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シナリオ詳細

Ton de la mer

完了

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●Ton bleu

 はじまりは、ひとつの本。
 澄み渡る空の青にも、深い水底の海の青にも見えたカバーの本が見えた。
 だから、開いた。
 それだけの事。

 青い、あおい、ちいさなひとが、ボクの視界を攫ったのだ。
 きらり、煌めくひかりとともに、おれに手を伸ばしたのだ。

 レオ。
 チック。
 あそびに、おいで。

 誘われるままに手を伸ばした。
 其れが、良くなかったのかも識れない。
 
 ――ぽちゃん。

 ――ぽちゃん。

 ――ぽちゃん。

 耳裏で。否、鼓膜のすぐ近くかも知れぬ。
 近いとも遠いとも判らぬが、水音が木霊したように思われた。
 うつくしい雫が、水の中に落ちたようなイメージが脳裏に浮かんで、消えて。
 永遠にも思われるような、然し一瞬とも呼べよう『其れ』。
 広がる空の青の中に、海の青を見出したのは――偶然だろうか?

 目を、開いた。

 其処は先程見た、澄み切った青が広がっている――訳ではなく、ぼんやりとした暗がりがあるだけ。
 ただ何故か――水着を着ていた。
 ここは水の中なのだろうか。それとも、どこか別の場所なのだろうか。
(……?)
 首を傾けた『青に堕ちる』レオ・ローズ・ウィルナード。そのすぐ近くには、同じように不安に顔を染めた『埋れ翼』チック・シュテル。
 そんなふたりの前に佇むは、白磁の、単調な細工が施された――厭、シンプル・イズ・ベストとはこの事か、と思わせる、飾り気はなくとも美しいデザイン。
 手を伸ばしたのは、どちらか先だろうか。
 否、どちらでも構わない。
 手を伸ばした二人の先。扉は――自ずと開かれた。
 恐る恐る1歩踏み出した二人の先。

 ――広がるは、満天の青。

 クリア・ブルーの空を映し、煌めく水面があった。
 水を踏めば透明で、小さな魚たちが泳いでいた。
 さらさらと柔らかく、玻璃のように小さな輝きを携えた砂は、二人の足に絡みつかずに、ふわりと風に舞って飛んでしまう。
 いくつか建てられたビーチパラソルの下には、クーラーボックスも置かれている。
「……いいの、かな?」
「……たぶん」
 二人は顔を見合せた。
 青い空、青い海、転がるビーチボール――答えはひとつ。

 どうせなら思いっきり、遊んでしまえ!

●Mon bleu

 精霊の招きびとたる、おひとへ

 ひとつ 精霊はあなたたちを歓迎します
 ふたつ 精霊は声をかければ貴方たちのまえに現れます
 みっつ 精霊は汚れを嫌います。来た時よりもうつくしく、のこころで!

 ――どんなところにも精霊はいるわ。忘れないでね、招きびとさん。

NMコメント

 シナリオのリクエスト、ありがとうございました。
 染(そめ)と申します、はじめまして。
 お二人のひと時に彩りを添えるお手伝いをさせて頂ければ幸いです。
 精霊の海。招きびと。海の物語。

●目標
 青のしらべを満喫する。

 青のしらべ(後述します)は精霊に愛された物語。
 お二人が楽しんだり考えたり、そんな『生きている』姿を見せることで、物語は満足してくれることでしょう。

●世界観
 『そらとうみとが。ずぅっと、近くに思えたの』
 青のしらべ。
 病弱な少女が書いた、ちいさな物語です。
 精霊の力を借りて、空や海、自然に触れたことを書いた、所謂日記のような――そんなものでもあります。
 作者亡き今も、精霊たちはその物語を愛しているようですが――?

 空中にぽっかり浮かんだ大きなリゾート・アイランドをイメージして頂ければわかりやすいかと思います。
 空は美しく、海も綺麗な、美しい物語です。

●お勧めスポット
 行っていただいても、行かなくても大丈夫です。
 ・精霊岩
 少し離れたところにある鍾乳洞。夜になると光るんだって!
 ・魚呼滝
 魚がたくさん集まる滝。滝の水あまり強くないから、遊ぶのにも最適!
 ・果樹森
 様々な美味しいフルーツがなった森。ココナツジュースが飲めるかも!
 ・夕焼岬
 夕焼けが綺麗に見えると噂の場所。写真映え間違いなし!

●精霊
 恥ずかしがり屋で姿を隠しています。
 が、魔力の流れを近くに感じたら、そばに居るかもしれません。
 呼んだら出てきてくれるかも。
 本来は人懐っこく悪戯好き、お転婆です。
 明るい少女のような性格をした子が多いのだとか。

●備考
 海にあるだろ!ってものはなんでもあります。
 時間帯も朝、昼、夜、お好きにご指定ください。
 自由に楽しく!そんな感じでプレイングをお書きください。
 ●精霊 に関しては、気付いても気付かなくても大丈夫です。

●その他
 アドリブはマシマシになるかと思います。予めご了承ください。

 午前10時、ビーチパラソルの下を、想定した相談場所の設定になっています。
 隣には大きなマップ。●お勧めスポット の詳細な場所が乗っています。
 余力があればRPを――口調等、参考に致します。

 以上となります。
 お二人のプレイングを心よりお待ちしております。

  • Ton de la mer完了
  • NM名
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月06日 22時05分
  • 参加人数2/2人
  • 相談10日
  • 参加費---RC

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(2人)

チック・シュテル(p3p000932)
赤翡翠
レオ・ローズ・ウィルナード(p3p007967)
青に堕ちる

リプレイ

●まだ明け染めぬ、青の色
 境界図書館に誘われて迷い込んだ、きっと2人にとっては初めての場所。
 未知の場所。或いは、もう帰れないかもしれない物語。
 だけれども。嗚呼、何故だろう。不思議なことに、『怖い』、と、躊躇うような気持ちは――ない。
 これから始まる二人だけの冒険譚。心を躍らせ、弾む胸。ドキドキと鳴り響く拍動に目を細め、手を当てた『青に堕ちる』レオ・ローズ・ウィルナード(p3p007967)。
 一人などではない。今ここにいるのは、レオと傍らの『埋れ翼』チック・シュテル(p3p000932)だから。
(青色の、物語。誘われて……迷い込んだ、場所。
 ……でも。不思議と……心地良くて、わくわくした気持ち。
 きっと……友達が一緒、だからかも。しれない、ね)
 伺うように、己の顔を覗き込んだレオに頷いたチック。
「――さあ、行こうか」
「……うん」
 頷き、そして自然と互いの手を取って。そして、駆け出した。
 色々な景色を、物語を。辿るために。
 ちいさな冒険譚に胸躍らせる幼子の如く。
 その頬に浮かぶ笑みを目印にしながら――。

●美しきものは
 そうして、二人が先ずやってきたのは『魚呼滝』。
「……涼しい。水が上から降ってきてるだけで気温が低く感じられる」
 苔が生えた、少し足場の悪い道を、手を取り合い進みながら。
 まずは滝壺と足を進めた。
 天から注がれる水はやわらかで、しとやかで。
 お世辞にも雄々しき『滝』とは言えないのだけれど。それくらいのほうが、二人にとっては心地よかった。
「マップにも……載っていた通り、此処の水は……穏やかに流れている、ね。
 ……海は、溺れる心配、不安。少しある……けど、此処は…心配無さそう」
「だね。……わ、いっぱい魚がいる」
「……! 魚……おれも、見たい。何処にいるの、かな」
「ほら……あそこ」
 白魚の指を伸ばして、レオが指し示せば。魚の群れが、水の中で踊るように動き回る。鱗が煌めいて、水の中ですら輝いているように見えた。
 じいっと覗き込むレオに合わせて、チックも真似するように覗き込んでみれば。自然と表情が綻ぶ感覚を覚えた。
「皆が…泳ぐ姿。綺麗で…楽しそう。おれも、遊んで…みたい」
 ふと、チックがこぼした言葉にレオは瞳を輝かせ。
 ならば、共に遊ぼう。
 ゆっくりと、足を水に浸す。
 ひんやりとした感覚が足を伝い、全体へと広がっていく。
「魚もいっぱいいて、幻想的だね」
「……! 魚……おれも、見たい。何処にいるの、かな」
「ほら……あそこにいるよ」
「皆が…泳ぐ姿。綺麗で…楽しそう。おれも、遊んで……みたい」
「いいね。泳げないから、足がつくところまでになるけど……」
「おれも。翼……濡れると大変、だから。余り深く…入らない」
 慎重に。ひたり、ひたりと足を進めて。
「……ん。ひんやりしてて、とっても…気持ちいい場所」
 ふ、と言葉をこぼしたのはチックのほう。柔く咲かせた笑みが心を和ませる。
 魚がたわむれに近づいてくるものだから、少しばかり指でつついてみたりすれば、ちゅっと指に口付けてくるものだから、一層可愛くて仕方がなくて、このひとときを忘れまいと心に誓った。
 魚たちと一緒に、のびのびと自由に泳ぐ。そんな平和な時間はゆるりと過ぎ、そして少しずつ日が暮れてくる。
「……ん、暗くなってきた。次のところ行こうか?」
「夜が近づく、してきたから。次の場所に、行こっか」
 まだまだ終わらないよね。
 もちろん。
 言葉に出さずとも――伝わる思い。
 まだまだ、終わらせたくなんてないから。

●そして、いつまでも
 茂みをかき分け、進む二人。
 美しいひかりを追って、精霊岩へと向かっていた。
 無人の島であるはずのここ。親切に設置されたマップには島の奥にあるのだと示されていた。
 魚呼ぶ滝――魚呼滝。マップに刻まれていた位置とずれはなかった。
 あの地図が本当であるとしたら、二人は恐らく、そろそろ目的地へとたどり着くころだろう。
 虫たちの声を。だんだんと眠りについていく世界を横目に眠らない二人。少しだけ悪いことをしているような、そんな心地になって、顔を見合わせてほほ笑んだ。
 昨日までは知ることのなかった世界の夜空は、とても美しかった。
「鍾乳洞って書いてあったけど、どんなところなんだろう? 実は……初めて見るから楽しみ」
 わくわくとした様子で、マップの近くに置いてあったパンフレットを頼りに進んでいくレオ。
 目的地。探している場所。
 二人だけの、秘密の冒険。
 レオもチックも『おとこのこ』なのだから、こういった冒険に心弾まぬわけもなく。
「おれも、たのしみ。精霊岩って、どんなところだろう」
 チックもそれに頷き、くすくすと笑いながら想像を巡らせる。
「うーん……光ってる苔がある、とかかな」
「なる、ほど。そういう植物はある、するらしいから。
 実際は、そうなのかも。……この目で、確かめなくっちゃ」
「ふふ、そうだね。地図だとこのあたりなんだけど。チックさんはそっち側を見てもらってもいいかな?」
 わかったと頷き、一旦立ち止まって二人は周りを見渡す。
 パンくずを道に並べてきたわけでもない。
 ここで迷ってしまえば、遭難もいいところだ。
 誰もいない世界で、二人で遭難。
 話にならない。
 レオの背中に冷や汗が伝う。募る不安。
 しかしそれは、チックの声によってかき消されることとなる。
「……あそこ、かな。行く、してみる?」
「わ……ほんとだ。すごくキラキラしてる。行ってみよう」
 一歩ずつ足を進めるたびに、光はつよくつよく、まばゆくなって。
 進める足の速さはどんどん早く。ほほに浮かぶ笑みはどんどん深く。

 そして。
 辿りつく。

 ぼんやりと光を携える鍾乳洞。
 蛍の光のように、淡く、儚く。伝う雫は光の尾を引いて。
 そんな幻想的な光景に、二人の胸の高鳴りは止むことを知らない。
「洞窟の中で……こんな景色が見られるなんて、夢みたい…だね」
「うん……うまく言葉が出てこないや」
 きらきらと瞳を輝かせるレオ。

 “――わたしたちの贈り物、気に入ってくれたみたいね!”

 誰かの気配。
 耳元で囁かれたような気持ち。
 プリズムのようなひかりを携えた燐光。
 チックは目を細めた。
(……ああ。きっと、おれたちのそばで。ずっとずっとちかくに、君達は居てくれたんだ)
 だから。
 いわねばならない。
 つげねば、ならない。
 そんな焦燥が胸を焦がす。
 綴る言の葉は――、

「……君達が愛した物語を。しらべを。見せてくれて、ありがとう」

 震える空気。
 レオは突然のことに瞬いたけれど。
(そっか。こんなにも、近くにいたんだ)
 理解するや早く。同じように言葉を。
「姿は見えなくても、君たちも楽しませてくれようとしたんだね」
 微笑んで。
 見えぬ隣人は、きゃらきゃらと笑い声をあげた。


 “――かわいいわたしたちの隣人。あいしているわ”

 ふ、とあたたかさが消える。
 きっと彼女たちは満足してどこかへと飛び去ったのだろう。
 なれぬ経験に、笑い声がどちらかともなく漏れる。
 そして、先に口を開いたのはレオのほう。
「……ね、チックさん。今日は付き合ってくれてありがとう」
 やさしく微笑む。
 幸せだと、満足げに。
 そして、照れたように目を伏せて。
 ああ、そんなこと。
 おれも同じだと、いうのに!
「……レオ。今日は……こうして一緒に楽しい思い出、沢山……沢山。ありがと、ね」
 だから、おれも微笑もう。
 友への感謝の想いをこめて。

 海の色調はふかく、ふかく。
 これにて二人のひとときの物語は終幕。
 けれども、嗚呼。
 帰り道もどうか、精霊のことをわすれないで!

 あなたたちの傍に。
 精霊は、ともに。

成否

成功

状態異常

なし

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