PandoraPartyProject

シナリオ詳細

主奪われし老鬼の願いたるは

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●幸福の終焉
 とある八百万に使われている、その獄人の朝は早かった。日が昇る前から目覚めて身支度を整え、日が昇る頃には主人の住む屋敷へと訪れる。若い頃は無理矢理連れてこられた反抗心もあったが、自身は老いて主人が代替わりするにつれ、主人への奉公がその獄人の全てとなっていた。
 何しろ、この年になればもう他に生きる術は無い。高天京の外に捨てられれば飢えて死ぬだけの運命だ。であれば、幸いにも自身を大事にしてくれる主人に生を終えるまで仕えるのが、余生少ない獄人にとっての幸福であった。

 ――だが、その幸福は知らぬ間に終わりを告げていた。
 主人の屋敷を這う蔦が、禍々しく変容して屋敷の中に入り込んでいる。
「主殿!」
 嫌な予感に捕われた獄人が、慌てて屋敷の中へ駆け込んでいく。すると、その中には蔓に捕われ無惨にも干からびた八百万の亡骸があった。
「ああ、ああ。何故に斯様な……」
 悲嘆に暮れつつ獄人は主を蔓から解放しようとするも、果たせなかった。蔓が触手のように蠢き、獄人を絡め取らんとしたからだ。ゾクリ、と危険を感じた獄人はすぐさま逃げ出し、屋敷から飛び出した。
「はぁ、はぁ、はぁ――おお、おおお……坊(ぼん)、坊……」
 体力の限り走ったところで獄人の息が切れ、足が止まった。そこで獄人の脳裏に、幼かった主人、少年の頃の主人、成人したばかりの主人、そして今の主人との思い出が次々とよぎってくる。すぐさま、嗚咽が込み上げてきた。

●遺体回収と敵討ちを
 依頼があると集められたイレギュラーズ達の前に、『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)が姿を現す。その後ろには、老いた鬼人種が従っていた。
 勘蔵はイレギュラーズ達の集まってくれたことへの礼を述べると、依頼人だと老鬼人種を紹介して、話をするように促した。
「どうか……どうか、化け物と化した蔦より主殿の遺体を奪い返して、敵を取って下され!」
 今にも泣きそうな表情で、老鬼人種は懇願する。そして、自身が見てきたことを話した。
「報酬は、これに用意して御座います。どうか、どうか……!」
 銭が入っているのだろう、パンパンに膨らんだ布袋を懐から取り出して、頭を下げる老鬼人種。少し間を置いてから、勘蔵は話を引き継いだ。
「……この報酬は、主人が与えてくれた褒美を貯めておいたもので、彼の全財産だそうです。
 それを擲ってまでのこの依頼、どうか、皆さんのご協力を頂けないでしょうか。是非とも、よろしくお願いします」
 神妙な面持ちで勘蔵は訴え、老鬼人種と同様に頭を深々と下げた。

GMコメント

 どうもこんにちは、緑城雄山です。
 今回は、突如凶暴な吸血植物に変わってしまった蔦を倒し、依頼人の主人の遺体を奪還して下さい。よろしくお願いします。

●成功条件
 仮称「吸血蔦」の退治

●失敗条件
 「主殿」の遺体の破損

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●吸血蔦 ✕1
 元は依頼人の主人の家に這っていたただの蔦でしたが、突然凶暴に変異して依頼人の主人の命を奪いました。その遺骸は今も捕えたままです。
 命中とEXAが極めて高くなっています。
 HPは蔓の多さとして扱われ、切り払うなり引き千切るなりして蔓を減らしていけばHPも減少するものとします。根元のみ(HP0)にしてしっかりと掘り返せば、吸血蔦は死亡します。

・攻撃手段
 絡みつき 物近単 【無】【災厄】【停滞】
 締め上げ 物至単 【防無】【災厄】【呪縛】
 吸血 物至単 【弱点】【疫病】【瞬BS】【失血】

・攻撃パターン
 まず、絡みつきで敵に【停滞】のBSを与えます。
 BS【停滞】を受けている状態が、給血蔦の蔓に絡みつかれている状態となります。
 次いで、【停滞】のBSを受けた敵に対し、締め上げか吸血を行います。

●遺体奪還について
 依頼人の主人の遺体を奪還するには、吸血蔦のHPを0にする必要はありません。
 遺体に絡みついている蔓を切っていけば(その部分を攻撃してHPを一定以上減らせば)、奪還出来ます。
 ただしその場合、遺体を損傷させないよう注意深く攻撃する必要があるため、命中にペナルティーが入ります。

●注意事項
 このシナリオにおいては、遺体損壊と家屋炎上の危険性があることから「火気厳禁」です。
 「火属性」と判断される攻撃を行った場合、また、【火炎】【業炎】【炎獄】のBSを付与する攻撃を行った場合、家屋が炎上して遺体が損壊しシナリオが失敗する可能性が発生します。
 この可能性については対象の攻撃が行われる度に判定が行われ、失敗の可能性はその都度累積して上昇します。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております。

  • 主奪われし老鬼の願いたるは完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年08月23日 22時16分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

楔 アカツキ(p3p001209)
踏み出す一歩
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
陰陽 秘巫(p3p008761)
神使
ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)
無銘クズ

リプレイ

●老鬼人種の想いに答えん
「んんん! 老鬼人種殿の主人への忠義、我輩感動でありますぞ!
 亡くなった命は戻らぬとはいえ、せめて遺体だけでもキレイな状態で取り戻さねばですな!
 吾輩、協力は惜しまないですぞ!」
 感極まった様子で、『(*'ω'*)』ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)は依頼人の鬼人種の手を取って叫ぶ。その勢いは、依頼した老鬼人種の方が引き気味になるほどだ。
(……この国の鬼人種は虐げられていると聞いていたが、主人想いの鬼人種もいるのだな。
 その想いに応えるだけの仕事をこなそう。一刻も早く亡骸を救い出し、この老人の元へ帰らせるとしよう)
 一方、『踏み出す一歩』楔 アカツキ(p3p001209)はジョーイとは違って声に出しこそしなかったものの、老鬼人種の主人への思いに内心で静かに感嘆していた。
「全財産を出して……かぁ。それだけ、おじいさんにとって主さんは大事な人だったって事だよね?
 ――だったら……うん、任された! おじいさんの想いを背負って、必ず務めを果たしてみせるよっ!」
 『不屈の壁』笹木 花丸(p3p008689)は、全財産まで費やすと言う老鬼人種の覚悟を汲み取り、力強く任務の完遂を誓ってみせた。

「吸血蔦ねぇ……ただの蔦が急に変異して人に襲いかかるものなのかがちょっと気にはなるけど……」
「突如変貌した蔦……臭いよなぁ。最近豊穣を悪い意味で賑わせているアレの感じがするが、さて」
 依頼人と情報屋が退出した後、『流離の旅人』ラムダ・アイリス(p3p008609)と『魔剣鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が吸血蔦についてつぶやきあう。ラムダにも錬にも、心当たりはあった。錬の言う「アレ」、すなわち肉腫である。
「――まずは、お爺さんのお願いを遂行しないとね」 
「そうだな、まずは依頼だ。主を思う忠臣の心意気、是非とも果たさないとな」
 だが、蔦が吸血蔦になった原因を考える前に、やるべき事がある。二人は、そちらの方に思いを致した。

 太陽が天高く昇った頃、イレギュラーズ達は被害者の屋敷に到着した。屋敷の壁を這っている蔓が色形共に禍々しく変異しており、屋敷の中へと入り込んでいる。
「……この蔦を搔い潜って遺体を破損しないように回収は、難易度高いなぁ」
 その様を見て、半ば呆然とラムダはつぶやいた。しかし、やるしかないのだ。
 生者の存在を感知してか、蔦の蔓はざわざわと蠢き出す。そんな中、イレギュラーズ達は屋敷の中へと飛び込んだイレギュラーズ達は、血を失って干からびた老鬼人種の主人の遺体と遭遇する。
「……はれ、まぁ。ほんまに、こないなことになっとるとはねえ。
 でも、ねぇ。そのお人の還る場所は、汝(あなた)やのうて、遠い遠い──常夜の国なんよ。
 せやからその体、返してもらうな」
 聞かされていたとおりの惨状に、『神使』陰陽 秘巫(p3p008761)は敢えて動揺していないかのように装いつつ、決然と吸血蔦に向かって言い放った。
(――死んだ人は生き返らない。それは自然の摂理だけど)
 それでも、と『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)は歯を食いしばる。
「せめて、聖職者として遺体だけは弔うよ!ㅤ待ってて鬼じいちゃん!」
 間に合う限りにおいては、最高の結果を出したい。そのためにも、遺体は必ず奪還すると、茄子子はこの場にいない依頼主に向けて叫んだ。
 吸血蔦を前に、『never miss you』ゼファー(p3p007625)の脳裏には涙を堪えて懇願する老鬼人種の表情が浮かぶ。
(――全く、やりにくいったらないわねぇ。
 あんな顔されちゃあ、揺り動かされるものがあるってもんだわ?)
 ぎゅう、と愛槍『run like a fool』を握り、ゼファーは迫り来る蔓にその穂先を向けた。

●遺体を無事に奪還すべく
 依頼人の主人の前で動きを止めたイレギュラーズ達をめがけて、吸血蔦の蔓が伸びてその身体を絡め取らんと襲いかかる。蔓はその場の全員を狙って絡みつこうとしてくるが、イレギュラーズ達の大半は絡みつかれないように対策を整えてきている。
 結果、ラムダだけが蔓に捕えられることになった。
「残念だけど、会長がいる限りだれも立ち止まったりなんてできないよ!!」
 だが、茄子子の飛ばしたアドバイスによって、ラムダはするりと蔓から脱出した。
「――ありがとう。助かったよ」
 蔓の拘束から抜け出たラムダは、ホッとした様子で茄子子に礼を述べた。
「かかってきなさい! 私は、あんたが抱えてるそれを取り返しに来た!」
 言葉が通じるか通じないかなどどうでもよいとばかりに、ゼファーは敵意を吸血蔦にぶつける。その敵意に煽られたか、蔓の先端が一気にゼファーに向いた。
「――君が奪ったもの。彼が大事にしていた人を返してもらうよ?」
「ゆっくり、慎重にでありますぞ」
 花丸は、遺体に絡みつく蔓をその手でとにかく引き千切っていく。ジョーイが生み出した疑似生命達が、わらわらと遺体の周囲の蔓に取り付き、花丸を手伝うように蔓を次々と切断していった。
(ほなら、ゼファーはんの盾になりましょか。その分妾(わたし)は攻撃できひんけど、そこはそれ。
 ないも同然の攻撃よりも……何度首が落ちても蘇る、蘇るたんびに敵はんを惹きつける。
 それが妾(わたし)の戦いでの役割なんよ)
 ゼファーが吸血蔓の注意を引くのに成功したのを見て、秘巫はゼファーを庇いに入った。
(これはなかなか……神経を使うね)
 『蛇腹剣 "咎喰"』を慎重に振るいつつ、ラムダは遺体から少し離れた部分を狙って、絡みつく蔓を断ち切っていく。
(……兎に角、遺体を救い出してしまわねばな)
「何を思って捕えたかは知らんがな、そんな棺は職人として落第点を出さざるを得ないな!」
 アカツキと錬も、遺体を捕えている蔓を断ち切りにかかる。他の仲間が蔓を切断するのを観察していた後だけに、二人の攻撃は遺体を蔓の束縛から解放するのにより効果を発揮していた。

●奪還、完了!
 流石に茄子子と秘巫を除く六人がかりで次々と蔓を断ち切っていけば、遺体の奪還までそう時間はかからなかった。
 吸血蔦は次々とイレギュラーズ達に向けて――正確にはゼファーに向けて――その蔓を絡みつかせんとするも、ゼファーの盾となった秘巫には蔓を絡みつかせることが出来ずに終わる。そのため、イレギュラーズ達が遺体に絡みつく蔓を切断するのに専念出来たのも大きかった。
「――よし!」
 遺体が完全に蔓から解き放たれたのを確認した錬が、遺体を抱き抱えて屋敷の外へ出る。遺体を破損させずに奪還するという依頼主の要望は、これで果たしたも同然だった。あとは、吸血蔦を根元だけにして、その根を掘り返して枯死させるだけである。
 そして、もう遺体の破損を心配せずに済む以上、イレギュラーズ達は全力を出せるというものであった。屋敷の損壊についても、花丸が屋敷への突入時に保護結界を展開しているため戦闘の余波で壊れることはない。

「嗚呼……ごめんな。妾(わたし)、首を落とされるのは構へんけど……簡単に体へ触れるのを許すほど安い女やあらへんのよ。
 ちゃあんと、対価を払うてからおいでな」
 吸血蔦はゼファーを狙い続けるが、ゼファーを庇い続けている秘巫に蔓を絡めることが出来ずに終わる。
 そうなると、あとはもう戦闘ではなく作業だった。
「さあ、ここからは全力だよ!」
 花丸の両手が、吸血蔦の蔓をブチブチブチッ! と千切っては投げ千切っては投げる。
「あとはジャンジャンバリバリ引っこ抜きですな!」
 ジョーイも、疑似生命に手伝わせつつ蔓をどんどんと引き千切っていく。主人の部屋まで伸びていた蔓は、庭までその勢力を後退させられる。
「さぁて、ここまで我慢してた分やり返すわよ!」
 ゼファーは神速の突きを、蔓が集中している部分をめがけて放ち、そこに穴を穿つ。穴の周囲の蔓が、力を失い萎れていった。
「もう、後は枯れるだけだよ……」
 秘巫が蔦に捕まらず回復の必要が無いとあって、茄子子も攻撃に回る。何処かから不気味な声を響かせ、吸血蔓の生気を奪い取っていった。
「――まとめて、刈り取ってあげる」
 ラムダはもう気兼ねする必要がないとばかりに蛇腹剣を縦横に振るい、蔓を次々と薙ぎ払っていく。屋敷の塀の側まで、吸血蔓の蔦は刈られてしまった。
「はあああああっ!!」
 アカツキは気合いと共に己の意志力を破壊力へと換えて、『リベリオン』を蔓の太くなっている部分へ叩き付ける。手甲は蔓を圧し潰し、赤い液を滲ませた。
「俺は、安全圏から撃たせてもらおう」
 屋敷の外に出た錬は、精神力を弾丸と化して壁を這う蔦に叩き付けていく。蔓には次々と穴が穿たれ、その先を萎れ弱らせていった。

 そうしているうちに、吸血蔦は根元から上を全て断ち切られて、活動を停止させられた。さらに、イレギュラーズ達は根を全て掘り起こして、天日に曝して枯死させる。これで、吸血蔦の退治は成ったのだ。

●突然変異の裏
「いやー、どう考えても突然変異なだけとは思えませんですぞ」
「やはり、蔓が急に変異した事には何か原因があるのだろう」
「そうだよね。突然蔦が凶暴に変異って普通は起きないだろうし」
 吸血蔦の退治を終えたところで、ジョーイがつぶやき、アカツキと花丸が応じる。それは、他のイレギュラーズ達も同感だった。
「巷で騒がれている肉腫案件だとは思うけど……一応は調べておかないとね。
 結構な身分だったみたいだし、怨恨とか嵌められてこんな目にあっていたのだとしてボクたちがスルーして帰ってたら目も当てられないしね?」
「……肉腫は突然変異するものではなく『そう』生まれるものだと聞く。
 今回はそうでないから、蔦に感染させた何者かがいるのだろう」
 そして、ラムダが言うように、蔦が突然変異したのは最近豊穣を騒がしている肉腫である可能性は高かった。肉腫であるなら、錬の言うとおり何者かが感染させたことが原因となる。
 かくして、原因の調査が始まった。それらしきものはなかなか見つからずに調査は難航したが、花丸の一言がその流れを変えた。
「植物に何かやるんだったら、根元……じゃないかな」
 それはあくまでただの勘だったが、他に有力な手がかりもない。それに、植物に影響を及ぼすなら根と言うのは、道理ではある。イレギュラーズ達は、吸血蔦の根元を中心に原因を探す。
「……アンタは、昨晩蔦が何かされてないか知らないか?」
 錬は、蔦の根元の側の壁に話しかける。壁からは、何者かがしゃがみこんで蔦の根元に何かをしたと言う答えが返ってきた。それ以上の情報は壁からは得られなかったものの、やはり何者かが蔦を肉腫に感染させたのはこれで間違いないと判明した。
「見つけたよ!」
 それからしばらく根元の調査が続いたが、ラムダが突然叫んだ。ラムダが見つけたのは、根元に刺さっていたごく小さく細い針。自然にこんなものが植物に刺さっているはずがない以上、感染源はこの針だと断定された。
 ――ただ、何者がこの針を蔦に刺したのかは、不明のままだった。

 依頼主の主人の遺体は、河原で荼毘に付された。
 ゼファーは、遺体を老鬼人種の前まで運んだ時のことを思い出していた。
 老鬼人種はイレギュラーズ達に丁重に礼を述べると、一刻の間延々と泣き続けたものだった。イレギュラーズ達としてはこれで仕事は終わりではあったのだが、流石に老鬼人種をそのままにはしておけず、葬送まで付き合うことになった。
「形だけの葬式よりも、心を込めて出来ることをやって送ってあげた方が、主人もきっと幸せなはずよ」
 葬式を出せないことを詫びる老鬼人種に、ゼファーはそう告げて慰めたものだった。
 やがて、荼毘の炎が鎮まる。老鬼人種は火箸で主人の遺骨を骨壺に入れていく。イレギュラーズ達もいくつかの骨を骨壺に入れた。そして頭蓋骨を骨壺の上部に入れると、老鬼人種は骨壺の蓋を閉じた。
「……この度は、本当にありがとうございました。主殿も、草葉の陰で喜んでいるでしょう」
 深々と頭を下げて、老鬼人種は改めて礼を述べて河原から辞そうとする。その丸まった背は、あまりにも寂しく、哀しいものだった。
「――『死んだものは片翼を得るだろう。もう片方の翼は、生前最も親しかった者に宿り、二人が再開することによって、天へと至れるのだ』
 これは、羽衣教会の教えだよ。天国へちゃんと行くためにも、キミは今世を全うするべきなんだ。
 大丈夫、主人はきっと待っててくれるよ!ㅤだって、キミはそんなにも主人のことを想えてるんだもの!ㅤ会長のお墨付き!」
 茄子子は背を向けた老鬼人種に駆け寄ると、励ますように声をかける。今は悲しみの最中にいるのは仕方ない。だが、いつまでもそれに囚われていたり、あまつさえ殉死を選ぶようではいけない。果たして、それを主人が喜ぶだろうか――。
「そう……でしょうか? おお、おおおお――!」
 荼毘の間は辛うじて堪えていたのであろう、老鬼人種の嗚咽が河原に響く。
(……ほんに、そうやったらええなぁ)
 此岸でしっかり生き抜いた老鬼人種が彼岸で主人と再会できると言う茄子子の教えを信じたわけではないが、秘巫はそうあって欲しいと思うのだった――。

成否

成功

MVP

楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾

状態異常

なし

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。吸血蔦は退治され、主人の遺体は無事に老鬼人種の元へと奪還され、その魂は送られていきました。

 MVPは、依頼主の心に救いを与えた茄子子さんにお送りします。

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