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シナリオ詳細

獣人族によるキャラバン制圧戦の阻止作戦

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●此度のキャラバン制圧戦の開戦事情
 兵站という軍事用語がある。端的に述べれば、最前線の部隊を物資の配給等で後方支援する軍の諸活動を指す。その語源は物流をも意味するLogisticsを発端にしている。必要な時に必要な物を運搬できるように作戦区域間の数理的、物性的、情報的な交通網すらも掌握するのである。
 もっとも、兵站は多額の軍資金や豊潤な物資が必要とされる為、経済面や資源面で困窮した軍隊には充分に扱いきれない。例えば、近年問題となる鉄帝国北東部のヴィーザル地方で「開国宣言」された連合王国ノーザン・キングスにおける貧しい獣人族の場合――

――補給部隊を外部から編成するか。そうだ、隊商(キャラバン)がいい。鉄帝国北東部にはリスのキャラバン支部があったな?

 獣人族指揮官の一人であるワルラスがリスのキャラバン支部へ赴いたものの交渉は絶望的に難航していた。
「いいか、もう一度、言うぜ? 俺達は北東部を死守する為に戦をしなくちゃならねえ。強固な補給部隊がどうしても必要なんだ。おめえらは適任なんだ。獣人の誼みで頼む!」
 支部長は恐縮しながらも渋い表情で断り続ける。
「私共も何度も申し上げますが……。まず私共キャラバンは戦争においていかなる勢力にも専属しない中立勢力です。そもそも鉄帝国相手に戦争をして勝てる訳がないのです」
 痺れを切らしたワルラスが支部長の顔面に痛恨の一撃を放った。
 殴り倒されて吐血した支部長の周囲で支部員達が騒めき出す。
「へ、おめえらが悪いんだぜ? もう『交渉』ではなく『命令』だ。キャラバンを貸せ!」
 拳で威圧されても隊商の漢である支部長は冷徹に反論を続ける。
「私共は……あなた方に……決して、与しません……!」
 憤怒したワルラスは支部の者達を殴り蹴り暴行の限りを尽くした。
 それでも不屈であった隊商へ最後は蛮声で宣告を叩きつける。
「これより俺達獣人族はキャラバン制圧戦を開戦する!」

●鋼熊機(メタルベア)を撃退せよ!
「鉄帝国北東部で獣人族によるキャラバン制圧戦が開始されたらしいっす。手始めにリスのキャラバン支部を狙ったみたいっすね」
 あなた方に戦況を詳説する情報屋は『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)だ。
「ひどいよね! リスのキャラバン支部の仲間達は半殺しにされた上に営業停止状態なんだよ!?」
『リスの冒険家』リース・ウォルナッツ(p3n000114)はリスのキャラバン本部から激怒して直接通報した為、今ここにいる。
「シャイネンロードって、わかるっすか? 北東部の主要な交易路の一か所なんすよ。件の獣人族はそこを占拠して各キャラバンを通行不能にしているっす。鋼熊機(メタルベア)という鉄帝国風の機体と警備隊が現場を封鎖しているっすね」
 淡々と報告を続けるリヴィエールに対して、リースが半泣きで現場の状況を教えてくれる。
「さらにその鋼熊機(メタルベア)が交易所の関係者や利用者を脅迫して追放したらしいよ! ワルラスという熊獣人が作戦指揮者なんだって!」
 リヴィエールは焦燥感が募るものの冷静に分析しながら述べる。
「でも、敵軍が投入したネームドは鋼熊機(メタルベア)たったの2機っす。これが獣人族鋼熊機動隊の現状の最大戦力みたいっすね。しかも奴らは鋼熊機(メタルベア)という機体に威信を賭けているらしいっすから……」
 同業の分析がリースの瞳に希望の光を灯す。
「鋼熊機(メタルベア)を撃退してしまえば、もう交易路の封鎖なんてできないよね! それにプライドが叩き潰されて制圧戦を止めるかもしれないよね!?」
 リヴィエールがあなた方一人ひとりと視線を合わせてから懇願する。
「リース達を助ける依頼でもあるっすが、事が大きくなる前に此度のキャラバン制圧戦を阻止して欲しいっすよ。他のキャラバンも大迷惑しているっす。奴らが強固な兵站なんか手に入れたらヴィーザル地方がこの上なく粉臭くなるっすから!」

GMコメント

●目標
 鋼熊機(メタルベア)アタックタイプの討伐。
 鋼熊機(メタルベア)タンクタイプの討伐。
(ワルラス隊長や警備隊の生死は問わない)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ロケーション
 鉄帝国北東部の主要な交易路の1か所であるシャイネンロードが戦闘場所です。
 周辺が針葉樹林に囲まれています。中心部には大きな交易所の建物が建っています。
 戦闘場所の地面は整備された大きな道路です。

●シチュエーション
 交易所の建物は無事ですが、その付近に鋼熊機(メタルベア)2機が待機して占拠しています。
 交易所内の人々、キャラバンの人々、通行人達は既に退却済みです。
 たまに敵の警備隊が警邏しています。

●敵
 鋼熊機(メタルベア)アタックタイプ×1機(ボス)
 獣人族鋼熊機動隊が所有する自動で稼働する巨大ロボです。
 全高6m程度の熊型の蒼い機体です。近接物理攻撃特化タイプです。
 戦闘方法は以下。
・アイアンクロー(A):鋼の鉤爪攻撃です。物近単ダメージ。連。
・デスクロー(A):鋼の鉤爪攻撃の必殺技です。物至単ダメージ。必殺。CT高。
・ローリングクロ―(A):鋼の鉤爪攻撃で回転します。物自範ダメージ。識別。
・突進(A):機体が全力で突撃攻撃です。物貫ダメージ。飛。識別。
・アタックタイプ(P):EXA高、物攻高。EXF低、反応低、機動低。
・巨大ロボ(P):マークあるいはブロックをする場合は3人必要です。

 鋼熊機(メタルベア)タンクタイプ×1機(ボス)
 獣人族鋼熊機動隊が所有する自動で稼働するもう一機の巨大ロボです。
 全高6m程度の熊型の紅い機体です。防御支援特化タイプです。
 戦闘方法は以下。
・ベアマシンガン(A):銃器で射撃します。物中単ダメージ。
・防御バリア(A):防御結界を発射します。防技、特抵、回避にプラス補正。物自範。自付、付与、識別。
・修復バリア(A):修復結界を発射します。機体や人体の損傷を修復。HP&BS回復。物自範。治癒、識別。
・対ファンブルバリア(A):対ファンブル結界を発射します。ファンブル数値を軽減。物自範。自付、付与、識別。
・タンクタイプ(P):EXF高、HP高、防技高。EXA低、反応低、機動低。
・巨大ロボ(P):マークあるいはブロックをする場合は3人必要です。

 警備隊員×初期10人
 獣人族鋼熊機動隊の警備隊員達です。ワルラスが隊長です。
 至近から中距離程度までの通常攻撃手段を持ちます。
 あまり強くないですが、時間の経過と共に数が一定数まで増えていきます。
 鋼熊機(メタルベア)が2機とも敗北したら逃走します。

●その他
 NPCのリヴィエールとリースは戦闘には参加しません。

●GMより
 通常シナリオでは大変お久しぶりです、あるいは初めまして。
 キャラバン好きなGMのヤガ・ガラスです。
 皆さんは、キャラバン制圧戦を制圧する方法をどう考えますか?

  • 獣人族によるキャラバン制圧戦の阻止作戦完了
  • GM名ヤガ・ガラス
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年09月01日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
楔 アカツキ(p3p001209)
踏み出す一歩
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)
トリックコントローラー
レイリー=シュタイン(p3p007270)
騎兵隊一番槍
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
小さな願い
アルテラ・サン(p3p008555)
晋 飛(p3p008588)
倫理コード違反

リプレイ

●偽装隊商
 封鎖で殺伐とした交易所に一両の馬車が現れた。
 御者の『守戦卓越』レイリー=シュタイン(p3p007270)が鹿毛の軍馬らを操縦している。
 淡々と馬達を操っている内心では強い決意がある。
(戦争に中立勢力を、それも非戦闘員を巻き込むなど言語道断。許せないし、ヒーローとして止めねば)
「そこの隊商、止まれ。ここが封鎖中なのが見えねえか?」
 熊獣人の警備隊に停車させられると尋問が始まった。

 レイリーの隣の席に居る『義に篤く』亘理 義弘(p3p000398)が丁寧に受け答える。
「交易所の封鎖お疲れ様です。実は、私共は貴軍に志願する隊商ですが……」
 常時の任侠的態度とは真逆に今の義弘の口調や言動は演技である。
 だが、内面で燻る憤怒は極限まで抑えている。
(無理を通せば道理は引っ込む、よくできた話だが……。それじゃあ道理が収まらねぇ。道理の代わりに無理には無理をだ)
 馬車の最後尾からは機動兵器AG(アームドギア)が滑らかな機械音を立てて登場する。
 パイロットの『朱の願い』晋 飛(p3p008588)が頭部を全開にして爽やかに挨拶した。
「へへっ、ちっと『鉄帝』で兵器ガメたのはいいんだが連中に狙われちまってよ……。なぁ、旦那方、俺らを雇っちゃくれねぇか? 兵糧も提供するぜ!」
 自らの兵力を売り込む飛は何処か愉しそうだ。
(今回はこっちの世界の機動兵器相手かい。思い切りやるか!)
 もっとも、警備隊側としても突然出現した馬車に機動兵器は訝しい。

 尋問が荒れそうになる所で馬車から『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)と『踏み出す一歩』楔 アカツキ(p3p001209)が降りて来て介入する。
「どうしたの? アラゴトならオレらの出番かな?」
「何か問題が起きたか?」
 厳つい巨体のイグナートとアカツキは存在するだけで威嚇的な抑止力がある。
 獣人の警備隊が尋問の態度から一歩、身を引いて構える。
「あ、オレら? 護衛だよ。ほら、この辺はブッソウだからね」
「同じく」
 イグナートは笑顔で相手を威嚇するその内心では溜息をついていた。
(何はトモアレ、『鉄帝』にメイワクだからここではしゃぐのを止めてもらいたいが……)
 アカツキの方は無表情で威嚇しているがやはり内面は穏やかではない。
(民間人に手を出した時点でもう軍人ではなく賊の集まりだろう。元々無茶な開国を宣言するような連中だ。まともな交渉等は期待できそうにないな)
 護衛の登場で一触即発の緊張感が高まる中、隊長ワルラスが呼び出された。
「ほう、志願に来た隊商か? だったら馬車の中身を見ていいか?」
 そして馬車のカーゴを開放すると、車内には……。
 二人の女性と一人の性別不明者が居て、さらに酒類と缶詰の箱が積まれていた。

 特にワルラスの目を引いたのは美女の『魅惑の魔剣』チェルシー・ミストルフィン(p3p007243)だ。
 セクシーランジェリーの様なコスチュームに身を包むチェルシーがウィンクした。
 さらに、桃色の香水の色香を漂わせながらワルラスに近寄った。
「こんにちは、凛々しい熊さん? 私は貴軍へ参戦志願をする傭兵よ。協力を断る隊商もいたそうだけれど、私達は勝ち馬に乗りに来たわ。ねぇ、あのカッコいい機体をじっくりと見せて貰えないかしら? 『鉄帝』に勝てる機械って聞いて興味を持ったのよ……」
 チェルシーにせがまれるとワルラスも赤面して満更ではないようだ。
 もっとも、チェルシーの方は思惑があって誘惑をしている。
(獣人族……。可愛い印象はあるけれど、報告によると今回は荒々しいわね。暴力は愛を込めて私に向けなさいよ!)
「そうかよ? じゃあ、ちょっとだけだぞ!」
 ワルラスがチェルシーの手を引きながら鋼熊機(以下、メタルベア)の方へ歩みを進める。
 途中で部下達が止めに入ると義弘と飛が笑顔で遮る。
「お近づきに私共の造る酒でもどうぞ。これ、希少な酒ですが……」
「九頭龍社製パンの缶詰でも食おうぜ? 甘めのパンだから辛い酒と合うってもんよ?」
 部下達も懐柔されるともはや止める者は誰もない。

 レイリーはワルラス達を追う様に馬車を静かに発車させる。
 また、開戦に向けてカーゴを軽くノックして車内に合図を送った。
 車内では、アイマスクを着用している『ふゆのいろ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)が羊の枕を抱いて寝たふりをしていた。
 無論、職務中に寝ている訳ではなく、いつでも交戦できる為に温存された戦力だ。
(冬が厳しくても、人から無理矢理奪うのはいけないって、エルは思います。ですから、エルは熊さんをもふもふしたくてもあえて我慢して戦います)
 エルの隣ではアルテラ・サン(p3p008555)が脆弱そうな襤褸に身を包んで体育座りで寝たふりをしていた。
 アルテラもエルと同じく温存された戦力であり、作戦上の理由でそうしている。
(……無理強いはいけませんので、やめさせましょうか。そんなことをされる場面は見ていて気持ちいいものではありませんねぇ……えぇ、えぇ)

 レイリーは戦況を俯瞰すると、今が頃合いだと確信した。
 威風堂々とした白亜のヒーローに変身すると敵前で宣戦布告をする。
「私の名はヴァイスドラッヘ! 只今見参! 悪事の証拠見たり、観念しろ!」
 名乗り上げたレイリーに挑発されてタンク型が起動音を増長させて襲い掛かる。
 ワルラスは騙されたと理解すると瞬間に表情が一転して命令を叫んだ。
「敵なら容赦はしねえ! おめえら、やっちまえ!」

●対アタック型
「さあ、ドイテね! オレが戦端を開くから!」
 混乱した戦場でイグナートがアタック型に向かって全速力で駆け抜ける。
 稲妻を宿らせた拳から放たれる強烈な一撃がメタルベアの腹部に突撃した。
 殴られたメタルベアも危うい機械音を鳴らしながらも必殺の鉤爪で襲い掛かる。
「ははは、イテエな!? なあ、コッチで殴り合おうよ?」
 挑発されたアタック型は狂ったようにイグナートを追跡して殴り続ける。
 丁度今、戦場を二分する標的の構図が決定した。
 タンク型がレイリーを狙い、アタック型がイグナートを狙っている。

「行け、アカツキ! この場は俺がやる。掛かって来い、警備の熊共!」
 義弘は丸太を抱えて振り回すと、やがて勢いが大回転して暴風を発生させる。
 彼の周辺で吹き荒れる暴風撃が乱れて戦闘する警備隊を餌食にしていった。
 反撃に挑む警備隊を次々と薙ぎ倒して行く義弘の重戦車の異名は伊達ではない。

「加勢する、イグナート。おい、熊、これでもくらって燃えていろ」
 アタック型の側面からアカツキの烈火と練気の猛撃が炸裂して派手に火花を散らす。
 メタルベアは炎上すると瞬時に態勢を立て直してアカツキに突進した。
 どういう訳かアタック型はイグナートではなくアカツキを襲い続ける。
「挑発が切れたな? よし、俺が代わろう」
 アカツキが必殺の正義の拳をアタック型に打ち込むと電気音と共に部品が飛び散った。
 再度の挑発を受けたメタルベアはそのままアカツキに狙いを定めて猛攻する。
「アカツキ、ありがとね。で、ガラ空きだよ、熊?」
 イグナートはその隙を見逃さずに背面から審判の一撃を打ち込んで追撃した。

「おまえさんの所の警備隊は大した事ねぇな?」
 周辺の警備隊を壊滅させた義弘がアタック型の交戦に拳の一撃で参戦する。
 己の拳に髑髏の呪いを纏わせた忌々しい猛毒の打撃がメタルベアを派手に破壊した。
 一方のアタック型も戦の終盤を悟ると猛速度で回転して鉤爪の連撃を炸裂させる。
 最前線で死闘する三人の運命の欠片が砕け散ると、男達は戦気を高揚させて苦笑する。
「これで沈め。もう立ち上がってくるな?」
 アカツキは決戦の意志を拳に込めると凄まじい破壊力で標的に打撃を叩き込む。
「おらあ! もう一丁!」
 稲光して部品を吐き出すメタルベアの崩壊を義弘の衝撃の拳が加速させる。
「ナイス・ファイト。だが、オレらのショウリだな!?」
 イグナートの奥義である―絶招・雷吼拳―が稲妻を閃かせて冴え渡る。
 彼の渾身の一撃がアタック型を鮮やかに爆裂させた。

●対タンク型
 イグナートが初手でアタック型を挑発すると囮になって戦場から引き離した。
 一方、タンク型とワルラス率いる警備隊が囮のレイリーに集中攻撃の嵐を浴びせる。
 敵機の銃器が火薬を噴けば大楯で防ぎ、警備隊との白兵戦は槍で受け流して弾いた。
「さぁ、私が倒れるまで仲間は絶対に護って見せるわ」
 英雄の矜持であろうか、それとも同志への同胞愛であろうか。
 中衛や後衛の仲間達を庇う際にはその身で止めてでも敵陣の突破を許さない。
 レイリーは白亜の守護竜の加護を輝かせて装甲強化を図りながらも防衛体勢に努める。
 そんな防衛戦に体を張るレイリーを後衛のアルテラが必死に援護していた。
「我が太陽の輝きにより全て美しく。そしてこの輝きは誰も止めることはできません……。あぁ、なんと美しいのでしょう。さあ、我が聖なる声調で天使の歌を奏でましょう」
 アルテラが神曲を美声で歌唱すると周辺に天使の癒しが降り注ぐ。
 しかもギフトの効果もあり三割+αの比率でキラキラと神々しくも眩しい。
 前衛のレイリーが健在である事を確認するとアルテラが大声で激励する。
「レイリー様々、ご安心下さい! 私の行動力が続く限り治癒術式は永遠に動き続けますよ。能率消費と回復量の勝負で簡単に沈むことはありません……」
 レイリーは敵の攻撃が一時的に止むと後衛に大きく手を振って礼を叫ぶ。
「ありがとう! 私は絶対に倒れない! 仲間達がいる限りね!」

「さて、こっちも仲間とタイミングを合わせて蹴散らしていくわよ!」
 チェルシーの片翼から魔剣ミストルフィンが幾発も勢いを付けて射出される。
 レイリーがタンク型を引き付けているのでチェルシーの狙いはワルラスら警備隊だ。
 呪われた魔剣がワルラスの尻に突き刺さり、警備員達の頭上に振り注がれる。
「あの女……。さっきは騙したくせに今度は魔剣で刺すだと!?」
 挑発を受けたワルラスは真っ赤な顔で怒り狂いながらチェルシーを銃撃で狙う。
 もっとも警備隊から銃撃されてもチェルシーは魔力障壁を張って弾丸を遮断した。
 それでも冷静さを喪失しているワルラス達は白兵戦で流れ込んで行く。
「待っていたわよ、ワルラス? 楽しく踊りましょう?」
 チェルシーは片翼と手元の魔剣で優美な円舞曲を描き警備隊を血の雨に染める。
 魅惑の魔剣に誘引された警備隊が餌食となり力尽きた。

「仲間が敵を引き付けてくれているうちにエルも攻撃開始です」
 エルは後衛から封印魔力の矢を射てタンク型を狙撃する。
 しかし、敵機の高性能から決まらない事もあれば警備隊が援護防御にも入るようだ。
「久々の機動兵器戦だ! 派手にいこうぜ!」
 AGを操縦している飛がタンク型の背後に回り込んで奇襲する。
 重装甲の左半身でタックルした後、右腕のショットガン至近射撃を追撃に叩き込んだ。
 敵陣は囮達に集中していたので敵機の背後ががら空きであった。
「ありがとうございます、飛さん。えいっ、今度こそ命中です」
 エルの封印魔矢がタンク型の中央部を綺麗に狙い撃てた。
 まるで一時的に故障したかの如く銃器もバリアも繰り出せなくなる。
 その隙に飛がクイックランペイジの追撃を放ち遊撃離脱(ヒット&アウェー)をする。
「礼はいらねぇ、ガンガンいこうぜ!」
「はい。エルもがんがんいきます」
 敵機が結界の先手を打つよりも早くエルが氷の魔力を手元に宿らせて駆け抜ける。
 射程の狙いがタンク型に定められると絶対冷気が機械を氷で蝕んだ。
「さあ、行って下さい黒犬さん」
 エルが暗黒を纏う魔犬を召喚して解き放つと強烈な猛攻がタンク型を食い破った。

 特異運命座標の快進撃は目覚ましいが、敵も流石はタンクの手練れと言えようか。
 前半戦で重度の損傷を受けながらも敵機は未だに地面に膝をつかない。
 理由は、回復と防御の結界を使い分けながら自軍を援護しているからだ。

「みんな、負けないで! きっと、もうあと一歩ってところよ!」
 チェルシーは魔神の詩歌を詠んで友軍に魔力の回復回路を行き渡らせる。
「大丈夫、皆さんが死ぬことはございません。最後までサポートさせて頂きます……」
 アルテラも賦活術や聖歌を連続で駆使して友軍を奮い立てる。
 そんな特異運命座標のチームワークを嘲笑うかのようにワルラスが喚き出す。
「あいつらはもう虫の息だ! やっちまおうぜ!」
 ワルラスに残存する警備隊、そしてタンク型が雌雄を決する為に突撃して来る。

 最後に激突戦となるのであれば、前衛にいるレイリーも攻勢に出る。
 彼女は筋力を飛躍的に増強した上で英雄の意志の全てを竜槍の一撃に込める。
「もしも、可能なら……。降伏して! これ以上の死者を増やしたくないわ!」
 レイリーの悲痛な叫びはタンク型の機動部分を破損させる形となって届けられた。
 虫の息はワルラス達も同様であり、タンク型はもはやタンクとして機能出来ない。
「死んでもタンクを守れ! こいつが落ちたら終わりだ!」
「少し大人しくしていてほしいものです……。邪魔をするならば聖光の輝きをお見舞いしますよ?」
 命令しているワルラスの顔面に向かってアルテラが聖光弾を思い切り投擲する。
 被弾したワルラスが鼻血を垂らして叫びながら後衛に攻めて来る。
「そうならば私も相手をするわ!」
 チェルシーも魔剣の噴射や舞踏で警備隊を次々と血祭に上げた。

 レイリーとタンク型が一騎打ちをしている側面の左右からエルと飛が仕掛ける。
「熊さん、エルがもらった冬の加護の力で冬眠して下さい」
 左側面からエルの魔氷がタンク型を氷漬けにすると壊れ掛けの盾部は爆発した。
 煙を吹いて鈍化する敵機目掛けて、飛は最高の連撃を演出する。
「打ち負かしちまえ! 敵の戦意も砕けるはずよ!」
 右側面から炸裂弾が破竹の勢いで爆発するとタンク型の注意力を奪う。
 全力機動のAGが敵機の損傷した急所を幾度も狙って機動戦術で爆裂させた。

 最終的に両方の型が完全に破壊されると警備隊は降伏するか逃亡をした。
 投降者の中には、「死んでも守れ」と叫んでいたワルラスの姿はなかったが。

●後処理
「はぁ、はぁ……。ここまで逃げれば!」
 ワルラスは交易所の裏口から繋がる針葉樹林の通路を使用して逃げ切るつもりだ。

「よっ、ワルラス!」
 針葉樹の影からイグナートが笑顔で会釈して登場する。
 ワルラスは理解が追いつかず唖然として声が出ない。
「なんだよ? 意外かな? 実はオレ、裏社会の請負人とかヤッテルからね? 今みたいな時、悪いヤツが逃げるルートとか、カンタンに捜索できるんだよ」
 怯えるワルラスが後退しようとすると、今度は義弘とぶつかった。
「よお、悪党? リスの隊商始めとして、各隊商や交易所には賠償してくれるんだよな? ほら、これ請求書。ちゃんと払えよ? 後で闇金の兄さん送ってやるから」
 請求書を震える手で受け取ったワルラスは号泣直前だ。
「いいか、おまえさん? ヤクザの世界にはな、不思議と帳簿に載ってないお金というのがあるんだ。ものの道理をねじ曲げる奴は、ヤクザには許せねぇ。だから払って貰うんだ」
 切羽詰まったワルラスはこの期に及んで言い訳をする。
「そ、その賠償金はだな……。部下が払う! 俺の部下を捕虜にしてくれていいぜ? だから頼む、俺は見逃してくれ!」
 ワルラスが謝罪にならない謝罪をするとイグナートが彼の顔面を思い切り殴り飛ばした。
 何時も穏便に笑っているイグナートの表情が曇る。
「オレはな……。冬を越えられナカッタ子供を何人も見てきた。力の無いソンザイが蹂躙される光景は嫌いなんだよ……。いいか、もう二度と隊商を襲うなよ?」
 ところでワルラスの代替案は、飛とチェルシーのお陰で見事に完封される。
「へへっ、テメェの部下だが、全員捕らえたぜ?」
「本当に最低な男ね! こいつの部下なんてもう辞めなさい!」
 ワルラスが差し出す予定の残党達も既に生け捕りにされていた。
 最後にはワルラスも二度と隊商を襲わない事と請求書の賠償金を支払う事を約束した。
 こうして当制圧戦は無事に幕を閉じたのであった。

 一方、戦場に残る面子も後始末をしている。
「暴れてしまったので此処の修繕でもしましょう。困りますねぇ……暴れるだけ暴れてそのままというのは美しくございません。少しでも相手を思いやる気持ちがあれば結果は変わったでしょうに……」
 現場を片付けるアルテラの付近でアカツキが破損した機体を観察してメモを取っていた。
「おや? どうされましたか?」
「型番の情報を探しているんだ。この兵器の出処を調べるのも悪くないだろうから」
 今回の様な不逞の輩共が今後も新兵器を造らないように出処を封じておくのである。

 エルは戦闘で殺してしまった警備員の遺品と機体の破片を交易所の裏地に埋めた。
 そして、天にいる冬の神様に祈るかのように黙祷を捧げた。
「どうかここで、春を待って下さい……」
 そんなエルの様子を眺めながらレイリーは一抹の希望を胸に秘めて共に黙祷する。
「……しかし、獣人族の貧困も可能なら解決してあげたい。今後のヴィーザル地方情勢に対して私達に何ができるか、改めて考えてみたいわ」

 了

成否

成功

MVP

アルテラ・サン(p3p008555)

状態異常

レイリー=シュタイン(p3p007270)[重傷]
騎兵隊一番槍

あとがき

シナリオ参加ありがとうございました。

キャラバン制圧戦は終幕ですので、リスの隊商達や交易所は助かりました。
一方で、ヴィーザル地方情勢の戦いは続きます。
特異運命座標の皆さんとノーザン・キングスとの戦いの行く末に幸運を祈ります。

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