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シナリオ詳細

<幻想蜂起>絵のない絵本のセンテンス

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●第十六夜
 かわいそう、かわいそう、なんてかわいそうなの?
 あのひとはかわいそう。
 かわいそうなあのひとたちに私はどうすればいいのかしら? ねえ?
 だから、夢を見せませう。優しい嘘をさしあげませう。
 ねぇね、嘘つき、マントゥール。
 ふたつの舌は夢の味、毒の味。

 プラチネッラはあのこがすき。だけどあのこはハーレクインのことが大好き。だからね?
 
●ハーレクインを、殺しちゃいましょう
 幻想楽団『シルク・ド・マントゥール』の公演以降、幻想はいまやまるで導火線を伸ばした爆薬そのものの様相を呈している。その導火線にだれかの悪意が火をつけてしまえば……どかん。あわや大惨事。
 それが件のサーカスの影響なのかどうかはわからない。しかし、連鎖的な貴族社会への蜂起を幻想の貴族たちは放置することはできない。
 ――支配と搾取の腐敗した貴族たち。軍という暴力(ちから)を振るい、民衆を制圧する。そんな彼らが褒められた存在ではないことは幻想に住むものであれば知らないものはいないだろう。
 だからこそ民衆は貴族に手をだすことができなかった。民衆とて貴族に手を出すことがどれだけ愚かなのかはわかっている。手をだせば、頻発する猟奇殺人事件など、比べ物にならないほどの犠牲者が発生するだろう。
 蜂起した民衆と貴族の軍が戦う。それが賢き勇者に導かれたというのであれば、1つの物語にもなるだろう。
 しかし、違うのだ。この頻発する蜂起に民衆を導く勇者はいない。となるとおこるのは貴族による民衆の虐殺である。
 
 ひとつ、ひとつ考えてほしい。
 この、散発的で無計画な蜂起を民衆は何故おこしたのか?
 先日から起こっている猟奇事件。その犯人たちはなんと言っていたのか?
 ――クリミナルオファー。原罪の呼び声を思わせるようなことを言ってはいなかっただろうか?
「反乱はこちらが封じる」
 故に、レオンは蜂起する貴族たちの軍の派遣を止めるべきだと進言した。

 
「そう、そうなの。宜しくてよ?」
 ボンネットから覗くかんばせをほころばせながら『暗殺令嬢』リーゼロッテ・アーベントロートは手にしたティーカップを傾けた。
「私の領土でおいたをする虫の駆除をやりたいというのであれば……いやだわ、そんな顔をしないでくださいな。貴族には面子というものがありますのよ? 羽虫を自由にさせるなんて許されていいことではないの。でもそれほどまでにいうのでしたら……私を愉しませてくれるのでしょう? ならば幾許かならお任せいたしましょう。但し、出来なければ私のあのこたちが、待ちきれなくてでかけちゃうかもしれませんわよ?」
 アーベントロートでおきた、小さな小さな暴動。その未来はイレギュラーズに委ねられたのだった。


「というわけで、情報なのです!」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がローレットのテーブルの前で青い羽をぱたぱたさせてメモを何度も捲っている。
 アーベントロート領のとある地域の教会で、暴動が発生する。それを未然に鎮圧させるのが、貴方達に託された依頼だ。
「アーベントロート領で暗殺令嬢の遠いご親戚筋である貴族がご結婚されるそうです。こんな時期にびっくりですが。その奥様である方に懸想をしていた男性がいらっしゃいまして……まあ、普通でしたら、身分の差。悲しい失恋でおわるお話だったのですが……」
 そこでユリーカは言葉を一旦切る。
「その結婚式に対して暴動を起こすという情報が入りました。首謀者はその男性……ではあるのですが、扇動したものがいるのです。その名前はえっと、『アルルカン』。恋に敗れた彼が可愛そうと周りをそそのかしました。まあ、もともと貴族社会に反感を持つものも煽ることで、その結婚式を壊せば、恋は叶う。かわいそうな彼を幸せにしてあげましょうと暴動を起こすそうです。そして、これは他の情報屋さん案件ですが、同時にその教会で暴動を起こすものが他にもいると情報がはいりました」
 ユリーカはテーブルにおいてあったオレンジジュースを一口、くちに含みごくんと飲み干す。
「その、アジテーターは『マリオネット』正体不明の少女にも少年にも見える人物。マリオネットは教会に祝福にむかう人々を『幸せな庶民』として虐殺をしようとしていますが、そちらは別のイレギュラーさんたちが止めてくれると思います」
 自らを不幸と嘆くマリオネット、そして不幸なものをかわいそうと嘆く一見正反対の二人が示し合わせてこのような暴動を起こした理由はわからない。
「そのふたつの暴動がごっちんこしてしまったら、本当にとんでもない虐殺がおきるとおもうのです! みなさんにはそれを止めていただきたいのです! ただ、アルルカン本人を捕まえることは難しいかもなのです」
 ユリーカはぺこりと頭をさげて、貴方達を見送った。

GMコメント

 鉄瓶ぬめぬめです。
 菖蒲GMとの連動の全体依頼となります。

●成功条件
 暴動を起こす彼らの発見と事前阻止。(説得でも物理説得でも問題ありません)
 結婚式の滞りのない進行。
 暴動者への対処(殺害・捕縛)に関しては成功条件に含みません。


●アーベントロート領北方の村
 小さな村ですが、皆、楽し気に過ごしています。この日結婚式があります。
 狙われていることを伝えるとパニックがおこり、結婚式が中止される上に、暴動を起こした彼らは今回結婚する二人の貴族に捉えられることになるでしょう。

 基本的に暴動者はアルルカンに唆されているだけですので、きちんと説得ができれば暴動を止めることはできます。もとは善良な市民です。貴族に捉えられた場合、彼らは処刑されることとなります。

●暴動者
 リーダーであるプラチネッラを含め12人ほどの男女の若者たちです。当日は怪しげな行動をしていたり、顔を隠すような行動をしていたりするので、非戦能力も活用すれば、わかると思います。

リーダー:プラチネッラ
     今回結婚する花嫁とは身分は違いますが、幼馴染でした。彼は彼女の家で下男の仕事をしていました。
     背は高く、美形とはいえない男性です。

メンバー:かの貴族に鬱屈した感情を持つ一般市民ですが、基本的に鬱屈していただけで暴動を起こすような人々ではありませんでした。鬱屈した感情を漏らすようになったのはサーカス以降です。

●アルルカン
 白い髪に赤い目の神秘的な少女。鬱屈する青年を煽り、プラチネッラの悲しい恋を応援しています。
 基本的には扇動者として説法を解くことがメインです。プラチネッラのそばにいるようです。
 戦闘能力は不明。自分に危害が及びそうであれば逃げます。
 拙作『世界で一番やさしい嘘』で登場しています。また、『血涙パノプリア』で鎧の男をそそのかしたのも彼女です。
 とはいえ関わりはないので、読む必要はありません。


●連動について
 菖蒲GM側が失敗した場合、両家の貴族の警備兵も暴動を気付き警備が強化され、警備兵に此方の暴動も見つかりやすくななり、結婚式の進行が滞る、若しくは中止になるでしょう。
 此方が失敗の場合は警備兵が出動し菖蒲GM側の一般市民の暴動にも気付き警備兵の虐殺が起きることでしょう。

 どうぞよろしくおねがいします。

  • <幻想蜂起>絵のない絵本のセンテンス完了
  • GM名鉄瓶ぬめぬめ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年05月07日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
アラン・アークライト(p3p000365)
勇者の使命
ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)
悩める魔法少女
暁蕾(p3p000647)
嘘の刃
楔 アカツキ(p3p001209)
踏み出す一歩
ジョー・バーンズ(p3p001499)
玉藻前 久右衛門 佳月(p3p002860)
双刀の朧月
ミーシャ(p3p004225)
夢棺

リプレイ

● 
 かわいそう、かわいそう。
 世の中はどうしてかわいそうばかりなの?
 いつだって水に囚われたマリーが誰よりかわいそう。
 だからね。マリーのかわいそうがすこしでも安らぐために。マリーが明日少しだけかわいそうじゃなくなるために。
 プラチネッラのかわいそうを少しだけくださいな。
 かわいそうが世の中に一杯増えたのならば。
 マリーは、きっと。


 あー、暴力だけで解決できれば楽だってーのにな。
 『太陽の勇者様』アラン・アークライト(p3p000365)はけだるげにそう思う。殴って解決。物理で解決というのは楽な話だ。
「随分と不機嫌だね」
 『双刀の朧月』玉藻前 久右衛門 佳月(p3p002860)の分身の手をひきながら、ジョー・バーンズ(p3p001499)が、声をかければアランはバツの悪そうな顔になる。
「わーってる、わーってるって。面倒だけどな。説得。ちゃんとやるって」
「うん、それなら安心した」
 エキゾチックな笑みを浮かべてジョーは答えるが、彼は説得とは違うことを考えている。
(この一連の蜂起が誰かの策謀であるならば……悔しいが見事な手練手管としか言わざるを得まい。ああ、まったくやってくれたものだ)
 西側を調査する彼らは村人に対して聞き込みをはじめた。
 
 『鉄帝軍人』ハイデマリー・フォン・ヴァイセンブルク(p3p000497)をお姫様だっこした『夢棺』ミーシャ(p3p004225)は屋根を飛ぶ。
「重くないでありますか?」
「……大丈夫だよ」
「その間が気になるのであります」
「それはそうと何かみつかったかな?」
 ごまかすように相棒に尋ねるミーシャ。言われて目を細めたハイデマリーは深く帽子やフードをかぶった一団が建物の影にいることに気づく。
 ミーシャは佳月の分身に合図し、その一団に近づいていく。
(恋は盲目。なのかな? ボクには分からないかなー。恋も、人の傷につけ込む悪意も。ねー)

 一方村の東側。『軋む守り人』楔 アカツキ(p3p001209)は逸る気持ちが押さえられずにいた。
『……あの嘘つきの道化師に唆されて……そして、故郷への道を歩いていた』
 あのときあの鎧が告げた言葉と今回の事件。唆す道化師。アルルカン。そこに関係性があるのかはわからない。それでも自分の直感が告げている。だから確かめずにはいられないのだ。
「みんな、宜しくな。結婚式とは人生の花道だ。無事終えることができるように努めよう」
 道中見つけた精霊に『慈愛の恩恵』ポテト チップ(p3p000294)は優しげにお願いすれば、精霊たちはその場でくるりと回って方方に散っていった。結婚式。愛し合うふたりの祝福される儀式。自分にだって愛おしい相手はいる。だから思うこともあるし、他人の幸せを壊していいものだとは絶対に思わない。

(力での排除は憎しみの連鎖になってしまうわ。そんなのばかばかしい)
 『彷徨のナクシャトラ』暁蕾(p3p000647)は閲覧した報告書の中身を思い起こす。死人に安らかな眠りを与えないなんて冒涜は彼女にとって許しがたいことだ。
 空に放った鴉を見上げる。まだ見つけてはいないようだ。
「そっちはどう?」
 その場に止まり集中して分身たちの動向を探っている佳月に暁蕾は水を向ける。
「む、ミーシャ殿の班があやしげな一団を見つけたようですえ。アラン殿たちも聞き込みで気になるものをみつけたご様子。そっちにむかっていってるようやね……あ、みぃつけた。暁蕾殿、鴉に指示を。あの白い子みつけたわ」
 暁蕾と佳月は目を見合わせ頷くと走り出した。

『ああ、言われてみればそんな奴らを向こうの方で見かけたような。結婚式だっていうのに物騒だなあ。警備兵もしっかりしてほしいもんだ』
 そんな村人の言を聞き、目的地に向かったアランとジョーは怪しくも物陰で瓶に綿を詰め燃料を入れている男女4人の一団を見つける。
「物騒ってレベルじゃねーだろ」
 舌打ちをしたアランは青年たちのうちの一人の腕をひけば、青年はびくりとする。
「な、なんだお前らは」
 アランの眼光が彼らを射すくめる。彼らは武器を手にし、立ち上がった。ビンゴ。間違いない。
「お前らが暴動を起こすのは勝手だが、やった事のツケはいずれ追いついて来るぞ。それも貴族相手にデカいツケがな」
「てめえら、警備兵か」
 言うが早いか村人は手にした棍棒でアランに殴りかかるが、ステップで軽く避けると、アランは片手で村人を壁に押し付け動きを封じる。その鮮やかな手腕に残りの村人は動きをとめる。
「違うよ、警備兵じゃないさ」
 アランとは逆にジョーは優しげな笑みを浮かべ彼らに話しかける。
「アルルカン」
 その名に村人たちはビクリとする。
「心当たりがあるようだね。あの少女が唆したのだろう? プラチネッラが可愛そうだと」
 村人は沈黙する。それは無言の肯定だ。
「あれは犯罪者だ。よく考えてみなよ。結婚式をダメにしたからって彼女がプラチネッラを好きになるとおもう?」
「それは……でもあいつは、ずっと彼女が好きだったのに! 貴族だからって理不尽じゃねえか」
「そうだね。理不尽だ。だからって結婚式を壊された方はどうなる? それこそ理不尽じゃないのかい?」
「で、でも貴族だからって威張って……!」
 それは幻想における深刻な病巣だ。貴族の平民への弾圧。貴族は平民を守り、その対価として彼らから税収を受け取る。当たり前のことだ。その政策において、どのように扱うかは貴族の胸先三寸である。そも人は平等ではない。わかってはいる。理解はしているが鬱屈は溜まってしまう。その鬱屈を利用するものがいる。ああ、本当に人の心の弱い部分を突く手練手管は見事なものだ。自分だって利用したことがないとは言えない。ジョーは内心で苛立つ。
「なあ、おまえらさ」
 アランは押さえつけた村人の直ぐ横の壁を殴り大きな音をたてれば村人はひっと怯える。
「お前らが暴れたところで貴族様の物量には勝てねえぞ。こんなくだらねえことでお前らは皆殺しだ。しってるか? 死ぬのは痛ぇぞ~」
「まあ、とにかく。今回は間に合った。こんなことはもう辞めるべきだね」
 彼らは答えない。それでも暴動の意思はなくなっているのはみてとれる。だからジョーは笑みを深める。
「事を起こす前に君達を止められて良かったよ」
 かぁ、と上空で鴉が鳴く。暁蕾からの合図だ。
 二人は、鴉と分身が導く方向に向かう。

「ねえ、なにしているのかな?」
 怪しげな一団にミーシャとハイデマリーは声をかける。
「ガキには関係ねぇよ」
「お兄ちゃんたち結婚式をじゃまするの? そういうのよくないよ。花嫁さんがないちゃう」
 ハイデマリーは自らの見た目を利用し幼い少女の幼いが故の無邪気さで告げる。
「なっ」
「貴族の結婚式。それを邪魔したらどうなるかって、貴族に喧嘩をうるのかな?」
「それは……それでも、あいつが好きだったあの人が奪われたんだ。友人として……」
 貴族に喧嘩を売ることがどういうことか。タダではすまないそれに何故賛同してしまったのか。村人たちは葛藤している。勢いではあった。なぜかできると思ってしまったのだ。あの白い少女ができると言ったから。
「あのね、お兄ちゃんたち。私はよくわかんないけど、お友達をおもう気持ちは素敵だけど。覚悟はあるの?」
 ハイデマリーの緑の瞳が鋭く彼らを射抜く。
「どうして、恋の応援が、結婚式の襲撃だって思ったの?」
 それはわかっていた。でもそれで貴族に一矢報えるのならなんと爽快なことか。そう思ってしまったのだ。
「……」
「恋の応援をするのは素敵だと思うよ。でも手段がおかしくない? こんなことをして唯で済むと思う? 友達だったら止めるべきじゃないのかな? 確かに彼も可哀想だよ。でもね、愛する人と結ばれた花嫁さんが邪魔されるのは可哀想じゃないの?」
「貴族が……貴族だからって」
 ふう、とミーシャはため息をつく。なんとも、なんとも愚かなことだと。平民の貴族に対する恨みは目の前の危険すら見逃してしまうほどに強いのだろうか。
 それに。自分は落ちこぼれたとはいえ名門の暗殺者の一族だ。だからわかる。自らにたてついたものの末路を。
 平坦に、冷静に。ミーシャは言葉を紡ぐ。
「ここはアーベントロート領。暗殺令嬢が、それを許すって思う?」
 アーベントロートの領民にとって暗殺令嬢という存在の恐ろしさはよく分かることだ。その名前に彼らはビクリと体をすくませる。
「もしね、上手くいったとしても、貴方達のお友達が貴族になれるとおもうの?」
 ハイデマリーは続ける。貴方達は襲撃後どうなるのか、考えていたの? と。
 村人たちはこんどこそ完全に沈黙する。手にした武器は地面に落とされた。彼らにはもう反逆の意思はない。
 くいくいと佳月の分身がハイデマリーの袖をひき、アルルカンが見つかったと告げた。

「みつけた」
 ポテトに一団をみつけた精霊が話しかける。
「白い子がいるらしい」
 言われ駆け出しそうな勢いのアカツキの腕を掴みポテトは「みんながきてからだ」と止める。
 アカツキもそれに頷き、目線で佳月の分身に合図をおくれば、分身は皆を呼び寄せるように務める。
(やっと尻尾をつかんだ)
 焦る気持ちをその精神力で押さえつけ、アジトの内部を覗く。白い少女は笑顔でプラチネッラと思われる長身の男性と話している。
 そのはりついた笑顔の目は笑ってなんかいない。ふと目があったような気がする。ぞくり、とするその瞳。アカツキは直接背骨を撫でられたような気がした。
 

 ややあって、イレギュラーズがその場に集う。アジトの中にいるのはアルルカンとプラチネッラ。そして数人の村人だ。
 アランとジョー、そしてミーシャとハイデマリーによって、アジトにいるもの以外の説得はなされ、此の場にいない村人を止めてもらうことも、伝えてある。今頃は出会ってはいない彼らも説得されたことだろう。
「じゃあ、突入だ」
 ポテトの合図で彼らイレギュラーズはアジトの中に乗り込む。

「お行儀わるいのね、イレギュラーズ。覗いていたなんて無作法だわ?」
 白い少女アルルカンはにっこりと笑い、指先につまむ精霊をぱくりと飲み込んだ。
「!! アルル、カン……!」
 友人である精霊を喰われたポテトが悲痛な表情で白い少女を睨む。
「アルルカン、こいつらは?」
「かわいそうなプラチネッラ。あなたの邪魔をする悪い人」
 聞いた村人たちも、イレギュラーズにむかって武器を構える。
「まって、私達はあなたたちと戦いにきたのではないわ」
 暁蕾の声は自然に彼らに響き村人たちの動きが止まる。その隙を見逃さず佳月は分身で彼らを囲んでいく陣形にもっていく。
「プラチネッラさん、そうね。愛しているひとが誰かに奪われるなんて、悲しいことだわ」
「そうだ! そのとおりだ! 俺はあいつなんかよりずっと前から彼女を愛していた! だから……!」
「貴方は彼女を支配したいの? 違うでしょう? 彼女の選択を祝福することだって愛だわ」
 プラチネッラはぎり、と唇を噛みしめる。
「ねえ、貴方は本当にこの結婚式がめちゃくちゃになればいい、って、思う?」
「それは」
「花嫁さんのこと。愛してるっていったよね? そんなことになったらきっと愛してるひとが悲しむ。それはいいの?」
 ミーシャの指摘にプラチネッラは二の句を接げることもできない。
「彼女はね、君を友人として信頼しているだろう? その気持を裏切ってはいけないよ」
 ジョーがミーシャの言葉をつなぐように続けた。
「私には、好きな人がいる。好きな人が笑ったとき。私も笑う。好きな人が幸せなら嬉しい。私はこんな気持になったのは最近だけど……だけど、好きな気持ちは素敵なんだ。暖かくなる。ちがうか?」
 ポテトが胸に思う大切な人を思い浮かべながら言葉を紡ぐ。いまだってそうだ。彼のことを考えるだけで暖かく優しい気持ちになる。この気持ちが愛だと気づいたのはいつだったか。
「……違わない、そうだ、わかってるんだ。身分だってある。俺が彼女を幸せに出来ないことくらいわかっている」
 絞り出された声は、自らを嘆く諦念。
「かわいそう! かわいそう! かわいそう! とっても! かわいそう! ねえ、そうでしょう? こんなかわいそうな、話、ある? うふふ、うふふふふふ」
 プラチネッラの悲哀をまるで最高の喜劇をみたかのような笑顔でアルルカンが憐れむ。
「貴様……! ひとつきかせろ! 『嘘つきの道化師』は貴様か!」
 アカツキは確信する。この白い毒が、探し求めていた毒そのものだと。
「あは、『そうよ』。でも、私は嘘つきマントゥール。嘘つきは本当のことは言わないわ……だったら嘘なのかしら?
 『嘘よ』といったら、本当なのかしら?」
 自己言及のパラドックスという言葉を識っているだろうか? 「この文は偽である」という構造の文を指すとして、自己を含めて言及すれば、パラドックスがおこる。この文が偽であるが真実ならば、それは偽となり、偽であれば真実であるという矛盾が発生し無限に連鎖することになるのだ。
 とどのつまり、アルルカン言は正しいことをいったとしても、嘘を言ったとしてもどちらも本当でどちらも嘘という矛盾を発生させる。
「貴様、戯言を」
「とにかく」
 暁蕾は激高するアカツキとの間に割って入り、村人たちの説得を続ける。
「今回の襲撃は誰も得をしないわ。結婚式を壊された彼女も、そしてなにより貴族に対してたてついた貴方達も。貴方達が貴族に捕まれば、貴方達だけじゃない、家族にだってその咎が及ぶことになるでしょうね」
「今ならまだ、あんたらはなんにもしてねえ。だったらなんとでもなる。大方そのクソガキが唆したんだろう?」
「あら? クソガキなんてしつれいね。私はレディよ。貴方よりもずっと大人よ」
 アランの言葉にアルルカンはぷうと頬をふくらませる。
「だぁってろ! 今なら俺たちだって何もなかった。矛をおさめることだってできる。わざわざ蜂の巣を突っつくような真似をする意味はねえよ」
 武器を構えていた村人は目配せをしあい、武器を地面に落とし、両手をあげた。
「プラチネッラお兄ちゃん。皆もうその気はなくなったみたい」
 ハイデマリーが告げれば、プラチネッラは仲間の武装解除をもって、今回の襲撃が未遂で終わってしまうことを知る。
「今更、こんなことをした俺があの子を祝福なんてできるのかよ」
「できる。できるはずだ。だって好きな気持ちは変わってないだろう? だったら、今は無理でも、いつかきっとできる、と思う」
 崩れ落ちたプラチネッラの手をとりポテトが真っ直ぐにプラチネッラの目をみてそう言った。
「また、失敗。前にも邪魔されたのに。可愛そうな子を助けることがそんなにいけないことなの?」
 アルルカンは真っ直ぐにドアを出ようと歩いていく。その足取りは妖精のように軽やかで。佳月の分身が足をとめようと、彼女に近づけば、不可視の刃が分身をかき消した。ただ一瞥しただけで。
 ジョーが両手を広げてアルルカンの前に立つ。
「今回は私の負けでいいわ。だから、退いていただけません? じゃないと、私。
 この仕返しに、結婚式をかわいそうにしたくなるもの」
 花開くようなその笑みは全く笑ってなどいない。
「そのまま何もせずに帰るのであれば、この依頼は完遂したものになる。コレ以上の追撃はするべきではないとワタシは愚考する次第であります」
 軍人としての戦略眼をもってハイデマリーは見逃すことをみなに進言する。彼女とてこの判断を選ぶのは苦渋の選択である。
「そう。そうね。じゃあ、みなさんまたね。マリーもそう。失敗ね。かわいそう。マリーはとってもかわいそう!」
 そういって白い少女は優雅なカーテシーでもって別れの挨拶をイレギュラーズに告げた。

 かくて、イレギュラーズの采配によって結婚式の襲撃は未遂に終わる。
 つつがなく終わった結婚式での花嫁の表情はとても幸せそうであった。



 マリーはもっともっとかわいそうになるわ!
 そうしたらね。マリーは涙を流すの!
 しっている?マリーの涙は真珠の雫。とってもとってもきれいなの!
 わたしは嘘つきマントゥール。
 せかいよせかい。もっともっとかわいそうになぁれ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

みなさまのご活躍で問題なく結婚式は行われました!
ご参加ありがとうございました!

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