シナリオ詳細
<巫蠱の劫>ゴースト・オブ・キバオニ
オープニング
●馬上絶景
イーリン・ジョーンズ (p3p000854)は漆黒の牝馬にまたがり、長い髪をなびかせていた。
草原はなみうち、イーリンの戦旗もまた強くなびいている。
聞こえるのは風と、息巻く軍馬たちの声。
それすらもしんと静まりかえるほどの緊張がはしり、イーリンの横に大きな黒馬が……それにまたがる鎧武者がつけた。
馬の名を黒百段。武者の名を――梅久。
またの名を、『鬼刑部』。
「童女(わっぱ)よ、慣れぬ戦場におびえたか?」
「……冗談。あと童女はやめて」
イーリンは部下達を、そして仲間達を振り返り、そして天に大きく戦旗を掲げた。
それに応え同時に十文字槍を掲げる梅久。
兵達は声をあげ、それぞれの武器を天に掲げる。
「新たな風。新たな血潮。素敵滅法グレイトフル也――! やはり貴公らローレットを雇って正解であった!」
梅久は馬の手綱をひくと、勢いよく先陣を切って走り出した。
「マイネィームイズ『鬼刑部』梅久ァ! 梅久騎兵隊隊長也!」
あとに続くは騎馬兵50を越える大部隊。
いどむは、騎馬兵50を越える亡霊部隊――牙鬼騎兵隊!
●大国の呪
時は現代大号令を征した夏。ここカムイグラではローレットが八面六臂の活躍を見せ多くの役人や軍人、一般市民に至るまで名声がしつつあった。
中でも記憶に新しいのは夏祭りの裏で頻発した肉腫事件だろう。特に此岸の巫女をめぐる騒動で優れた功績を残した『大陸の司書殿』は宮中にも伝わっていたらしい。
「我――! 騎兵隊隊長梅久。人呼んで鬼刑部!」
木で組んだ椅子に腰掛け、元来両手で振るうはずの巨大な十文字槍を片手で軽々と地に突いた大男。
彼もその噂を聞きつけたひとりである。
ここは高天京から西に位置する古戦場。白い幕によって仕切られたいわゆる後衛テントの中に、イーリンをはじめ八人のイレギュラーズが軍馬と共に集められていた。
「童女(わっぱ)よ! 先の戦い、見事であった!
聞けば海の上で騎兵を指揮したそうではないか。素敵滅法グレイトフル也!」
ドンと槍で地を突く彼に、イーリンは二つ三つ言いたいことはあったが……。
「とりあえず、内容を聞こうかしら。急を要するみたいだし」
振り返れば急の理由はわかる。
テント内には、重傷を負った無数の兵が治療を受けている最中であった。
梅久のインパクトある語りを、あえて平たく要約しよう。
ここ牙鬼古戦場は梅久率いる梅久騎兵隊と当時反抗勢力であった牙鬼騎兵隊が高天京への侵攻をかけてぶつかり合った場である。
牙鬼騎兵隊は軍馬を用いた騎馬戦術を用いる強力な部隊であり、それを止めるのは梅久たちの使命であり宿命であった。
三昼夜続いた戦いはついに梅久騎兵隊の勝利で終わり、彼らはそれによって昇進を果たしたという。
とはいえ豊穣では差別対象にもなるゼノポルタだということもあり、今でも梅久は氾濫勢力に対する鉄砲弾のように使われていた。
今回の作戦も、そのひとつである。
「おそらくは高天京を無差別に狙う呪法によるもの。かつて滅びた牙鬼騎兵隊の亡霊を呼び出し、京へと進軍させるつもりであろう」
梅久はこの亡霊牙鬼騎兵隊を迎え撃ち、かつての戦い同様それは三日目に突入していた。
かなりの兵を減らせたとはいえこちらも激しい損傷を負った状態。
兵の士気も下がり危機を感じた梅久は増援を求めたが、刑部省の上司はこれを却下した。
だが――。
「ローレット、そして童女よ!
貴公らの伝説的勇姿をもってわが騎兵隊の士気を取り戻し、この戦いに勝利するのだ!」
牙鬼騎兵隊も残る戦力全てを投入した最後の襲撃を仕掛けてくる。
こちらはローレット・イレギュラーズをそれぞれの部隊長とした新規編成でこれを迎え撃ち、過去の亡霊を打ち払うのだ!
- <巫蠱の劫>ゴースト・オブ・キバオニ完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2020年08月24日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●火蓋は切って落とされた
「マイネィームイズ『鬼刑部』梅久ァ! 梅久騎兵隊隊長也!」
あとに続くは騎馬兵50を越える大部隊。
挑むは、騎馬兵50を越える亡霊部隊――牙鬼騎兵隊!
膨大な蹄の音に大地震撼。天空動乱。
九色の幟旗を掲げた各武将たちは牙鬼騎兵隊めがけて並列の隊形を組んで走った。
「マイネィームイズ『魔法騎士』セララァ!
そして! わくわく動物さん小隊参上だよ!」
真っ赤な旗を軍羊ジンギスカンに立てると、『魔法騎士』セララ(p3p000273)はジョブカードをケースから引き抜いて掲げた。
「インストール、ひつじナイト!」
魔法のゲートを駆け抜けると、ひつじのバッヂがついたもこ鎧を着込んだセララに無数の騎兵たちが野太刀を振りかざして続いた。
「牙鬼! いざ、正々堂々勝負だー!」
「「応!!」」
馬は吠え、兵は吠える。
水色の旗をパカダクラにたて、馬(パカ)上で腕を組む『ムスティおじーちゃん』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)。
「それにしてもすっごい大部隊だね。指揮を執るなんてやったことないけど……」
「心配ご無用にござるぜ」
横に並んだ副官らしき武者がビッと親指と人差し指を立てた。
「我ら梅久騎兵隊は軍なき軍。幾たびの戦いに消耗し指揮官不在は日常茶飯事(チャメシインシデント)! 全ての兵が『勢いに乗る』ことで完璧な連携をとってござる」
「へぇ……」
ムスティラーフの目が副官の頭からつま先までをねっとりと観察した。
「故に我ら梅久騎兵隊は勢いさえあれば無敵最強アルティメットにござるぜ!」
「そうなんだぁ……じゅるり」
その一方では、HMKLB-PMから白銀の旗をなびかせた『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)がコャーって言いながらばんざいしていた。
「夏祭りで騒ぎがあったと思ったら呪詛騒ぎで、この国も大変ねぇ。
軍略とか兵法とか、わたしはよく分かってなかったりするけれど、まあ何とかなると思うの」
「その意気よクルミー!」
巨大なハンマーをなぜか二刀流した脳筋の極みみたいな女武者がニカッと笑いかけた。
「戦争なんでバーッといってガーッとやってドカーンとキメれば大体勝つのよ!」
「コャー」
「ふむ、それも道理だな」
『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)はドスコイマンモスからエメラルドグリーンのホログラムフラッグを展開しながら敵兵を右から左へ眺めた。
「私とて仮にも【騎兵隊】の一員として戦った身だ。
専門外などという言い訳はしないさ。出来る全てで貢献するとも」
思い返す歴々の戦場。いずれは全国家で大規模騎兵を運用した部隊としてなんかの本にのりそうな頃である。まだコンプはしてないが。
「皆に創造神様の加護がありますように」
軍馬の上で手を合わせ、握りしめたスティックから黒い旗のようなホログラムを放出する『鋼のシスター』ンクルス・クー(p3p007660)。
閉じていた目を開くと、顔の似た若い武者がンクルスの左右に並んだ。
「なんでぇそのそーぞーしんってのは。うめぇのか?」
「食べ物じゃないよ?」
「強えのか!?」
「戦う相手でもないよ?」
「「ってことは、可愛いんだな!?」」
「この世に美味い強い可愛い以外の基準ないの!?」
「ははは。シンプルでいいじゃないの」
『藍翼隊』と書かれたコバルトブルーの旗をなびかせて手綱をにぎる『ストームライダー』メリッカ・ヘクセス(p3p006565)。
「いい所だよね、此処(豊穣)は。
空気が美味いし飯も美味い。おまけに風光明媚ときた。
なもんだから、此処が荒れるってのは気分がイイもんじゃあないな」
「せやろ?」
斜め後ろからハート型の眼帯をした女武者が話しかけてきた。
「ウチもせやからイクサ嫌いやねん。焼けるしえぐれるしたまに沈むし。こーゆーんは早く終わらすに限るんや。たのむで、大将?」
「オーケー。僕等に賭けてよかったと思わせてやろうじゃあないの」
その一方、虹色の御國式軍旗を御國式軍馬にたてて御國式腕組みで御國式大筒を背負った『御國式』三國・誠司(p3p008563)が険しい表情で敵軍を見つめていた。
「僕は最初に話したはずだ。覚えてる?」
「ええ……」
ビキニ武者鎧をきた黒髪美女(巨乳)が優しく頷いた。
「『隊員は全員巨乳美女にしてくださいなんでもしますから』」
「まってちがう」
『おっぱい星人』三國・誠司(p3p008563)はゆっくりと首を振った。
「『生きよう、生かそう』……それが僕らのスローガンだ!
僕は皆が期待したようなイレギュラーズじゃないかもしれない。
けど、生きて帰れるように僕も努力する。ついてきてくれ!」
「来るところまで来たわね……」
『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は自らを中心としたおよそ50騎の軍団を振り返り、苦笑半分で『紅い依代の剣・果薙』を掲げた。
(あの海で、盛大な尾ひれがついたものね。海神の尾ひれなら当然か――)
「緊張なさっているのですか。司書殿」
黒に金装飾の鎧を着込んだ武者が馬を横につけてきた。
「どうかしら。……えっと、あなたは」
「グランディスと」
「そうグラ――なんで居るのよ!?」
「転職したと言ったら信じますか」
「にわかには……」
フウと息をつき、今度は勇敢に笑って旗を振りかざした。
「いいでしょう。とくと見るが良いわ、私『達』のやり方を!」
「「『神がそれを望まれる』!!」」
●花道フィソロフィー
団子状になって迫る牙鬼騎兵隊は、こちらが平たい隊列をとったことで鏃のように尖った隊列へ変更。中央突破を狙う動きを見せた。
「今よ、鶴翼陣形!」
左右へ交差するように規則正しく移動する各部隊。
「海の氷山を走り抜き、血河を広げ。ただ一人、伝説になった」
イーリン率いる司書隊は左翼先端に位置どると中央突破をはかる牙鬼騎兵隊の側面後方へ回り込むように馬上で身体を傾けた。
「故に、ローレットの騎兵隊は脱落者を許さない! 如何なる戦場でも必ず『全員で帰る』! 確約しましょう! 疑わば見よ! 童女が掲げる旗を!」
メリッカはその旗を指さし、側面前方からの魔術射撃によって牽制を始めた。
「あの旗が、イーリンが……紫の髪の小さい女性が掲げるあの旗が見える?
そう、あれこそが勝利の旗印だ。
かの旗と共に、僕や他の仲間達は闘ったわけだ。
あの信念に、嘘偽りはない。
故にあれを信じ、全身全霊で闘ってほしい。もちろん僕もそうするつもりだ」
その逆右翼先端ではむっち隊が砲術による一斉射撃で牙鬼騎兵隊を側面から押し込むように動いていた。
「さあ、雲烟万里を焦土へと変えよう!
『大むっち砲』、発射ぁ!! 僕に続けぇ!!!」
大きく口を開けて発射する閃光でもって騎兵隊の一部をそぐと、そのまま覆い込むように移動していく。
大量の騎兵たちが交差しながら、魔術や鉄砲や弓矢による撃ち合いによってすれ違っていく。
まるで戦艦どうしがすれ違いながら砲撃をぶつけあうさまである。
が、そんな牙鬼騎兵隊に少数存在する指揮官達がこちらを包み込む陣形をとろうとしていることに気がついた。
中央突破に専念するべきか、それとも鏃を二つに増やして斜め二方向に突き抜けるべきか。
そのうち後者を選んだ一部指揮官に対し、胡桃隊は真正面から襲いかかるという方法で阻止にかかった。
「胡桃隊、ふぁいあー」
『ふぁいあすと〜む』を合図に大量の炎術式による攻撃が浴びせられる。炎を突き抜けて走る牙鬼騎兵隊。槍を突き出し突き貫く姿勢をとった。
「危ないクルミー!」
胡桃の襟首を掴んで引っ張る副官。
それまで胡桃のあった場所をぶっとい槍が突き抜けていく。
「コャー」
「『すぐにターン! 抜けさせるな!』てクルミーは言ってるわ!」
「え?」
小刻みに交差し続けることで簡単に陣形を抜けさせないようにかき乱す胡桃隊。
その一方で、中央突破を狙った大部分の牙鬼騎兵隊をセララを中心とする中央防衛部隊がせき止めることになった。
「亡霊なんて恐れる事は無いよ! 剣で殴れば何だって殺せる! 総員突撃!
駆けろジンちゃん(羊)! 疾風の如く!」
ジンギスカンを唸らせ(?)突き進むセララ。
偃月刀を振り上げ突貫の姿勢を見せる牙鬼騎兵隊と、セララのわくわく動物さん小隊が正面からぶつかり合った。
といっても騎馬と騎馬。自動車でいう正面衝突は自殺行為である。
馬同士が複雑にすれ違い、その間に互いの剣がぶつかり合う。勢いで、そして踏ん張りで負けた方が馬から落ちて一方的に踏みつけられるという勝負である。
「フハハハハハハ! 斯様な策を最終決戦に用いようとは、童女め! 愉快痛快エクセレント也!」
十文字槍を鎖でもって豪快に振り回し、並み居る騎兵たちをなぎ倒していく梅久とその騎兵隊。
「遅れをとるな、皆いくぞ!」
誠司隊は馬をとめて大砲をかまえ、『混じり合っている』エリアめがけてあえてランダムな砲火をあびせた。
馬は興奮すると脚を止めづらくなる。かといって隊から離れれば孤立したところをリンチされかねない。牙鬼の騎兵隊は隊を固めておくためにぐるりとターンをかけるように後方へと移動。
そこへゼフィラ隊、ンクルス隊がそれぞれ追撃を仕掛けた。
「私の命運はキミたちに託そう。その武威を存分に見せてくれ。
なに、私も全力を尽くさせてもらうさ。回復は任せてくれ。私がいる限り、キミたちが倒れる事はない」
ドスコイマンモスで大地を踏みしめながら突き進むゼフィラ。
隊を密着させたンクルス隊とそれぞれの個性を混じり合わせ、自軍の強化と回復、そして防御に固い武者たちによる強固な『壁』として牙鬼へ迫っていく。
馬の戦いは『生きた足場』の戦いでもある。プレッシャーをかけ続ければ馬たちの動きは鈍り、結果として火砲のえじきとなるだろう。
牙鬼たちは各々で小刻みなターンをかけンクルス&ゼフィラ隊へと反撃を始めた。
「鋼のシスター! ンクルス・クー! この旗の輝きを恐れぬなら掛かってこーい!」
負けじと声を張り上げ、脳筋武者たちと共に突撃していくンクルス隊。
馬同士がぶつかりそうになり、激しく前足を上げて鳴く。
狙いはそこだ。迷った末に足を止めたなら、それこそ『火砲のえじき』と成り果てるのだ。
「死は恐れたらだめだけど命を無駄にしないで。
死ぬ覚悟はしても易々と死んじゃ駄目だ。
必ず皆で帰ろう、僕らにはそれができる」
ムスティスラーフは牙鬼騎兵隊のケツをとると、パカダクラの上に立ち乗りして両手を高く掲げた。
「むっちスパーク!」
激しい電撃を放ちながら突っ込んでくるむっち隊。
これに尻を向ければいいように蹂躙されるのは明白である。牙鬼の後方部隊はターンをかけ、鉄砲による牽制でこれを払おうと試みた。
その反対側から迫るのはゼフィラ隊だ。牙鬼騎兵隊はこれにも対応すべく呪術を用いてゼフィラ隊を攻撃。
元々激しい衝突によってダメージを負っていたゼフィラ隊が徐々に数を減らしていく中、それを補うように誠司隊がやまなりに発射したグレネードを牙鬼騎兵隊へと次々にたたき込んでいく。
「僕は一騎当千というほど強くない。だけど、弱者には弱者なりの戦い方がある……!」
左右から迫る部隊も相まって、牙鬼騎兵隊の指示は混乱、交錯しはじめた。
元々『一気呵成に轢殺せよ』といった大雑把な知性で動いている亡霊たちである。
指揮官役も複数おり、それぞれが正しい連携をとれぬまま目の前の敵と戦っていた。
数は同じでも、戦術を用いないなら獣の群れと同じだった。
罠にはめるも容易い。
「今だ、メリッカ。ここを任せる!」
ゼフィラは負傷した味方をまとめて急速撤退。
同時に敵陣を突き抜けるように離脱したむっち隊。
牙鬼騎兵隊のみとなったエリアにむけて、メリッカの藍翼隊、セララ動物さん小隊、イーリン司書隊の三部隊が三方向から一斉に構えた。
「一斉魔砲!!」
「刮目なさい――!」
「全力全壊! セララストラッシュ!!」
三方向(厳密には立ち乗りでターンしたむっちも含めて四方向)からの強力な一斉貫通攻撃が牙鬼騎兵隊の上を交差した。
ここ混沌の戦いにおいて、連携の基礎は『火力を重ねる』ことにある。
ゆえに前衛後衛という位置づけがあり、敵に密着して足を止める前衛とそこに火力を重ねる後衛という役割分担が成されるのだ。
それを約20人規模で行ったならば、得られるダメージは計り知れない。
結果として、牙鬼騎兵隊はその中央部を著しく喪失。
外縁部隊も大きなダメージを負い、そこで初めてこの状態からの脱却が急務であると自覚した。
急速にかたまり、メリッカ隊への突破を敢行。
それを阻止すべく両側面からンクルス隊及び胡桃隊が襲撃をしかけた。
「梅久たいしょー。一緒にいくのよ。ふぁいやー」
「狙うは敵将! ほかは任せたー!」
胡桃とンクルスは隊の中央で巨大な馬をはしらせる亡霊牙鬼をターゲット。
馬を直接叩きつけるという強引な方法で牙鬼を馬から突き落とすと、自分たちもその勢いで落馬した。
ごろんと転がり、素早く立ち上がるンクルス。
寝そべったまま炎を放つ胡桃。
「ムゥン……!」
亡霊牙鬼は炎を太刀で切り裂くと、その瞬間に側面からジャンピングラリアットを繰り出すンクルス。
その程度の打撃で倒れはせぬとばかりに顔面でうけた亡霊牙鬼――の首を、梅久の十文字槍が豪快に刈り取っていった。
「死しても強敵であった。牙鬼よ!」
●死して屍
三昼夜続いた合戦は、梅久騎兵隊の勝利に終わった。
ローレットが駆けつけなければ、結果は逆のものになっていたかもしれない。
けが人を回収し、撤収をはかる騎兵隊。今夜は宴だといって、イレギュラーズたちを誘井始めている。
その中で、梅久は削った丸太を大地に力強く突き立てていた。
「少し蛮勇が過ぎたかしら。牙鬼も流石といったところね」
ラムレイの足を止め、梅久のよこにつけるイーリン。
梅久の重馬黒百段はフンスと鼻を鳴らしてラムレイにウィンクしたが、ラムレイはそっぽをむいた。しおれる黒百段の尾。
「牙鬼滅法斉という」
いつも大声を張り上げていた梅久が、珍しく低いトーンでそんなふうに語った。
「我と同じ集落より産まれ、幾度も死線を抜けた同士……で、あった」
「……」
それにしては。と、述べるのは野暮だ。
梅久騎兵隊は騎馬による戦いを三日も続けるほどのタフネスを持ちながらも、京から一切の増援が送られないという立場にあった。七扇刑部省が彼らを鉄砲玉として消費するつもりなのが、状況から明白だったのだ。
そうした処遇に対して反抗する勢力が現れても、不思議ではない。
「弔うのね」
イーリンは突き立てた丸太に、弔いの意図をくみとって自分なりに祈りを捧げた。
そしてまた梅久も、十文字槍を天空に突き上げて叫ぶ。
「友よ。彼岸で逢おう! その時まで、我は戦では負けぬ!
童女よ! 『次』も付き合って貰うぞ」
「次があるの? なら、今度はもっとうまくやるわ」
笑うイーリン。
笑う梅久。
「素敵滅法グレイトフル也――!」
ふける夜に、声はどこまでも響く。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――依頼達成!
――梅久騎兵隊および梅久との深いコネクションが生まれました!
GMコメント
■オーダー
牙鬼騎兵隊最終襲撃からの防衛
■騎兵隊長ルール
このシナリオにて、皆さんはそれぞれの隊をもつ『隊長』です。
デフォルトで『[PC名]隊』と呼称されますが、好きな部隊名をつけてもいいでしょう。
兵数はPCを除いて5名前後が編成され、いま出られる兵士をかき集めある程度バランスをとった状態になっています。
戦闘能力は『そこそこ高い』です。自分と同格くらいに考えても問題ありません。
最も重要な任務は兵達の士気を上げることなので、指事の的確さとか戦闘経験とかレベルとか隊長らしさとかそういう辺りはあまり気にしなくてOKです。
PCは彼らに指示や方針を与えながら戦闘を行うことになります。
といっても全員の使用スキルをPC口調で宣言していったら必ずパンクするので、大雑把な指事をプレイングに書いておくにとどめましょう。(これを汲んで、実際には細かく指事を出したり号令を行ったりします)
急に部下を与えられてもよくわからないという方は、ひとまず『自分の強みを引き出すには味方がどう動いてくれたら理想的か』を基準に動かすとハマると思います。
※梅久は自分の部隊を編成しているので、合計で9部隊で敵軍に挑む形になります。
■敵戦力
今回戦うのは牙鬼騎兵隊の亡霊軍団です。
牙鬼騎兵隊はかつて梅久騎兵隊と互角に渡り合っていた抵抗勢力でした。
幾度もの防衛によって牙鬼の兵力も落ちてはいますが、今はこちらに匹敵しうる程度とみられています。
牙鬼たちも馬にのり、騎馬戦を仕掛けてきます。
個々の戦闘力も高く、普通に衝突しただけでは酷い損害を受けることになるでしょう。
相手は弱点として士気をもたないので、士気の高さや勢いのよさ、ないしは作戦の優秀さで勝利しましょう。
(※注意:今回はPCが雑魚敵群を蹴散らす状況ではなく、1部隊単位を自分のPCの延長身体だと思って戦ってください。平たく言うと、隊とひとつになる必要があります)
■フィールドと騎乗戦闘
非常に広大なフィールドを駆け回り、突撃をかけてくる敵部隊と戦います。
フィールドの広さや双方の機動からして、軍馬(かそれに準ずるアイテム)に乗っていないと戦場に置いて行かれてしまいます。
また馬上では若干の判定ペナルティが生じ、『騎乗戦闘』スキルによってこれを軽減できます。
また軍馬アイテム自分で装備してきた場合もペナルティ軽減対象とします。
(軍馬アイテムをもっていなかった場合、梅久の軍から借り受ける形になります)
■■■アドリブ度■■■
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。
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