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シナリオ詳細

<Bloom*Bloom>セレナーデ・ロマンス

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夜のワルツ
『ねえねえ、フローラ』
『にいさま! もうおやすみのじかんよ?』
 遠き昔。懐かしき過去。
 こつん、と窓を叩く音がして、フローラはカーテンを捲った。
 危ない人ならば逃げろ、という教育も、そもそもカーテンを開けるなという指示も無視して。
 好奇心の向くままにカーテンを開けば、そこに居たのは兄であるグレイシア。
 まだ幼少の彼の顔にメガネはなく、きらきらと星の如く輝く双眸はそこにあった。
『にいさま、なにをするの?』
 窓を少し開けて。
 幼いフローラにとっての世界は、小さな小屋の物語しかない。
 グレイシアはそのことを知っている。
 だから、言うのだ。
『最後の想い出を作りに行こう!』と。
『……いや。さいごだなんて、いわないで』
 フローラの蜂蜜が潤む。グレイシアは思わず駆け寄って、その小さな妹の躰を抱き締めた。
『……うん。それじゃあ、ええと。
 ふたりで、すこしだけおさんぽをしないかい?』
『でも、ごえいがうるさくなっちゃうわ?』
『ふふ、そうかもしれないね!』
 だからね、とグレイシアはバルコニーへフローラを連れ出した。
『わ、わ!』
『だからね! ぼくは窓から来たんだ、フローラ!』
 薄氷の羽を震わせて、空高く飛び上がり。
 グレイシアの溌剌とした笑顔に、フローラは、その手を――、

「……んぅ?」
「ああ、フローラ。目覚めたか?」
 ブランケットを掛けていたところだったのだろう、グレイシアは『起こしてしまって済まない』と少し申し訳なさそうに眦を下げた。
「兄様、昔……」
「ん?」
「……そうだわ。昔みたいに、夜に抜け出してみましょうか!」
「えっ!?」
「カナタさえ連れていればきっと大丈夫よ。ね?」
 くすくす楽しげに笑うフローラ。彼女は女王で妹で、だから。
「……はぁ。仕方ないな」
 そんな大切なひとの頼みを断れるはずも泣く。
 夜のお出かけは、急遽決まったのだった。

●自由な彼らは翼を震わせて
「まったく……困ったものだよね、あのふたり」
 悪戯好きな、困った隣人(ようせい)に頭を悩ませたふりをするのはカストル。
 その傍らには相も変わらず美しい表紙の『ブルーム・ブルーム』が煌めく。
「夜のお出かけみたいだよ。二人を護衛するのと、楽しむのが依頼みたい」
 気をつけて行ってらっしゃい。
 カストルは苦笑しながら手を振った。

NMコメント

 心踊る物語を貴方に。どうも、染(そめ)です。
 屋根の上ってロマンがありますよね。
 登ってみたいけれど怖くて登ったことがありません。
 それでは、今回の依頼の説明に入ります。

●目的
 フローラとグレイシアのお忍びの夜のお出かけのサポート。

 一応、一国の女王とその兄です。守ってあげてください。
 怪しい人がいないか見張っているだけで大丈夫です。
 一緒に遊ぶのもありです。

●ロケーション
 お城の屋上

 そこから離れるつもりは無いようです。

●世界観
 魔法世界『ブルーム・ブルーム』。
 花と魔法で満ちた世界。魔法で文明が築かれています。
 基本的には物理攻撃よりも神秘攻撃がメインの世界です。
 また、ファンタジーな世界ですので、妖精やドラゴンなど、ありえない生物がいます。

●NPC
・フローラ(ティターニア)
 妖精女王。引き摺るほど長い若草色の髪が特徴。桜色の髪留めが宝物。
 エルフのように長い耳を持つ。成長が遅いとはいえ、いつまで経っても凹凸のない身体に悩んでいる。
 屋根の上で踊っています。

・グレイシア
 前の妖精王。鋭い目つきと薄氷色の髪が特徴。ガタイがいい。
 エルフのように長い耳をもつ。シスコン。眼鏡。
 他国の妖精へ外交をしに行っていた。
 夜風にあたりながら歌を歌っています。

・カナタ
 花冠師ギルド『Flowers Flag』のギルドマスター。齢19にしてトップクラスの実力を持つ温厚な青年。
 二人の護衛役として見守っていますが、割と暇なようです。

●サンプルプレイング
 城の上ってこんなにいい景色なんだ……!
 俺もフローラを真似て……っ、て、うわぁ!?

 以上となります。
 皆様のご参加をお待ちしております。

  • <Bloom*Bloom>セレナーデ・ロマンス完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月07日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
小さな願い

リプレイ

●ふゆのいろ
「わっ」
 こんなに綺麗なお城を初めて見た――と、語るのは『ふゆのいろ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)。
(本当にエルは本の中に来ちゃったのですね。
 きっと、このお城の一番高いところから見る景色はとっても素敵なものだとエルは思います)
 夜に負けぬ白亜を煌めかせる妖精のお城。
 濃紺の空に僅かに滲んだ白が、美しい。
「それにこの星空はとっても綺麗です。
 つい、踊りたくなってしまうとエルは思います」
「ふふ、エルさんは素敵なことを言う人だね。
 あ、そうだ。屋上への行き方はわかるかい?」
「……わかりません」
「ええと。今居るテラスの横に階段があるから、そこを登るんだ」
「なるほど。やってみます」
 ひゅおおお、と風が吹き付けて、なんとも恐ろしい。
 ぷるぷる震えながら、エルは階段を登った。
 屋上に着いたエルは、フローラとグレイシアに夜のご挨拶を。
「こんばんわ。エルです。よろしくお願いします」
「あら、ようこそエル! よろしくね」
「こちらはフローラ、で、俺がグレイシア。よろしく頼む」
 穏やかに微笑んだふたりに安心して、エルは城の上から周りを見渡した。
 綺麗なネモフィラ畑が広がっていたり、星灯の該当があったり、混沌とはまた違った夜空が広がっていたり。
 ああ、不思議だ。
 エルはぼうっとその全てに目を奪われていたのだが――、
(はっ、これでは駄目です。ちゃんと護衛として周囲を見ましょう)
 気合いを入れ直す。しかし、真下にはきゃいきゃいと飛び回る妖精たち。これもまた混沌ではあまり見られない様子である。
 これも護衛のお仕事です。お仕事なんです。と、言い聞かせるも、やはり。
「……ごめんなさい。不思議なものがいっぱいあって、エルは目移りしているだけでした」
「エル! こっちに来て!」
「わ、はい!」
 おーい、と手を振るフローラの元へ、エルは走った。
「さっきまで歌って遊んでいたのだけれど、飽きちゃって!
 エルとも遊んでみたくなったのだけれど、どうかしら?」
 こくり。頷いたエルは、そのまま言葉を紡いだ。
「エルは、お花が寒くならない雪を降らせることが出来ます。
 これなら、お花も雪も一緒に見ることが出来ますが、見てみますか?」
「雪……!」
「ふふ。兄様は雪の妖精なの。
 良ければ見せてくれると嬉しいわ!」
 エルが頷くと、ひらひらと、瑞花が舞う。
「――エルの雪は幻だから、寒くなりませんよ」
「わあ……!」
 幻想的な光景に、二人は暫く見惚れ続けていたのだった。

●なつのまぼろし
(キョウダイやシマイというものは大事なモノらしいね。
 元来、ヒトリだった我(アタシ)には馴染みの薄い感覚だけど、あのふたりはお互いを大事にしているからねぇ。
 ――さて、あのふたりの邪魔をするのは無粋かな?)
 『闇之雲』武器商人(p3p001107)は銀の長髪を揺らし、二人の近くへ差し入れを届けに。
 少しは涼しいけれど、やっぱり夏だから暑さというものもある。そんな夜。
 ぼんやりと佇んでいれば、やっぱり懐いた妖精たちが飛んでくる。
「銀のフルールだ! あそぼう!」
「ぼくたちねえ、ずっと待ってたんだよ!」
「あーそーぼっ! あーそーぼっ!」
「はいはい。少し待っておくれね。
 ……ああそうだ。これ、お裾分け」
「んー?」
「レモネード、だよ」
 二人がおかわりをするかもしれない、と思って持ってきたレモネードのボトルが、まさかこんな場面で役に立つとは。
 武器商人が『はい』とコップを渡せば、両手で受け取って列をなす。
「ください!」
「わたしも! こっぷいっぱい!」
「あーずるい! ぼくも!」
「おれも!」
 きゃいきゃいと声をあげる妖精たちの頭を撫でてやると、皆揃ってでれっと笑う。
「ふふ、あるだけ入れてあげるからね。ただし」
「ただし?」
「なあにー?」
「二人が楽しく遊んでいる間、静かにできる子だけだよ」
 しぃ、と唇に人差し指を当てて。
 内緒話でもするように、ひそひそと話す武器商人には、妖精たちもこくこくうなずき同意を示した。
 そうやって、妖精たちにレモネードを渡して、ひそひそと話していれば――時間はあっという間に過ぎていて。
 ゆらりと立ち上がった武器商人。妖精たちはすやすやと眠っていた。
「歌に踊りに、夏の夜の夢としては最高だね。いいものを見させてもらったよ。ヒヒヒヒ……」
「あら、武器商人じゃないの! 来ていたなら早く教えてちょうだいよ」
 照れたように飛び回り『もう! 恥ずかしいんだからね!』と頬を押えてにやにや笑うフローラ。
 グレイシアに到っては曇りのないメガネをずっと吹いている。
「……。まあ、妖精だから。これくらいは造作もないさ」
「あ!? 兄様がそういうなら私だって!
 これくらい、簡単なのよ!」
 兄妹そろって得意げに笑う。そんな顔が似ていないのは――どうしてだろうか。

●あらしのように
「お忍びでお出かけか。
 ……カナタだったか。お前も随分、振り回されていそうだな」
「あはは……よく言われるよ」
 カナタの隣で語らうのは『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)。
(最近は、ずいぶん張り詰めた仕事も多かった。
 たまには、こういう時間もいいものだな。屋上に上がるのは、ガキの頃によくやったものだ)
 今となっては懐かしい思い出に眦を下げながら、ジョージは二人の背を眺めていた。
「俺は、この世界の事をほとんど知らないが、これが、女王たる彼女の世界か?」
「……ああ、うん。そうだよ。
 最近はいろいろあったけど、幾分かは平和になってる」
「……そうか。野暮な事は言わないが、少なくとも、カナタと、彼女の兄を見ていれば、ここが希望に満ちていることは、伝わってくる。
 それに。振り回されていそうだが、お前も楽しんでいるのだろう?」
 屋根の上に二人、腰を揃えて。
 ジョージが『どうだろう?』と少しの不安も滲ませながらカナタに微笑めば、『あはは』と苦笑しつつも、カナタも頷いて。
「あ! 二人で何楽しそうなことしてるのよ!」
「げっ」
「ちょっとカナタ! げって言ったわね!?」
「……すまない。こんばんは、お邪魔してもいいだろうか?」
「ああ、勿論だ。今ちょうど、紅茶を入れようとしていたところだ」
 飛び回って逃げるカナタと、それを追うフローラを横目に、ジョージとグレイシアは並んで紅茶を入れる。
「菓子は勿論だが、紅茶まであるとはな……流石王族、だな」
「俺たちが身体を壊したら困るのは民だからな。
 それなりに、身体をあたためるものも用意しておいたんだ」
 ジョージが持ち込んだ蜂蜜を紅茶に溶かす。
 ほんのり甘い香りが広がった。
 フローラはカナタの首根っこをつかみ引きずりながら、紅茶を受け取って。
「……! これすっごく美味しいじゃない!
 カナタ、貴方ものんで!」
「うっ……俺はこんなはずじゃ。
 あ、ジョージさん。俺も頂きますね」
 フローラとカナタはわかりやすくほっとした表情を浮かべる。
 そんな様子にふっと笑いながら、ジョージは言葉を紡いだ。
「実に、いい時間を過ごさせてもらっている。
 今日は、とてもいい夜だな。……もし、何か助力が必要な時は、必ず声に応えよう。
 無論、蜂蜜を持ってくることも、約束しよう」
「あら、ほんとう!?」
 ばっと飛びついたフローラに、ジョージは思わず吹き出してしまうのだった。

●おもひではとおからず
(兄妹水入らずの遊びに悪者に水をさされるのはあれだよな……しっかり警備するか)
 いつもよりは厳重でない封印。『妖精の守り手』サイズ(p3p000319)は、妖精城の空を舞う。
 消えぬ種火を光源に、索敵を欠かさない。
 持ち込んだお茶で少しばかり冷やしたからだをあたためれば完璧だ。
 踊り疲れたフローラは、サイズの姿を見るなり飛んでくる。
「家族との時間はもういいのか?」
(家族と過ごす経験のない俺にはわからないが……フローラ様にとって大事な時間なのは……俺は謎の世界の導きによる過去渡りで知っている。
 また外交のために遠くに行ってしまう可能性もあると思う故に兄妹の時間はきっと希少なのだろう……)
 しかし、そんなサイズの思いやりなど露ほども知らず、フローラは屈託なく笑みを浮かべて。
「あら! 友達との時間だって、大切なのよ?」
(そんな希少な時間を割いてでも、隅にいる俺に会いに来てる……のか。
 ……まあ、それがフローラ様の選択なら俺はなんも言わないでいいか……)
「……そうですか。
 なら、どこか落ち着けるところで休みましょう」
 『ええ!』と頷いたフローラの手を引いて、屋根の上で月を見上げる。
 ブロック状の携帯食料はメープルがお気に召したようで、深緑茶と一緒に頬張っていた。
「サイズ! みて!」
 突然フローラが、空を指さした。
 その先にはまんまるな、大きなおつきさま。
「月がとっても綺麗よ!」
「!?」
 ごほっごほっと噎せたサイズの背中を撫でながら、フローラはからかうようにくすくすと笑って。
「あら、……ふふ。そういう意図はなかったんだけれど!
 でもそうねえ、濁しておく方が楽しいかしら?」
「た、楽しいってそんな無茶苦茶な……」
 『そうかしら?』とくすくす笑うフローラ。
 黒百合の呪いを受けた時とは比べ物にならないほど、元気そうで。
 だから。
 気が抜けたのかもしれない。
(……伝わらなくても、まあいいか)
 それでも。過去を知っているから、呟いた言葉は――、
「次は……いや。次も楽しみにしておく……」
「! ……ふふ。そうねえ、次はどうしようかしら」
 頷いて。次に、にこにことわらって。
 そんな、仲良しふたりの夜は、次第に満ちて、暗がりは消えていった。

成否

成功

状態異常

なし

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