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シナリオ詳細

ドバーグ廃坑道を抜け

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ドバーグ
 春先の風に揺れ、煙草をふかす老紳士は足を止めた。
「ドバーグを知っているかね。このあたりの古い言葉で『骸にたかる虫』『闇に潜むもの』『仇なすもの』という意味をもつ。
 背丈はこのくらいで、一対ずつの手足をもつ。
 奴らは常に暗がりに住み、入り込んだ動物を食べたり、夜に人を浚って食ったりするという。日中に外へ出ないのは、太陽の光を浴びると石になるか爆ぜて死ぬと言われているからだ。
 ……なぜそんな話を、と?」
 振り向く。
 老紳士は右目に眼帯をしていた。
「戦う相手のことは、知っておきたいだろう?」

 ギルド・ローレットに訪れた老紳士。
 彼はクベン・アレッフと名乗る幻想貴族の商人だ。
 バルツァーレク領を主な活動拠点とし、衣服や馬車、アクセサリーなどを扱っている。
 テーブルにアタッシュケースを置くと、その表面をトントンと指で叩いた。
「私は急いでこの商品を届けなければならない。
 しかし幻想は現在原因不明の狂人騒ぎで混乱していてね。なじみの運び屋が使えなくなってしまった。
 なに、君が気にするほどの事態じゃあないさ。突然家族と無理心中をね。使える連中だったが残念だ。
 他を探している余裕はない。すぐにたって欲しい。
 あー、一般の道を使うのはマズい。私の持ち物を狙う連中が多すぎるんだ。
 だからこのルートを通って貰う」
 クベン氏が示したのは古い廃坑道――通称『ドバーグ廃坑道』だった。

「ドバーグ廃坑道はかつてドバーグという亜人系モンスターたちが住処としていた坑道だ。
 歴史を更に遡ると人間が鉄鉱石を掘っていた場所を占拠したとあるが、開拓の歴史や権利書のない土地に興味はない。
 ここを通り抜けることができて、その必要があるというだけだ。
 私一人で通ることができれば楽なんだが、あいにくドバーグたちはまだ坑道に住んでいるらしい」
 ややマイナーな知識ではあるが
 ドバーグは暗闇を見通す目をもった小柄な亜人系モンスターだ。
 群れで行動し、鉱石を加工した武器を装備する。
 階級制をもち高い位の者ほど装備が多くなり、王と呼ばれる者は全身を甲冑に包むという。
「まあ襲ってくるのは下っ端か、それより少し上の連中だけだろう。
 暗い道を抜け、襲いかかるドバーグを振り払い、進むための護衛が欲しい。
 君たちは運び屋も護衛もできると聞いた。ぴったりの仕事だと思うんだ。
 首尾良く進められるなら、多少は君らの趣味や寄り道に付き合ってもいい。どうだろう?」
 クベン氏は脱いだ帽子を被り、眼帯をしたほうの片眉を上げた。

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:依頼主(クベン氏)が重い怪我を負わないこと。最重要荷物(アタッシュケース)を失わないこと。

 クベン氏を連れてドバーグ廃坑道を突破します。
 ドバーグ廃坑道は真っ暗なうえ、立体的に入り組んだ構造をしています。
 普通にうろうろしても突破は可能ですが、道のりを短縮できる技術があると戦闘回数を少なくできるかもしれません。
 坑道の突破が済めば依頼は成功判定となります。

 またクベン氏は依頼が首尾良く進むなら坑道内での寄り道を許可しています。
 拾得物その他にも特に興味は無いようです。

●依頼特徴
・護衛(人・物):対象人物と物体を護衛します。目的地到達までの間にこれらを失わないことが成功条件です。
・探索(道):近道を見つけ出すことができれば戦闘回数を減らすことができます。
・廃坑道:暗く、音が反響しやすく、入り組んだ構造になっています。
・安全地帯:坑道の中には安全な場所がいくつか存在しています。

【進行判定】
・進むたびに進行度を+1し、ダイスロールを行ないます。
 ロール値に応じて以下のうち1種のイベントが発生。
 進行度が一定値以上に達すると突破判定となります。
(近道を見つけたり進む効率をあげたりすると進行度にボーナスがかかります)

A:エネミー遭遇
 戦闘状態に突入。
 発生対象はエネミー表からランダム。

B:トラップ発動
 メンバー一括で回避ロールを行ない、失敗したらランダムな能力低下ペナルティがかかり、即時に戦闘が開始される。
 罠解除や探索関係の技術を上手に行使すると全員の回避にボーナスがつく。

C:安全地帯
 一時的な安全地帯を見つけることができる。使用回数は一箇所につき一回まで。
 30分ほど休憩しHPAPを6割まで回復できます。戦闘不能は回復できません。
 もし休憩のしかたが工夫できたなら回復割合を上げることが可能です。

【エネミー表】
●奴隷ドバーグ
 低級のドバーグ。それぞれ単純な武器をひとつずつ持っている。
 複数で現われるのが基本。
・能力特徴
 総合戦闘力:低い
 長所:なし
 短所:HP、回避、防御技術
・使用スキル
 格闘(物至単):手にした粗末な武器で攻撃する

●ドバーグリーダー
 奴隷を束ねるドバーグ。基本的には一体で現われ、奴隷ドバーグを引き連れる。
 武器に加えて胸鎧を装着している。
・能力特徴
 総合戦闘力:普通
 長所:反応、防御技術、回避
 短所:HP
・使用スキル
 奴隷統率(非戦):奴隷ドバーグが知的な連携をとるようになる。
 作戦指示(パッシブ):R3以内の味方全員の各能力を微弱にアップさせる。
 格闘(物至単):手にした武器で攻撃する

●ドバーグウォーリア
 ドバーグの強力な戦士。
 武器と鎧、そして兜を装備している。
 複数現われることは希だが、重要な部屋には大抵存在しているという。
・能力特徴
 総合戦闘力:高い。複数で連携して戦うべき敵。
 長所:攻撃力(特大)、HP、防御技術、回避
 短所:命中
・使用スキル
 大破壊(物至単):手にした武器で凄まじい攻撃をする
 正面突破(物至貫):凄まじいタックルを仕掛ける
 大暴れ(物至範【飛】):ひたすらに武器を振り回す

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • ドバーグ廃坑道を抜け完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年04月26日 20時50分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

鏡・胡蝶(p3p000010)
夢幻泡影
フロウ・リバー(p3p000709)
夢に一途な
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)
光の槍
豹藤 空牙(p3p001368)
忍豹
アト・サイン(p3p001394)
観光客
セシリア・アーデット(p3p002242)
治癒士
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
ロズウェル・ストライド(p3p004564)
蒼壁
ウィルフレド・ダークブリンガー(p3p004882)
深淵を識るもの

リプレイ

●棄てられた坑道
 ずっと遠くから空気の通る音がする。
 岩だらけの壁をカンテラで垂らしながら、10人ばかりのイレギュラーズと依頼主のクベン・アレッフ氏が歩いている。
「魔物が住み着いている廃坑道ですか。緊急とはいえ、この様な場所を通るのであれば十分に警戒しなくてはね」
 『蒼壁』ロズウェル・ストライド(p3p004564)は語った通りにクベン氏のそばにつき、いつ誰が襲ってきてもかばえるように気を張っていた。
 前方をゆくのは『忍豹』豹藤 空牙(p3p001368)だ。ゆっくりと歩きながら、道ばたにドバーグの仕掛けた罠がないかを慎重に確かめている。
「最近の一連のサーカス騒ぎのせいで、こちらに迷い込んだ依頼でござるな。でも、今回は、運びの依頼でござるな……」
「それにしても、よく住む気になったわね」
 壁際をカンテラで照らす『夢幻泡影』鏡・胡蝶(p3p000010)。
 『深淵を識るもの』ウィルフレド・ダークブリンガー(p3p004882)も同じように後に続き、周囲を観察している。
 胡蝶は壁際に手を触れ、ざりざりとした感触を確かめた。
 所々には崩落を防ぐためにか木を使った補強がなされ、四角い通路が作られている。とはいえ相当な古さなのだろう。あちこちの木が腐り、崩れそうになっていた。
 一方で『観光客』アト・サイン(p3p001394)は棒の先端にカンテラをつけたものを前方の地面に翳して歩いている。まるで地雷探知の有様だが、やっていることはそう変わらない。
「おっと」
 アトと空牙が同時に立ち止まった。
「見て、罠がある」
 うむと頷く空牙。
 一見しただけでは気づけないが、よく観察すると細い鋼の糸(ワイヤー)が光に反射しているのが分かった。
「自作したのだとしたら、器用な魔物でござるな……ドバーグ」
「解除は任せてください。こういうのは知ってるんですよ」
 腕まくりをして前に出る『悪い人を狩る狐』ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)。
 針金と棒をうまく組み合わせてワイヤーに絡ませると、罠の発動条件を満たさないまま解除していく。
「元の世界で良くダンジョンに挑戦していたんです。罠だらけの坑道なんて、胸が高まりますよね」
「わかるー」
 などと談笑しながら、アトやルルリアはてきぱきと罠の解除にかかった。
 空牙が皆に下がるように言うと、ブンと天井から巨大なギロチンが落ちてきた。それが地面に仕込まれた石に当たり激しい音を立て、ドバーグたちを引き寄せるという仕組みのようだが……途中で棒をつっかけてゆっくり下ろしたことで音は鳴らずに済んだ。
 その手際に、口笛をふくフリをするクベン氏。
「たいした物だ。なじみの運び屋には悪いが、君たちに頼んで正解だったかもしれないな」
「ま、今の幻想じゃ仕方ないよな。この荒れようじゃ」
 『紅獣』ルナール・グルナディエ(p3p002562)は『なじみの運び屋』の顛末を思い出して苦い顔をした。
「こんな時に仕事とは。お疲れ様だ。僕も仕事頑張りますかね」
 『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)も苦笑した。だらんと下がった右腕をそのままに、腰のカンテラをつついて揺らした。
 彼らに限らず殆どのメンバーがカンテラを持ち込んでいたおかげで本来真っ暗なはずの坑道はくっきりと明るく、そこそこの遠くまで見通すことができた。
 ザックを背負い直す『夢に一途な』フロウ・リバー(p3p000709)。
「冒険は好きですよ。こういう状況でなければ、ですね」
 解除された罠やクベン氏、そして彼の持つアタッシュケースをそれぞれ見る。
「やぁ、皆、いろいろ大変だね」
 『治癒士』セシリア・アーデット(p3p002242)はそんな風に言って、カンテラを翳す。
「よ~し! 場所が場所だから私もお手伝いするよ、これも何かの縁ってね!」
 解除した罠を乗り越え、セシリアたちは更に奥へと進んでいく。

 暫く坑道を進むと広い空間に出た。
「敵が沢山いるようでござる」
「確かに……」
 空牙とロズウェルが仲間たちを止める。彼らの話によれば、地底に元々存在した大きな空洞を更にこじ開けたような場所であるらしく、二段の列を成すようにブランチマイニングの跡が残っている。そこを住処としているのだろう。奴隷ドバーグがちょこちょこと出入りしているようだ。
 杖と胸鎧をつけたドバーグリーダーが現われ、こちらを見た。
「気づかれたかっ」
 ドバーグリーダーが指をさして何かを叫び、奴隷ドバーグたちが棍棒やナイフを持って飛び出してくる。
 結構な数がいるが……。
「先手を打ちましょう」
 フロウがメイジワンドを翳すと、暗い空間をマギシュートの淡い光が走った。
 石を削ってできた階段を駆け上がってくる奴隷ドバーグの一体に命中。ドバーグは直撃をうけ、後続のドバーグを巻き込んで階段を転げ落ちていった。
「いいですね、こういうの!」
 宙を舞うように飛び出したルルリアは階段を無視して降下。着地の寸前にマジックガンを二丁引き抜き、腕を交差。
 着地し、顔を上げると同時に、水平に薙ぎ払うように魔術弾を乱射した。
 ドバーグたちが一斉にひっくり返っていく。ドバーグリーダーは近くのドバーグを盾にして防ぐと、ルルリアを指さして叫んだ。
 奴を何とかしろ、と言っているのだろうか。
 駆け寄る奴隷ドバーグたちを、高所からライフルで射撃していくウィルフレド。
 ランドウェラも呪符を翳し、遠術を打ち込んでいく。
 ルルリアを守るため、というよりは……。
「さ、今だ」
 仲間の投げたカンテラの明かりを頼りに、空牙や胡蝶たちが階段を駆け下りていく。
 対抗しようと階段を上って棍棒を振りかざすドバーグだが、胡蝶はそれを素早く蹴りつけ、トンファーでたたき落としていく。
 一方で空牙は階段を途中から全段抜かしで飛び降り、慌てるドバーグたちの間を抜けていく。
 狙いはドバーグリーダーだ。しかし周囲に集めた奴隷ドバーグが盾になり、空牙を阻もうと石のナイフを振りかざす。
 が、ナイフを振り下ろすよりも空牙が食らいつくほうが早かった。
 同じく飛び込んでいくアト。ナイフを投げてドバーグの一体を倒すと、踏み台にしてジャンプ。腰に巻き付けたカンテラが揺れ、着地と同時に突き立てたナイフが別のドバーグを貫いていく。
 敗北を察したのだろうか。ドバーグリーダーが何かを叫んで奥の通路へと走り出す。
 が、逃がすわけがないのだ。
 ルナールが突っ込み、リッターブリッツを仕掛けていく。
 間を阻もうとした奴隷ドバーグが貫かれ、その衝撃で他の奴隷ドバーグも一緒に倒れていく。
 そのエリアを突っ込んでいったのはロズウェルだ。
 彼は依頼主のクベン氏の安全を一旦確保してから、遅れて参戦したのだ。
 比較的高度な治療魔術を小さく詠唱しながらついて行くセシリア。
 慌てて振り返ったドバーグリーダーが杖を繰り出すも、ロズウェルはそれを腕装甲でガード。叫ぶドバーグリーダーに応じてあちこちから奴隷ドバーグが飛びかかり彼を殴るも、鉄の塊を殴っているような音が響いた。
 目を見開き、巨大な剣を叩き込むロズウェル。
 ドバーグリーダーは倒れ、周囲のドバーグたちは悲鳴をあげてあちこちの穴へと逃げていった。
 何発も攻撃を受けたロズウェルは思いの外軽傷だったが、当たり所のよくないものもあったようで、額から血が流れていた。
 セシリアがそれに気づいて治療魔術を発動させ、傷口を止血していく。
「でもあれだね、クベンさんが敵の情報とか持ってたのは本当に助かったよ、これならある程度戦術も立てれるし準備も出来るからね」
「持ちつ持たれつ……と言ったところかな。情報はあっても、高い戦闘能力が無ければ意味はない。金もないのに巨大な畑を持つようなもの、だ」
 満足そうに後ろから歩いてくるクベン氏。
「どうやら連中は逃げたようだ。安全な場所を見つけて、休憩しないかね」

●寄り道と近道
「ここをこうするとですね……ほら、やっぱり!」
 ルルリアが隠されたレバー式のスイッチを操作すると、石の壁がごとごとと動いて部屋が開いた。
 どうやらドバーグの避難所のようで、ドバーグリーダーはここへ逃げ込むつもりだったようだ。
 一同はひとまずこの部屋へ入り、(一応の警戒をしながら)休憩を取ることにした。
「疲れた時には甘い物ってね! これ結構大事なんだよ? どれだけの長さになるかは分からないけど息抜きは大事ってね~ずっと緊張してたら体が持たないからね」
 お菓子を取り出し、仲間へ配るセシリア。
 加えて、救急箱を取り出して怪我をしている仲間に応急手当をしていった。
 診察眼のギフトで傷口が分かるだけでなく、医療知識と救急セットがそろっているので多少の怪我は手当できるだろう。
 ここまでドバーグとのちょこちょことした戦闘があったので、皆全くの無傷というわけにもいかない。とても大事な要素だった。
 ランドウェラもお礼にと砂糖菓子を取り出し、『美味しいぞー』といってセシリアに手渡した。
 空牙は『それでも、万が一を考えるでござる』と扉の前に座り、敵の接近に備えていた。
 彼らは持ち込んだ食料やお菓子をつまみながら休んでいたが、自然と話題は『寄り道』のことへと移っていった。
「多少はいいんじゃないかしら? めぼしいお宝があれば嬉しいもの」
 胡蝶の語りに、アトも頷いた。
「宝物庫があったら狙いたいな。侵入を拒むトラップのある道をあえて進んで、ドバーグウォーリアに守られた部屋を強襲するんだ」
 一方で、フロウは寄り道にやや否定的だった。
「あくまでも依頼の達成が最優先です。けれどどんな物が眠っているか興味はあるので、余裕がある限りは……」
「できるなら可能な所まで行ってみたいがこの依頼が失敗してしまったら元も子もないからな」
 ランドウェラもそれには同意見のようだ。
 では、と手を翳すルルリア。
「『全体の戦力が6割程度になるまで』でどうですか?」
「体力という意味か? 『戦闘不能者が一人でも出たら撤退』なら賛成だ」
 話を聞いていたルナールが指を立てた。
 話の流れを見ていたウィルフレドたちは『それならば』と同意し、クベン氏も『反対する理由はないな』と同行を認めた。

 さて、ここからはただの探索とは異なる所だ。
 元々あちこちに掘り巡らされた坑道をドバーグたちが更に拡張し改造を重ねた複雑なダンジョンだ。
 ただ通り抜けるだけならまだしも、深く潜るとなるとそれなりの探索力や戦闘力を要するようになるだろう。
 罠に対する探索力もなかなかだったが、百パーセント安全というわけにもいかないようで、所々でダメージを負いながら、そのたびに慎重に回復を重ねながら、一同はダンジョンの探索を続けていた。
 そうして見つけたのが……。
「何やら、怪しげな部屋があるでござる」
 空牙が警戒するとおり、巨大な鋼鉄の扉が通路を阻んでいる。
 かかっている鍵をルルリアの解錠技術で開くと、向こうで大勢が待ち構えている気配がした。
「これは……」
 開いた扉。
 その先に待つ甲冑の戦士。杖のように堂々とついた大剣。
 彼の後ろには美しく磨かれた球体が、高い台座のうえに置かれていた。
 両手を広げたほどの大きさがあるそれは、まるで星でも飾るように丁寧に飾られ、表面は星空のようにきらきらと煌めいている。
 それは、甲冑の戦士……ドバーグウォーリアの持つ剣の刀身にも言えた。
「『ドバーグの星』……噂は本当だったか」
 ぽつりと呟くクベン氏。
 聞き返す余裕はない。ドバーグウォーリアが雄々しく叫び、その周囲からは複数のドバーグと二体のドバーグリーダーが突撃を開始した。
「散開してください。被害を減らしましょう」
 フロウはメイジワンドを構え、ドバーグリーダーに向けてマジックミサイルを打ち始めた。
 ドバーグリーダーは相変わらず奴隷ドバーグを盾にしているが、これまでと異なり自分も剣を翳して襲いかかってきた。より上位の存在であるドバーグウォーリアに突撃を命じられたのだろうか。
 ドバーグウォーリアに当てるための人員を特に決め手はいなかったが、自然と割り振りは固まった。
「ニンゲン、タチサレ!」
 煌めく剣を翳し、突撃を仕掛けてくるドバーグウォーリア。
 その狙いがクベン氏であったために、ロズウェルが身体を張って攻撃を受け止めた。
 振り下ろされた剣を、自らの剣で受け止める。
 とんでもない攻撃力だが、どうしても耐えられないという程ではない。
 とにかく防御に徹していれば、『すごく痛い』で済むダメージだ。
 防衛の頼りは彼と、そしてセシリアだった。
 セシリアはロズウェルの痛みをできる限り飛ばそうとハイ・ヒールを連発し、体力の維持を図った。周囲の奴隷ドバーグによるポコポコ殴りも相まって回復を上回るダメージ量だが、逆に言えば彼らが保つまではドバーグウォーリアを抑えておけるだろう。
 一方で胡蝶が奴隷ドバーグを殴り倒し、アトが切り払い、ルルリアがエーテルガトリングの乱射をはかる。
「偉そうな講釈してても僕観光客なんて弱いんだ! 期待しないでくれ!」
 なんて言いつつ、割と手際よく奴隷ドバーグにナイフを打ち込んでいくアト。
 空牙はドバーグリーダーの周囲が手薄になった所を狙って忍び寄り、首へと食らいついていく。
 ランスを防御の形で構えたルナールが突っ込み、群がる奴隷ドバーグを押していく一方で、ウィルフレドたちが着実に奴隷ドバーグを減らしていく。
 ドバーグリーダー二体を倒しきり、いざドバーグウォーリアへ挑もうかと所で……ロズウェルがついに膝をついたのだった。
「くっ……まずいですね!」
 振り込まれるドバーグウォーリアの剣。
 煌めく光を目に焼き付けながら、ロズウェルは派手に吹き飛ばされた。
 駆け寄るセシリア。ロズウェルを頑張って引っ張り起こして、仲間に対して首を振った。
「これ以上はダメだよ! 大怪我しちゃう!」
「お宝を目の前にして……うーん、もったいない!」
「けど、仕方ないですよね!」
 約束通りに撤退へとハンドルをきったイレギュラーズたち。
 ルナールは防御を固めながらも、依頼人を守りつつその場を逃げ出した。
 一方のドバーグウォーリアは撤退する彼らを追いかけることもなく、煌めく球体の前に立ち塞がっていた。

 脱出に集中したとなれば、戦えない者が一人出たとて不足はない。
 罠を解除し、立ち塞がるドバーグリーダーたちを退け、多少のダメージはあったものの、なんとか坑道を突破することができた。
「ここが出口でござるな」
「そのようね」
 真っ暗な坑道で目をこらしていたせいか、昼間の野外はえらくまぶしく感じた。
 空牙を先頭に、胡蝶やウィルフレドが目を細めながら坑道を出る。
 追いかけてきていた少量の奴隷ドバーグも、外の光におびえて引き返していったようだ。
「寄り道をして、得たものはあった……みたいだな」
 ロズウェルとランドウェラが顔を見合わせる。ルナールが煙草を取り出した。
「これで仕事は達成かね、依頼人殿?」
 素早く懐からライターを取り出し、火をつけるクベン氏。
「『今回は』終わりだ」
 それって? 首を傾げるアトやルルリア。
 だがうすうす分かってはいた。あの煌めく球体やドバーグウォーリアの剣を見たときの、クベン氏の表情と言葉。
「『ドバーグの星』……ドバーグが錬成するというあの鉱物を欲しがるお方がいてね。そのうち、また依頼させてもらうさ」
 セシリアがまさかと思っていると、クベン氏はアタッシュケースを開いて見せた。
 中に入っていたのは五つほどの腕輪だ。先程見た『ドバーグの星』で出来た腕輪である。
「美しいだろう。君らが『寄り道』のできる人員だと分かった以上、利用……じゃなかった、依頼しない手はないのさ」
 なるほど。このお仕事には先があるようだ。
 彼らは何となく未来を察し、そして太陽の下へ歩き出した。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 イレギュラーズの皆様、お疲れ様でした。
 今回の仕事でクベン氏に気に入られたようです。そのうちにまた、新しい依頼が舞い込むかもしれませんね。

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