シナリオ詳細
襲来・クマゼミ゛
オープニング
●これはリベンジシナリオです
海洋に突如現れた謎のおっさんアークモンスター、通称「ミ゛」。
彼等は海洋のいち地域にさんざん迷惑をかけ倒したあげく、何処かへと消えていった。
イレギュラーズは一日で3~4種のミ゛を撃退せよという無茶ぶりに応じようとして敢え無く失敗。その後、どこに行ったか分からなくなり、ローレットはその行方を追っていたのである。
で。
「シャシャシャシャシャッシャオラー!」
「オゴーッ!?」
「シャシャシャシャシャッシャオラーァー!!」
「グワァーッ!?」
従来のミ゛の数倍~十数倍におよぶ大きさの個体が鉄帝の南方、幻想との国境付近に現れたという報告が入る。
そして武闘派でならした国境付近の鉄帝民達をもボコしてしまう強さになっていたことが判明するに至り、急遽ローレットへの救援依頼が入ったのだった。
アークモンスターだしね。
●大変だ! 以下略!
「そんなわけで、先日取り逃した『ミ゛』が個体を減らし、数体の大型個体として出現しました。どうやら体力の消耗を融合によって軽減することを試みたようで。個体名『クマゼミ゛』。個体数が減った分かなり強力になっており、逃げ隠れせず堂々と村々を潰して回っているようです」
一大事じゃん。なんで放っておいたの?
「鉄帝の方々が、自分たちで解決することを誇りとして……まあ、なんていうか……」
鉄帝じゃ仕方ねえな。イレギュラーズ一同は大きく頷いた。
「特徴として以前の個体群より大きく、大凡、力士程度のサイズになっています。声は重低音になり破壊力が増し、鳴き声が常に隊列を乱しに乱してきます。音が重低音だからか足取りも重くなり、行動しづらくなったりするでしょう。今までのミ゛の集合体なので色々と覚悟が必要な強さではありますが、まあ……皆さんなら何とかなるんじゃないかなって……」
すごいざっくりとしていて本当に怖いんだけどまあリベンジだからね。
「ああ、言い忘れてました。その村ですけど、今回倒し損ねると周辺のメープルからとれるシロップを蒸留させたお酒が手に入らなくなり非常に不味いことになります。成功したら……分かりますね?」
それを早く言えよ。飲兵衛どもは目を光らせた。
- 襲来・クマゼミ゛Lv:10以上完了
- GM名ふみの
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年09月09日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
世界は徐々に秋の匂いを漂わせ、世間もそれらしい雰囲気に向かいつつある今日この頃。しかしながら、蝉という生物は子を残すか寿命を迎えぬ限りはその叫びを止めることはない。
「シャシャシャシャシャッオラー! ナンオラー!」
「シャァィオラァー!!」
……で、その類縁として生まれたアークモンスターの「ミ゛」はどうかといえば、そもそもメスが発生していないので鳴き続けるし、寿命は通常の蝉とは比べものにならない。人にかける迷惑の方が重篤になるであろう存在だ。
「いや、う る さ っ ? !」
「騒がしい……もう夏も終わるというのに、迷惑な」
『兎身創痍』ブーケ ガルニ(p3p002361)はウサギの姿のままではダウンすると判断し、人間体へと切り替えた。冷静な判断である。『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)は不快そうに耳元を押さえるが、ブーケほどには気にしたふうでもない。鍛えているから、だろうか。鼓膜は鍛えようが無いと思うが。
「敵の生態や行動、習性に対して無知であったことに加え、諸処の事情で敵の実力を見誤っていた点は否定できません……せっかく頂けた挽回の機会、ドブに捨てては面白くない。潰す」
「やられたらやり返す。楓蜜を啜ってでも、あの時の屈辱を倍返しだ!」
『遺言代筆業』志屍 瑠璃(p3p000416)と『エージェント・バーテンダー』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は前回の失敗を思い返し歯軋りせんほどに悔やんでいた。あんなクソみたいな相手に後れを取って治療班送りに遭ったモカにとって非常に忘れがたい屈辱だろうが、この娘はもう少し改善した方がいい点が多いのではなかろうか? 何処とは言わないけど皆手助けしたれや。
「普通のセミだと思ったけどどうやら違うみたいね。何か一度取り逃がしたみたいだけど、今度は逃さない」
「環境を生き延び、大きく進化したそのお姿は尊敬に値します。矮小な拙はそこまで成長することはできません。なのでミ゛様の存在はまさに生物の奇跡を見るようです」
『キャプテン・マヤ』マヤ ハグロ(p3p008008)の決意に溢れる言葉はしかし、『取り逃したみたいだけど』のあたりで半数に及ぶリベンジ組の自尊心を深々と抉った。なんてこった彼等の精神が死んだ!
そんなことはつゆ知らず、自分を矮小と思っている一般ブルーブラッドこと『蟲遣い』狐鹵俚(p3p007430)は生物の奇跡に感心すると共に、彼等をどうしても生かしてはおけぬと判断した。彼女自身というよりは、裡に抱えるモノの意志で。
「一度は負けた相手、気合入れていきましょー」
海洋を主な活動区域にしている『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)は「狙った獲物は逃さないのが海の男なので。まぁ私女なのですが」という矜持のもと、海洋から鉄帝に部隊を移してもちゃんと追撃に訪れた。律儀。
残暑厳しい中でなお足取りをしっかり立つ姿は、些かも周囲の環境が堪えていない様子だった。
ところで。
『プリン☆荒☆モード』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)は以前、ミ゛に名乗り上げられるだけ名乗られて(主観)勝手に飛んで逃げた(主観)腹立たしい連中を今度こそ倒そうと息巻いていた。ここまではいい。
が、マッチョのギフトはあろうことかメープルの甘い匂いを察知し、結果として彼の思考を加速させた。甘い匂い――プなんとか、と呼ばれた木――つまりここはプリンの森なのでは? ミ゛達は煽るに留まらず、自分からプリンを奪って独り占めにしようと?
「ク゛ァ゛wゼdrftgyブジゴlplユ゛゛ル゛゛サ゛゛ン゛゛ッッ!!」
「なんや、リベンジマッチなんは分かるけど大層ご機嫌やなぁ……」
「分かりますよ、厄介さも面倒くささも増して倒すべき相手としてより強く感じるのですね。潰す」
「こっちもちょお落ち着こ? 倒せるモンも倒せなくなるで?!」
思考がスパークし、叫んだマッチョ。それに呼応し共感し、殺意を弥増した瑠璃。その惨状に板挟みにされた常識人枠・ブーケの悲哀たるや。
「士気は十分のようですね、マリナさん、ビアンキーニさん、プリンさん。私と向かいましょう」
「そんなんでえぇんかなぁ……じゃあコロリちゃんとマヤちゃん、ルリちゃんと俺やね。耳栓も用意したから大丈夫や」
オリーブは何事も無かったかのように同行する仲間を取り纏め、森へ向かう。ブーケも慌てて残りの面々に声をかけ、別ルートで森へと潜入する。
約数名の殺意がグングン上昇している気がするが、仕方ないのかもしれない。……そして、森に潜入した彼等を待っていたのは当然ながら、先ほどまでの比ではないミ゛の鳴き声だった。
●
「プゥリィンッ! ブゥウリ゛ィインッ゛!」
「あっちもうるさいけどこっちも大概だな!? 何で張り合ってるんだよ?」
マッチョは森に入るなり大声で叫び、遠巻きから響く不快な鳴き声を相殺せんとする。当然、大音声なのでモカを含め、仲間達の耳はえらい酷使されているが。
……されているのだが、マッチョ自身は身振りでクマゼミ゛の位置を示し、一気に近付くべく先導する。甘味(≠プリン)の察知に関してのみ、マッチョは優秀であったらしい。
(やり方は兎も角、迷いのない動きが頼もしいですね……これなら感情が揺さぶられる前に一撃叩き込めそうですが……さて)
オリーブはマッチョの先導に付き従いつつ、長剣を抜き身構える。視線の先に、クマゼミ゛が見えた。
「シャシャシャシャシャッオラー!」
「うるせぇ!!」
モカは一気に間合いを詰めると、連続した蹴撃、毒蜂乱舞脚を放つ。確実に命中したそれは一体目のクマゼミ゛の動きを明らかに鈍らせた。威力こそ然程ではないが、その分地味に『きつい』。
「蜜はお預けでごぜーます……我々とエクササイズしていただきますよ」
マリナは追撃とばかりにピョーピルシールを放つと、クマゼミ゛はメープルの蜜を吸う勢いがピタリと止まった。が、通常攻撃相当の鳴き声は止まらない。厄介極まりない。
「うる……っさいですね……この倦怠感は、実に厄介な……」
オリーブは長剣を相手の胴部へと振り下ろし、切り上げる。彼の攻撃精度で外すことは考えがたいが、それでも今、切り上げた刃は掠める程度にしか当たらなかった。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ッッッ!! オレヲミ゛ロ゛! ミ゛ィ゛!」
マッチョは怒りに任せてプリンが詰まったドラム缶を頭から叩き付け、クマゼミ゛をプリンまみれにする。賞味期限どころか消費期限を突破したそれの悪影響など考えるまでもなく、それは周囲にとっても最悪に近い現象を振りまいた。……かもしれない。
「ぐっ……このセミ擬きにまた気分を害されるとは。このメープルシロップを持ち帰れば……」
モカはクマゼミ゛による倦怠感をモロに喰らい、対抗心から自分の店の新商品とか考えて立ち上がろうとしたが、防御をぶち抜いてくる重低音に膝を屈しかける。遅ればせながら彼女の前に立ったマッチョの背中に頼もしいものを感じたり感じなかったりしつつ、何とか立ち上がるべく深呼吸を繰り返した。
……ギャグシナリオの空気じゃねえんだよなあ。
「このスモトリをまず吹っ飛ばせばええんかな!」
「大変結構です。拙がミ゛様がメープルに取り付けないようにマーク致します」
ブーケは遠巻きに見つけたミ゛をまず一気に距離を詰めて蹴り飛ばし、そこに狐鹵俚が踏み込んで前進を阻む。示し合わせたとはいえ、見事な連携だ。
「私は海賊マヤ・ハグロ! セミの分際で人間に襲いかかるとはいい度胸ね? 恐れを知らぬならばかかってきなさい!」
「ナンシャッシャッオラー!!」
続けざまにマヤの挑発がまともに入るが、クマゼミ゛の鳴き声は通常(略)。が、無闇にメープルに狙いが向かないだけ上等か。
「あなたの自由にはさせません。徹底的に動きを止めます。……早く死ね」
瑠璃はもうなんていうか殺意を隠す気が微塵も無かった。先日の屈辱がいかほどに重いのか分かろうというものだ。次々と行動阻害を狙った技巧で兎に角押し通す。
返礼とばかりに身を包む倦怠感を、テンションで弾き返そうとするがっ……駄目っ……! 気分が落ち込むっ……!
(林の中でスモトリ相手に何やってるのか感は否めませんね……でもこいつら幹に口吻で穴をあけていますし、むしろホラー映画などに出てくるべき手合いでは!? やはり忍は魔に対峙するさだめ……!)
〇魔〇でもここまでお行儀悪いエネミーは聞いたことがねえよ。
「この程度の攻撃、私に効くとでも思ってるのかしら? 全く効いてないわよ?」
マヤも声を振り絞って効かない振りをしているが、そもミ゛の攻撃は音声なのでカトラスも通用しないし避けにくい範囲攻撃なのでどうしても喰らう。喰らうのだが、彼女ときたらポテンシャルの倍程度の回避と防御でなんとか耐えているのだ。偶然? やる気の問題だよ。
「拙は我慢できますが体内の蟲様が怒っていましてあああああお願いですから暴れないでください蟲様お腹のなかかき回すのはゆるしてくださあうあうあうあ」
狐鹵俚は体内に飼う蟲の反感を買い、自分以外の原因で徹底的に苦しんでいた。それでもクマゼミ゛を油断なく攻撃するのは、その蟲の能力あってのこと。たまにオートマタが相手の首を絞めているが。えぐい。
「いけずやわぁ、こんなかあいいうさぎを痛めつけるなんて……皆! 俺は構わへんからこれ、使い!」
ブーケも相当やり込められている方だろうに、それでも仲間達の気を遣う余裕を持っているあたりが恐ろしい。或いは、音すらも避けているのかもしれないが。
そんな彼が狐鹵俚に投げつけたのは、先ほどクマゼミ゛が吸っていたメープルの傷跡に押しつけた布だ。直に吸うのを止める為、わざわざ用意したというのか。なんてデキる男なんだ。
「ブーケ様、拙などのためにここまで……」
布を掴み、目一杯吸い込んだ狐鹵俚は冷静にクマゼミ゛をマークし、着実に打撃を叩き込んでいく。覚悟を決めた女の目だ。
(やれやれ、伝説の化物、クラーケンに袋叩きにされた気分だわ……ここまで戦意を失ってしまったら、もうお手上げね……)
マヤ、一体目のクマゼミ゛の撃破を前にして重低音に屈しそうになる。だが、絶望が深いほどに反発というのは大きくなるのだ。だからきっと大丈夫。
「ダブルプリン゛ッッ!!」
「シャックソシャァッオラーッ!!」
ほら、遠くでマッチョとクマゼミ゛が鳴き声対決をしているよ。かわいいね。
●
「嫌ですね。暗い感情が生まれると、暗い欲望がいくらでも湧いてくるのです……」
「私もここで倒れる訳にはいかないんだ……! まだ屈辱を返し切れてない……!」
オリーブとモカの心中には、どこか黒い感情がわき上がりつつあった。この二人本当に大丈夫か。オリーブはまあ何とかなりそうな気がするけど、剣の振りが明らかに暴力性を増している。あ、今一匹目の死骸をぐりって刺したぐりって。
「少ししんどくなってきましたね……脳内友人が全部燃やせばよいのじゃって囁いてくる……!」
二匹目(4/4匹目)のクマゼミ゛を前にマリナが珍しく弱音を吐く。仲間達の治癒に専念して気落ちを酒で誤魔化してここまで戦ってきた彼女の心中にいかなる変化があったのかは不明だが、ハイルール抵触一歩手前だ。それでも相手の蜜吸いを止めに入る姿勢は流石といえた。
「シャァァァァッオr」
「死(ち)ねーッ!!!」
そして、不意打ち気味にオリーブ組を強襲しようとした個体へキリモミ回転ついでにフロストチェインを叩き込んだのは瑠璃だった。倦怠感と感情ブーストとをあっちこっち行ったり来たりしてテンションがおかしいのか、口調まで違う。
「こいつらで最後ね! 今更命乞いしても許さないわ! 地獄で後悔なさい!」
マヤは何とか落ち込みから立ち直ったのか、その反動で生き生きとしている。背後のブーケが温かい目を送っているのは一体何があったのか。
「しぶっといヤツらやなあ、これでもくらっとき!」
ブーケは敵の間合いに入り、流れた血をそのまま相手への呪いに変えて打ち出した。ダメージこそ与えないまでも、その影響は決して小さくない。
「ミ゛様は拙の誇りに賭けて止めさせて頂きます」
狐鹵俚は仲間への感謝と敵への戦意を以て敵の足を止め、一気呵成と攻勢に出る。動きが鈍ったクマゼミ゛を狙うのは容易いとばかりに撃ち込まれる打撃は、威力よりむしろ相手の行動の自由を奪い取る為にある。
「プリン、プリン、ブゥウリ゛ィインッ゛!」
マッチョの怒気溢れる状況は、最初からなのか鳴き声の影響なのか分からないくらいにいつも通りだった。
先ほどから怪獣大決戦の様相でスピーカーボムと鳴き声の対消滅みたいなことになってるが、騒がしいことに変わりは無い。……むしろこれ、仲間達の鼓膜が心配なのでは?
「倒しましょう……出来るだけ惨たらしく……!」
オリーブが怖い。
たっぷり時間をかけて暫く経ち、一同は何とかクマゼミ゛を討伐する事に成功した。
成功はしたが、深い精神と肉体への屈辱的ダメージを受けたモノが約一名いたが気にしてはいけない。
あ、メープル酒は凄く美味しかったって成人勢がいってました。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
(気合いいれるとこそこじゃねえんだよなあ……)
GMコメント
Q.土蜘蛛より先にこっちがリベンジなんですか?
A.おちょくられたままほっといていいならそうするけど……。
●達成条件
・クマゼミ゛の殲滅
・殲滅完了までにメープルの森を守り切る
●クマゼミ゛×4
ミ゛の集合体。前回取り逃した連中がこう、いい感じにアレした結果こうなった。
鳴き声は強力になり「レンジ4全周・識別」に。他なんか重い(重低音)し強い(神攻)。
これを聞いて抵抗判定(+色々アレした補正)に失敗すると夏休み最終日並の気の重さを感じて非常にモチベーションが下がる。
なおこいつら食欲旺盛なのでメープルに取り付いたら5ターン以内に「飛」とか「封印」で吸えなくしないと木を一本枯らす。
●メープルの森
大体全部の木の数が約130本くらい。1割壊滅で報酬ちょっと減って2割超えた壊滅で失敗。
非常に上質なメープルシロップが取れるので、ミ゛の口吻が刺さった跡から溢れる樹液でHP・APを大幅に回復でき
……るんだけどいいのか、間接キスだぞ。
なお戦場であるため結構入り組んでいることに留意(移動時など)。まあ雰囲気ですよ雰囲気。
●備考
クマゼミ゛の攻撃で気分が落ち込んだときの気持ちとかを添えておくと回復後の攻撃力が上乗せされたりCT入り易くなったりするかも知れません。なれ。
●情報精度
このシナリオの情報精度はB(eetle)です。
依頼人は虫の類だと思っていますがどう見ても半裸中年スモトリ男性です。
Tweet