなみんな泉にでかける元気もありません。
 このままでは干からびてしまいそうです。
 だれか、助けてくれるひとはいないでしょうか?



⚫︎差し出された選択肢

「カタツムリってどう思う?」
 読みかけの本から顔を上げ、腰掛けた背高のスツールの上でぷらぷらと足を揺らす小さな案内人。はて、とイレギュラーズが各々の蝸牛をイメージしたところで彼はパタンと本を閉じた。
「まぁそれは置いといて。暑いねぇ、やんなっちゃうねぇ……どうかな、水浴びとかしたくない?」
 夏も折り返しだが、何をしなくとも汗ばむような気温が続いているところも多い。冷たい水でも被れば確かにさっぱりしそうではある。
「実はいい避暑地を見つけちゃったんだなぁ。森の中に綺麗な泉があって、人も全然いないから快適だと思うよ?」
 泉の中心は泳げる深さで、岸辺なら大人の脛くらいなので足を入れて涼むのに向いている。水着を持参してもいいが、岸辺で遊ぶなら着衣でも問題は無さそうだ。
「気候自体は夏だし、森の外はめっちゃあっついからそこは注意ねー」
 森には一本だけ道が出来ており、そこを外れさえしなければ地図が無くとも迷うことはない。一度入ってしまえば木陰と泉から吹いてくる涼風で少しは暑さも和らぐので、素早く進めば熱中症の心配も要らないだろう、とのことだった。

 ああ、そうそう。いざ行かんと改めて開かれた本の前に集まるイレギュラーズに、思い出したように案内人が付け加える。
「森の入り口らへんにさ、夏バテしちゃってるコノハナコノコノっていうカタツムリの群れがいるから、ついでに助けてあげるといいかもネッ☆」

NMコメント

こんにちは、氷雀です。暑いですね。
許されるなら私も涼しい図書館に籠りたい……そんな気持ちでOPを書きました。
どうぞよろしくお願いいたします。

⚫︎目標
みんなで涼む!
蝸牛をどうするかは皆さんにお任せします。
手を出さなくても何割かは生き残るでしょう。

⚫︎世界
不思議な生き物達が暮らしている、自然豊かなところ。
少なくとも彼らの生息する地域には人が存在していないようです。

⚫︎コノハナコノコノ
背中の殻の上に小さな盆栽のような木を背負った蝸牛。
春には桜や梅などの花を咲かせる。
人に慣れていないが、今は弱っているのでそれどころではない様子。
本来は日向ぼっこと水浴びが大好きで、好奇心旺盛な性格ですが動作はとてもゆっくりです。

  • 静かな泉を求めて完了
  • NM名氷雀
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月13日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
小さな願い
テルル・ウェイレット(p3p008374)
料理人
月錆 牧(p3p008765)
Dramaturgy

リプレイ

⚫︎選択と一本道

 ギラギラ、ジリジリ、太陽が地面を焦がすように照り付ける。まだ頂点に達していないうちからこれだ。ただひとつの正解は『逃げるが勝ち』に他ならない。
「お店がある以上中々休めないですから、こうしてのんびりと楽しめる時間は貴重です」
 両親に代わって幻想にて喫茶店兼居酒屋を切り盛りする『料理人』テルル・ウェイレット(p3p008374)も、休暇を謳歌するため泉を目指して歩き出す。夏には不向きな厚手のウェイトレス服を着込んでいれば一刻も早く涼みたいところだろう。
「そういえば、カタツムリも夏バテしていたのでしたね。しかし助けるとはどうした物でしょうか……」
 はたと足を止めた森の入り口。その手前にはぽつりぽつりと手のひらサイズの木が数本生えており、よくよく見るとその根っこに巻貝のようなものが絡み付いていた。
 それが件の蝸牛であると真っ先に駆けつけたのは『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)だ。どこからか取り出した水筒を傾け、精彩を欠いた木々の上から冷水を振りかけていく。すると青々と繁る葉に、渦を巻いた殻に、潤いを取り戻した二匹のコノコノがにょっきり頭を出してエルを見上げた。
「水を浴びて、少しは元気になってくれるといいなってエルは思ったのですが、ご気分はどうですか?」
 訊ねられたことを何となく理解しているのか、互いに触覚を揺らして確認し合っている。
「……なんというか、かなり変わってるな」
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)はそんな彼ら(?)を観察していた。背負った木とは共存関係にあるのか、それともこの木も体の一部なのか。
 その横で同じように眺めていた『光る砂に舞う』月錆 牧(p3p008765)が「コノハナコノコノ、コノハナコノコノ……」と十ほど繰り返せばまるで早口言葉のようだ。
「でもって、この木は何の木でしょう?」
 ローレットの一員となって日の浅い彼女にとっては物珍しいのだろう。しゃがみ込んでつんつんと葉や幹を突いている。その度にコノコノは触覚を引っ込めたり出したりと忙しそうだ。
「まったくもって不思議な生物。どの花が咲くのでしょう?」
「蝸牛さん達のお花、ちょっと見てみたいってエルも思いました。でも、蝸牛さん達がへろへろなので、それは次の機会を待ちます」
 空の水筒を仕舞ったエルが見渡せば、まだ多数が助けを求めている状態だ。
「まあこいつらの生態やらはどうでもいいか。大事なのは助けるかどうか、んでその二択ならば当然助ける方を選ぶ」
 特に悩むことなく言い切った世界に異論がある者はいなかった。
「見殺す理由は無いし、助けておけば昔話みたく何かお礼してもらえるかもしらないからな」
 そんな打算を含んでいたとしても、コノコノ達にとってみれば喉から手が出るほどに欲した救いなのである。こうして、救出作戦は始まった。

 森に足を踏み入れてすぐ、その温度の違いにほっと息を吐く一同。直射日光から隠れ、奥にある泉から吹いてくる風に当たるだけでももう汗が引いていく。澄んだ空気を吸い込んでさわさわと葉擦れの音に身を委ねれば、心の中まで涼やかなもので満たされるようだった。それでも渇きに耐えているものにはまだ足りない。
「もうすぐ涼しいところなので、エルに任せてください。全員助けてみせます」
 よいしょ、よいしょ、と両腕いっぱいに抱えたコノコノ達を勇気付けるエル。暑さを苦手とする彼女が、それでも何往復だってしてみせるという覚悟は強い。幸いにして四人で運ぶならばその必要もなく、しかし思いは間違いなく伝わっているのだろう。元気を取り戻した二匹が森を進むイレギュラーズをとてものんびりではあるが先導してくれていた。
 その後ろを歩く世界はと言えば、頭や肩にまで乗せて運んでいた。手だけでは足りなそうだと服にくっつけておいたものがよじ登ってきたらしい。
「カタツムリが夏バテするとか初耳です……干からびる、ああ、干からびる生物かどうかも知りませんが、この様子なら急ぐ必要もなさそうです」
 牧はそう遠くない先に樹々の切れ目を見つけて呟いた。身につけた腕輪の上にピタリとくっついたコノコノ達は気持ち良さそうだ。『永久氷樹』の名を持つそれからはひんやりと冷気が放たれ、同じ腕輪をしたテルルの手の大きな葉に乗ったものも同様だ。これで誰かが欠けてしまうこともないだろう。
 そして、小鳥のさえずりを纏って吹き抜ける風が少しずつ水気を帯びていく。


⚫︎未踏の泉へ

 視界が開けた。
 数分振りの強い日差しの下、イレギュラーズの目に映るのは自然のままの水辺だ。こんこんと湧く清水の畔まで覆う緑の濃い草木。それらが落とした影が揺れる波間に、小さな魚が泳いでいるのがはっきりと見える。空気は冷たく感じるほどに澄み渡り、まさに避暑地に最適な楽園だった。
「ここであれば、渇きも暑気も癒えましょう」
 掌で庇を作りながら泉へ進み出る牧。さあ行きなさい、と降ろされたコノコノ達は頭を出してゆっくりとその縁で水浴びを始めた。エル達が運んできたもの達もゆっくりとそれに続いていく。
「それにしても不思議ですね……枯れないよう、此処の木の所にも水をあげましょうか」
 テルルが冷たい泉に両手を浸し、救い上げた水をそっと側で涼むコノコノにかけてやればふるふると触覚を揺らして喜んでいるようだった。

 元気を取り戻していく彼らを見届けたなら、あとはもう自由に涼を満喫するだけだ。ひと足先に泉へ浸かったのは最もたくさんのコノコノを抱えてきた世界。濡れないよう裾を捲った足元から伝ってくる冷たさに息を吐く。
「休憩っと……ふぅ、これなら本格的に水浴びするのもよかったかな」
 水着を持っていれば、と少しだけ後悔しつつ今回は諦めるようだが、同じような考えを持った者が側にいた。靴と靴下を揃えて脱ぎ、岸辺に腰を下ろしたエルは足をぱちゃぱちゃと遊ばせながら首を傾げる。
「着替える場所が、エルにはわかりません。水着を着てから図書館に行けば、良かったのでしょうか?」
 きっとそれが正解だった。そしてそれを実践していたのがテルルである。二人からは死角になる木の裏で徐ろに服を脱ぎ始めたかと思えば、現れたのは大胆な黒のビキニだ。自分でも派手めだと思うからこその人目を忍んでの着用。しかしなかなかのものをお持ちである。
「折角気持ちの良い場所まで来ましたから、しっかりと楽しんで涼ませて頂きましょう」
 脱いだものを濡れないように丁寧に畳んで置くと、静かに泉の中へ深く踏み入る。
「暑がりな私にとってこういった涼が取れる所は本当に貴重ですからね……」
 ひんやりと染み渡る心地好さに誰にともなく呟いた声は、水の跳ねる音や森の木々を揺らす風の音、それから人ではない小さな動物達が息づく音の中に消える。力を抜いて水面に身を委ねれば、ふわふわとした浮遊感と雲ひとつ無く晴れ渡る青に日頃の疲れが溶けていくようだった。

 岸辺に視点を戻せばエルがコノコノ達と戯れていた。空の水筒に水を汲み、それっと勢いよく振り撒けばそれはまるでスプリンクラーだ。お水いっぱい浴びて、春に綺麗なお花が咲きますように。少女の込めた願いに、コノコノ達は青葉をぐんぐん広げる。
「そういえば、エルは冷たいおやつも持ってきていたのでした。蝸牛さん達も食べますか?」
 取り出したのは鮮やかな緑色をした氷菓。口に放ればしゅわしゅわと溶けるメロン味の氷とソースに、バニラアイスが添えられた目にも美味しい逸品だ。当然のようにご相伴に預かろうとするコノコノ達に大半を分け与えながらもエルは満足そうに笑う。
「もしも春に遊びに来ることができたら、エルはお花を見に来ても良いですか?」
 声は返らずとも、拒絶の意思がないことだけは彼女にも伝わっただろうか。

 近くの木陰には同じく甘味を頬張る世界がいた。珊瑚礁のように煌めく砂糖菓子の宝石箱。お金を模したチョコレート。水分補給もできるという優れものな氷砂糖。荷物の大半がこれではないかと疑うような大量のお菓子達に、好奇心旺盛なコノコノが黙ってはいない。
「カタツムリはお菓子とか食べるんだろうか? いや、普通に考えたら食べないけどこの世界のやつは食べられたりする……のか?」
 次々と寄ってくるものに小さく割っては手渡すそれは餌付けそのもので、自覚した世界は苦笑しながら自分も口に運ぶのだ。
「お菓子も時間もまだまだある。帰るまでゆっくり味あわせてもらおう」

 いつの間にかひとり姿を消していた牧は、数匹のコノコノを連れて泉の周りを散策していた。牧の腕輪に助けられた恩を感じているのか、彼女が話しかける度に相槌を打つように触覚をゆらゆらと揺らしている。
「……もしあなた達が楽しくおしゃべりなど出来たなら、いえ、それならそれで、何を話せたというのでしょうね」
 どんなにたわいの無いものであれ、今の彼女を構成する重要な何かであれ。今この時に声にしたことは彼女達だけの秘密であり、神ですら知り得ない、いつか懐かしく思い出すかもしれないある日の夏の思い出の欠片なのである。


 こうしてイレギュラーズはひと時のバカンスを終える。命を救われたコノハナコノコノ達は次の季節を迎え、繁栄していくことだろう。彼らのこの先の物語を知りたいのであれば、あのちょっといい加減な案内人に聞いてみるのも良い。思う通りの答えを得られる保証は無いけれど——

成否

成功

状態異常

なし

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