シナリオ詳細
<夏の夢の終わりに>前門の貴道、後門のムスティスラーフ
オープニング
●進撃! アヴァル=ケイン
――解放された冬の王の力によって、常春の妖精郷アルヴィオンは極寒の冬の世界へと変容した。木々は氷に覆われ、時には猛吹雪まで襲ってくる。
冬の王の力を除くには、妖精城アヴァル=ケインに退いた魔種達を排除しなければならない。しかし、魔種達の排除は容易ではなかった。何故なら、アヴァル=ケインには魔種の生み出した錬金術モンスターや邪妖精、冬の王から生み出された冬の精などが大量に存在し、城を守っているからだ。
だが、何としてでも魔種達の排除は成し遂げねばならない。このままでは妖精郷は氷と吹雪だけの死の世界となって滅亡してしまうのだ。
かくして、深緑の迷宮森林警備隊を援軍に迎え、アヴァル=ケインの攻城が開始された。
●出現! キトリニタス
城内に突入したイレギュラーズ達は、魔種の居場所を目指して回廊を進む。だが、その進路を遮る影があった。
「HAHAHA! ようやくここまで来たか、ファッキンシットなイレギュラーズ共!」
その影とは『人類最古の兵器』郷田 貴道(p3p000401)――正確に言えば、貴道の姿をした錬金術モンスター、キトリニタスだ。
キトリニタスは先に出現したアルベドの一段階上位の存在であり、そのフェアリーシードとされた妖精はアルベドの時よりも深く融合しているため、その命を救うことは出来ない。
さらにその後ろには、二体の霧が集まったような人型の存在があった。おそらく、冬の精の一種なのであろう。
「ここから先はドントゴーだ。ユー達には、ここでデッドエンドしてもらうぜ!」
そう言い放つと、貴道のキトリニタスはファイティングポーズを取る。来るか、とイレギュラーズ達が身構えた瞬間、後方から老人の声が聞こえた。
「やぁ、まだ始まってないみたいだね。間に合って良かったよ。
さぁて、僕の好みのタイプはいるかな?」
声の主は、『最強砲台』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)――その、キトリニタスだ。側に、漆黒の騎士鎧を従えている。
ムスティスラーフのキトリニタスは、舐めるような視線をイレギュラーズの男性の――尻に向けて舌なめずりした。ゾゾゾ、と背筋を走る悪寒が、男性のイレギュラーズを襲う。
「ああ。こんな戦闘は早く終わらせて、君達を犯したいよ」
褌を隆起させながら、うっとりとした表情でムスティスラーフが告げる。……どうやら、違う意味でも負けるわけにはいきそうになかった。
- <夏の夢の終わりに>前門の貴道、後門のムスティスラーフLv:30以上完了
- GM名緑城雄山
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2020年08月30日 23時05分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
●先制! イレギュラーズの速攻
「郷田にバイルシュタイン、模倣とはいえ、特異運命座標の中でも有数の者と戦えるこの機会、高揚しないわけがなかろうよ……! 我が愛刀血蛭も貴様等の血を吸いたいと嘶いている!
俺が倒れたら好きにすればいい、先に倒れるのは俺達か貴様等か、決めるとしよう!
黒一閃、黒星一晃、一筋の光と成りて、強き模倣を打ち砕く!」
貴道・キトリニタスとムスティスラーフ・キトリニタスによる挟撃という事態に、真っ先に反応したのは『黒一閃』黒星 一晃(p3p004679)だった。混乱するどころか、戦意旺盛といった様子で駆け寄り、速度を乗せた一閃を放とうとする。
だが、あまりに速すぎた一閃はムスティスラーフ・キトリニタスに命中しなかった。一晃の愛刀血蛭は凶運を招く性質を持っており、しかも一晃は人智を越えた域の反応速度を求める一方で、その凶運を打ち消すどころかさらに高めてしまっていた。一晃の反応が圧倒的に速く、シールド・ニグレドがムスティスラーフ・キトリニタスを庇いに入る前に先手を打てたのは事実だが、その代償たる凶運がここで作用したのだ。
「……ちっ!」
ムスティスラーフ・キトリニタスはイレギュラーズ達を壊滅に追い込むだけの火力を持っており、シールド・ニグレドが動けばムスティスラーフ・キトリニタスにダメージを与えるのは困難となる。それ故に一晃はムスティスラーフ・キトリニタスへの速攻に出たのだが、失敗に終わったことに悔しそうに舌打ちした。
だが、イレギュラーズ達の行動はこれで終わりではない。一晃、そして一晃と心を通じ合わせた『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)と心を通じ合わせたイレギュラーズ達は、一晃が反応すると同時に自然と動き出していた。
(なんだか……強敵の前ですのに、皆様の雰囲気が、おかしいですの!?
もしかしたら、皆様……もうすでに、精神攻撃を、受けてしまっているのかもしれませんの……わたしは、大丈夫そうな、一晃さんに、運命を、託しますの!
攻撃力の高い、一晃さんさえ、お守りできれば、この状況の、元凶を、どうにかしてもらえるに、ちがいありませんの……)
マアナゴのレプトケファルスの海種であるノリアは、長い尻尾を一晃に巻き付けて、一晃が攻撃を受けることに無いように庇いに入る。
(あのビーム的なやつだけは……絵面的に絶対に受けたくはないわね……。
あれでキトリニタスだっていうのだから、ルベドまで進化したらどうなることやら。
ここで倒しておくほかはないわね)
『「Concordia」船長』ルチア・アフラニア(p3p006865)が絵面を問題にしたのも無理はない。大むっち砲は口から吐き出されるのであるから、美しくないと言えば確かに美しくない。
ともかく、ルチアはムスティスラーフ・キトリニタスの大むっち砲で一網打尽にされないように立ち位置を横にずらしつつ、『人類最古の兵器』郷田 貴道(p3p000401)に不可侵の聖躰を降ろして援護した。
「所詮は劣化コピー……ああそうさ、別に正直こだわりなんかねえ。
でも一言物申したい、なんでむっちーと組んだ!!
別にむっちー(モノホン)が嫌いとかそんなんじゃないがなんで組んだ、言え!!!!」
その貴道は、自身のキトリニタスをムスティスラーフ・キトリニタスと組まされたことに、半狂乱に陥りながら叫ぶ。
「HA! 組めと言われたからタッグを組んだまでだし、エネミーを迎え撃つのに強い奴と組むのなんてベーシックなストラテジーだろ?」
「くっ……馬鹿なのか、馬鹿なんだろ!!
ミーも馬鹿だがユーは筋金入りどころか筋金ねじねじ曲がってるぞ!?」
貴道・キトリニタスは、馬鹿というよりは無知であった。組めの言われた時のムスティスラーフ・キトリニタスの反応を気持ち悪くは感じたものの、オリジナルほど相手を知っているわけではない。故に、指示されるままに組んだのだ。
「――HA! ユーこそミーがいるのに何でかかってこないんだ!
せっかくオリジナルと殴り合えると楽しみにしていたのに!
ユーこそ、ミーよりもそんなジジイとやりたいなんて性根がカーブしまくってないか!?」
そう、貴道は自身のキトリニタスに背を向けて、ムスティスラーフ・キトリニタスの方へと駆け出していたのだ。
(くそったれがっ、こんなくだらないステージで絶対に負けられない闘いなんか用意しやがって!!!)
渾身の力を拳に込めて、貴道はムスティスラーフ・キトリニタスにストレートを放つ。ムスティスラーフ・キトリニタスの左肩が瞬く間に弾け飛ぶが、すぐさま再生した。
(危険な戦場は望む所とこの仕事を受けたわけだけど……思っていた危険とちょっと違うね?
いや待った、合っている。相手は貴道とムスティスラーフの力を受け継ぐ危険な相手だ。
この背筋を走る寒気も彼らの能力の高さを感じ取っているんだろう……震えてくるね)
『魔風の主』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は一度は本能的に感じた危険をスルーして、背筋に感じる寒気の原因を貴道・キトリニタスとムスティスラーフ・キトリニタスの能力にあると判断した。
同時にウィリアムは空間を捻じ曲げ、意識するのが困難な方向から敵を攻撃する魔法剣をムスティスラーフ・キトリニタスに放つ。本来、ムスティスラーフ・キトリニタスの技量では回避不可能であるはずの魔法剣だったが、幸運がムスティスラーフ・キトリニタスに味方してしまい躱された。
(僕の魔法剣が躱されるなんて……やっぱり、油断ならないね)
ムスティスラーフ・キトリニタスの回避はあくまでまぐれだったのだが、初撃を避けられてしまったウィリアムは緊張からゴクリ、と唾を飲み込んだ。
「すごーい! また僕のコピーが出てきた! 郷田君のコピーよく無事だったね」
嬉しそうに叫んだのは、『ムスティおじーちゃん』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)だった。その言葉を聞いて、貴道・キトリニタスは「は?」と言う表情をする。オリジナルのムスティスラーフが依頼を失敗させるような行動はしないのと同様、ムスティスラーフ・キトリニタスも課せられた任務には忠実だった。
「君達を倒さなきゃいけないからね。彼は、その後でじっくり弄ぶとするよ」
続くムスティスラーフ・キトリニタスの言葉に、貴道・キトリニタスはオリジナルの貴道が言っていた言葉の意味をようやく理解する。
そして、目と目が逢う――逢ってしまった、二人。瞬間、二人の脳内で時が止まる。
「出会ったのが戦場でなければ」
「きっと仲良くなれたのに」
薔薇の花が咲き乱れる中、全裸で抱き合い悲恋を嘆き合う二人。だが、戦わねばならない運命はいつまでも二人をそのままにはしておかない。
脳内から戻ってきたオリジナルのムスティスラーフが、口を開き緑色の光の奔流を放つ! 一方のムスティスラーフ・キトリニタスも現実に戻り回避を試みるが、果たせず胴体に直撃を受ける。
「……やるねぇ、流石は僕」
大穴の開いた胴体はすぐに再生したものの、その息は荒い。ムスティスラーフ・キトリニタスは生命力を大幅に削り取られたようだった。
(非力なわたしにとって、郷田さんのような強くて拳一つで戦う人は憧れです。
その郷田さんがピンチ! 尊厳とか含めて色々と!
ムスティスラーフさんはどうせ殺しても死なない人だからいいような気がしますが……。
――それでも、皆を助けるのがわたしの務めです!)
『静謐の勇医』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は、シールド・ニグレドへと突進するとしゃがみこみ、渾身のアッパーを放つ。シールド・ニグレドの身体は重いが、ココロの一撃はシールド・ニグレドを後方へ十メートルほど吹き飛ばした。
(ああまたか……もう笑うしかないですね。
散々喰らったゲロビを得体の知れない魔種から受けるよりもう嫌になるレベルで受けたあの髭の見た目から受けるとか嫌すぎますよ……)
以前にもムスティスラーフとのコピーと戦った経験のある『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)は、再度のムスティスラーフのコピーとの遭遇に力なく笑う。同時に、利香はムスティスラーフ・キトリニタスから逃げるように貴道・キトリニタスの方へと駆けていき、貴道・キトリニタスの移動を封じる壁となった。
(依頼を受けて現場へ向かうイレギュラーズ達。疲れからか、不幸にも黄色のムスティスラーフに激突してしまう。
女性達をかばいすべての責任を負った郷田、黒星、ウィリアムに対し、ムスティスラーフ・キトリニタスが言い渡した示談の条件とは……)
『共にあれ』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)の脳裏には、そんな文言がよぎった。実際には、ムスティスラーフ・キトリニタスの方が後ろから激突してきた側ではあるのだが、それはさておき。
デイジーは、貴道・キトリニタスの側にいる吹雪の精のうちの一体に膨大な熱量を伴う魔力の光線を放つ。光線は見事に命中し、その身体を構成する様に集まっている微細な氷の粒の二割ほどを減らした。
「巡る命をこんな形というか、別の意味でヤバイ形で使うなんて、ホントどうにかしてるっすよ!」
この状況にたまらず叫んだのは、『1680万色に輝く』ジル・チタニイット(p3p000943)だ。ジルは真っ当なツッコミとともに、ムスティスラーフ・キトリニタスに対して邪悪を灼く神聖なる光を浴びせる。
ジルの真っ当さは天運を呼び寄せ、逆にオリジナルの大むっち砲を受けたばかりのムスティスラーフ・キトリニタスには不運が訪れた。ジルの放った光は再生したばかりのムスティスラーフ・キトリニタスの胴体を溶かしていく。溶けた部位はすぐさま回復したが、ムスティスラーフ・キトリニタスはさらに苦しそうな様子を見せた。
ムスティスラーフ・キトリニタスに対して速攻に出たイレギュラーズ達ではあったが、シールド・ニグレドに庇われる前に倒しきることは出来なかった。結果論ではあるが、後先考えずに十人全てがムスティスラーフ・キトリニタスへの攻撃に参加し、その全てが決まれば届いていた様に思われた。
ともあれ、キトリニタス達の反撃が始まる。最初に動いたのは、吹雪の精だ。一体が貴道、ココロに、一体がノリア、ウィリアム、ジル、ムスティスラーフに猛烈な吹雪を浴びせかける。結果、貴道、ココロ、ノリアがまともに吹雪を受けて大きくよろけた。ムスティスラーフもダメージはほぼ止めたものの体勢を崩してしまう。ジルとウィリアムは、軽傷を受けて動きが鈍る程度で済んだ。
そして、ムスティスラーフ・キトリニタスが動く……が、受けているダメージが大きすぎたせいか大むっち砲は不発に終わる。
「邪魔だ、このファッキンビッチ!」
貴道・キトリニタスは利香を罵りつつ拳圧の奔流を放とうとするが、戦況への焦り故かこれも不発。
そしてシールド・ニグレドは元の位置まで戻り、ムスティスラーフ・キトリニタスを庇いに入った。
●撃破! ムスティスラーフ・キトリニタス
大むっち砲が不発に終わった時点で、ムスティスラーフ・キトリニタスの命運は決まっていた。護衛のシールド・ニグレドをココロのアッパーで再度後方に飛ばされ、貴道の拳こそ奇跡的に回避したものの、続くウィリアムの魔法剣は避けきれず、最後は一晃の放った黒い大顎に噛み砕かれて逝った。
「その傷、すぐに癒やすわ」
「サンキュー、助かるぜ」
ルチアは、調和の力によって貴道が吹雪の精から受けた傷を癒やす。ダメージが完全に癒えた貴道は、ルチアに笑顔を向けて礼を述べた。
「ぜーんぶ、燃えちゃいなさい!」
「ぐあっ! この腐れ⚫⚫⚫⚫め!」
自身でも御しきれないほどに激しい炎の輪を、利香は顕現させる。炎の輪は貴道・キトリニタスに命中すると、その身を抉りつつ炎を引火させた。血を流し炎に燃やされる貴道・キトリニタスは、先程よりも下品な語彙でもって利香を罵った。
ノリアは、先程と変わらず一晃を攻撃から守る構えを保ち続けている。
既に手負いとなっている吹雪の精は、デイジーの放った月を象る小さな魔力の塊に意識を奪われたところにムスティスラーフの緑の光の奔流を受ける。さらにジルの邪悪を裁く神聖なる光まで浴びた吹雪の精を構成する氷の粒は大幅に減らされてスカスカになっており、明らかに虫の息であることを示していた。
吹雪の精は先程と同様、一体が貴道とココロに、もう一体がノリア、ウィリアム、ジル、ムスティスラーフに吹雪を放つが、今度は大したダメージも与えられず、よろけさせて隙を作ることも出来ずじまいで終わる。
貴道・キトリニタスは再度拳圧の奔流を放とうとするが、今度も技の発動に失敗する。シールド・ニグレドは護衛対象がいなくなったため攻勢に回るが、これも何らの結果も出せなかった。
「これで、終わりなのじゃ!」
デイジーの魔力の光線が、吹雪の精に命中する。これまでに生命力のほとんどを削り取られていた吹雪の精は倒れ、残骸のようにわずかに残った氷の粒がパラパラと床に落ちていった。
「HAHAHA! どうした劣化コピー。調子が悪そうじゃないか!」
「くそっ、黙れよ! ……がふっ!」
貴道は自身のキトリニタスへと迫ると、その腹にボディーブローを決める。キトリニタスは鳩尾に拳を決められ、目を剥いてよろけた。
「よくも腐れ⚫⚫⚫⚫なんて言ってくれたわね! 確かに私はサキュバスだけど、そこまで言われる筋合いはないわよ!」
夢魔の本性を現した利香は『魔剣グラム』に桃色の雷を纏わせ、雷迅の如き剣筋で貴道・キトリニタスに幾度も斬りつけた。オリジナルのボディで意識が飛びかけている貴道・キトリニタスは利香の斬撃に対応出来ず、幾重にも傷を刻まれていった。ダメージの一部は利香にも返されたものの、圧倒的な生命力を持つ利香にはその程度はどうと言うことはない。
「まだ大丈夫だと思うけど、一応回復させておくわ」
ルチアは今度は、ノリア、ウィリアム、ジル、ムスティスラーフの近くまで近寄り、天使の声を思わせる聖なる救いの音色を奏でる。四人のダメージは完全にとは行かないものの、半ば以上までは癒えた。
(……何だか、皆さんの雰囲気が落ち着いてきたようですの)
ノリアは変わらず、一晃を護り続けている。その間に――特に、ムスティスラーフ・キトリニタスが倒れた辺りから――精神攻撃でも受けたかのようなイレギュラーズ達の雰囲気は落ち着いてきていた。それはそれとして、まだノリアは一晃の防護から外れたりはしない。強力なアタッカーである一晃を倒されるわけにはいかず、その危険は少なくなったとは言えまだ残ってはいるのだ。
(これでムスティスラーフの大むっち砲か一晃の黒顎に繋げてもらえば、大分楽になるね)
そう判断したウィリアムは、残る吹雪の精を変幻自在に出現する魔法剣で攻撃する。魔法剣は吹雪の精の、微細な氷の粒の身体を次々と削り取っていった。
「僕のコピーと遊べなかったのは残念だよね。せめて、この戦闘を早く終わらせて貴道君のコピーと遊ぼう」
「「おい、やめろ!」」
楽しそうに言い放ちながら緑の光をチャージするムスティスラーフに、オリジナルとキトリニタス、二人の貴道が声をハモらせた。その間にムスティスラーフの放った光の奔流は、吹雪の精の半ば以上を吹き飛ばしていた。
「ちっ! 何たること!」
ムスティスラーフの攻撃に続こうとした一晃だったが、再び凶運に捕われてしまい、速度を乗せた一閃を放てずに終わる。技量だけで言えば間違いなく攻撃を命中させられていただけに、一晃は舌打ちして己の凶運を呪った。
「行きますよ!」
「合わせるっす!」
ココロとジルは、左右に分かれながらタイミングを合わせて光を放った。二方向から放たれた聖なる光は貴道・キトリニタスと吹雪の精を灼いていく。吹雪の精の氷の粒はさらにその数を減らしたが、惜しくも倒れるまでには至らなった。
吹雪の精は今度はノリア、貴道、利香に向けて吹雪を放ったが、貴道には回避され、ノリアと利香には大したダメージを与えられない。
「HA! やっとお前と殴り合えるな、オリジナル!」
「そう言う割には、スローリーなパンチだ。フライキャンストップって奴だぜ。劣化コピーにしてもソーバッドすぎるだろ」
貴道・キトリニタスは貴道に殴りかかろうとするが、ボディへのダメージが尾を引いているのかフットワークがガタガタであり、威力のあるパンチを放てない。そして、そんなパンチがオリジナルの貴道に当たるはずはなかった。
●勝利! そして安堵
――残る吹雪の精も早々に片付けられると、もう貴道・キトリニタスに勝ち目は残っていなかった。貴道・キトリニタスは確かに劣化コピーであるとは言え貴道に準じた強さを持っているのだが、オリジナルを相手にしている上に数でも圧倒的に不利なのだ。奮戦こそしたが、逆に言えば奮戦したに過ぎなかった。
デイジーの放つ魔光が、オリジナルの貴道の拳が、一晃の形成する黒き顎が、ウィリアムの魔法剣が、ムスティスラーフの乳首と股間を執拗に狙う雷撃が、ココロとジルによる聖なる光が、立て続けに貴道・キトリニタスに叩き込まれていく。
貴道・キトリニタスはオリジナルの貴道や一晃を狙うが、貴道を護りに入った利香や変わらず一晃を護り続けているノリアに阻まれる。そして利香やノリアに多少のダメージを負わせたところで、ルチアに回復されて無かったも同然にされていった。
生命力が膨大であったため時間こそかかったものの、ついには貴道・キトリニタスは黄色く粘つく泥となって崩れ落ちた。そして、貴道・キトリニタス以上に攻撃力に劣るシールド・ニグレドもムスティスラーフ・キトリニタスや貴道・キトリニタスの後を追うように倒れた。
「……どうなることかと思ったけど、無事に倒せて良かったわね」
「ええ、皆が尊厳も含めて無事で良かったのです」
「うむうむ、ヤられる前に殺れてよかったのじゃ!」
イレギュラーズ達の勝利で戦闘が終わったところで、ルチアがホッと胸を撫で下ろし、ココロとデイジーが同意する。デイジーのアクセントがややおかしいのは、気にしてはならないところであろう。
「……妖精さんは、助けられませんでしたけど……」
「黄化した妖精は助からないと言いますから、仕方ありません」
「そうっすよ。それにしても、こんな形で妖精の命を利用されるのは、これが最後であって欲しいっすね」
一方、ノリアはキトリニタスのフェアリーシードにされた妖精を助けられなかったことを残念に思い、それを利香とジルが慰める。
「背筋を走る寒気と身体の震えも消えた。やっぱり二人のコピーの能力の高さを感じていたからだね」
(いや、それはヤられずに済んだからじゃねえか? ともあれ、ミーもコピーも毒牙にかからなくてよかった……)
ウィリアムは最初に本能が感じた危険をスルーし続けたまま、二人のキトリニタスが倒れたのが寒気と震えの収まった原因だと判断する。貴道は内心でウィリアムの分析を否定しつつ、恐れていた事態を避けられたことに心底安堵していた。
(貴様らには不本意だったろうが――少なくとも、こうしなければ勝てなかっただろうからな)
ただの黄色い泥となったキトリニタスを見やると、一晃は口にはしないながらも賛辞を送り、頭を垂れた。
「うーん、さすがにもう僕のコピーは打ち止めかなぁ。ルベドとか、出てこないよね?」
ムスティスラーフの残念そうなつぶやきに、その場のほぼ全員が思わず(出てこられてたまるか!)と心の中で叫んだのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
シナリオへのご参加、どうもありがとうございました。このシチュエーションとタイトルは<月蝕アグノシア>の時から温めていましたので、無事に披露出来てほくほくしております。
貴道さんのキトリニタス+取り巻きと、ムスティスラーフさんのキトリニタス+取り巻きによる挟撃と言う地獄めいた状況からのスタートでしたが、いざ戦闘してみればイレギュラーズ側の損害は軽微と言う結果に終わりました。
……おかしいな。重傷とか戦闘不能とかバリバリ出すつもりだったのに、どうしてこうなったorz
MVPは、ムスティスラーフ・キトリニタスへの速攻のキーマンであった一晃さんにお送りします。イレギュラーズ達の行動順を一気に引き上げてなければ、イレギュラーズ達の攻撃の多くはシールド・ニグレドに阻まれて長期戦となり、もっと被害は甚大になっていたことでしょう。
【おまけ:連続ファンブルの判定風景】
緑城:(よし、十分ではないけど何人かには【恍惚】がついた。ここで大むっち砲を撃てば何人かはパンドラ消費まで追い込める!)
ダイス:「ファンブルやで」
緑城:(アイエエ!? ファンブル、ファンブルナンデ!?
……まぁ、3割近くはファンブルの確率あるししょうがないか。こうなったら、貴道・キトリニタスよ、頼んだ!
【恍惚】入ってるんだ。イレギュラーズ達に痛打を与えてくれ!)
ダイス:(1個が机の下に落下)
緑城:(あー、うっかりダイス落としちゃった。出目はクリティカルだったのにもったいない。振り直しかぁ。
まぁ、こっちはファンブル値高くないからさすがにファンブルはしないだろ)
ダイス:「01」
緑城:(どうして……どうして……orz)
GMコメント
どうもこんにちは、緑城雄山です。
今回は、全体依頼<夏の夢の終わりに>のうちの1本をお送りします。
レベル制限や下記の注意事項を踏まえた上で、参加をご検討頂けますようよろしくお願いします。
●Danger!
当シナリオでは男性PCが性的に弄ばれる可能性があります。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●成功条件
貴道・キトリニタスとムスティスラーフ・キトリニタスの撃破
●情報精度
OPがキトリニタス2体に挟撃されるという不測の事態となっていますが、
シナリオ自体の情報精度はAです。
●アヴァル=ケイン城内・回廊
幅5メートル✕100メートルの廊下です。廊下の端にはそれぞれ扉があります。
横に並べるのは3人が限界で、それ以上並ぼうとすると命中や回避にペナルティーが入ります。
位置関係は、大体以下のようになっています。
扉←30m→貴道・キトリニタス←20m→イレギュラーズ←20m→ムスティスラーフ・キトリニタス←30m→扉。
ブリザード・スピリットは貴道・キトリニタスから至近の距離に、シールド・アルベドはムスティスラーフ・キトリニタスから至近の距離にいます。
イレギュラーズの初期配置は一丸となって固まっているものとします。
●貴道・キトリニタス ✕1
郷田 貴道さんの体組織を元に作られたキトリニタスです。
フェアリーシードの位置自体はアルベドと同じですが、フェアリーシードを狙う場合はイレギュラーズの命中にペナルティーが入り、かつ貴道・キトリニタスの回避と防御技術にボーナスが入ります。
・攻撃手段など
拳 物至単
瞬・極み 付自単 【自付】【副】【瞬付】
実戦ボクシング改 物至単 【弱点】【追撃25】【致命】【邪道20】【反動】
名乗り口上 物特レ 【無】【怒り】【自分を中心にレンジ2以内の敵にのみ影響】
大蛇槍 物超貫 【万能】【ブレイク】【呪縛】【麻痺】【鬼道15】
精神無効
覇道の精神
崩し無効
反
●ブリザード・スピリット ✕2
冬の精の一種です。吹雪を吹きかけて攻撃してきます。
命中が特に高く、その他の能力もバランス良く高くなっています。
身体が微少な氷の粒で構成されているため、物理攻撃及び物理攻撃に起因するBSは無効となります。
・攻撃手段など
ブリザード・近(通常攻撃) 神近域
【識別】【災厄】【恍惚】【凍結】【氷結】【氷漬】【足止】
ブリザード・遠(通常攻撃) 神超域
【識別】【災厄】【恍惚】【凍結】【氷結】【氷漬】【足止】
精神無効
【凍結】無効
【怒り】無効
物理無効
BS無効(物理攻撃に起因するもののみ)
●ムスティスラーフ・キトリニタス ✕1
ムスティスラーフさんの体組織から生成されたキトリニタスです。アルベドと違ってオリジナルに近く、性的な対象は男性のみです。
命中、攻撃力が極めて高い水準にあります。
特殊抵抗は低いのですが、【封印】に関しては魔種の手によって高い耐性を得ています。【怒り】については、アルベドとは違ってまた特殊です。
極めて脆く(防御技術-300近く)、ダメージが入れば確定で100%の追加ダメージが加算されます。
HPに関しては破壊された部位が瞬時に再生すると言う演出で表現されます(数値としてのHPは回復しません)。
基本的には、より多くのイレギュラーズを巻き込むように大むっち砲を撃ってきます。
アルベドと違って戦闘不能者が出ても戦闘を優先しますが、イレギュラーズ撤退時に男性PCが戦場に戦闘不能の状態で取り残される事態が発生すれば、救援が来るまで嬉々として犯し続けます(撤退の際に1人のイレギュラーズが連れて逃げられる戦闘不能者は1人まで、運搬性能があっても2人までとします)。
フェアリーシードの位置自体はアルベドと同じですが、フェアリーシードを狙う場合はイレギュラーズの命中にペナルティーが入り、かつムスティスラーフ・キトリニタスの回避と防御技術にボーナスが入ります。
・攻撃手段など
はぐはぐ 神至ラ 【必殺】【不殺】【反動】【AP吸収】
抱きしめられた相手は精神に壊滅的なダメージを受けるか尊死します。
チェインライトニング 神中範 【感電】【識別】
大むっち砲 神超貫 【溜1】【万能】【ブレイク】【致命】【防無】【反動】
極太の光線です。まともに命中すれば、タンク寄りの高HPでない限り
一撃で戦闘不能に追い込まれるでしょう。
精神無効
毒無効
高速詠唱1
【封印】耐性(高)
・【怒り】を受けた場合
まず、女性、性別不明のPCから受けた【怒り】は無効となります。
男性PCから【怒り】を受けた場合、接近はせずに戦況によって攻撃手段を使い分けて【怒り】を与えたPCを含めたより多くのPCを巻き込めるように攻撃します。
●シールド・ニグレド ✕1
漆黒の騎士鎧の形をしたニグレドです。回避は低いのですが、防御技術と生命力が極めて高くなっています。
基本的にはムスティスラーフ・キトリニタスを庇うことに終始しますが、EXA判定に成功した場合、攻撃を行います。
・攻撃手段など
剣 物至単
衝撃波 物遠単
精神無効
【怒り】無効
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
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