PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Q:これはカレーですか?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●A:はい、カレーです。
 カレーとは偉大なる食べ物である。
 複数のスパイス。複数の食材。合わせて作る一つの料理――
 そこには無限の旨さが詰まっている。

「oh……カレーは神秘の食べ物デス。カレーには神の寵愛がつまってマース」

 そう言うはこの山奥でもう十年以上はカレー作りに勤しんでいる小野田である。
 小野田は精霊種だ。だが、ある時バグ召喚より訪れた神人と親しくなり、その神人の故郷で作られていたというカレーを食べた時――己の世界に激震が走ったそうだ。
 なんだこの神秘的な食べ物は。こんなものが世界に存在していたというのか。
 住んでいた高天京を飛び出し山奥でカレー作りの技術に研鑽する日々。
 薬草を詰んだ。東の果ての身にあるという岩石から取れる塩を求めに行った。南のどこかにあるという神秘なる水を求めにも行った。西にも北にも駆け抜けて、食材調味料のあらゆるを探し求めた。
 全てはカレーの為に。
 究極のカレーを――作る為に!
「しかし困った事になりましタ……やはりと言いますか何か、知識の限界があるのデース……カムイグラはそりゃあもう広いですが、所詮島国と言えば島国デース……」
「――それで海の向こうから来た俺達に手伝いを、と?」
 小野田は頷く――彼から依頼を受け此処までやってきた貴方達へと。
 ……これは依頼だ。『絶望の青』の向こう側の食の力を貸してほしい、と。
 今の今までカムイグラの地で己が技術と知識を鍛え続けてきた訳だが――それでは発展性に限界がある。バグ召喚などにより訪れた者達の話から『外』の事は知っていたのだ。そしてついに訪れた、外の者達……

 その力を借りぬ理由があろうか? いや無いッ!!

「皆さんノ! カレーの知識ヲ! 技術ヲ! 分けて欲しいのデース!! お礼はしマース!!」
「なるほど……まぁそれぐらいなら別にお安い御用だが――んっ?」
 まぁイレギュラーズ達にとって難しい依頼と言う訳では無い。なにぞ、巨大な魔物と戦うという訳では無いのだ……故郷なり住んでいる地の食の技術を彼に伝えるとしてみよう。つまりカレーを作るだけの依頼なのだから――と。
 思ったその時。外から聞こえてくるのは何やら怪しげな気配。
 ――魔物だ。いつのまにやら取り囲まれている。
 その口端からは涎が垂れていて、実に獰猛そうな……
「Oh!! マタ来たのデースカ!!」
 しかしその姿を確認するや否や小野田が取り出したのは――カレー鍋。
 奴らの先頭においてサッと退避。されば鍋に魔物が殺到し……

 爆発した。

「はっ!?!?!?!?」
 イレギュラーズの一人が思わず驚愕する。その爆発たるや、軽く魔物の身を吹っ飛ばす程で。
 慌てた様子の魔物達が退いていく――小野田よ、これは――
「Oh……カレーの神秘デース」
「絶対違うだろ!! 何を仕込んだんだよカレーに!!」
「人聞きが悪いデース! 強く念じたカレーは妖怪の一匹や二匹吹っ飛ばすのも簡単デース!」
 嘘つけオラァ! ともあれ小野田の話だと、奴らはカレーを求めて度々この家を襲撃しに来る連中らしい。その度にカレーを出せば満足して帰っていくので実質無害だとかなんだとか。ほんとぉ?
「あっ、そうデース! 連中、いい加減に私の修行の邪魔なのでアレデース。一網打尽にしたいデース。美味しいカレーを提供して満腹になって動けない間にボコボコにしてほしいデース。あ。わざとカレーに何か仕込んで吹っ飛ばしてもいいデース」
「いや……おま……」
 なんか邪悪な事言いだしたんですけどこの精霊種。
 まぁ独自のカレーを作り小野田に見せるという事。奴らを撃退するという事。
 それがどうもこの依頼の本質らしい――

 さて。まぁ、とりあえずどんなカレーを作ってみたものか……

GMコメント

 On。カレーって美味しいデース。
 と言う訳で依頼デース。

■依頼達成条件
 カレーを作る & 魔物達をボコボコにする。

 カレー自体はどんなものでも構いません。例えば深緑の貴重な食材を持ち込んでみた、とか。鉄帝の北の方の香辛料を持ってきてみた、とか。邪悪を清める天義の聖水を使ってみた、とか……基本プレイングで持ち込みOKな事にします。

 小野田はとにかく外のカレーの技術に興味津々な様子。
 彼を満足させつつ魔物を撃退しましょう――うん。

■フィールド
 カムイグラの山奥。小野田の住まう小さな小屋の前。
 時刻は昼。穏やかな雰囲気の場所です。
 近くを散策すれば簡単な山菜とかぐらいなら見つかるかもしれません。

■小野田
 カムイグラの山奥に住まう精霊種の男性。
 かつてバグ召喚で訪れた旅人に教えられた『カレー』に感銘を受け、それ以来ずっとカレー作りに勤しんでいるのだとか……しかしカムイグラの外の知識は限られていた為に、絶望の青を踏破した皆さんに(+外の知識に)興味津々の様子。
 彼に本物のカレーって奴をみせてやりましょう!
 もしくは彼を超える神秘的(意味深)なカレーでもOKです!!

■近隣の魔物達
 なんか獰猛な狼男風の連中です。それなりの数が押し寄せてきます。
 しかしどういう訳かカレーが好物な様で、カレーを目にすると皆さんよりもそちらの食欲の方が優先されるでしょう……もしとても美味しい物を食べる事が出来れば満足して動きが非常に鈍くなるでしょうし、不味い物とか神秘的な物(意味深)だったとしたら卒倒して戦闘不能に勝手になります。

 ぶっちゃけ三行ぐらいでボコボコに出来るので戦闘プレイングとかは考えなくていいです。至高のカレーを作る事に専念しましょうデース!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCurryです。
 想定外の事態は絶対に起こりませんデース。カレーには予想外の事が起こるかもしれませんデース。

  • Q:これはカレーですか?完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年08月28日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
クロエ・ブランシェット(p3p008486)
奉唱のウィスプ
天月・神楽耶(p3p008735)
竹頭木屑
葛野 つる(p3p008837)
不枯葛の巫女
シェプ(p3p008891)
子供じゃないヨ!

リプレイ


「ふむ……『カレー』とはなんでしょうか。私が住んでいた村は山奥の竹林でして……些か、そういった方面には疎いものです。ご教示給われれば幸いなのですが」
「カレー! カレーってね! ボクもね、あんまりね、知らないんだけどネ!
 とっても美味しいって聞いたんダ!」
 ほう、そうなのですかと『竹頭木屑』天月・神楽耶(p3p008735)はこちらを視ながら跳ねる『たゆたう羊の子』シェプ(p3p008891)と言の葉を交わす。互いに『カレー』なるモノは未知なる領域……先程小野田が何やら魔物に対して鍋を出していたが、あの中に入っていたのがカレーだというのか。
 確かに小野田の家からはなんとなし、善き香りがしてくる。
 これは――数々の香辛料か? 見ればあちこちに様々な種があって。
「……今は昔、調味料というものは貴重。
 塩はともあれ味噌や砂糖、異国のモノらとあらば鎌倉殿か大御家人。
 はたまたや殿上人のモノのみぞとなる時世もあった折――」
 口元に手を当てながらまじまじと。
 『不枯葛の巫女』葛野 つる(p3p008837)の口から語られるは――かつての世界。
 文永の折より令和の折まで。神通力の影響により生きながらえた瞳に映った数々……ソレには食の世界もまたあった。京の殿上人でも無ければ充足たる食を得られぬ時代もあったものだが、明治に至れば別界の如くにも。
 ああ――カレー。カレーか。それもまた懐かしい。
 贔屓たる洋食屋のカレーには足を幾度も運んだものだ。瞼の裏に映るは五代に渡る人の世の移ろい。
「クハッ! 至高のカレーを作ればよいのであろう! よしよし、ならば吾に任せるがよい!」
「カレーと言うと、あれで御座るな。希望ヶ浜なる地に訪れた時に食した事があるで御座るよ。白米と……えー……その上に掛けた汁が合わさって絶品で御座ったなぁ……傍に盛り付けてあった漬物もまた美味で……」
「ええ。噂には聞いておりますし、作り方を勉強した事もあります――
 ええ。余裕ですとも! お任せください、気合を入れて作ります!! これが初めてですが!」
 ともあれと。『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)は高笑いしながら材料を探し『咲々宮一刀流』咲々宮 幻介(p3p001387)は過去の食事を想起しながら記憶を探る。その横では『星域の観測者』小金井・正純(p3p008000)が腕まくりをしながら――えっ、それだけ自信満々でありながら初挑戦なんですか!?
 余裕余裕と意気揚々。しかし八人中四人はこれがカレー初か知識がないとは……
「なんだかとっても嫌な予感がするけれど……俺は! 普通のカレーを作ります!」
「私も普通……というよりも、好きなシーフードカレーを。色々買ってきてみてたんですよ」
 一寸現実から目を背け『浮草』秋宮・史之(p3p002233)は固く決意し『普通』を目指せば『波枕の鳥』クロエ・ブランシェット(p3p008486)もまた魚介を材料とするシーフードのカレーを目標に。
 それぞれが思い描く『カレー』を作らんとする。
 知っている者。知らぬ者。知識はある者。駄目そうなフラグを立てる正純。チョコを手に持つシェプ君。
 さぁ――如何なカレーが出来上がる事やら。


 後ろで未知なるカレーに目を輝かせている小野田。
 彼の期待に応えねばなるまい――そう。
「なぁに拙者達に任せておくといい。
 調理は不得手なれど、味を再現するくらいはお手の物で御座るよ……
 拙者の舌の記憶を信じるで御座る」
 駄目そうなフラグを立てるその2の幻介に任せておくがいい……! 彼が手にしたのは人参に馬鈴薯……かつて食したカレーの中に入っていた具材を思い起こして。
「それから……玉ねぎと何かの肉が入ってたで御座るな。ふっ、となればまずは――抜刀ッ!」
 それらを宙に放り投げて――神速の剣閃で薙いだ。
 瞬きの間に食材が別たれる。その皮が、その身が手頃なサイズへと。
 至りて落ちる鍋の中へ。落下の音が連続し、小気味よい音を奏でて。
「オーゥ! お見事デース! まったく見えませんでーしタ!!」
「……お粗末に御座る。他にも切るものがあれば、遠慮無く拙者にお任せ下され」
 拍手の音は小野田か。刀を仕舞う短い音が響けば、成功の証でもあろう。
 フラグを立てたかと思えばなんともはや凄まじい技量を見せてくれたものである……これなら調理にも期待でき――待て。待つんだ。その手に持っているモノはなんだ。なぜ辛味オイルを手に持っている!
「後はあの辛味を再現するためにコレで御座るな――ふむどれぐらいで御座ろうか。目分量でよいで御座ろうか?」
 止めるんだ! 素人の目分量程危険なモノは無い!! あ、投入され! あ、アッ――!!
「うむ! 中々豪快極まる手法……! これは吾も負けてはおれぬ!!」
 遠慮なしにぶち込み続ける幻介の姿を見てむしろ百合子は対抗心が湧くものだ。やめて!
「カレーと言えばスパイス! そして美少女と言えば雅……雅と言えば香合わせ!」
 香合わせ。それは持ち込んだ複数の薫物を焚き比べて判じあう、正に雅の極みである。己が嗅覚を競い合うと言ってもいいが、持ち込む香りの選別や組み合わせもまた調香の技術の一端であり――つまり美少女にとっての習得作法の一つであれば。
「それはカレーのスパイスの道にも通ずる……! スパイスの香りを極めた先にこそ、美味の真髄があるのであれば――美少女こそ! カレーを作るのに適している者と言えよう!」
 彼女は確信している。美少女理論の答えは出ている。美少女は、カレーを作れる!
 その為に必要なスパイス――否! ここにあるモノだけでは足りない!
 大蒜とか生姜……そうだ。もっと香りの強いモノが必要なのであれば!
「オゥ! どこへ行くのデースか!?」
 小野田の横を高速ですり抜け、百合子が飛び出すは大自然の胸元。
「小野田殿待たれよ――素敵な材料を仕入れてくるが故にな!」
 美少女の嗅覚を持って山の自然を掻き分ける。その自然知識にも似た感覚は彼女を香辛料と成り得る素材へと導いて……あっ。こっちを覗いてる魔物がいたので蹴っ飛ばしてた。流石美少女。
「うんショ、うんショ。これでいいのかナ? これでいいよネ!」
 そして家の中では木箱に乗って背丈分を確保したシェプが、お玉を持って鍋をかき混ぜている真っ最中。カレーの事はよく知らないが、普段からお菓子はよく作っている故か、その混ぜ方は優しく丁寧だ。
 先程、幻介が切り捌き、人知を凌駕する量の辛味香辛料を叩き込んだ鍋。それを煮込むのを手伝っている――煙が漂って来ればおめめがイテテとなるが、カレーってこんなものなのかなぁと思考しながら。
「アッ! そうダ! ボク、甘い物好きだからコレ! コレも入れてみるネ!
 チョコだよ――ボクのチョコ特別。りらっくすしてうたた寝したくなるヨ!」
 満面の笑顔で取り出すはチョコ。カムイグラでは恐らく文化的に見かけないモノだろう。
 これを入れればきっとコクが深くなる! 一欠片二欠片入れてまた煮込み。
 ああ甘いカレーになればいいなぁと――辛さで地獄味溢れるカレー鍋を前に、想いに耽って。
「皆さんそれぞれカレーに励んでいらっしゃいますね……私もそろそろ」
 本格的に煮込む段階かと、クロエは捌いた数々の魚介類を前に準備中。
 海洋の新鮮な魚介類――イカ、エビ、アサリなどを中心に。香辛料に加えバター、そして練達で大人気のカレールーを持ち込んだ。辛さは中辛がいいだろう……人によって辛さの好みが異なるから。
 玉ねぎの皮を裁き包丁でみじん切り。イカは軟骨とワタを取って輪切りに。
 エビの殻を剥いたり、アサリの砂抜きもして……ああシーフード系は完成すれば美味だが、やる事が多いものだ。野菜ばかりであればもう少し楽なのであろうが……仕方ない。
「ほうほうお魚系ですか。それでは私も一緒に調理を行っても宜しいですか? 持ってきたモノがあるのですが」
「本当ですか? それは助かります……けれど、何のお魚なんですか?」
「はい、ナマコとヒトデです」
 と、その様子を覗いてきた正純が手に持っていたのは――マジでナマコとヒトデであった。しかもまだ生きてる。新鮮。正純の手から逃れようと抵抗するナマコ達を尻目に。
「海の生き物ですし、これだけで塩分もカルシウムも取れる優れものです。
 ええ――凄いですね海の生き物。これぞ大海の神秘と申しますか」
「…………なるほど。物は試しと言いますしね、やってみようか」
 一拍か二拍かなんかクロエに妙な間があった気がするが気のせいだろう!
 それに案外美味しい可能性もある。抵抗するヒトデ達を引きはがして捌く準備を正純は進め、分からぬところはクロエが隣で適時アドバイスを。煮込む前に魚介類を炒めるのが先だ。下味をつける為に香辛料を振り、混ざれば火を止め。
 ここで鍋にバターを落とす。
 肝となるのは玉ねぎの色。ほどよい飴色になる頃が最適であり。
「――ここでお水を加えてひと煮立ちさせます」
 一度火を止めカレールー投入。
 コトコト煮込みはじめ、十分ほど経てば――魚介類の出番だ。
 魚で重要なのは火を通し過ぎない事。バターを使いコクを出して。
「なるほど……かれーとはこのように作るものなのですね……
 しかしこれだとインパクトが足りませんね。かれーは辛い食べ物だと聞きました」
 間違っていないが間違っている知識を正純は脳内で駆け巡らせ。
 さればその手に握られていたのは――買い付けておいた大量の山椒。
 ……待て。その袋一杯の山椒をどうするつもりだ! カレーは無事なんだろうな!
「ふっふっふ。今年はあまり鰻を食べられませんでしたし、余ってたのでちょうど良かった。これぞ消費のしどころでしょう……と言う訳で投入」
 重たい物が落ちた音がするレベルの山椒が正純の鍋に投入された。
 全部。全部だ! うわああカレーがああああ!!
 だが彼女の暴走は終わらない。星の社謹製のスターパウダーをこれまた全部ぶちこんで……なんだかもう嫌な気配がしてきたぞ! 止めるんだ正純、混ざる手を止めるんだ! あ、あっ――!!
「なんだか地獄味のあるカレーが量産されている気がするけれど……
 いや。とにかく目の前だ。俺は俺のカレーに集中するんだ……!!」
「ふむ。カレーとは奥ゆかしきモノなのですね。とても独特な香りがここまで香しく」
 史之は眼を逸らし、神楽耶は己が嗅覚に届いた危険信号を独特と評し。
 しかし彼らも作る番である……! カレーのお伴と言えばナンであると史之は思い。
「メインはキーマカレーとバターカレー。これにタンドリーチキンとサラダを付けるよ。サラダは周辺に結構使えそうな薬草が多いみたいだったからね。収集して水で流して整えれば十分……え、何? 面白味? やつは死んだよ」
 俺が殺したんだと、興味深そうに眺めていた小野田にまるで紡ぐように。
 ええい、調理とは面白味だとかじゃないんだ。真っ当に美味しいモノを真っ当に美味しく作る。それで十分。
 調理に使うスパイスはクミンターメリックチリペッパーガラムマサラ黒こしょう……その他エトセトラエトセトラ割愛! ともあれ交易の盛んな海洋から持ち込んだソレらは潤沢に。使う食材は豊穣の地産地消。
「いい言葉だよね――と言う訳で煮込んでいくよ」
「オーゥ……なんというスパイスの量……素晴らしいデース……!」
 その間にナンの生地を練りまして発酵したらフライパンで焼く
 カレーが煮込み終わったら火からおろして粗熱を取り――ここからがメインたるチキン。漬け込んでいたヤツを取り出し焼くのだ。香ばしい匂いがどこまでも。そう、これでよいのだ調理とは!
「不思議な香りがしてきました……
 食欲をそそる匂いというものでしょうか。数多の香辛料がこのような形になるとは」
 真に不思議なものです、と神楽耶はそんな様子を見ながら技術に感心する様に。
 男子厨房に入るべからず――そんな事を祖母より厳しく言われ、正式に料理をする形なのが初めてな彼は『調理』という意味で刃を握るのが史上初ともいえる。野生の獲物を裁いて焼いたり、食べれる実を取った事は幾度もあるが……
「煮込み料理であれば、いかんともしがたいですね。材料を斬ったり取って来る事を主としましょうか」
 外を見ればここは自然が多い。
 天の恵みの賜物か。地を駆け、その経験をもって――食卓に並ぶ野菜を入手してくるとしよう。

「……カレーは如何なる食材とも迎合する一品。世界を巡るものなり」

 そしてつるはその思考を更に潜らせる。
 かつての世界。洋食屋の主人の熱意と知識――彼らより御教え賜りし内容を思い出さん。
 食材は、幻想、傭兵、海洋、豊穣より揃えたる。
 各地の特色がそのまま昇華されよう。香辛料は馬芹、鬱金、赤唐辛子、完熟したバナナ――そして具は牛肉、じゃがいも、人参、玉葱。
「これらを拵え寸胴鍋にてゆるりと煮込まん」
 急いで混ぜる必要なし。
 空気を混ぜずに食材より味を絞り出す。
 溶ける全てが混ざり合わりて。
 其がカレーの至高となる。
 福神漬けには、野菜を醤油、砂糖、味醂に漬けん――そして炊きし米。
 つまりはいろはのい。
「さりとて」
 仕上げは己が舌が重要である。
 最低限の食材を揃え煮込んだからとて満足に仕上がるものにあらず。
 これぞという時を見定め火と混ざりを止めるべし。
 匂いと味。そして全てを無為とせぬ心を持って。
「――完成と成すモノ」
 瞳に刻んだ日本洋食黎明期の熱意。
 あの折の一端を自らも此処に。顕現せしめんと――腕を振るおう。
 さぁ。無数の匂いは段々と、完成の証を周囲に示して……


「オーゥこれは凄いデース! そう……凄いデース! とにかく凄いデース!」
 小野田は歓喜する。イレギュラーズ達が作った複数のカレー達に。
 つるの作りしは過去の文化集いし結晶。史之のチキンカレーは素晴らしく、そして。
「うむ! 吾の方も完成したぞ! この周辺で見つかったものと、吾が美少女領で作りし農業の結晶達! うむ実に香りよく……んっ? 味? 味は分からぬが……でも匂いは良いぞ! 全て食べられるもので作ったし、味もきっと良い筈!!」
 百合子のカレーなどはこと香りに優れている。野山を駆け巡り入手した数々……
 味は分からない。だが香りが良ければ味も良い! 美少女判定である。
「吾、お手伝いも出来る良い美少女である故な。多少のハプニングはあったが美少女的に余裕であった!」
 あっはっは! と、百合子は切った指先を隠す様に口元でひと舐め。
 ぬぅ……包丁とは存外難しいものである……が。
「大丈夫か……大丈夫かな……? やっぱり止めるべきだったんだろうか? いやでも皆食べれるものは入れてるし、うーん。ま、いいや! それよりお酒だよね」
「おや大変。私の『星海カレー』を食べた魔物達がぴくりとも動きません……そんなに美味しかったのでしょうか……感激ですね!」
「拙者のカレーの方には近寄りもしてこないので御座るが、何が悪かったので御座ろうか? 解せぬで御座る……記憶より手繰り寄せしこのカレーの何が、ぉ」
 大量にナンを焼いておいた史之。あからさまに食べれないような食材が混じれば止めるつもりだったが……一応。一応食べれるモノばかりである料理だったので止めはしなかった。分量はともあれ。
 そして正純が創造せし星海カレー……ヒトデ達の成れの果てを狼男たちが食せば、想像を絶する山椒のアレにノックアウトされたようだ……弓を構えていた正純は拍子抜けし、しかし幻介の作った方には寄ってきすらしない。
 ので、不信がった幻介が一口食せば――パンドラ削るかと思った!!
 鉄帝印の調味料と赤唐辛子に青唐辛子、そして辛味オイル!
 思わず放送できない様な声を一つ。水を飲んで誤魔化して。
 ともあれ魔物は各々(特に一部のメンバー)のカレーで壊滅状態。ここまで容易いとは……
「やれやれ。本業の発揮場と思ったのですが……なんともはや。
 しかし一度作ったものは、しかと食すべきでしょう――それが礼儀かと」
「然り。何ぞや怪しと想いはしたが……さて。幼き頃、恩を賜りし山伏殿は仰せになられたり。食を粗末に扱うはまかりならず、軽んずるものは限りある糧を失い命を縮めん――と」
 しかし無駄には出来ぬと神楽耶とつるは同意見。
 如何なるものでも皆で食そう。最後まで食らわねば『ならぬ』とばかりに。
 米一粒とて百姓のあらゆるが詰まっているのであれば。
「あっ。ボクは食べちゃダメだからネ! 分かってると思うけド……えっ? だからボクは羊肉じゃないヨ? ひ、羊肉じゃないヨッ!! ヤ――ッ!! タスケテ――!!」
 暴れるシェプ。ちょっとダケ。ちょっとダケヨと鍋に入れようとする小野田。
 依頼主と言えど流石に止めんかと押し留めて。アハハと笑って――さぁ。
「んっ。皆で食べましょう……おいしくなーれ、おいしくなーれ……て、ねっ?」
 かわいい。
 完成前のおまじない。クロエが掛けて、皿に盛りつけ。
 狼男さん達も――もう襲ってこないならいいよとばかりに、彼女はカレーをさぁ一口。
 皆でにこやかになろう。
 食卓を飾るのは、素敵な料理と、そして――

 きっと笑顔であるのだから。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ!

 色々なカレーが作られ、小野田は満足。
 今回のカレーを元に彼のカレー知識が強化された事でしょう……

 それではありがとうございました!

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