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シナリオ詳細

勇者進水GC:よみがえるメガロビア

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●よみがえるメガロビア
 波を切り裂いて走る水上船底。一人乗り用の水上バイクを操作して、全身を鋼の装甲で包んだ秘宝種(レガシーゼロ)たちが突き進む。

 ――それは忘れられた島だった

 のどかに暮らす少年少女とその両親。
 港にとめた小さな漁船からおりた男が、幼い娘を抱き上げる。

 ――それは眠りについた島だった

 漁船までの距離二百メートル。水上バイクの秘宝種は黒い棘突き鉄球のような鎧を動かし、海賊のキャプテンハットめいた頭部から伸びたアンテナ先端を点滅させた。
 海中に潜っていたであろう複数の秘宝種たちが両腕に装備したマリンスクーターを加速させ、まるで飛行するような姿勢で白い泡を発しながらバイクの左右で陣形を組み始めた。

 ――ある日、竜の覚醒と共にそれは目覚めた

 近づく集団のモーター音に気づいて、漁師の家族たちが沖へと振り返った。

 ――それらは使命だけを思い出した

 水上バイクの上で秘宝種……キャプテンブラックブランは手をかざし、同時に周囲の秘宝種たちは背負っていたミサイルランチャーを海上へ露出。
 キャプテンBBがスッと腕を下ろした。

 ――使命は『略奪と破壊』だった

 一斉に発射されたミサイルが漁船を、家屋を、そこにあったものもひとも何もかもを、炎との中に飲み込んでしまった。
 バイクをとめ、上陸するキャプテンBB。
 秘宝種兵たちもまた、ざばあと海水を垂れ流しながら立ち上がり、砂浜を歩き始める。
 彼らは装備していたサブマシンガンや斧を手に取り、爆発を聞きつけてやってきた住民達へと射撃。
 訳も分からずに襲われた人々へと、熱く輝く斧を叩きつける。

 ――彼らは、己をこう名乗った
 ――『メガロビア』


 ここは海洋王国の中継基地とされているとある島。
 蒼い秘宝種グッドクルーザー (p3n000117)は、海洋海軍将校デリンジャーと共にホワイトボードをにらんでいた。
 ボードに記されたのは海洋王国南島にある島々。その多くは漁業を営む平和な地域で、これまでさしたる脅威にもさらされていなかった場所だが、それらが最近突如として虐殺と略奪を受けているという報告を受けたのだった。
 住民は男女問わず殺害され、食料や燃料などの物資が根こそぎ奪われ家々は焼き払われたという。
「ただの海賊ならこうはならん。いっちゃ悪いが、女は攫うだろう。野営もするだろうから家屋をわざわざ焼いていったりしねえ」
「同感です。まるで虐殺を行うためだけに物資を補充しているような……」
 グッドクルーザーはこの露骨なまでの悪意に顔を伏せ、押し黙る。
 希望や正義を胸に生まれてきた無垢な彼は、悪意や絶望というものにめっぽう弱いのだろう。
 そんな彼だが……。
「これは、希望の戦士イレギュラーズ! 来てくれたのですね!」
 あなたの姿を見て、グッドクルーザーは表情をぱっと明るくしたように見えた。実際輝きを失っていた胸のコアにわずかながら輝きが戻っている。
 デリンジャーもまた振り返り、あなたを歓迎するように手をかざした。
「ま、座れよ。今回の作戦と趣旨を説明する」

「『メガロビア』……こいつらは最近になって現れた略奪集団だ。さっきの話を聞いてたと思うが、周辺住民を虐殺することにしか興味がねえって様子だ。放置しておけばロクなことならんのは一目瞭然だよな」
 デリンジャーはそんな風にきりだし、一部始終を説明しはじめた。
「とはいえ襲われた島がこう……ラインで繋がってるように、次にどこが狙われるかの検討がついた。兵力を向かわせたいが、今はアクエリア周辺の掃除と外洋遠征のダメージ回復で手一杯でな。確実にこいつらを迎撃できる戦力をあてたい」
「――ということで、当機と皆さんに依頼がかかったのです」
 予想される敵戦力は水上バイクで移動するリーダーらしき秘宝種と、海中を泳いで移動する同じく秘宝種の集団である。
「リーダーの名はキャプテンブラックブラン。
 まわりの連中はその部下だろうな」
 写真が撮影されているが、黒い棘突き鉄球のような鎧……にも似た全身装甲のロボット型秘宝種が黒い一人用水上バイクを操作し、その左右で鶴翼陣形を作った赤黒い装甲の同じくロボット型秘宝種たちが腕に装備したスクリューによって海面を移動しているのがわかった。赤黒い秘宝種はまるで量産された兵器のごとく外見が一致しており、彼らがそうした改造をうけた兵士である可能性を示唆させている。
「島に入られれば民間人に被害が出る。こいつらは海上で迎え撃ち、そして追い払わなくちゃあならん。できるな?」
 デリンジャーの言葉に、グッドクルーザーは胸に拳を当てて頷いた。
「当然です。日々を平和に生きる人々のくらし――必ず守って見せます! どうかご協力ください、希望の戦士!」

GMコメント

■オーダー
 『メガロビア』の撃退が今回の依頼内容です。
 とはいえ万一民間人に被害が出てはいけないので、まずは彼らと交流し信頼を得、避難を促してから海へ繰り出し戦いに出るという流れが最も安全になるでしょう。

●島民交流パート
 まずは島民と交流し、信頼を得ましょう。
 といっても海洋海軍からの紹介を受けているので割とポジティブな状態から始まっています。ローレット・イレギュラーズの立場というより自分たち個人への信頼を得るためのパートです。
 曲がりなりにも家々を放置して島外へ避難するというのは、それなりに信じられる人達にしか任せられないことなのです。

 島民はごくわずかで、小さな集落で漁業を営む人で構成されています。
 子供は少なく、老人が多数のようです。
 日中はその日売って食べる程度の魚を捕り夕方はウクレレを弾いたり子供と遊んだりして過ごすという牧歌的な人々です。

●迎撃パート
 島民を島外に避難させたら、メガロビアを迎撃するべく海へ繰り出します。
 このとき船を使用しますが、自前の船があると海上での戦闘がちょっと有利になります。
 メガロビアたちと戦い、彼らを迎撃してください。

 リーダーは機関銃と鉄球を、量産兵はミサイルとサブマシンガンや斧を武装として使います。
 彼らは標準装備として水泳能力とジェットパックをもっているため、こちらの船に乗り込んできて戦うという形になるでしょう。
 もしくは海中で泳ぎながらぶつかり合う形になります。(この二つに分散させるというのも一つの手です)

●巨大兵器パート
 メガロビアの兵士を迎撃すると、海中から巨大破壊兵器が出現します。
 これにはとてもかなわない……かに思われますが、この段階までにグッドクルーザーに勇気と正義を教えていたなら、彼がもつ力によってこちらも強力な攻撃『最終希望合体』を仕掛けることが可能になるでしょう。

・最終希望合体(ファイナルパンドラフュージョン)
 希望の戦士イレギュラーズから勇気と正義を教わり真の勇者へと覚醒したグッドクルーザーにアンロックされた秘められし力。
 古代船クルーザーの他、イレギュラーズたちが持ち寄った小型船たちを変形合体させることでごくわずかな時間だけ巨大ロボット『ファイナルビッグクルーザー』へと変身できます。
 このときの彼は内部に乗り込んだイレギュラーズたちの戦闘スタイルを反映させた合体攻撃が可能となります。
 冠位魔種すら退けた希望の戦士たちが力をひとつにしたならば、きっとどんな敵も必ずや討ち滅ぼすことができるでしょう。

■船について
 1PCにつき1隻まで小型船系アイテムを装備していた場合に限り自分の船を持ち込むことが可能です。
 誰も持っていない場合グッドクルーザーの船に乗り込むことになります。
※もし装備しているアイテムが未特殊化アイテムだったとしても、『俺の船はこういうデザインだぜ』とプレイングで主張してかまいません。是非キャラを出していきましょう。

■NPC紹介
・グッドクルーザー
このシナリオにはグッドクルーザーが同行します。
彼は魔を倒すという使命だけを与えられた古代の眠りより目覚めたロボットです。
イレギュラーズを『希望の戦士』と呼び、勇気や正義を教わっています。
https://rev1.reversion.jp/character/detail/p3n000117
https://rev1.reversion.jp/scenario/replaylist?title=%E5%8B%87%E8%80%85%E9%80%B2%E6%B0%B4&penname=&type=&attr=

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • 勇者進水GC:よみがえるメガロビア完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年08月18日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
ぽやぽや竜人
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
リサ・ディーラング(p3p008016)
蒸気迫撃
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
阿僧祇 "毘沙門天" 楓鬼(p3p008859)
赤鬼

サポートNPC一覧(1人)

グッドクルーザー(p3n000117)
勇者進水

リプレイ

●誰がための平和
 巨大なペンギン型船舶が激しいスクリュー音によって突き進む。
 運転席に座りレバーを握る『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)は、なびく髪を手ぐしで後ろになでつけた。
「メガロビア、か。海賊とは違うな。海賊は、やり方はどうあれ、生きるために奪う」
「そーなのか?」
 船のデッキでキャッチャーミットにこぶしをばしばしとやっていた『理想のにーちゃん』清水 洸汰(p3p000845)が、語るジョージに振り返った。
「ああ。だからこそ私掠船が成立する。あくまで利害。あくまで生きるための選択肢にすぎない。より安全に生きるすべが見つかればすぐにでも転職するという奴は多い」
「へー……」
 かなり異なる(それも争いからほど遠いコドモとオトナの世界)から来た洸汰にはまるでピンとこない話だったが、海賊はあくまで職業にすぎない。ここ海洋王国でも、外洋遠征による船乗り需要の高騰によって海賊から運送業に転職した者も少なくないと聞く。
 船を並べ、隣から声をかけてくる『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)。
 ウィーディーシードラゴンをを摸した船首像、ペンギンのくちばしと併走した。
「目的があるんならまだしも――いや、あっても問題だが――ひたすら殺して奪うのが趣味ってあたりは、あのアルバニアよりずっとたちが悪い」
「そのとーりじゃ! 罪無き民間人への虐殺なぞ許しておけん!」
 棘のついた短棍棒を頭上でぐるぐると振り回してみせる『赤鬼』阿僧祇 。
「わらわの怒りはとうに爆発しておるのじゃ!
 奴らにはきついお灸をたっぷり据えてやる必要があるのじゃ! じゃろう十夜殿!」
 熱意をまるごとぶつけられ、どこかくすぐったそうに苦笑する十夜。
 すると彼らの後方で、三隻の船が横並びになって追いついてきた。汽笛をあげる『ザ・ハンマーの弟子』リサ・ディーラング(p3p008016)の魔導蒸気機関船『コークス』。
 吹き上がる黒煙を尾にひいて、両サイドの船へと手を振った。
 右側をゆくのは真っ赤な船体に鱗めいた模様をペイントした『ぽやぽや竜人』ボルカノ=マルゴット(p3p001688)のボルカニック号である。
「虐殺ばかりの略奪集団なんて、ひどいのである! どうしてそんなことを!!
 これ以上やらせない為にも頑張るのであるよ!」
「はいっす! 頑張りましょう! ね、グッドクルーザーさん!」
 反対側へ手を振るリサに、グッドクルーザー (p3n000117)はビッと親指を立てて見せた。
「当機の使命は魔を払うこと。しかし人々の平和や笑顔を守りたいと考えるのは、当機の心のなせるわざなのでしょう。これも、希望の戦士たちに教わった正義と希望なのでしょうか」
「勇気……希望……」
 『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)は単語を途切れ途切れにさせながら、ゆっくりと顔をあげた。
 グッドクルーザーとはまた違ったタイプの、しかし同種族のレガシーゼロである。
 脳裏もといメモリの中にかすむ少女の記憶と、いつからか自分と共にあった蒼い小鳥たち。
 フリークライはゆっくりと手をかざし、小鳥たちを指へ乗せた。
 この風景とフラッシュバックがこれからも続くなら、そのために内蔵された様々な兵器をもちいることは確かに正義であるように思えた。
「頑張ル」
「ふむ、なるほど……『正義の知識』を望む、か」
 『艦斬り』シグ・ローデッド(p3p000483)は船の手すりによりかかって腕組みをしていたが、眼鏡を一度外して小さく笑った。
「機会生命体が知識を望む。なら、与えるのは『私』の役目だろう。知識の魔剣ローデットの、な」
 見上げれば島が見える。
 彼らが守ろうとしている、風景が。

●平和の価値
「なあ若いの、ここが襲われるってのは本当かい」
 網をひきながら、日に焼けた老人は言った。
「若っ……ああ、まあそうだな。こいつを引き上げたら丘に戻って逃げる準備を整えておきな」
 さいぶ年配の自負はあったが、老人からすれば若造かと、十夜は苦笑しながら一緒になって網を引く。
「しかしなあ、魚の処理もせにゃあならん」
「案ずる必要は無い」
 海から上がってきたシグが、網を回収して船へとおろした。
 濡れた髪をかきあげ、唇の片端だけで笑ってみせる。
「魚の処理は私たちがやっておこう」
「そういうこと。何かあってもいけねえ、形見やら思い出の品も持っていきな」
 小さな島の漁師である。毎日小さく小さく働いて、その暮らしを何代にもわたって永遠に続けるという人々だ。
 網や漁は生活であり人生である。それを手放す不安を、十夜は経験で、シグは知識として知っていた。

 猟師達の船が戻り、丘では農地にアラがまかれている。
 本来なら土に塩は厳禁なのだろうが、この土地で栽培される野菜は塩分に強く気候にも適しているようだ。
 フリークライはそれを興味深そうに観察しながら、丁寧に防護処置を施している。
 戦いがこの畑にまで及ぶことはそうないだろうが、衝撃や煙が万一届いても植物に影響が及びづらいようにである。
 植物の間をするすると通り抜けた猫が、フリークライを見上げてにゃあと鳴く。
 フリークライは目をちかちかと点滅させ、猫に指を近づけた。ゆっくりと頬をこすりつける猫。
 そこへ資材を担いで運んできた楓鬼とリサ。
「なんじゃ。楽しそうじゃのう」
「フェンス作りじゃなかったっすか?」
「不安 言ッテル」
「ほう……?」
 楓鬼は猫のそばへかがみ込み、同じように指を出してやった。
 一方でリサはてきぱきと材木や釘をつかって畑用の防護を完成させていく。
「メガロビアの狙いは食料でも野営地でもないっす。だからこういう、本来狙われないような土地が狙われることになるんすね」
 平和が崩れるとは、こういうことを言うのだろう。
 振り返ると、楓鬼が猫に指をかまれてんぎゃーと鳴いていた

 ジョージのかなでるウクレレの音。洸汰は音に合わせて地元の民謡を子供たちと歌っていた。
 持ち前の人当たりの良さで早くも溶け込んだ洸汰の様子に、ジョージは穏やかに笑っている。
「不思議か、グッドクルーザー」
 後ろで様子を見ていたグッドクルーザーに、ジョージは語りかけた。
「音階が上下するだけで人は笑う。共にそんな声を出すだけで、人は気持ちを共有することができる。文明が生み出した技術のひとつだな」
 ウクレレを置いて、ジョージは振り返る。
「正義。正しき義。お前にとって大事だというそれは、己が守る者が何か。
 それを知ると、より、己の力になるだろう」
「守る者が何か……」
 イレギュラーズの役目は決して誰かと戦うことじゃない。
 たまたま手段のひとつにそれがあるだけだ。
 そしていま、見ず知らずの誰かと戦い、知らぬ誰かを守ろうとしていた。
 けれど守る誰かには生活が、家族が、そして想いがあることを知っている。
 知るのと感じるのは、もしかしたら違うのかもしれない。
「だから我輩は、そんな平穏な暮らしを破壊しようとする奴らを許せないので、それを倒すことは正義であるし、そうして困っている誰かのために戦うために、勇気は出せるのである」
 ここは良いところだと語っていたボルカノが、ジョージの話に加わって腕を組んだ。
「グッドクルーザー殿。我輩たちはいまから、この島を……この人々を守るのである」
 駆け寄った子供の差し出した二本の赤い花を、ボルカノとグッドクルーザーは受け取った。花の意味など、知らないが。

●価値は自分が知っている
 島へ迫るメガロビア部隊。水面へと現れ、肩に担いだミサイルランチャーの狙いを港へいつでもつけられるよう上向いた……その時、リーダー機が迫る複数の船影を目撃した。
 彼らこそは――。
「出撃である!」
 先陣を切って進むボルカニック号。
 ボルカノは船に備え付けた大砲にフッとブレスを吹き込むと、レバーを引いてリーダー機めがけて放射した。
 メガロビアは即座に散開。サブマシンガンを構え、扇上にボルカニック号を囲み始めた。
「やらせないっす!」
 船の手すりに固定したレールガンを、リサはメガロビア量産兵へと向けた。
 レバーを操作するとブシュンという音と共に煙が噴き上がり、内側で回転する魔道歯車がものすごい速度で金属塊を発射。
 こちらを狙う量産兵の一機を撃墜した。
「ナイスショットであるな!」
「けど一体倒しただけっす、敵の数は――」
「わかっておる、さあかかってくるのじゃ!」
 棘突き棍棒を高く振りかざすと、楓鬼はまっすぐに構えて不敵に笑った。
 目をぎらりと光らせ、むくりと立ち上がるフリークライ。
「グッドクルーザー 島民 知ッタ。
 メガロビア 犠牲者 同ジ。
 同ジヨウニ 日々懸命 生キ 笑イ デモ 殺サレタ。
 怒ル シンドイ 辛イ」
 ジェットパックを起動し船内へと侵入してきた数体の量産兵相手に、フリークライは青白い魔術の光を拳から発射した。
 攻撃を受け、手すりからら転げ落ちる量産兵。だが残る量産兵は味方が倒されたことにも怯まずサブマシンガンを乱射しならがの突撃をしかけてきた。
「ふんぬ!」
 金棒を振り回して銃弾をはらうと、楓鬼が量産兵めがけて突撃。
 正面からぶつかり合う形になった両者だが、豪快に振り抜いた金棒が量産兵を吹き飛ばすほうが強かった。
 蓄積したダメージを呼び出した花びらによって回復していくフリークライ。
「悪意 絶望 黙ル――ウウン。
 怒ッテ イイ。
 悪意 絶望 理不尽 許サナイ。ソレ 正義」
「はい――戦士フリークライ!」
 グッドクルーザーは肩に装着した大砲にエネルギーを溜めると、船に乗り込んできた量産兵たちをなぎ払うように右から左へ掃射した。

「…………」
 予想外の反撃をうけ、メガロビアのリーダー機は水上バイクで大きくカーブをかけ、イレギュラーズたちの弱点を探り始めた。
 穴を見つけて突破するつもりのようだ。
 だが、そうはさせない。
「お前の相手はこの俺だ」
 船でリーダー機の水上バイクめがけて突っ込んだジョージ。
 すぐさまペンギンフォームにチェンジすると、助走をつけてリーダー機へと突撃をかけた。
 船の上から打ち下ろされる体当たりによって、強制的に水上バイクから転落させられたリーダー機。
 水中でぐるりと一回転すると、すぐにエネルギー噴射をかけて体勢を整えた。
 ターンし、ペンギンによるくちばしアタックを仕掛けるジョージ。対するリーダー機は装備した機関銃を至近距離から乱射した。
「始まった! ここはオレにまかせて海へいってくれ!」
 洸汰は握りしめたバットで斧の攻撃を受け止めながら、十夜たちへと振り返った。
「そんじゃ、船を任せたぜ、洸汰。俺が修繕費で泣かねぇ程度にこき使ってやってくれや」
 ビッと指でサインを出して海へ飛び込んでいく十夜。
 シグもこくりと頷くと、海へとダイブしながらソードフォームへとチェンジ。まるで魚のごとく海中を突き進んでいった。
「まそういうことだから……この場は譲らないぜ!
 ここの人達の笑顔と平和を守るために、オレは立ってるんだ
 お前達の、信念も理由もない略奪や暴力なんかに、オレも皆も、負けっこないもんねー!」
 洸汰は量産兵たちにバットを突きつけると、勢いよく彼らへと殴りかかった。
 ――一方。
 無数の火の玉を放ち、海中で襲いかかる量産兵たちを打ち破る十夜。
 シグは剣の戦端に力を集中させると、激しい光線を放って量産兵たちを打ち抜いていく。
 その射線上には、リーダー機の姿もあった。
「――!?」
 ノーマークの方向から打たれたことでバランスを崩したリーダー機。
 ジョージと十夜は勢いよく距離を詰めると、クロスするように刀と手刀を打ち込んだ。

 爆発が海水を吹き上げる。
 船上での戦いにも勝利し、メガロビアたちが爆発によって吹き飛んでいくのを確認したボルカノたちは、グッドクルーザーへと振り返って親指を立てた。
「これで島は安全であるな!」
「はい……いや、まだです! 海底から何か巨大物体が接近中! 衝撃に備えてください!」

●よみがえるメガロビア
 染み出るインクの如く、海中に突如としてその影は現れた。
 ジョージは一瞬鯨と見まがい、比べものにならない巨大さゆえに首を振る。
 そして影が『迫っている』ことを認識し、あらんばかりに声を張った。
「退避だ!」
 急いで船のかじをきるジョージ。自らの船に戻ったばかりの十夜たちもまた、その声に応じ急いで操縦席へ飛び込むが――それを許さぬ速度で巨大物体は海面を突き破った。

 大津波のそれに近い。
 船という船が転覆し、空中へと飛び上がる人型の物体から流れるように離れていく。
 咄嗟の判断で海中へ飛び込み、泳げない仲間を抱えて海面へ頭を出した十夜やグッドクルーザーたちは……。
「あれは……一体……」
 真っ黒な、ずんぐりとした人型の機械であった。
 船数隻分の巨大さと、頭部に光る赤い単眼の如きライト。
 それこそ船一隻分はあろうかという腕を広げると、両手に備えた指型大砲を一斉発射した。
 全ての船が一瞬で破壊されてもおかしくない。それほどの衝撃と爆発が仲間達を遅う。
「メガロビア……」
 グッドクルーザーは、それを見てほぼ本能的につぶやいた。
 そんな彼らを無視して島へと移動をはじめるメガロビア。
「ただただ平和に暮らしてた人達を、お前達の都合だけで襲うなんて許さねぇ!
 だけど、こーゆー奴等ほど、オージョーギワが悪いんだよなあ。
 これを退けるためには、グッドクルーザー! お前が必要だ! 力を貸してくれ!」
 板につかまって叫ぶ洸汰。
 グッドクルーザーはその声に、胸の高鳴りを……否、コアの強い点滅を自覚した。
「さあグッドクルーザー殿! 勇気と正義、見せつけてやるのである!
 その力は、きっとあれを倒せるはず!」
「ここで負けてしまったらあの平和な島に暮らしていた優しい人達に被害が出るんすよね?
 だったらここでやらなくちゃっすよ! あいつを止める! それで御吹き飛ぼうが、守らなくちゃいけない人がいるんす!」
 仲間と共に海面にあがるボルカノとリサ。
「生憎と俺は勇気だの正義だのを説けるほど善人じゃねぇ。
 だが、島のやつらと今日繋いだ“縁”が切れてもいいと思うほど薄情でもねぇ。
 ちっぽけなモンを守りたいってのが、俺の戦う理由なんだろうさ」
「俺から教えられるものは一つだ。お前が負ければ、後は分かるな?
 ならば、お前が負ける道理は、ある筈が無い! 行くぞ。覚悟を見せろ……!」
 フリークライを二人がかりで支える形で転覆した船の上へとあがってきたジョージと十夜。
「守ロウ 島 ミンナガ タダイマ オカエリ 言ウ 未来ヲ」
「わらわは弱い、そんなことはとうに知っておる! じゃがそれが戦わぬ理由にはならぬのじゃ!
 たとえ敵わぬ相手でも戦わなければならぬ時がある! わらわはそう教わったのじゃ!!」
 フリークライにちゃっかりのっかってきた楓鬼が、棍棒を掲げた。
 いつのまにか傾いた船の頂点に立ち、シグは眼鏡に指をやった。
「さぁ望みたまえ。全ての悪を断ち切り、平和を守る光の一閃を!」
 グッドクルーザーの胸が、強く希望に輝く。
 叫ぶべきことばがある。
 それがなぜだか、皆分かっていた。
「「――最終希望合体(ファイナルパンドラフュージョン)!!」」

 空へと飛び上がる皆の船が変形し、グッドクルーザーを中心に巨大な人型をなしていく。
 大きく赤い竜のごとき翼を広げ、炎を吹いて飛び上がる巨大ロボット『ファイナルビッグクルーザー』。
 その船内には八人のイレギュラーズたちが搭乗していた。
 ぐるりと振り向き、再び指大砲を一斉発射してくるメガロビア。
 しかし洸汰の放つベース型のオーラが砲撃を防御。ジェット噴射で急激に距離を詰めると、ペンギンペイントをした左腕とシードラゴンペイントの入った右腕をそれぞれ活性化。
 相手の腕を掴み、豪快に引きちぎりながら放り投げる。
「――!!」
 腕を失いつつも、胸に現れた巨大な大砲を構えるメガロビア。
 しかし同じく胸に現れた巨大な魔道蒸気大砲からエネルギービームが発射され、メガロビアの交戦と相殺。大爆発を引き起こす。
 ファイナルビッグクルーザーは天空に手をかざし、フリークライにそっくりの宝石がはめ込まれた巨大な剣柄と楓鬼を思わせる真っ赤な棍棒を召喚。
 更にシグの魔剣を巨大化させたような装備が現れ、その全てが融合した。
 八人、いや九人は叫び、流星の如き飛翔と共に巨大な剣を繰り出した。
 空中にひかれる大きな赤い炎のライン。
 メガロビアは、見栄を切るファイナルビッグクルーザーの後ろで激しい爆発の中に消えていった。

●そして平和は続く
 ウクレレと歌声。
 島に戻ってきた人々は、戻った平和に感謝して杯を掲げた。
 彼らの中心には九人のイレギュラーズの姿があったのは、言うまでも無いだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete
 ――巨大兵器『メガロビア』の情報を得ました

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