PandoraPartyProject

シナリオ詳細

みんな婦女子ヨシッ!

完了

参加者 : 5 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 人間、偶には諦めてもいっかなぁと思いかけましたよ。

                     ――ギルオス・ホリス(p3n000016)


「だからさ、僕達はさ。依頼を受けてやってきたローレットなんだよ」
「いやそれは分かってるよ。分かってるけど違うだろ」
 問答。それが行われているのは幻想のとあるパーティ会場だ。
 なんでも貴族同士の交流目的だとか。まぁよくある話である――が。
 実は今日、ここに暗殺者が紛れ込んでいるとの噂があった。

 目標は主催者でもある貴族の娘――シンシア・クローバー。

 今年16になる、麗しい御方なのだとか。刺客を放ったのは政敵でもあるとも、或いは混乱を巻き起こすテロ集団であるとも言われている。詳細が不確かなのは前述したように『噂』だからだ。確定したソレではない――故に、パーティの中止などとは出来なかった。
 噂に臆す姿を見せる訳にもいかなかったのだろう。中止に追い込まれる貴族と、陰口を叩ける様な立場に成す事自体が目的だったのやもしれぬ。
 故にパーティは開かれた。だが無論、主催者も対策の為にと依頼したのがローレットだ。
 かの英雄達にパーティに参加してもらい、暗殺者がいないか目を光らせてもらう――
 そんな依頼は。ええ。確かにローレットには行きましたよ? でもね? でもね?

「旦那様が依頼したのは、この『女性貴族だけが出席するパーティ』で護衛を頼む為に『女性の面々で』という事だっただろう――そこにいるのはどう考えても男ばかりではないか!! これは一体どういう事だ!!」

 指差す警備責任者。そこにいたのは……
 ――キドー (p3p000244)
 ――新田 寛治 (p3p005073)
 ――グドルフ・ボイデル (p3p000694)
 ――彼者誰 (p3p004449)
 ――郷田 貴道 (p3p000401)
 どこからどう見ても男ばかりです。特にグドルフとか貴道とかキドーとか120%以上無理がある! なんだこれは!! どういう事だ!!
 しかし聞いてほしい! これには重大な理由があるのである!! そう、それは!!

(――うっかり用意してた馬車間違えたんだよなぁッ!!)

 ギルオスは頭を抱えそうになる。事の始まりは約数時間前!
 元々彼者誰達一行は別の依頼に赴く予定だった。山の中に現れた超絶珍しい……なんでも男だけを狙う、人の体に牛の頭を持つ怪物を倒す為――現地に行く為――ローレットに用意された馬車に乗り込んで――
 そしてここで間違えた。
 馬車を!! 辿り着いたのは山の中どころか貴族のパーティ会場!!
 気付いた時にはもう遅い。もうパーティは始まる直前で、今更メンバーの変更などと間に合う筈がない。故に――故に――そう!!
「ハハハ何を言ってるんだい。
 ――どこからどう見ても全員女性じゃないか!! 君達目ぇ腐ってるんじゃないか!!?」
「目が腐ってるのはお前だろうが――!!?」
 間違っているのはお前達だと強引に説き伏せる!!
 まさか皆さん、見た目だけで人を判断しているのですか? 確かに彼らはちょっぴり筋肉質な者が多い――やめてくれ貴道ポーズを取らないでくれ――が、それは失礼というものだろう。しかも見てくれ。

 彼らが着ている物は全て 女 性 モ ノ である。

 どこから仕入れたとか聞くな。いくら何でも無理めな女装とか言うな。女性なんだから女性モノの服を持ってておかしい事はないだろう。やめろキドー!! もうちょっと女性らしい、お淑やかな笑顔で頼む!! ゴブリンっぽい笑みは止めてくれ頼む!!
 警備の連中の視線がやばい。くそ! どうしてこんな事に!!
 もう泣きたくなってきた。だけどやらない訳にはいかないんだ。
 僕達がこの場に介入できるかによって……一人の少女の運命が決まるんだから。
『仕方ねえ、やってやろうじゃねえか!!!!!』
 そう彼らも力強く頷いてくれた。ならば、そう――
 この面子が女性だと言い張る事に――なんの躊躇いがあろうか!!
「まだ疑ってるのかい? なら依頼人のあの方を呼んでおくれよ! 皆が女性だって説明してやるよおらぁああああッ!!」
「お前それホントに説明できんだろうなぁあああ!? 閣下を呼んでくるぞぉぉおお!!」
「上等だよさっさと呼びなよ、ぼかぁ正気だぞおおおおお!!!」
 もう勢いで行くしかない。止まるな、考えるな、感じろ。ともあれ少なくともローレットのイレギュラーズである事だけは信じてもらえているので中に入るのは――かなり強引にだが――まあ出来るだろう。
 アイコンタクトで寛治らと刹那の会話を。
 男性では駄目だ。警備の者が言ったように、ここは男子禁制のパーティ会場……男性だと知られれば強制的に排除される事だろう。故に女性の面々をと頼まれた依頼だったのだ。
 だったのだ。だったから!! 頼む君達!! 頼む――!!
 なんとかするから!! せめて気持ちだけは女性の心境でいてくれ――!!

 あ、いや違う! 女性の心境などと、ははは何をトチ狂った事を。
 彼らは女性だ!! そうだ、心の底から『そう』だと信じなくてどうする!!
 女性の道は信じる事から始まるんだ!!

 さぁパーティが始まる――頼んだぞ!
 キドー! 寛治! グドルフ! 彼者誰! 貴道!!
 君達は、まごう事無く……女性なんだから!!

GMコメント

 ??? ? ???? ???????
 私は正気です。正気だ!! 止めろ、疑うんじゃない!!
 リクエストありがとうございました!! 以下詳細です!!

■依頼達成条件
 パーティ主催者のご令嬢を暗殺から護る。
 女性として。【重要】
 暗殺者を捕らえるまで男性だとバレない。

■戦場……戦場???
 とあるパーティ会場です。
 貴族の交流の為に開かれている場ですが――ここに暗殺者がいるとの噂が。
 狙いは主催者の娘、シンシア。貴方達はパーティに紛れながら彼女を護衛してください。

 女性として。

 女性としてです!!(重要)
 元々はこの女性だけのパーティ会場に不自然ではない女性陣を依頼メンバーとして頼まれていました。が、仕方のないやんごとなき事情により皆さんがここに到着してしまったのです。
 今更メンバー変更の時間はありません。パーティは始まります。
 暗殺の刃から一人の少女を護ってください――女性として。

 この依頼の成否は皆さんの気持ち次第です。
 諦めずに女性を演じてください。女性の心で、場を切り抜けるのです!
 そう貴方達は女性! 貴方も貴方も貴方も貴方も女性! 間違いない!!

 ギルオスが無茶苦茶カバーしますので、諦めないで!!
 諦めたらそこで依頼終了だよ!!

■護衛対象:シンシア・クローバー
 クローバー家の御令嬢です。本パーティ主催者の親族。
 とても礼儀正しくお淑やか。整った容姿と靡く髪は美しく、正に『華』たる人物です。ちなみに彼女、すっごく純粋なので皆さんが『女性』だと言えばあっさり信じる事でしょう。彼女はね? 周囲は分からないけどね?
 そんな彼女ですが、暗殺者に命を狙われているという噂があります……

■暗殺者×1
 シンシアを狙う暗殺者です。いるかは『噂』と言われていますが、います。
 パーティ参加者の一人を装い、シンシアを狙っている様です。狙うはナイフでの一撃……素人ではないので、探知系スキルによる探査の対策はしている事でしょう。シンシアに近付く者をしっかり見張っておく必要があるかと思います。
 戦闘能力は不明ですが、一人ですし大した事はないでしょう。

■ギルオス・ホリス(p3n000016)
 どうして巻き込んだ。言え!!(
 皆さんが『女性』であると言い張り続けます。ギルオス自体は女装していませんが、代わりに警備の面々を滅茶苦茶説き伏せて、時として可能な限り皆さんをカバーします。パーティ会場の隅っこの方には入れてるようです。がんばる。

■その他
・なんかどっかからか女性ものの服は調達しました。
・サイズが合ってるかは不明です。
・とりあえずそういう事なので、服の問題は大丈夫です。服は。あとは気持ちだぜ!

  • みんな婦女子ヨシッ!完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月23日 22時16分
  • 参加人数5/5人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 5 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(5人)

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!
郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
グドルフ・ボイデル(p3p000694)
彼者誰(p3p004449)
決別せし過去
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ

リプレイ

●地獄の始まりだぜ!
 その日のパーティは非常に煌めいていた。
 多くの淑女が集まるパーティは左を見ても右を見ても華ばかり。
 聞こえてくる言葉の節々からも高貴さが漂い、ああ正にこれぞ幻想の貴族社会――


「おほほほほごめんあそばせ~! あらやだお姉さまったら素敵なお召し物ね!」

 の、中を。
 駆け巡るのは『盗賊ゴブリン』キドー(p3p000244)ちゃんである。
 キドー、ではない。キドー『ちゃん』である。間違えるな!! 彼女はいたずらっ子な天真爛漫なロリである。その緑色の輝きは正に妖精の様に。周りを興味深そうに眺める紅き瞳は林檎の様に。
 可憐だ……可憐だよね、可憐と言え。
 しかしそんなどこからどう見ても可愛らしいキドーちゃんが走り回っているのは――何も悪戯の為ではない。それはシンシアお姉さまを狙う不遜なクソ野郎を探す為の策である。小さく可愛らしい身体を活かしてコソコソと……
「静かに騒がずお淑やかに……殺意の気配を探り迎撃の準備を進めますの!」
「あらやだわキドーちゃん。単語がお物騒です事よ。淑女は淑女の言葉を使わなくては」
「ええ貴道お兄……貴道お姉さまの言う通りですよ、うふふふふ」
 そしてそんな元気いっぱいなキドーちゃんを眺める様に――もう服がパッツンパッツンの『人類最古の兵器』郷田 貴道(p3p000401)と『蛇』彼者誰(p3p004449)は口元を抑えつつ笑みを零した。おお、もう……
 キドーは百万歩譲ってアレだが、貴道ぐらいになるともうアレであるアレ。明らかに男性……
「あらやだ! どこからどう見ても女性でしょう? なんですその目は? 疑うのですか? ちょっとそこのお兄さんこっち来なさいですわ? 大丈夫ですよ、お話するだけですからね。ええそうそこの影に……あらどうして離れるのです? もういっぺん言ってみなさいですわ? あっ?」
「さぁ守衛のお兄さん! こっちこっちですよ! ちょっとお話しようね!」
 ヒィッ、と怯える守衛の一人。すかさずギルオスが割り込んでどこかへと連れて行く。
 全くもう失礼な輩ですわ! そう思う貴道の一挙一動――しかし何故か目を離せない。
 明らかに肥大した筋肉はとても女性とは思えず、今にも服は破けそうな程。しかしその輝きは何故だろうか……男性とか女性とかそういう疑問を腕力で投げ飛ばす程の――魅惑的カリスマ。
 ついぞ一度話してみたいと思わせる雰囲気。お嬢様空気に溶け込む貴道酸素――いや溶け込んでるのかこれ――? だが美を追求しすぎた結果アレな方向に突き進んでしまっただけの淑女にも見えてくる――そうかな――そうだよ――そうだと言え。
「うふふ。貴道お姉さまは相変わらずのご様子……さてワタクシは」
 そして彼者誰お姉さまが視るのは主役のシンシアである。
 彼女が狙われている……のだとすれば、防ぐには彼女の身の回りを固めるのが一番である。暗殺者が守衛か、それともパーティ参加者に紛れているのか分からない以上そこで待機するのが一番と。
「オホホホ、お隣宜しくて? ヤダァ〜〜! 噂通りの美人じゃなァ〜い!
 一度お目にかかりたいと思っていたのですわシンシアお嬢様~~!!」
 『山賊』グドルフ・ボイデル(p3p000694)お嬢様と一緒に警護に就くのである。
 いや違う間違えた。彼女はグドル子お嬢サマ。
 彼女は今にも裂けそうなドレス! 乱雑極まる汚い口紅! キンパツのウィッグに、何の匂いなのかもう不明な香水を纏った17歳(と396カ月)という若さでパーティ会場に訪れた淑女である――ッ!! 助けて――!! 化物――!!
「おや……これは初めまして! グドル子様ですか? とても大きな御方ですね!」
「ウフ♪ そうでしょう~? おれさ……ゲボォッ!! オホホ失礼! アタクシ、シンシアお嬢サマとお話出来るのを楽しみにしてましたのよ! うふふふアタクシのピチピチお肌よりも更にモチモチだなんて羨ましいですわ~♪」
 ドスの効いた咳払いが周囲から淑女の皆様方を安全に遠ざける。いや多分これ素だな……ともあれシンシアはそんなグドル子が醸し出す賊の雰囲気にも――気付かず? 笑顔のままで彼女と対話を。
 流石にあの声やばいだろ――違うだろ――
 そんな声がどこかの守衛からか聞こえてきたが、ギルオスガードがそちらにも入って。

「ついにワタクシも社交界Debutですわ。粗相の無いようにしなくてはなりませんわ!」

 同時。そんなシンシア周囲の警護が入ればと『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)が動き出す。その服装は流石と言うべきか、社交界に相応しきドレスコード。まるでウェディングドレスの様な造形を持つ、いわゆる『ボールガウン』というドレスで……
 おい!! 嘘だろ!!? ボールガウンですか!?
 ボールとは『舞踏会』と言う意味があり、ウエストから裾に掛けてスカートが膨らむ様に広がる形状を持つのがボールガウンだ。黒のロングドレスたるソレは寛治の下半身を見事に隠し――代わりに上半身がかなりギリギリである。
「……辛うじて。辛うじて上半身や腰回りが入りますわ。まぁなんとかなりますわね!」
 貴道達に負けず劣らずピチピチしている。ドレスの形状故か非常に腰から腹の辺りがキツイ様だが、これも一人の女性の命を守る依頼と思えば耐えるに充分。
 さぁどこからでも掛かってこい暗殺者よ。
 貴様の命はこの場に居る五人の男――じゃなくて可憐極まる女性陣によって阻まれるであろう! ていうか早く来てください。頼む! この地獄絵図、長時間になったらどうなるんだマジで!?

●「いやだから彼らは女性なんだって」「今『彼ら』って言った?」
「初めましてシンシアお嬢様。ワタクシ、彼者誰と申します。
 この度はこんなパーティにお招きいただき、至極恐悦ですわぁ」
「彼者誰様……初めまして。私、シンシア・クローバーと申します。どうかお寛ぎ下さいませね?」
 所作の一つ一つが丁寧に。成程これは確かにこのパーティの花だと彼者誰は感じる。
 同時に、だからこそ命を狙われるのだろうと。
 シンシアと会話を交わし、少しでも彼女の傍に居て不自然でないように務めんとする。メンバーの中でも比較的頑丈である彼者誰とグドル子がいれば即殺される事だけは防げる筈だ――時間さえ稼げば後は身軽なキドーや周囲にいる寛治。そして貴道の拳が暗殺者を始末しよう。
「それにしても噂以上にお美しいのですね。どんなお化粧品を使ってますの?」
「ええ。実はラサ経由で仕入れた深緑の秘蔵の化粧品を……ふふふ。こういう時、顔が広いと便利なものですね。と言っても私の伝手ではなく、お父様の伝手ではあるのですが……」
「あらあら。貴族であれば家の伝手も重要なモノでしょう。御謙遜なさらず。ワタクシはもう三十歳過ぎなので、基礎化粧品と仕上げパウダーだけはしっかりしてますわ」
 その彼者誰の容姿は――一見すると某蒼薔薇令嬢の様な様子を伺わせる。
 緩い三つ編みに紫の薔薇を髪に。黒と紫の薔薇のドレスで着飾れば、雰囲気は確かにそれ『らしい』気がしないでもない。ただ――件の令嬢よりも――その――非常に雄っぱいがかなり大きいのでアレだが――
「ごめん遊ばせ、胸はこんなにも豊満に育ってしまって……
 はしたなくしないので、許してくださいます?」
「ふふ。女性たれば悩みも色々ありますよね、彼者誰様」
 他愛なき会話。それでも注意は常に周囲へと。
 近付く者はいるか。怪しい者はいるか。
 殺意を抱いている者は? 或いはこちらを観察している者は?
 疑えばキリがないが――
「オホホホホッ! そうなのですの! おやところでシンシアお嬢サマ? お手元の酒……お酒が少なくなっているのでは? お代わりでも頼みましょうか?」
 両脇を固める様にグドル子もいれば万全というものだ。
 彼からは時折ドレスが破ける音が聞こえているが、頼む。数十分ぐらいは保ってくれ。このパーティが終わるまで……正確には暗殺者を捕らえるまで保てばいいのだ。頼む! ビリッって言わないでくれ!
「うふふお気遣いありがとうございます。でも私、実はお酒が苦手で……」
「あらあらそうなのぉ? じゃあアレだな。フルーツでもむしゃぶ……フルーツでも嗜んだ方が宜しいですわよぉ! パーティは続くんですから、水分はとっておかないと、おぉ!? ゲボッ、ゴボ、ホォ!!」
 言うグドル子は切られたメロンを一口に。大口開けて咀嚼して――たら気管に入ったようだ。また壮絶な低音を撒き散らして、ああもうなんたる惨状……シンシアが心配そうな表情で背中をさすってるが、本当にこのお嬢様まだ気付いてないのか?
 しかしあの二人が付いている以上そうそうに危険は迫らぬ事だろう。
 故に今の内にと寛治は。
「あら~~~奥様~~~お久しぶりです~~~こんな素敵な場所でお会いできて嬉しいですわ~~~~! 何も聞かないでくださいまし~~~!」
 寛治は――己がコネクションの『知古』に話しかけ、情報を探る。
 それは『見知らぬ人、見覚えのない人』がいないか、と言う事である。この場にいるのは貴族達……しかし貴族の者が直接刺客となるとは考えにくい。ならば『貴族のフリをしている』者が紛れ込んでいるとみるのが定石であろう。
 ならば貴族の誰も知らぬ者――それが暗殺者候補として目星となる。
 ……まぁ代わりに! 知古の者達から凄い目で見られてるが!
 が! 彼はイレギュラーズなので! 色んな事情があると思われて済むだろう! 多分!
「わたくし社交界Debutでして……『レディ』として失礼な振る舞いが無いか心配ですわ。ええ、わたくし『今日はレディ』ですから! お分かりでしょう? 『レディ』の日の意味を……おほほほっ」
 意訳すると『いいから自分の性別のことには触れるな』と。
 口調こそ穏やかだが瞳に携えし意思は『分かってるな?』と。
 握手をしながらその手になんぞやの紙を散財する様に投げ捨てて……有無を言わさず口止めを。

「いいかしら、皆様? 美の形は人それぞれなの、分かるかしら?
 そう――ワタクシが辿り着いたのはこの形、そう、究極の肉体美よ!」

 そしてふと、寛治が視線を巡らせれば――そこで大演説をしていたのは貴道だった。
 まるでそれは講演会。彼の一挙一動から紡がれるカリスマ性に皆が惹かれている。
 もはやその在り様からすれば筋肉の量など些細な事。
「ええ、大丈夫、だってボディメイキングという分野でワタクシの右に出るものなんてそうは居ないもの、見れば分かるでしょう? ほら、見て……この上腕二頭筋……美しい肉体を作るという事は、そう難しい事ではなくてよ?」
 ――美のカリスマの前には――性別の問題など霞むのである――多分――
 いやあれやっぱおかしくね? とちょっと離れている位置に居て冷静な守衛さん達がひそひそと話を始めるが、そこは安心のギルオスガードです。あれは女性の演説なのだと。彼の演説をもっとよく聞いて見てくれ――違った彼女の演説――と必死である。
 であれば段々と人の偏りが生じ始めた。
 主役であるシンシアの周りはグドルフ達の圧が。
 貴道が一部を引きよせ、それを遠巻きに見ている者達などなど……
「……暗殺者がいるとすりゃあ、流石に冷静な筈だ。貴道の周囲からは外れて、シンシアの機を伺ってるとすりゃあ……遠巻きに見ている連中の中に、いる、か?」
 貴族か、会場のスタッフか。
 キドーの素早さは更に可憐に、美しく、優雅に。まだ可能性は幾らでも考えられる――身軽に行動できるのはスタッフの方だが、凶器を隠すだけならドレスの一部分でもいい。まだどちらと決め打つ事は出来ない。
 そして相手もプロならそう簡単に尻尾は出さないか――
 忍び足で少しでも気配を消し、静かに素早く妖精の様に! キドー妖精はその小ささから会場の家具の影に身を潜め、テーブルクロスの下に紛れて周囲を観察。うふふ、さっきもいったでしょ? キドーちゃんは元気一杯な末っ子お嬢様……パーティ会場すらかくれんぼの現場なのよ?
「ね、ギルオスお兄様♪ ところでとてもいい気分になる白いお煙が出る棒状のモノ、もってらっしゃる?」
「ハハハキドーちゃん――もう少し我慢しようね!」
 正直女装云々以前に煙草吸えないのがそろそろキツイ。ふぅ、いけませんわ淑女たる者、ニコチンを取れないぐらいで汗をかき始めるだなんてそんな……

 と、その時。

 誰かが『違和感』を感じた。それはほんの微かな、気のせいかもしれない程の些細。
 しかし人を押しのけ、あるいは集め。そしてある程度特定していたが故に感じ取れた些細な違和感。
「暗殺者が……動きましたか?」
 寛治も感じ取ったその些細な違和感とは。
 きっと、何者かが事を起こそうと動き始めた――『殺意』の起動であったのだろう。

●なんだアイツら……?
 暗殺者は感じていた。このパーティ会場になんかやたら変な奴らがいると。
 特にあの筋肉の象徴みたいに目立っている奴はなんだ――? マジでなんだ――?
 しかし関係ない。
 目標であるシンシアは只のお嬢様。首を一閃すればそれだけで死ぬ女だ。
 必要なのは一秒で十分。
「――」
 忍ぶ足。
 足音を消してシンシアの方へと近付いていく。
 こっちの方にも変な奴がいるが気にはしない。さっきも言ったように。
 一秒あれば十分なのだから――

「おう、やっと来たのかよテメェはよ」

 だが、その時。
 背後から近寄りつつあった暗殺者の方を――グドルフの瞳が捉えた。
 そんな馬鹿な。何故気付いた。そう思いはするが、逃がす訳がない。
 更なる行動をさせるよりも先に彼の拳が叩き込まれて。
「オラァこのアタクシを敵に回してタダで済むと思ってんじゃねェですわよォ! ボケェッ!」
「――!? グ、グドル子様!? なにを!?」
「ああご安心を、シンシアお嬢様。ワタクシ達が絶対護ります」
 高められた身体能力が暗殺者を穿つ――次いで彼者誰の一撃も叩き込まれれば、二人してシンシアの前へ壁となる様に。
 肉壁上等。シンシアを安全地帯にまで連れて行く!
「ぐっ――貴様ら、何故――」
「へへ、油断しましたわね! パーティ会場で足音を消す貴族なんて――いやしませんのよ!」
 そこへキドーが吶喊。
 何気ない会話や、靴の音の有無を捉えんとしていたキドーだからこそ気付いたのだ。シンシアの方へ近付く影の中に『足音が無い奴』がいる、と。
 気配を消すのはプロとしては見事だ。
 勿論群衆の中にいる一人であれば気付けなかったことだろう。
「でもねぇ、ちょっとずつ特定した後であれば――話は別なのですわよ!!」
 そこへ貴道の打撃。男だろうがお嬢様だろうか関係ない全力パンチ!
 生じる戦闘――であれば一気にパーティ会場は喧騒の渦へと至る。
 我先にと逃げ出す貴族の皆様――その波に埋もれ守衛が奥へと進めぬ――が。

「――ちょっとよろしいかしら『お嬢さん』?」

 今更逃がすはずもない、と。寛治が暗殺者の身柄を確保せんとする。
 床に抑え込み腕を固定して。身体を探れば――出てくるナイフ。
 ドレスの内側に備えてあったようだ。やはりここか……そしてコイツ、格好こそ女性であるが。
「やはり『男性』ですね。我々と同じように潜んでいた訳ですか」
「あらあら――でも顔はパッと見、女性ですわね」
「ふふ、女性のフリだっていうなら決してワタクシ達だって負けてません事よ!」
 彼者誰や貴道達も確認した。成程……ここにはまだ女性のフリをした男性が紛れていたと言う訳か。やれやれなんてパーティ会場だ……こんなに女装した奴が混ざってるとか……
「あ、暗殺者――!? も、もしや貴女達は……!」
「これはお初にシンシアお嬢様。いえ、我々は――手違いで此処に来ただけですので」
 命を救われた事に礼を言うシンシア――だけどもしかしてまだ女性だと思ってるのか。寛治の言う様に彼らが此処に来たのはガチで、ただの偶然なのだが。
「あ~……もういいか? もういいよな? ちょっと、マジ、煙草吸いてぇ!」
「ああいいよ皆ご苦労様! 色々あったけれどこれで何もかも万事解決――」
「そうだな! シンシアは助かった、暗殺者は捕らえた! 正に大団円って奴だ――ゲハハハハ!」
 外に向かうキドー。入れ替わる形でギルオスが中に入ってきて、その肩を掴む様にグドルフが満面の笑みを浮かべれば。

「ってんな訳あるかあ! ギルオス、オラァ! テメエもこの地獄を味わいやがれ!
 なんぼなんでもキツイわオラァアアアアアアアアッ!!」

 わああああやめろぉおおお!! とばかりに取り押さえられるギルオス。
 いや本当に只の手違いだったんだって! 何もかも解決したからいいでしょおおおお!! 本来であれば山奥に出現した何かよく分からない魔物みたいな奴を倒しに行く依頼だったのだが……
「Homotaur……ウッ頭が。これ正しい馬車だったら、もっと大惨事だったのでは?」
 呟く寛治。ない筈の記憶が疼き、なぜか悪寒がして。
 ともあれこれで暗殺の影が潜む社交界は幕を閉じた。
 男達の戦いは見事成し遂げられたのである――でもなんか記憶から消したい気もするね、この地獄絵図!!

成否

成功

MVP

キドー・ルンペルシュティルツ(p3p000244)
社長!

状態異常

なし

あとがき

 地獄だったぜ……と言う訳でリクエストありがとうございました!!

 とても……とても凄い依頼だった……とても……やばかった……

 なんか、もう、こう……皆さん凄かったんですが、暗殺者を見つけた妖精キドーちゃんにMVPを! おめでとうございます!!
 と言う訳でありがとうございました!!!!!!!!!

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