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シナリオ詳細

<土用の丑の日>海と気合いとオオウナギ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ソーラン節全部俺
 褌の十夜 縁 (p3p000099)が腕組みし、波打つ甲板で明日を見つめていた。
 これが絶望の青編で全編にかけてエモの限りを尽くしてきた男の姿である。特典OVAかな?
 だが彼の胸板をなめるように見つめるのはまだ待っていただきたい。
 なぜならば――。
「来たぜ!」
 褌のオーク、ゴリョウ・クートン (p3p002081)。
「私たちの!」
 褌のゴリラ、ローラント・ガリラベルク (p3p001213)。
「ウナギ漁がなァ――!!」
 褌のペンギン、ジョージ・キングマン (p3p007332)。
 男達は一列に並んで腕組みし、波打つ甲板で明日を見つめていた。

 時は夏祭りを前後した頃。
 海洋王国とカムイグラによる合同夏祭りが開催されたりあちこちで不穏な動きがあったりした際のこと。
 夏に入った『土用の丑の日』。ここはひとつウナギ食おうぜってことで男達はカムイグラ側から船を出し、海洋王国の兵士が見つけたっつー巨大ウナギの発生地を目指していた。
「しかし……船を貸す条件が『この格好』で乗り込むこととはなあ」
 葉巻をくわえ、眉を左右非対称にゆがめる褌ナイスミドルことグレイシア=オルトバーン (p3p000111)。
「おじさま……!」
 目をハートにして両手を組むルアナ・テルフォード (p3p000291)。
 流石に女性陣までふんどしってわけにゃいかねえので水着でご勘弁いただいたが……。
「いや、なんだろうねぇ。あたしら曲がりなりにも宿命の対決ってやつを乗り越えて新天地を見つけた筈なんだけどねえ」
 サラシを巻いてビシッときめた燕黒 姫喬 (p3p000406)が木の棒みたいなやつをがじがじしていた。なんかいい味の出る根っこらしい。
「あたしてっきり、水着コンテストにかこつけておニューの水着を見せつける回かなにかだとおもってたんだけど……」
 同じくサラシでビシっときめたリア・クォーツ (p3p004937)がほほをかいた。
「何言ってんだオメェら!」
「気合い入れろォ!」
 煙草くわえたペンギンとミントパイプ加えたオークがシンメトリーポーズ(よい子の皆! のポーズ)で振り返った。
「え、なに、褌締めたら性格までかわるの?」
「説明しよう」
 ローラントが眼鏡をかけて本を広げた。
 振り返るリアと姫喬。
「その声は……森の賢者!」
「この海域に発生する指定美食生物『オオウナギ』は男の服だけ溶かす粘液を出すことで知られている」
「どうして……」
「奴の溶かせないもの。それは褌とサラシのみ」
「どうして……」
「奴の弱点。それは気合いを入れた男たちの汗」
「どうして……」
「ちなみに昨今の風潮から男女どちらの汗でもよいことになった」
「どうして……!?」
 コンプライアンスを気にするウナギらしかった。
「つまり俺たちは……今から気合い100%でウナギに襲いかかってつかまえなきゃあならねえってことさ」
 十夜 縁 (p3p000099)がキセルを船の淵にトントンってやってみせた。
「あなたそういうの一番だめな人だったんじゃ……」
「とーやサンをナメるんじゃねえ!」
「気合い入れろォ!」
 褌オークと褌ペンギンがまたさっきのポーズで振り返った。つまり一回前に向き直ってからのリターンである。
 フウと煙を天にふくグレイシア。
「過去との決着をつけるべく戦った彼は……共に戦って吾輩たちへの借りを返すためにこうして率先して褌をつけてくれたのだ」
「さすがだね! 見直したよとーや!」
 グレイシアの後ろからにょきっと生えるかたちで呼びかけるルアナ。
 十夜はぐっと何かを握りしめた。
「……せめてもう二度と、この『縁』だけは切れねぇように」
「名台詞をなんてところで使うのよ」
「あと多分十夜の決着とそこのゴリラ関係ないね。強いていうならあたしがらみじゃない?」
「つまりだァ!」
 また振り返りなおすオークとペンギン。
「俺たちはうめえウナギを食うために、気合いを限界まで出していくんだよ!」
「気合い入れろォ!」

 かくして、褌男たちの潮と汗とウナギにまみれた戦いが始まろうとしていた。

GMコメント

■オーダー?
 指定海域にて伝説のオオウナギと戦います。
 オオウナギ最大の特徴である服を溶かす能力は実質封殺されているので、気合い全開で戦いましょう。
 ちなみにオオウナギがどういう技をつかって戦闘をしかけてくるかはサッパリわかっていません。わかってるのは響きが七扇に似てるなってことくらいです。

 海の中で戦うのか船の上で戦うのかも実は分かっていません。
 『気合いが出せればなんでもできる』の精神でいきおいよくぶつかっていきましょう。

・気合いだァ!
 ナナ――オオウナギは気合いの入ったバトルに弱いという特徴を持ちます。
 とにかく気合いを込めまくって戦いましょう。
 気合いで攻撃、気合いで防御、気合いで回復、気合いで移動です。
 困ったら『!』を語尾に四つくらいつけて喋りましょう。
 きっと作画も彫りの深い劇画調になるはずです。

・ウナギだあ!
 手に入れたウナギをフェデリア島にもってって食いましょう。
 ウナギを使った料理をなんでも注文してください。そこにいる褌オークが全部作ってくれるはずです。腕組みしながら。

■■■アドリブ度(気合い)■■■
 このシナリオではキャラが突然いつもあげないような大声をあげたり目に炎を燃やしたり意味もなくジャンプして回転したりしますし顔が劇画調になりますしBGMにみんなで歌うソーラン節が流れます。

  • <土用の丑の日>海と気合いとオオウナギ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月31日 22時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
勇者と生きる魔王
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
魔王と生きる勇者
燕黒 姫喬(p3p000406)
猫鮫姫
ローラント・ガリラベルク(p3p001213)
アイオンの瞳第零席
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
リア・クォーツ(p3p004937)
願いの先
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海

リプレイ

●チェス……
 突然だが尻を見てほしい。
 強く引き締まった『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)の若々しい尻である。
 こんなこと多分過去一度たりとも許されてないけど今日だけはやらせてもらおう。
「廃滅病やら竜種やら冠位魔種との死闘やらを乗り越えたんだ、今更でかいウナギくらいで怯む訳にはいかねぇな!! そうだろ『野郎共』ォ!」
「「応ッッ!!!!」」
 ゴリラの尻。
 オークの尻。
 ペンギンの尻。
 イケオジの尻。
 彼らが五人並んでキュッてすると、褌一丁で腕組みしながら一斉に振り返った。
 背景で流れるソーラン節。
 大太古を叩き続ける『旋律を知る者』リア・クォーツ(p3p004937)。
 サラシ巻いて太鼓を叩き続けるリアの背景に炎が燃え上がり、謎テロップが流れていった。
 ――人の域にとどめておいたキャラが崩壊の姿をさらしていく。
 ――人のかけたNGを解いて、人を超えた神に近い存在へと変わっていく。
 リアおねーさんの演奏スキルってたぶんこういうのじゃない。
 ハチマキに書かれた『ガブリエル様命』の文字が映えた。
 では一人ずつ尻からなめ撮り(身体をぐるーって回るカメラアングルの手法)する形で紹介して行こう。
「気合とは! 爆発力だ!
 爆発力とは! 緩急だ!
 緩急とは! 溜めに溜めに溜め込んだ気合を爆発させるエクスタシーだぁッ!」
 尻から顔へのカメラ移動の後劇画調になって叫ぶ『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)。
 褌には『米作りは土作り』って書いてあった。
「オラァ!」
 両手を頭の後ろに組んで高速スクワットを始めるゴリョウ。
「狩りとは! 原初より連綿と続く生命活動そのもの!
 あらゆる生き物は何かを狩り、己の糧として命を繋いでゆく!
 それは、生命が生命である限り決して逃れることのできない宿業!
 なれば叫べ! そして誇れ!
 今、我らはまさしく『生』を謳歌していると!!」
 同じく尻から顔への移動でリアルタッチのゴリラもとい『アイオンの瞳第零席』ローラント・ガリラベルク(p3p001213)が叫んだ。
 三秒に一回の重厚かつ強大なドラミングで語りを始めた。
「大いなる海に育まれし巨大なる生命よ!
 今、我らは汝を狩らんとす!
 その身、その命を我らがものとするために!
 誓おう! そなたの生きてきた刻は、決して無駄にはせぬ! 余さず取り込み、我らの生きる刻に繋げると!!
 そしてもし! 汝がそれを拒否するのであれば! その命永らえんがために我らに抗うというのであれば! 全力をもってくるがよい!
 我らの力及ばぬときは、我らの命が、汝の生きる刻に連なることとなろう!!」
 背景に広がる広大なジャングル。
「さあ、はじめよう!
 ごくありふれた!
 命と命のせめぎ合いを!!」
「気合い入れろォ!」
 ペンギンの尻からくちばしにかけてのカメラ移動。くちばしを開いてギエー! て叫ぶ『絶海武闘』ジョージ・キングマン(p3p007332)。
「さぁお前ら、行くぞぉぉぉ!!!!
 郷に入っては郷に従え。旅の恥は掻き捨てろ。旅は道連れ世は気合!
 吹っ切れてしまえばこっちのものだ!!!!
 気合いを入れるか服を溶かされるかの二択だ! 選ぶ余地はない……!」
 取り出した葉巻をくちばしにくわえると、その場から勢いよく跳躍。
 跳躍して……から船の運転席へとズダンと着地。
 舵をヒレみてーな手で掴むと、空に向けた叫んだ。
「行くぞおおおおおおおおおお!!」
「いいだろう!!!!」
 イケオジの極みみたいな声をした『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)が、褌の腰から葉巻を抜いて、口にくわえてモノクルを光らせた。
 このイケオジにとって史上最大の露出度である。
 あと褌にめっちゃ「魔王」って書いてあるけどルアナは見て見ぬ振りをした。
「総員!!!! 準備はいいか!!!!」
「「応!!」」
「さあ野郎共! 気合い入れていくよ!」
 『アイオンの瞳第一席』燕黒 姫喬(p3p000406)はサラシをバッて脱ぐとなんでか知らないけど下に来ていたおニューの水着を晒した。
「「へい、姉御ォ!!」」
 ヨッシャアって言いながら褌一丁のサメ男たちが現れた。
 本来こうして使うはずの燕黒一家の野郎どもである。
 サメ野郎共は一斉に自分の尻をパァンって叩くと、『トシオミズギアリガト』っていう日本語不自由なひとみたいな横断幕を広げた。
「どういうことなの……」
 オトナモードになった『絶望を砕く者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)が目のハイライトを消していた。
「なによこの絵面。なんで大量の男達のケツ眺めさせられてんの。サメ野郎共のおかげで見えてないけどこれおじさまも褌なのよね!?」
 リアが『ふぁっきゅー!』とか言いながら太鼓を力強く叩き始めた。
 一斉に踊り歌い始めるサメ野郎共。
 彼らをバックダンサーにして、十夜たちが雄々しく踊り出した。
「なんでも巷では『3周年記念』とかいう祭りの真っ最中らしいし、景気づけに一番活きのいいやつを仕留めて帰ってやろうや!!!!」
「行くぞぉぉぉぉぉぉお!!!」
 飛び散る汗。輝く太陽。
 常識外れの『祭り』が始まるぜ。

●オオウナギ
「え、でか……」
 太鼓をとんでもない速度でドカドカしていたリアが、海から顔を出したオオウナギを二度見した。
「こんな大きいの、本当に入るのかしら……けどガブリエル様のためだもの。がんばるわ!」
「言い方」
「ね、ねぇ、本当にガブリエル様があれ食べたいって言ってたの??」
 振り返るリア(鬼太鼓)。褌しめた動物たちが頷いた。
「うんうん言ってた言ってた」
「『鰻マジ食いたみ』と言っていた」
「『俺様チャン鰻大大大好き』と言ってたな」
「ほんとにそれガブリエル様かァ!?」
 とかいってる間にリアが鰻にぬるんと絡みつかれた。
「うぎゃああああ! やめろ近寄るなぎゃああああああ!!! ぬるぬるするぅ!!!!!」
 手に持ったバチで鰻の胴体を叩きまくるリア。
「いまたすけるね! いっくよー!」
 一旦子供脳になってから剣をもって飛びかかるルアナ。
 目をギラーンと光らせた鰻がもののついででルアナも一緒にからめとった。
「ひぎゃあああああああああああああぬるぬるしてきもっちわるいーーーーーーーー!!!!
 たすけてーーーーーーーーおじさまーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
 美女と鰻が揃ったサービスシーンだろって? しゃーねーな今見せてやるよ!
「今いくぞ!!!!」
 両手で手刀をつくって陸上選手みたいなキレキレフォームで走り出すグレイシア(褌一丁)を見よ。
 流れ散る汗!
 躍動する筋肉!
 なびく褌!
 左右交互に光る乳首。
「うわーーーーやっぱ来ないでーーーー! おじさま(はぁと)のイメージが壊っ――こわれっ――離せつってんだろオラァ!」
 ルアナの口調と作画が一瞬だけ崩れてオオウナギの顔面を殴りつけた。
 ぬるんと滑り落ちるルアナとリア。
「よくもやったな鰻野郎ゴラァ!」
 助走をつけたリアが跳躍からのドロップキック。
「出たーーーリアのシスタードロップキックだー!」
「対象の弱点をつき狂気に陥れる死のキックだー!」
 ゴリョウとローラントが同時に身を乗り出して拳を握りしめた。
「ドロップキックと聞いちゃまけていられねえ。いくぞォー!」
 ジョージは船でアンカードリフトをかますと勢いをつけて跳躍。
 ドリル回転をかけながら鰻のボディにドリルドロップキックを繰り出した。
「出たー! ジョージのペンギンドロップキックだー!」
「デビュー依頼で最初に見せたお披露目キックだー!」
「私たちも負けてはいられん!」
「後に続くぞオラァ!」
 ゴリョウとローラントはガッて拳を合わせると、船にいつのまにかつくったプロレスリングの端っこへと走り出した。
「ゆくぞ!」
「応!」
 二人の目線カットインが入った次の瞬間、ローラントの投げたゴリョウがリングロープから跳ね返って鰻へとダイブ。
 ローラントは跳躍すると頭を前にしてミサイルのように飛ぶゴリョウの背にサーフボードよろしく飛び乗り、両手を腰の後ろに組んだ。
「「愛と友情のツープラトン――『ブタゴリラミサイル』!!」」
 着弾、爆発!
 なぜ爆発するのかなんて知らん。ミサイルって名がついたら大体のもんは爆発すんだよ!
「「グワァー!?」」
 が、相手はあのオオウナギ。
 攻撃シーンをフルカットしてペンギンとゴリラとオークを吹き飛ばした。
 甲板を転がる動物たち。
 ざわめくサメ野郎共。
「狼狽えるなぁ!」
 姫喬はスタンドマイクを持ってくると、サメ野郎共の中央に立ってから指を鳴らした。
「ミュージック!」
「ソイヤ!」
「ハアッ!」
 両サイドから現れるリアと十夜。そしてグレイシア。
 十夜が津軽三味線を激しくかき鳴らすと、グレイシアがどこからか持ち込んだ尺八を吹き始めた。
 バチを振りかざすリア。
「『慈愛のカルマート(海漢バージョン)』!!」
「「ハイィ!」」
 一斉に踊り始めるサメ野郎共。
 マイクに向かって熱唱をはじめる姫喬。
 うつ伏せに突き出した動物たちの尻を鬼叩きし始めるリア。
 これが名乗り口上と回復と威嚇術の使用シーンだって言って何人が信じるだろうか。
 ゴリラたちの尻を太鼓にしながらにっこり笑顔でルアナへ振り返るリア。
「安心してね。女子には普通に回復してあげるから」
「その状況で話しかけられてもなにも安心できないんだけどね」
 流石青少年の性癖をねじ曲げることで知られるリアおねーさんだ。回復の仕方もサバじゃねえぜ。
「輪廻を渡らい、また来世っ」
 歌いながら剣を振り回して横ピースする姫喬。
 その横で琵琶をかき鳴らしていた十夜がソロパートに入り、琵琶の弦を歯でかき鳴らし始める。
『ギャギャギャギャギャギャギャギャ!』
「出たー! シードラゴン十夜様の歯琵琶だー!」
「CD買います!」
 ハッとして指を指すゴリョウ。
「見ろ! どういうわけかオオウナギが弱っているぞ!」
 尺八を膝でへし折るグレイシア。
「チャンスだ!!!!」
 目に炎を燃やしてくちばしを大きく開くジョージ。
「行くぞォォォォォォォォ!!!!」
 このシナリオから何個スタンプが生まれるか楽しみですね。
 十夜は琵琶を握りしめて走り出すと、甲板を蹴って大跳躍した。
「ウォオオオオオオオオオオ――必殺!!!!」
 十夜おじさんが絶対言わなそうな台詞二大巨頭が一つの台詞に入った瞬間であった。
 大空で琵琶を掲げ、顔を彫りの深い劇画調にする十夜。
 更には炎を吹いて大回転すると、オオウナギめがけて突っ込んでいった。
「出たー! シードラゴン十夜様の琵琶地獄車だー!」
「これを食らった相手は煉獄の炎に抱かれて燃え果てるんだー!」
「フィニーーーッシュ!!」
 スタンドマイクを両手で握りしめ振り上げた姫喬が空に向けて叫ぶと、オオウナギはしめやかに爆発四散した。

●うなぎおいしかのうみ
「あれー? 船に乗ったところから記憶がないなー?
 悪い夢でも見てたきがする。きっと船酔いだよね。いっただきまーす!」
 ルアナがすげーサッパリした顔でひつまぶしにおててをあわせた。
 ここはカムイグラ港の寄り合い所。いまだけ地元のひとから場所を借りて、みな畳で卓を囲んでいた。
 お箸を手に台所へ呼びかける姫喬。
「あたし鰻のたきこみごはーん! 白醤油あるから焼き物もいいな!」
「あいよー」
 ゴリョウは愛用の調理器具を駆使して鰻料理を次から次へと作っていた。
 みなのリクエストに応えてあれやこれやを作った上で、ゴリョウ亭秘伝のタレで焼いた蒲焼きや高級天然塩をふった白焼。さらにはお吸い物やひつまぶしといったオーソドックスなものまでありとあらゆる鰻料理が振る舞われた。なんつっても港が軽く埋まるくらいくそでかいオオウナギがとれたのだから、くいでもあるってぇもんである。
「いらだきます……」
 両手を合わせてから、お箸とお椀を手に持つローラント。
「身が多いだけあって、色々試せるというのは良い事だ。どれ、吾輩もひとつ……」
 和食を中心に作るゴリョウとは対照的に、一緒に厨房へ入ったグレイシアはトマト煮にオムレツ、カプレーゼといった料理を作っていた。
「こっからは創作料理タイムだぜ」
「食材を無駄にせず、いただくとしよう」
 天ぷら、フライ、フリットやポワレ、とにかく何でもかんでも作っては仲間達や途中から混ざってたサメ野郎共に振る舞っていく。
「あぁ、これだけ上手い飯とウナギが食えるなら、気合を入れた甲斐はあったな」
 今日初めて人間フォームになって、しみじみ食ってるジョージ。眼鏡をキラリとやって目を瞑る。
「今日は本当に、お疲れ様だ。よく頑張ったな」
「よく頑張ったなじゃねえわよ」
 リアが口調と表情を崩しながら振り返った。右上に巨大な『!?』の字が現れる。
「ほんとにこれガブリエル様が欲しがってたのよね?」
「本当だ。ほら連れてきた」
 バリバリ豊穣人のオッサン(佃煮屋経営47歳)が緑のかつらを被って横に座った。
「ワタシ、ギャブリエルデス。ウナギとっても好きネ」
「嘘じゃねーか!」
 シスターダブルドロップキックがジョージとオッサンの顔面に突き刺さった。はじけ飛ぶ眼鏡。
「落ち着いて歩く思春期少年キラー!」
「ガブリエルはそうそうカムイグラには来られんだけだ性躰降臨!」
「その呼び方やめろぁ!」
 何人か殴り倒してから座布団に座り、手を合わせるリア。
「って、あら! ゴリョウさんが料理してくれるなんて最高じゃない!
 オークだけど優しいし料理は上手だしいい人よね」
「何事も無かったかのように……」
「しかし……流した汗のぶんだけ、酒がうまいねえぇ」
 十夜は今日一日のことを全部忘れたみたいな顔をしてとっくりを傾けていた。
 振り返り、お猪口を掲げる。
「夏に乾杯だ。今年もよろしく」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 これが一夏の思い出ってやつなんですね

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