シナリオ詳細
【ロストワールド】失われた世界で、新しい世界を創造しませんか。
オープニング
●滅び去った世界
世界は広く、しかし暗闇だけが広がっている。
それは照明が失われたことの形容ではない。この暗闇はすべてが虚無なのだ。
滅び、あらゆる生き物も、文明も、何もかもが闇に呑まれ消えてしまった。
何者も抗えず、何者も逃げ延びることは叶わなかった。後は時が経てば世界すら。
しかしただ一つの空間、質素な宿屋の1部屋にも満たないような空間だけがこの滅びに抗っていた。この部屋には、仄かに光を発する1冊の白紙の本のみが残されていた。
●世界再生の書
「滅び去った原因は不明のまま、しかしその世界は最後の希望を残したというわけだ。」
『ホライゾンシーカー』カストル・ジェミニは、昔話を語るように締めくくった。
その本には、世界を再生する力があると言う。それは触れた者が想像、あるいは思い描いた世界とそっくりな街や国、あるいはそれ以外の空間すら、闇の中から拾い上げ、何事もなかったかのように元に戻すという。
「ただし、世界を滅びから守るにはそれに制約をつける必要があった。その本をその世界の滅びから遠ざけるために、何者にも触れられない聖域にするしかなかった。」
そのためか、闇を広げた何かは、その空間だけは呑み込むことができなかった。今は干渉を諦め、闇の中のどこかで眠りについているようである。
「安心してほしい。その聖域に触れることができないのは、その世界の存在だけ。君たち運命特異座標は触れることも、利用することもできるようになっている。」
残されたその本の製作者は人々か、それ以外の生き物か、あるいは神々かはわからない。きっとその何者かは、異世界からの勇者にすべてを託そうとしたのだろう。自らの世界のことを何も知らない誰かに、途方も知れないほどの世界の再生を。救済を。
だがそれならば、運命特異座標の存在は、実にこの状況に都合がいい。あらゆる文化、あらゆる世界を知っている。本に触れれば、世界をサルベージできる可能性が高い。
「試してみてはくれないか?その世界がまだ、救うことのできる世界かどうかを。」
- 【ロストワールド】失われた世界で、新しい世界を創造しませんか。完了
- NM名蒼彩野羊
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年08月27日 22時11分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●世界の再生(藤野 蛍、桜咲 珠緒)
窓も無く、継ぎ目も見当たらない石造りの部屋の中央には、同じく石造りのシンプルな台座があった。その上に仄かに煌めく本が置かれている。部屋の明かりといえば、この本から発せられる微光のみだ。
最初にと、『二人でひとつ』藤野 蛍(p3p003861)が一歩前に出て、本に手をかざしてみる。
「とりあえず、触れてみればいいのよね?」
「試してみましょう。思い浮かべるのは、蛍さんの故郷ですね。」
隣にもう一人、『二人でひとつ』桜咲 珠緒(p3p004426)が歩み出て、同じように手をあげる。
蛍が頷く。思い浮かべるのは彼女の故郷。伝統と未来、科学と慣習、人間と自然が、日常の中で隣り合う彼女の故郷である。しかし、故郷においてただの一般人であった蛍とって、今居るこの世界の再生は荷が重い。だから珠緒と、恋人の彼女と二人共同で世界の再生を試みようとしていた。
珠緒にも故郷の世界がある。それは奇しくも蛍の世界と似通った世界であった。二人の思い浮かべる世界は、どこか重なり合い、そしてどこか補い合うような世界のイメージとなっていった。
本がそれに応えた。世界再生の書が輝きを増す。浮き上がり、勝手に開いては凄まじい速度でページがパラパラとめくれて行った。そしてまるで栞を挟んだページとでも言うように、ピタリととあるページを開いたまま動きを止めた。
暗闇に慣れた目を刺すような輝きが更に増し、しばらくすると収まった。再び空間内が暗闇と静寂に満たされたときには、本は最初の状態同じ状態に戻り、また仄かに煌めいていた。
「…収まったな。何か変わったことはあるか?」
『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)の問いに、『水鏡の茜』樒(p3p008846)が応えるかのように、本を正面に見て右の方を指し示した。
「空間が広がりました。」
壁面に通路ができていた。真っ直ぐと10mほど伸びた通路の先には、本と同じように仄かに煌めく両開きの扉があった。
●扉の先
扉はゆっくりと、こちら側へ開いた。先には、星のない宇宙空間がゆっくりと渦を巻いたような、魔力の渦の塊だけが存在していた。
「再生した世界への転移の魔術…呼ぶとすればゲート、あるいは、『ポータル』ですか。」
「ボクたちの再生には成功した、ということよね?」
珠緒と蛍が近づくと、より魔力の渦が煌めきを増す。煌めきの先に、懐かしさを感じる景色が微かに見えた気がして、気がつけば、その景色を良く見ようと蛍が歩みを進めていた。
「蛍さん!」
珠緒が呼び止め、蛍の左手を握る。そのとき、蛍の右手が魔力の渦に触れた。
一瞬のうちに、二人の身体は青く煌めく細かい粒子のようなものへと変わり、魔力の渦に吸い込まれていった。
直後に、扉がバタリと閉じ、扉の煌めきは失われた。
・・・
聞き慣れた、音が聞こえていた。
蛍が目を開く。コンクリートの床、ぐるりと囲む金網、天井はなく、青い空が見える。自分よりも低い位置から聞こえたカンッと言う音は、まるで野球というスポーツの音だ。足元の床の下からは、金管楽器の鳴る音が聞こえた。遠く離れたところでは、サァーッと車が走る音がした。
「学校の屋上……」
学校の屋上に設置されていた木製のベンチに座って、居眠りをしているような格好だった。
「…珠緒さん?」
蛍の近くに、珠緒が居なかった。『ポータル』と呼んだそれは、確かに二人を吸い込んだはずだ。ここに居ないということは、どこか別の場所に居るのか。
立ち上がり、周囲を見渡す。学校の屋上、しかし蛍の知っている学校とは違う。懐かしさはあるが、ここは元いた世界ではない。
状況の把握と、珠緒との合流。この場所では果たせない。蛍は屋上から駆け下りて行った。
●世界の再生(回言 世界)
世界再生の書と共に空間に残された世界と樒は、次の再生を試みようとしていた。
先の扉がピッタリと開かなくなってしまった以上、取れる手段は他にはなかった。
「説明は良くわからんことばかり言われたが、結局のところ、世界の復元をあの二人と同じように進めればいいんだろう。」
ならばやることは単純だと本に歩み手をかざす。
再び本が動き出し、周囲を輝きが包み込んだ。光が収まると、今度は左側の壁に通路が伸びていることが確認できた。5mほど進んだところで右に直角に折れ、さらに10mほど進んだ先で、やはり新たな扉も出現している。この扉もまた勝手に開いた。先には魔力の渦の塊、珠緒が言うところの『ポータル』があった。
───甘い香りが流れてきた気がした。
まさか、と。世界が一歩歩みを進める。手を伸ばし、『ポータル』に触れた。
・・・
鳥の囀る鳴き声に世界が目覚めたとき、そこは木々の立ち並ぶ森の中であった
世界が身を起こす。これは彼の故郷を汲み取った再生ではない。となれば、まさかとは思うが、本当にあったかもしれないということか、アレが。
「…それで再生が進むなら問題はない、んじゃあないかな。多分大丈夫だろ。」
自分を納得させることにする。さて、後は実際にこの森の中を探すだけではあるが。
振り返ればすぐ側に、おおよそ人が建てたとは思えないカラフルな小屋がそこにあった。
カラフルな、お菓子の家である。
「扉はチョコレートか。ベタついたりしないのは何かの魔法か。」
詳しく確かめてみたいが、人は壁や扉に食いつくほど野蛮ではない。だから一先ずノックをした。そして返事がなかったので入ることにした。チョコレートの扉は意外とすんなりと開いた。
一般的なモデルルームのような内装の一部屋だった。全てカラフルなお菓子なことを除くならば。
ビスケットのテーブルの上に、飴細工のお皿と、色んな種類のお菓子の盛り合わせ、そして「どうぞご自由にお食べ下さい。」と書かれたメッセージカードがある。
歓迎ムードとなれば、遠慮はせずに用意されたお菓子を調べてみることにした。
「甘、い……こっちは、酸っぱい…な。」
甘い。そして酸っぱい。甘いものはただひたすらに甘い。そして酸っぱいものはただただ酸っぱい。世界の知る甘味にある深みがそれにはない。真似て作られた偽物のような味だ。
メッセージカードの裏に、率直な感想とお礼を書いた。どこかで何か小さな者たちが囁きあうような音が聞こえたが、彼らが姿を表すことはなかった。敢えて探し出すこともせず、世界はお菓子の家を後にすることにした。
●世界の再生(樒)
あの後、一人残された樒もまた、本に向き合い、世界の再生を試みた。本が輝き、そして収まった時には、本を正面に見た時の背後の壁に通路が発生し、その先に同様に両開きの扉と、これまた同じように『ポータル』の魔力の渦が生じていた。触れた樒は、気がつけば巨大な植物が立ち並ぶ深い森の中に立っていた。
「少し趣向を凝らしてみたつもりでしたが、再生には成功したようです。」
一先ず役目を果たせて少し安心した樒もまた、自身の世界を気兼ねなく散策してみることにする。
自身よりも背の高い植物ばかりがあると、まるで自身が小さくなってしまったように錯覚する。木々の隙間を縫うように空が見えるが、あまりにも高いためか、陽光が樒まで十分に届く様子はない。きっと小さな植物たちは上へ上へと伸びる生存競争の果てに消えてしまったのかもしれない。
「?今何か動いたようでしたが…?」
ふと、視界の端を何かが通った気がした。それは樒よりも小さかった何かが、まるで花が生えた人型の何かが走っていった気がしたが。
「…なるほどです。小さき者たちは、自ら動くことで、この環境で生き延びる術を得たのですね。」
第三の眼には、あちらこちらで蠢く生命の反応があった。樒を興味深げに観察している者も居る。
面白いものを見られたと、少しの満足感を得る。後は帰る方法を考えつつ、樒は森の中を気ままに歩くことにした。
●『アヤノメ』の国
珠緒が『ポータル』に吸い込まれて、気がついた時には、山の中にひっそりと立つ小さな神社の前に居た。階段を降りれば、すぐにコンクリートのビル群が立ち並ぶ街に隣接しているような、地方都市の裏の、神秘の拠り所のような場所であった。
蛍が居ないことに気づいた珠緒は、すぐに街へ降りていくことにした。
共に訪れたはずの相方を探しながら、この街について調べてみる。車が走り、多様な格好の人々が歩く姿は彼らの知る現代日本を彷彿とさせる様子であった。
この小さな国は、『アヤノメ』と言うらしい。なるほどところどころに紫色の花が咲いている。『アヤノメ』の国の人々は、この紫色の花を媒体に神秘を行う力を持ち、それを利用して国を外敵から守ってきたという。
それにしても平和過ぎる。一度滅んでいるはずなのに、人々は呑気に日常生活を営んでいる。
「覚えていない、あるいは知らないみたいです。」
一方の蛍との合流は難しい。もしかすると、帰る方法を見つけて元の石造りの空間に戻っているのかもしれない。そう考えた時、ふと何でも無い近くの建物の窓に、見覚えのある魔力の渦が映った。近づいてみると、ここに来る時に触れた『ポータル』が出現していた。
●それぞれの帰還
鏡や水面に生じた『ポータル』に触れると、次の瞬間には元の石造りの空間に居た。蛍と珠緒がまず戻り、そしてしばらく遅れて、世界と樒もそれぞれの扉から戻ってきた。
輝きが失われたと思っていた扉は、再び輝き、『ポータル』を生じさせていた。今は問題なくまた転移ができそうな様子をみると、一度切りの転移ではないが、恐らく転移できる人数か何かの制限があるのだろう。
四人はそれぞれが見たものを共有し、この場を後にすることにした。
本だけであった世界が、彼らの手によって再び、世界として動き出していた。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
はじめまして、もしくはお久しぶりです。蒼彩野羊と申します。
前回ご参加の皆様はありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。
いつかシリアスにもなる世界のお話の、第0話に相当します。
今回は世界の滅びに関わることはありませんので、お気軽にご参加くださいませ。
以下はすべてプレイヤー(以下PL)のみが知ることのできる情報となります。プレイングでの利用に問題はありませんが、キャラクターが元々知っているという扱いにはできませんので、ご了承ください(何らかの方法で知ることができたという感じの扱いは可能です)。
●概要
世界の名称を含め、最後の聖域を除いて全てが闇によって失われてしまった世界です。
滅びの原因は不明のままですが、世界最後の希望として、世界を再生する書物が残されました。元々この世界は、あらゆる文化、民族、思想などを内包していた世界であり、運命特異座標の想像と、『世界再生の書』の力によって、一致する空間が、そこに含まれる人類やそのほかの生命を含めてそのまま取り戻されるようになっております。
名目上は再生となっておりますが、PL情報としては『創造』と考えて頂いて問題ありません。
詳細については、下部の世界創造の注意点をご確認頂けると幸いです。
●シナリオ目的
キャラクター目線:世界の再生が可能か試す
プレイヤー目線:お好みの世界を創造し、そこでしたいことをする
今回のシナリオにおいて世界の滅びに関わることはありません。
お好きな世界観でお好きなように過ごして頂いて結構です。
●情報確度
残された聖域を除き、確かな情報が何一つありません。
ただし、今回のシナリオにおいて世界の滅びに関わることはありません。
●世界創造の注意点(プレイングについて)
旅人(ウォーカー)のキャラクターの元居た世界を創造した場合でも、あくまで似た別の空間となることにご注意ください。
また、『世界再生の書』にも限界があるのか、再生後の世界は、箱庭のように規模の小さなものになります。
例えば『地球』を創造した場合、日本列島が作られます(名称がそのままとは限りません)。『王道ファンタジー』を創造した場合、剣と魔法が認知されたそれっぽい大陸の一国が創造されます。いずれも大雑把な指定のため、皆様の希望に応えられないこともあります。そのため、元々想像する範囲を『日本』や『東京』くらいに絞っていただくか、どうしても変わってほしくない要素がある場合、プレイング内に記載していただく方が、狙った世界観が創造されやすいです。
特に、NG要素についてはこだわりがある場合は記載があると間違いが起こりにくくなります。
例:剣と魔法が認知され、ケモミミ種族や亜人族も共に暮らす国
上記の場合、ケモミミ種族と亜人族が確実に登場します。(人間のみNG等でもOK)
例:東京のような街並みですが、超能力者が密かに暮らしています
ただ東京のような現代風の街ではなく、超能力者がちゃんと紛れ込みます。
複数のプレイング内で似た世界観があった場合、合わさった空間が創造される可能性もあります。
例1:剣と魔法が認知され、人間至上主義の悪い国王が納める国。
例2:エルフや獣人が人間社会に紛れて暮らす中世ヨーロッパ風ファンタジー世界
極端な例ではありますが、この場合、人間以外の亜人種を迫害する国となる可能性があります。ただし、例2において、亜人種迫害NG等の記載があれば、回避できます。
本シナリオにおいては、できる限り希望に沿った世界を創造させて頂きます。
ただし、プレイング文字数の関係上、完全に希望通りの世界ができない可能性があることご了承くださいませ。
●まとめ
長くなりましたが、好きな世界観で好きなように過ごすのが当シナリオの目的となります。ご興味がありましたら、よろしくお願いします。
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