《狐の嫁入り　第七幕》夏、サマー、つまり海！

オープニング

■獅子戦争のその後
　狂気に侵された獅子王は、イレギュラーズの奮闘もあり倒される。
　黒き影が獅子王より抜けでた事で我を取り戻し、狐人の騎士隊の治療により一命もとりとめた彼は何があったのかを語った。
　曰く。ある日空より落ちてきた黒い石を拾ってから身体の自由が利かなくなった。意識だけはかろうじてあったものの、湧き上がる衝動を抑える事ができず。またその衝動が側近から戦士団に感染していくのを止める事もできず。意識の中で見ている事しかできなかった、と。
　件の黒い石は戦争終結後に砕け散っているのが確認された。これで一件落着か、と思われた。
　そして……。
「よう、王様。元気にしているか？」
「イグニス殿……。俺をこのまま生かしておくのか？」
　ようやく身体が動かせるようになった獅子王の下に、狐人の騎士イグニスが顔を見せる。イグニスは戦いが終わった後、復旧作業の監督として獅子人の国に残っていたのだ。
「ああ。兎人も復讐とか考えてないって事だし、俺たちとしてもあんた達がこのままこの国に残って、以前のように魔物討伐に当たってくれた方が楽だしな」
「そうか……恩赦に感謝する」
　跪き頭を下げる獅子王に、やめてくれよと笑うイグニス。
「幸い死人は出てないんだ。けが人が治ったら後は恨みっこなしでいこうぜ」
「……貴殿がそう言うのならば」
　居住まいを正した獅子王に、一つの手紙を渡すイグニス。首をかしげる獅子王に、イグニスは告げる。
「うちの親父からだ。あっちもあっちで何かひと悶着あったらしいが無事に終わったらしくてな。ここは一つ、関係修復の為に祭りでもしようぜって招待状だよ」
「……祭り、だと？」

■海で遊ぼう
「という事で。いつもの狐人達からイレギュラーズへの招待状よ」
　境界案内人のポルックスが、いつもの本片手に集まったイレギュラーズに説明する。
　春にも祭りをしたところじゃなかったか？　と質問が出たが……。
「本来あっちの世界はとても平和らしいわ。季節ごとにいろんな遊びをするのが常識らしいのよ」
　偶々色々な問題が重なって起きただけ、なのか。しかしてそれは偶然なのかという疑問も浮かぶが……。
「せっかくのお祭りよ。難しい事は抜きにして楽しんできたらいいじゃない」

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第2章

第2章 第1節

「よーし皆、そろそろお楽しみの時間だ！」
　いい感じにアルコールが回ってきたスーラクが、ビール瓶をマイク代わりにして叫ぶ。
　なんだなんだ？　と集まった者達は騒ぎ立て。実の息子であるイグニスは「また何かやらかす気かこの親父」ともう頭痛を感じていた。
「折角の海だ、そしてこれだけの人数だ！　水着コンテストやるぞ！」
「……ああ、まだ大人しめだったか」
　安堵のため息を漏らす息子。普段がどれだけ無茶振りしているのかわかる瞬間である。
「野郎でもお嬢ちゃんでも誰でも参加してこい！　この俺様がばっちり品評してやるよ！」
　大丈夫なのだろうか、この騎士団長。

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第2章 第2節

「お。一人目は嬢ちゃんか、いつもうちの愚息共が世話んなってるぜ！」
　ガハハと豪快に笑うスーラクに愛想笑いを浮かべる『初日吊り候補』セリア＝ファンベル（p3p004040）は、突貫工事で作られたステージに立つとパレオの裾を持ちくるりと一回転、ギャラリーに笑みを振りまく。
　うぉー！　
　予想外に反応があったことに少したじろぐセリアだが、不思議と悪い気はしない。
「トップバッターだってのに決めてくれるぜ。そうだな、儂個人の感想で言うならば……」
　そこで言葉を切り、セリアの肢体をじろじろ見渡すスーラク。決して変な意味はない、と思いたいセリアは先程とは逆に居心地の悪さを感じる。
「こう、アレだな。すらりとした嬢ちゃんには似合ってる水着だと思うんだが、もうちょい肉つけてもいいと思うぞ。おい、獅子王。肉あっただろ、肉！」
　との発言により、更にどさりと盛られたドラゴンステーキを渡され、またも困惑するセリアであった。

「……ところで。さっきから、なんか変なのが見えるんだけど」
「あ、お前も見えるのか？」
　などなど、ひそひそ話が繰り広げられるギャラリー席。
　何故かセリアの背後に、謎のてるてる坊主の姿がちらつくのであった……。

成否

成功

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第2章 第3節

「さーってお次は三人一緒に来てくれた奴らだ、まとめていくぞー！」
　いつにも増してハイテンションなスーラクが、次の参加者を呼び寄せる。
　『献心のカレンデュラ』アイシャ（p3p008698）が『0℃の博愛』ブラッド・バートレット（p3p008661）と『花が咲こうと咲くまいと』念々劫火 暁之夜（p3p008709）を誘い参加したのだ。
　三人が共に簡易の舞台に上がる。こんなに目立つのは初めてな三人はいささか緊張気味のようだ。
「こちらの兄さんは唯一の男だな、よろしく頼むぜ」
「は、はぁ……とはいえどうすれば宜しいのでしょうか？」
　戸惑うブラッドの肩をスーラクが勢いよく叩く。笑う。
「なーに、何もしなくていいぜ。進行はこっちがやるさ」
「そうですか……お店の方が選んでくれたものなのですが、どうですか？」
　黒地に白いライン、青い柄が入ったラッシュガードは露出度が低い。しかし、それが逆にブラッドの顔立ちの良さを際立たせ、また誠実さを示しているといって良いだろう。
　上から下まで見回したスーラクが、ぐっと親指を立てる。
「いいじゃねぇか。なかなかいい肉体もしているみたいだし、うちの騎士団に来ねぇか？」
「お誘いは有り難いですが、俺には帰りを待ってくれている子供達がいますので」
「なんだ、残念だな。ま、気が向いたら遊びに来いよ」
　最後にもう一度、スーラクはブラッドの背を豪快に叩き次に目を向ける。
「お次はちっちゃな嬢ちゃんだな」
「は、はい…」
　大柄で豪快なスーラクに視線を向けられ、縮こまるアイシャ。だがブラッドと暁之夜を見て、頷きあい、大きく息を吐いて落ち着きを取り戻す。
「あ、あの。少し宜しいでしょうか？」
「お、なんだなんだ？」
　彼女が舞台で踊るはラサに伝わる舞。レースの多いビキニタイプのタンキニが、ひらりひらりと布地を細やかに、空を泳ぐ雲のように白き乙女を表現する。
「ほう、やるじゃねぇか」
　スーラクの褒め言葉と共に、わっと歓声が上がる。舞を終えたアイシャが恥ずかしそうに顔を赤くするが、観客たちに小さく手を振り返す。
「いいですね、華麗でしたよ」
「あいしゃ殿、すごい！」
　共に来ている二人からも称賛の声が上がり、えへへ、と笑うアイシャの姿は多数の観客を魅了した。
「ありがとな、嬢ちゃん、盛り上がったぜ」
「ど、どういたしまして」
「それじゃあ最後の参加者、大きい嬢ちゃんだ！」
　スーラクの声に合わせ、暁之夜が一歩、ニ歩。堂々と前に歩み出る。大きな体に、一際大きな胸がぶるん、と揺れる。そんな彼女が身にまとっているのは黒の競泳水着だ。横には白いラインが入っている。
　肌に密着するタイプなので、露出度は少ないのだが彼女の肉体のきっちりラインを描くものだった。
「さっきの嬢ちゃんもそこそこ大きかったが、嬢ちゃんはすげぇな」
「んぅ？」
　スーラクの視線の先は一点に注がれているが、暁之夜はあまり気にしていないようだ。少し首をかしげる程度である。
「この水着？　これはね、あそこのお兄さんが選んでくれたのよ」
　そう言って彼女が指差したのは、居心地悪そうに顔を背けている獅子の王であった。
　皆一斉に、『あいつの趣味かよ』と内心でツッコミを入れたそうな。
「ぶらっど殿、ここすごいね。人がいっぱいだよ！」
「そうですね、色んなところから集まったようですから」
　舞台上ではしゃぐ彼女は子供のようで、体の大きさとのギャップがあるがそれもまた魅力の一つだった。
「あいしゃ殿、あそこの女の子達が手を振ってくれてるよ」
「あ、本当」
　そこにいたのは、スーラクの孫娘。彼女にアイシャと二人で手を振り返す。

「いやー、最後にいいものが見れたな。それじゃ野郎ども、夜も盛り上がっていこうぜ！」

成否

成功