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シナリオ詳細

<Lonely Dance>霧の国と飼われた赤

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鍵尻尾の記憶
 にゃあ、と軒先で弱々しい鳴き声が零れた。
 閑散とした商店街はどの店もシャッターが降りきり、幽霊でも出るかと心配になるほど深い霧に包まれている。

 ここには誰も助けに来ない。

 ボロボロのダンボール箱に書かれた『ひろってください』の文字だって、所詮は捨てた人間の気休めだ。
 濡れた身体は冷え切っていて、たまらなく寂しくて。
 このまま死ぬかもしれないと分かっていても、ただ鳴く事しか出来なくて――。

「お前さん、こんな所でどうしたんだ?」

 奇跡だと思った。雨が上がり、太陽の日差しが差し込み始める中。
 大股で歩み寄って来る男の声に、不思議と安らぎを覚えながら――私はゆっくり、重たくなった瞼を閉じた。


●行方不明の案内人
――神郷 蒼矢(しんごう あおや)と神郷 赤斗(しんごう あかと)が異世界から帰ってこない。
 その日、『境界案内人』ロベリア・カーネイジから相談されたのは行方不明の同期の救出だった。

 特異運命座標が新たな異世界に渡る前、境界案内人が事前に現地調査で足を運び、トラブルに巻き込まれる事は少なくない。
 しかし事前に石橋を叩きに渡り、橋が崩れた後の処遇は図書館内でも明確に決まっておらず――最悪、見捨てられる事もあるのだという。

「困るのよ。勝手に同期が2人もいなくなると……何かあった時に責任が三等分にならないでしょう?」

 助ける理由はそれ以上でも以下でもないわとすまし顔で告げてはいるが、欠片くらいは心配していたのだろう。
 彼らが消息を絶った場所は特定済みで、鍵尻尾の猫と星の描かれた革張りの本を取り出した。
『Lonely dance』と書かれたその異世界へ、彼女は募った特異運命座標を誘い――そして目にする事となる。

 レンガ造りの建物が並び、蒸気機関による動力を得た霧の国。
 それだけならば何処の世界にもありがちな異世界と言ってもいいだろう。ひとつ特殊な所があるといえば……そう。

 到着したばかりの特異運命座標を、まるで事前に罠でも張っていたと言わんばかりに囲む獅子ほどの大きさの怪猫。
 加えて、それらを指揮する男の存在だ。

「お前達か……異世界からの侵入者は」

 声も容姿も、男は神郷 赤斗――行方不明となったはずの男に酷似している。
 しかし向ける隻眼は鋭く、どこまでも冷徹で仄暗い赤を湛えていて。
 差し向けた銃口は、真っすぐ特異運命座標へと向けられた。

「すみやかに元の世界へ立ち去れ。手向かいすれば、我らが咢(あぎと)をもって屠り捨てる」
「待ちなさい、赤斗。まずは話を――」
「どこで俺の名を知ったか知らんが、惑わそうとしても無駄だ。
 さも仲間であるように話し、懐柔しようとする……そういう策が常套手段であるという事も知っている」

 ロベリアの説得も聴く耳持たずといった様子で睨み据える赤斗。
 一触即発のこの状況。特異運命座標に示された道は2つ。逃げ帰るか、それとも――。

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 ミイラ取りがミイラになる前に、まずはこの危機を脱出しましょう!

●目標
  包囲網を突破する

●場所
 異世界《Lonely dance》
  猫と星が描かれた表紙の皮張りの本。中身は不明でしたが、特異運命座標が踏み入った事により、霧の立ち込める国がある事が分かりました。
  レンガ造りの街並みと遠くには立派なお城。住民となる人間以外に、キャスパリーグと呼ばれる怪猫が衛兵達と治安を守っているようです。
  戦場は街中ですが、大通りで遮蔽物はありません。あえて狭い路地に敵を誘導する事も可能です。
  霧が薄くかかっていますが、視界ペナルティにならない程度です。

●エネミー
『怪猫』キャスパリーグ
 包囲網を突破するにあたり、主に戦闘する事になる怪物たち。
 鋭い牙と鋭い爪が自慢の獅子ほどの大きさの猫で、知能は人間並み。人の言葉も一定理解するようです。
 各々首輪をつけていますが、飼い猫と思って油断すると痛い目を見るかもしれません。

『陛下の快刀』赤斗
 特異運命座標の来訪をいち早く察知し、駆けつけた兵士。キャスパリーグを従え敵対の姿勢をとっています。
 首輪と眼帯がトレードマークで、その容姿や声は行方不明となっている『境界案内人』神郷 赤斗に似ています。
 銃をメインに扱い、キャスパリーグと連携をとって攻撃してきます。

●その他登場人物
『境界案内人』ロベリア・カーネイジ
 行方不明の赤斗と蒼矢の捜索を依頼した境界案内人。
 包囲に巻き込まれてはいますが、自衛の手段は持ち合わせているとの事。やせ我慢かもしれないので、気になったら手助けしてあげましょう。

●その他
 包囲網を突破する以外の事は特異運命座標に委ねられています。
 敵を全滅に追い込む姿勢で徹底的に戦うもよし、赤斗を名乗る男を捕まえてみるもよし。

 説明は以上となります。それでは、よい旅を!

  • <Lonely Dance>霧の国と飼われた赤完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年09月06日 22時06分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (4人)

回言 世界(p3p007315)
貧乏籤
ボーン・リッチモンド(p3p007860)
嗤う陽気な骨
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
しろがねのほむら
首塚 あやめ(p3p009048)
首輪フェチ

リプレイ


「スチームパンクな世界とでもいうのか。ロマンに心躍るな……こんな状況じゃなけりゃだが」
 口先は軽く、それでいて警戒は怠らず。『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は冷静にその身へ茨の鎧を纏った。
 赤斗であると認めた目の前の軍人は、未だ殺意を向けたまま此方を睨み据えている。
「それよりえっと。アレ(赤斗似の男)は普通に偽物だったりしない?
 もしそうだと分かってるなら遠慮なくぶっ飛ばせるんだが」
――もっとも、敵対するというならアイツが赤斗だとしても躊躇する気なんてないんだけどな、本当なら。
 世界の小さな呟きに気づいてか知らずか、『今は休ませて』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)は首を横に振った。
「ロベリアさんが認めたのだから、きっとあの方は本物の赤斗さんなのでしょう」
 本の世界に取り込まれてしまったのだろう。それが睦月の見解だ。今までも一度、睦月は本の世界に囚われた赤斗を救い出した事がある。
 もっとも、その時は当人に脱出するという意志があっての事だったが――今度ばかりは毛色が違う。救いたいのは山々だが、此方は守るべき者もいる。
「ロベリアさん、後ろにさがっていて下さい」
「私の事は心配しなくても――」
「今回くらいは瘦せ我慢しなくていいんだぜ、ロベリアちゃん」
 今日のパーティーはロベリアや赤斗と長い付き合いの者が多い。『嗤う陽気な骨』ボーン・リッチモンド(p3p007860)もその一人だ。彼女の平静の裏に隠された不安を瞬時に見抜き、庇うように立つ。
「ロべリアちゃんの要請でこの世界に赴いたわけだが……カッカッカッ! おいおい、赤斗の旦那、何だいそのイメチェンは?」
 ボーンの陽気な笑顔と軽口は最早お約束だ。裏を返せば赤斗が普段通りの反応をするか、これ程最適な物差しはない。
「カッコいいのは分るし周りの猫ちゃん達もキュートなのはわかるけど……皆心配してるんだから一緒に帰ろうぜ?」
「……」
「だんまりか。蒼矢の旦那も居るんだろ? なあ、何とか言ってくれ――」
 ガウン!!
 響き渡る銃声。ボーンのフードに弾丸が掠めて亀裂が入る。
「……チッ、笑えない冗談だ。一先ずは一度撤退するって事でいいよな!」
「お助けしようにも根深いようですし、僕たちも降りかかる火の粉を払うしかありません。ここは一旦退いて――……あやめさん?」
 睦月や世界がボーンに続き退こうと身構える中、『首輪フェチ』首塚 あやめ(p3p009048)だけはただ一人、皆より前に一歩出たまま立ち尽くしている。
(そういや、あやめは確か……依頼を受けるのも初めてだったよな)
 此処までの道のりで話した事を世界は回想する。
『私は赤斗さんや蒼矢さんの事は知りません。ですが、助けを求める声があるのならそれに応えるのが人というもの』
 ロベリアに助けを求められたから。そんな純真な理由で仕事を引き受けたという彼女が、恐ろしい怪猫を前にして怯えたところで誰が断罪できよう?
「あやめ、動けるか?」
「アッ! これは駄目ですね!」
「駄目ならこの手を――」

「だって首輪パラダイスだもの!!!」

「「……は?」」


 首輪。それは独占の象徴。
 首輪。それはめくるめくイケナイ妄想の出発点。
 ザントマン信者たるあやめにとって、一つ見つけただけで興奮モノの神アイテムだというのに――まさか360度、首輪だらけの空間に放り込まれてしまうなんてっ!!
「うへへ……私の首輪センサーがぎゅいんぎゅいんしちゃいますよ!」
 あやめの恍惚の笑みに敵どころか味方までも三歩くらい距離を取る。世界はごくりと唾をのんだ。貧乏籤の本能が警鐘を鳴らす。今のあやめに巻き込まれてはいけない。何故なら巻き込まれたが最後。
「駄目ですよ、あやめさん。首輪だなんて刺激が強すぎる……ところで黒髪の幼馴染に合うオススメの首輪はありませんか?!」
「カッカッカ! 睦月ちゃんまで触発されちまってるなぁ!」
――こういう事になるからだ。
「笑いごとじゃねぇだろボーン、怪猫が退いてるのはありがたいが、アレは俺達まで妄想に巻き込みそうな目をしてる」
 それについては既に手遅れだとばかりに、あやめは世界の方へ振り向く。
「世界さんにはマーティンゲールがいいと思ってます」
「マーティン……何だ?」
「首輪の一種ですよ。細身で首輪が抜けやすい犬しゅ――じゃなくて、人でも安心出来るので」
「おい、言い直しても無駄だぞ。それ絶対犬用だろ!」

「何なんだお前達は」
 ここまで来ると赤斗の困惑した声にも多少の同情が生まれてくるが、スイッチの入ったあやめは留まる事を知らない。髪を掴まれ強引に引き寄せられようと彼女は笑みを零したままだ。
「貴方の首輪姿も! 最っ高にいいですね!
 クヒヒ! まるで首輪したままに男性にイケない事される絵姿が容易に想像できます!」
「なっ……」
「ツンデレのヘタレ受け最高ですね!」
「陛下の保身のため言っておくが、罰でもない限り不用意に虐げるような事実はない。
……執務中、勝手に膝の上に乗って昼寝を始める悪癖はあるが」
(猫じゃねーか)
(猫だろそれ)
(猫ですね、本当に)
 ボーンと世界、睦月の認識が擦り合った所で――同時に気づく。赤斗に囚われたあやめが手でサインを出している事に。そう、この壮大な妄想電波は彼女なりの名乗り口上だったのだ!

「何処までが芝居で何処までが本気か分かねぇが……目覚めろ!」
 好機と気づいたボーンの呼び声に死者の魂が呼応する。足元から這い出たスケルトン達が怪猫へと襲いかかり、特異運命座標は一斉に走り出した。
 押さえつけられた仲間の猫を避けるように怪猫が動けば、進む経路は限られる。
「――そこっ!」
 背に生み出される光の翼は大きくはためき、光刃を踊らせる。舞い落ちたそれは怪猫への刃となり、囮となるあやめを癒した。時の巡り合わせではあるがこのパーティ―、恐ろしい程に持久力へ長けている。
 強靭な守りに秀でた囮役のあやめに、攻撃と回復を併せ持つ睦月と世界。斬り込み役はボーンという構成だ。
「あら、私も癒してくれるの?」
 己の傷が癒されている事に気付いたロベリアは、それが世界のミリアドハーモニクスによるものだと悟る。
「何度か酷い目に遭わされてるし存分にやせ我慢していてほしい所だが、非常に残念なことにそういう趣味はないからな。辛そうなら普通に回復してやるさ」
 回想すればキリがない。毒入りチョコを食わされたり、呪いでへっちなバニーの服を着せられたり……。
「ありがとう。次は首輪を着けられる依頼を斡旋してあげるわね」
「変な気をつかうんじゃない!」
「えっ、世界さん首輪お好きなんですかっ!?」
「あああぁ、ほら見ろ話がこじれただろうが!」
 怒りと共に放たれた白蛇の陣は広範囲の怪猫を絡め毒牙を穿った。包囲網が大きく崩れ、脱出ルートが定まり始める。
「態勢を立て直せキャスパリーグ! 訓練で覚えた事を忘れるな!」
 指示を出す赤斗の隙を見逃さず、睦月は大地に力を注ぐ。
「怪猫さん達に構う余裕はない筈ですよ、赤斗さん!」
「ぐ、ッ……!?」
 ドドド! と地鳴りと共に地より生え伸びる無数の晶槍。クリスタルスキュアで怯む赤斗を突き飛ばし、囚われていたあやめがするんと拘束を脱す。
「ただいま、世界さんっ!」
「こっちに来るな! 言っとくが首輪を着ける趣味は無いと――」
 交わる視線。あやめに示された物を見て、世界は舌打ちひとつ。
(逃げながら探せって事かよ、面倒くせぇ――)
 しかしこの日、捜索と直感と磨いて来た己が誰よりも適任である事も知っている。後はただ、体力が尽きない事を願うばかりだ。
「撤退ルートは俺が指示する。ついて来い!」
「いつに無くやる気じゃねぇか世界の旦那! さあて、ロべリアちゃん。ちょっと不自由だろうが……我慢してくれよ!」
「ちょっと、ボーン!?」
 ロベリアが二の句を告げる前にボーンは彼女を抱き上げる。運搬性能を強化したのはこんな事態もある程度予測が出来たからだ。世界の横を並走し、落首山茶花で回り込む怪猫を退ける。
「赤斗の旦那! 何があったか知らねェが……絶対連れ戻してやるからな!首洗って待っておけよ!」
「逃すと思うか! お前達は此処で――ッ!」
 晶槍をようやく撃ち崩した赤斗が特異運命座標へ銃口を向ける。しかし一撃を放つ前、横からの魔力撃に得物を弾かれ動きを止めた。
(あれは……別動隊の怪猫さん達でしょうか?)
 闘争の最中、しんがりを務めていた睦月は見た。赤斗の配下の怪猫とは違う色の首輪をつけた怪猫と、兵装を纏う人間。それらが特異運命座標ではなく赤斗を包囲した所を。


(つまり赤斗さんは誰かに遣わされた訳ではない、という事でしょうか? 陛下という人物の意に背き単独で……?)
 追っ手を撒いた後も睦月が考え込んでいると、ボーンが思い出したように口を開く。
「赤斗の旦那、俺を最初に攻撃した時……わざと掠めるように撃ってたな」
「でしょうねぇ。私の髪を掴んだ時も本気じゃなかったですし、こんな紙切れ寄越したんですから」
 何処か残念そうに呟くあやめの手には紙切れが握られていた。赤斗に捕まった時、ポケットにねじ込まされた物だ。
「お前ら……走りながらでよくそんなに饒舌になれるな……」
 世界は息切れで言葉を紡ぐのもやっとだ。ただ、紙切れに書かれた物が座標であると見抜いた彼は仲間をそこへ誘導していた。
 辿り着いた無人の民家。床に隠し扉を見つけて梯子を下りれば、広がるのは冷たい石畳の部屋だ。中央には黒い棺が鎮座しており、睦月が蓋へと手をかける。
「気を付けろ。罠かもしれん」
 世界の忠告に緊張しながら外される蓋。
「眠れる姫君ってのはよく聞くが……王子様とは驚きだ」
 棺の中を覗き込むボーン。その視線の先には王子めいた装いの男が一人眠っている。
 行方不明の案内人の片割れ――神郷 蒼矢、その人だ。

成否

成功

状態異常

なし

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