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シナリオ詳細

爆速ライダー海物語

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●奔れ! マッハスプラッシャー!
 フロートベースのハッチが開き、海風が巻くように吹き込んでいく。
 ヘルメットのシールドを下ろした海洋海軍将校ユーナバー・G・マッハは、作業員にサムズアップサインを出した。
 作業員はそれを確認してスティックライトを振りかざし、強く振り下ろす。
 パァンという空気の爆ぜるような音と共に『発射』された彼の水上バイクは、波打つ海面上をまるで舗装されたハイウェイのごとく駆け抜けた。
 これぞ海洋海軍特殊海上捜査課略して特海の開発した水上騎乗特殊装備マッハスプラッシャーである。
 なぜこれだけの勢いをつけて海上を走らねばならないのか?
 答えはもう目の前にある。
「観測員、見えてるな? 狂王種を確認した。相変わらず群れていやがる」
 ユーナバーのシールドに反射してうつる、大量の影。
 海面からまるで少女のような顔がのぞき、こちらへ手をばたつかせる。
 だが騙されてはならない。これこそこのモンスターの『疑似餌』なのだ。
 ユーナバーは特殊な拳銃を抜くと、少女の顔……というよりそのやや下を撃った。
 射撃をうけ、ざばんと身体を露出させるモンスター。
 少女の鼻から上だけを模した瘤をつけたクラゲ型のモンスターが、人間の手に似た触手を何本も振りかざした。『幽霊海月(ユウレイクラゲ)』と呼ばれる狂王種である。
 絡みつこうと飛びかかるそれを、ユーナバーは射撃によって牽制。
 続いて二体のユウレイクラゲが出現。
 ユーナバーは器用なドライビングテクニックで彼らの間をすり抜け、目標へとにらみをつける。
 幽霊海月たちが自らの巣としている『骸船(ムクロブネ)』である。
 木造の船のように見えるが、その先端をがっぱりと開き、牙だらけの口をあらわにした。
「幽霊海月をすりぬけて一撃離脱で行く。三体くらいなら俺一人でも――」
 と、その時。
 新たに20体近くのユウレイクラゲが海面から飛び出した
「マジかよ」


 ここは要塞島フェデリア。
 かつて海洋王国と冠位魔種が壮絶な決戦を行った土地である。
 いまでは地図の端っことまで言われた『絶望の青』は攻略され『静寂の青』と名を変え、この海域もまた海洋王国の実質的領海となっている。
 とはいえただ旗を立てただけで守れるほど国政というものは易くないらしく、青攻略にあたっていた多くの兵達はフェデリア、アクエリア、コン=モスカをそれぞれ三大中継基地として要塞化、攻略範囲を広げ安全航路を確保するべく動いていた。
 といっても海洋王国から兵を無限に送り出せるものでもなく、フェデリアほど遠くなるとむしろカムイグラから行った方が早いほどである。
 そんなわけで、フェデリアの領海確保運動には此岸ノ辺からワープで回り込めるイレギュラーズ……もといローレットに依頼されることが多くなっていた。
「まあカムイグラに交渉するって手もないわけじゃねえが……ローレットは一緒にリヴァイアサンとも戦った仲だしな。信頼できる奴に任せたいんだよ。なっ?」
 イレギュラーズの肩をポンポンと叩いて、どこか人なつっこい笑みを浮かべるユーナバー。
 そんな彼の腕はギプスにつられていた。
 注目するイレギュラーズに、ユーナバーは苦笑してあたまをかく。
「いやあ……いつもみたいに狂王種を駆除してたんだが、敵戦力を計り間違えちまったみたいでさ。俺としたことが、って感じだよな」
 ハハハと笑う彼の表情に、失敗や後悔といった色はない。
 自分の獲得した情報を元に、イレギュラーズたちが必ず成し遂げてくれると信じている表情だった。
「ってわけで、こっからは頼むぜローレット。
 前みたいにマッハススプラッシャーは貸してやる。幽霊海月の群れを突っ切って、骸船にキツい一撃を入れてソッコーで離脱。これでOKだ」
 といっても、ただ駆け抜ければいいわけではない。
 幽霊海月たちはこちらを『餌』にすべくしがみついたり精神をかき乱す魔術を浴びせてくる。この連中に邪魔されないように射撃や近接攻撃で適時たおしながら突き進まねばならないのだ。
 というか、一人でそれをやろうとして返り討ちにあってしまったのが今回のユーナバーなのである。
「骸船はかなりの長距離から砲撃を打ち込んでくるが、防御や回避でしのぎながら近づいて高火力の技をたたき込んでやればだいぶ簡単に沈むだろう。奴は火力にメチャクチャ振り切ってるからな」
 そこまで説明したところで、イレギュラーズにキーを投げてパスした。
「俺たちはユニットを貸す。必要ならバイクも貸すぜ。でもってアンタらは撃滅する仕事を担ってもらう。今回もギブアンドテイク、ってね」

GMコメント

■オーダー
 『骸船』の撃沈が今回の業務内容です。
 そのためには幽霊海月の群れを突破し、更に超遠距離砲撃をしのいで接近しなければなりません。

・幽霊海月の突破
 モンスターたちの群れを突破します。
 水上機動装備を用いて高速で駆け抜けますが、このとき適時敵を倒しながら進んでください。
 幽霊海月はこちらに掴みかかったり精神をかき乱す魔術を使ってきます。
 これらには【呪縛】や【混乱】の効果があります。

 余談になりますが、普通に倒しながら進むだけだと敵の増加量の方がまして積むし高高度飛行で迂回しようとするともっとヤバいものにやられるらしいので、今のところバイク戦術が最も有効なようです。

・砲撃の突破
 他に表現のしようがないので超遠距離砲撃を述べていますが、こちらからの攻撃がいろんな意味で届かない距離からの一方的な砲撃をさします。
 凌ぐためには砲弾の回避や代行防御、回復などを用いて自チームのHPを零にしない努力をせねばなりません。一人でも落ちると後半のトライにかなり影響します。

 これをしのぎながら距離を詰め、こちらの最大火力をたたき込んでください。
 ここでは実ダメージが重視されますので、現チームにとって『1ターン内にてもっと高いダメージ値をはじき出す』トライだと考えてください。
 ひとりひとりがただ高威力なスキルを打ち込むだけでもそれなりに効果は出ますが、攻撃順やスキル選択や『これとこれのスキルを合わせると爆発力がすごい』といった連携方法をとると尚よしです。

●マッハスプラッシャー
 バイクを海上で走らせることが出来る装備です。めちゃくちゃ高価っていうか値段がつけられないくらいの技術が詰まっているので貸すだけになりますが、今回に関しちゃとっても便利です。
 自前のバイクがあるならそれに装着し、バイクをもっていないならバイクごと貸してくれます。
 あんまいないと思いますが『俺がバイクだ』っていう人は直につけます。
 実質的に騎乗戦闘なので『騎乗戦闘』や『輪動制御』のスキルがあると有利です。
 なお、自分の足で走るわけじゃないので機動力には依存しません。

■■■アドリブ度■■■
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用ください。

  • 爆速ライダー海物語完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年07月30日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
七鳥・天十里(p3p001668)
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
かんな(p3p007880)
ホワイトリリィ
クリスティーナ・フォン・ヴァイセンブルク(p3p007997)
成果を伝う者
マヤ ハグロ(p3p008008)
蓮杖 綾姫(p3p008658)
悲嘆の呪いを知りし者

リプレイ

●海原を駆け抜けろ、マッハスプラッシャー
 アクセルリングをひねり、吠えるエンジンと一体になって身をかがめる『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)。
 さすような海風を切り裂いて、マッハスプラッシャーを装備した軍用バイクが波の上を突き進んでいく。
 あがるしぶきを背に流し、十夜はどこか若々しく笑った。
「まさかこの歳でこんなおっかねぇバイクに乗ることになるとはなぁ。
 しかも海の上を走るときた。
 ギャングだった頃も、ここまでぶっ飛んだ経験は――まぁ、片手で数える程度はあったかもしれんが」
「なあにジジ臭いこと言ってるのよ。あんだけ海洋に名をとどろかせときながら」
 『海賊見習い』マヤ ハグロ(p3p008008)はは彼と併走し、これ見よがしにウィリーをして見せた。
「それは言ってくれなさんな」
「ははっ! それにしてもこの激しい揺れ、なかなかいい乗り心地じゃないの。楽しませてもらいましょ!」
 親指を立てて見せるマヤに、十夜もまた苦笑交じりに親指を立てた。
「ま、それもそうか。いつまでも隠居気分じゃあ『浮かばれない』よな。――楽しむか」

「やっぱり狂王種だけでもヤバい所だよね絶望の……静寂の青!
 だから一気に倒すのね。シンプルなの好きだよ私!」
 外洋遠征に幾度となく加わり、様々な戦いに身を投じてきた『白雀』ティスル ティル(p3p006151)。
 たとえラインを越えたとて、狂王種やふしぎの海が消えるわけではない。
 こうして発生する新たな戦いにもまた、こうして身を投じていた。
「海月に船……斬り応えに欠けそうですが、これもまた一興。
 この刃にて滅して差し上げます!」
 剣を抜き、ハンドルをしっかりと片手で握る『放浪の剣士?』蓮杖 綾姫(p3p008658)。
「それにしてもこのバイク。馬より素直でいいですね!」
「かな? 勝手に走ってくれる馬もいいけど、こういうのもいいよね」
 ティスルは腕輪を剣形態にチェンジすると、片手運転をしながら構えた。
 その様子を二度見する綾姫。
 一方で『今日は様子見』クリスティーナ・フォン・ヴァイセンブルク(p3p007997)と『ガンスリンガー』七鳥・天十里(p3p001668)はたくみにバイクを蛇行させながら感覚を掴んでいた。
「わたしってあまり表立って戦うタイプじゃないけど……こうなった以上頑張るとしますかー。
 私だって鉄帝軍人なんだからやるときゃやるんだよー?
 事務作業や後方勤務がメインだけどね!」
 勢いをつけ、バイクを加速させるクリスティーナ。
 そんな仲間達の最後尾、久しぶりのマッハスプラッシャー感覚を楽しんでいた『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)と『カピブタ好き』かんな(p3p007880)が、波に逆らって軽やかな蛇行をみせていた。
 時折大きくなった波に乗り、軽くジャンプするかんな。
「あのあとクセになってしまったみたいで、ついマイバイクを手に入れてしまったの。
 愛機だとやっぱり、乗り心地が違うわね」
 真っ白なカスタムバイクから感じる振動にうっとりとしながら、かんなは小さく微笑んだ。
「それはなによりです。様々な依頼を通して視野がひろがるのは、良いことですね」
 鶫は今回も追加武装を山ほど装着したバイクに水着姿でまたがっていた。ある意味鶫の定番となりつつある黒ビキニである。
 バイクのカラーリングや武装もあいまって、かんなと丁度良く対照的になっていた。
「ふふ。こういう時はなんていうのだったかしら?」
 かんなに呼びかけられ、鶫はコミカルに片眉をあげた。
「飛ばしていきましょう」
「そう、それね」
 勢いを増したイレギュラーズたちのバイク。
 波を乗り越え走る八台の影に対して、幽霊海月たちがぷかりと海上へと姿をみせる。
 行く手を阻むかのように呪いの歌をうたいはじめるが、引き返す気も迂回する気もない。正面突破あるのみである。
「――カッ飛ばしていきましょう!」


 幽霊海月たちは既に擬態は見破られたとみたのか、すぐさま海面から上へと身体を出して白いゴム手袋のような質感をした沢山の触手を露出させた。
「とらえようったって無駄! 今日の私は止められないよ!」
 ティスルはバイクの上で低い姿勢をとり翼を広げると、自らの幻影を発射。
 幻に騙されて絡みつこうとした幽霊海月の空振り直後、ティスルはその真横を駆け抜けながら剣で切り裂いていった。
 そんなティスルへ複数の幽霊海月が接近。
 ティスルはそれをあえて相手にせず、剣を振ることで後続へサインを出した。
「あいよ」
 サインにこたえたのは十夜だった。彼ら一族に伝わる秘術でもって無数の火の玉を生成すると、急速なカーブによって群れの接近をさけたティスルにかわって自らが群れへと突進。
 巨大な火の玉を纏ったバイクとなって、幽霊海月たちを貫いていった。
「走りながら戦うってのはどうにもやり辛ぇが……バイクの勢いも乗せりゃぁ、掠めるだけでもかなりの威力になるもんだ」
 十夜は不敵に笑うと、備えていた番傘から仕込み刀を抜いた。
 なんとか追いすがろうとした幽霊海月の触手を切り落とす。

「なんとも、敵意むき出しですね」
 敵の過剰な密集をさけるためにある程度横に広がって進む綾姫たち。
 綾姫は剣を水平に振り込むことで斬撃を発射し、進路上の幽霊海月たちを斬り付けた。
 幽霊海月は腕やかさの一部を破壊されながらも、しつこく綾姫へと手を伸ばす。
 倒しきれない個体が出るのは想定済だ。かんなは綾姫に列を後退するように呼びかけると、巧みなバイク操作でぴったりと同軸上へと滑り込んだ。
「切り裂きなさい、ナンバーレス」
 槍状の武器が姿を変え、巨大な鎌の形をとった。
 綾姫同様水平に切り裂き、飛んだ斬撃が進路上の幽霊海月たちを切断していく。
 さらには邪魔しようとした幽霊海月を車輪で踏みつけ、大ジャンプをかけて残る幽霊海月たちを飛び越えていった。
「す、すごい……」
 綾姫はそのドライビングテクニックを褒めたのかそれとも形状の変わる槍を羨んだのかちょっとわからないが、目をキラキラとさせながらかんなに続いた。

「矢面に立つのはごめんだけど、こういうやり方なら……!」
 クリスティーナは魔剣をライフルのように構えると、進路上で自分を妨害しそうな幽霊海月たちへとオーラキャノンを発射。天十里と共に攻撃を加えていく。
 猛烈な速度で距離をつめ、射撃に対応しようと防御を固めた幽霊海月に今度は魔剣による斬撃。
 触手やかさを豪快に切り裂きながら、クリスティーナは爆ぜる幽霊海月を背にバイクの速度をあげた。
「私にできるのはこのくらいかな。砲撃よろしく」
「承知しました」
 鶫はバイクを操縦しながら兵器の操作パネルに手をやると、装備していた呪詛転写型炸裂弾頭『八塩折』のランチャーを召喚。連続で発射されるカースグレネード弾が回転しながら幽霊海月たちへと飛んでいった。
 立て続けに起こる爆発。逃れようも無い呪いの力に巻き込まれ、幽霊海月たちは悲鳴もあげられずに崩壊していった。
 しかしそれでも次々に海面に浮かび上がる幽霊海月たちに、鶫は目を細めた。
「本当にキリが無い数ですね。必要最小限を迅速に撃破して、素早く突破しないと」
「同感。それじゃあ一気に行きましょ」
 マヤは腰に下げていたマラカス状の投擲用グレネードを抜き、歯で安全ピンを抜いた。
「我は海賊マヤ・ハグロ! 恐れを知らぬ無法者ならばかかってくるがいいわ!」
 勢いをつけて投擲。回転しながら飛んでいったグレネードが幽霊海月たちの間で爆発し、マヤは足でしっかりとバイクに身体を固定したままカトラス剣とフリントロック銃をそれぞれ両手に装備した。
「逃げるものの命は取らないわ! 死にたくなければ大人しく逃げることね!」
 銃の乱射を仕掛けながらバイクで距離を詰め、カトラスで斬り付ける。
 しがみつこうとする幽霊海月の腕を切り裂いて、マヤは豪快に笑った。
 笑う海賊に唸る『骸船』。
 幽霊海月の群れを振り切ったところで、射程内に入ったらしい『骸船』は船体から大量の大砲を露出させ、超遠距離砲撃を開始してきた。
 無論、退かず。
「突っ込むわよ!」


 海面に次々と水柱がおきる。
 対して狙いもせずに乱射しているのだろう。それだけに動きづらい。
「とはいえ、足を止めるのはむこうの思うつぼだよね」
「そういうこと。戦いの基本は『自分の得意を押しつける』と『相手の嫌がることをする』だもんね!」
 クリスティーナとティスルは剣を掲げ合って合図を送ると、それぞれ左右に大きく分離。
 ティスルは蛇行をかけながら砲弾をかわし、クリスティーナはあえてまっすぐに突っ込んだ。
 直撃コースの砲弾――を十夜が滑り込みで破壊。
 刀で切り裂いた砲弾が爆ぜ、煙がずっと後ろへと流れていく。
「さんきゅー」
「ったく、やっこさんも手加減してくれや。こっちはこの暴れ馬を乗りこなすので手一杯だってのに」
 そう言いながらどこか楽しげに笑う十夜。
 ついには『骸船』に生体機関銃が現れ、フジツボめいた貝生物を連射してきた。
「この程度の攻撃、私に効くとでも思ってるのかしら?」
「攻撃可能距離までもうすぐです」
 マヤと綾姫はランダムな蛇行をかけ、時折着弾しそうな弾を剣ではじきとばしていた。
 天十里を連れて加速する鶫とかんな。
「どうせなら、その竜骨までブチ抜いて差し上げます!」
 バイクに装備した強指向性陽子弾体砲『天逆鉾』を展開。肩ごしに伸びた大砲と開いたアイアンサイト越しに『骸船』に狙いをつけはじめた。
 それはかんなも同じである。攻撃可能なラインに到達した途端に一斉攻撃をしかけ、一撃離脱。それが今回の作戦なのだ。
「攻撃可能距離まで5――4――3――2――1」

 誰よりも早く飛び出したのはティスルであった。
 自らの幻影を囮にした奇襲突撃。バイクごと突っ込んでいったティスルとは別に、事前に翼を広げて飛び上がっていたティスルは流体剣を操作して自らを開口ドリル形状にして突撃。
 船体にいきなり大きな穴をこじあけた。
「丁度良い『隙』ができたもんだ」
 十夜もまたバイクを捨てて跳躍。こじあけた穴へと入り込むと、強引に剣をたたき込んだ。
 どこがどう繋がっているのか、骸船の砲台が数カ所爆発を起こす。
 効いている……が、今は一点突破の時じゃあない。
 かんなと綾姫はそれぞれ両サイドからかすめるように骸船の横を抜けると、綾姫は剣に激しい剣気を宿して巨大な剣を作り、かんなは巨大な黒刃を作り出してそれぞれ左右から船体を斬り付けた。
 がりがりと火花を散らし、難い船の走行を削り取っていく。
 そこへ天十里と並んだクリスティーナが再びのオーラキャノン。
 打ち込まれた射撃に、骸船は困惑したような様子を見せた。
 このままでは船体を破壊され尽くしてしまうと考えたのだろう。
 巣としていた骸船の装甲をパージ。
 すさまじく巨大な幽霊海月がその身を表し、迎撃姿勢をとった。
「思ったよりもデカい家主がでてきたもんね。
 さて、海賊マヤ・ハグロお手製のラム酒爆弾――できたてのデリバリーよ!」
 マヤは手榴弾を放り投げると、素早く銃を抜いて空中で回転する爆弾へ射撃。
 爆弾は派手に空で弾け、姿を現したばかりの巨大幽霊海月の眼前を黒煙で覆った。
 触手をまとめて動かし、煙を払う。
 払った先にあったのは……。
「ごきげんよう。乱暴な『ノック』を、失礼」
 充分に威力をため込んだ鶫の重魔術砲が、陽子凝縮体を先ほど十夜がつけた『傷口』めがけて発射した。
 防御しきれずに肉体をえぐり、突き抜け、反対側からも抜けていく砲弾。
 その衝撃でぐわんと身体をゆがませ、巨大幽霊海月は海面から下へと沈んでいった。
 走り抜けていく八台のバイク。
 激しくあがる水しぶきが、彼らの背後を彩った。


「よっ、オツカレさん。いい戦いぶりだったぜ」
 船の格納庫で出迎えたユーナバー。
 彼の手を借りてバイクを降りた十夜は、『おっと』と言って身体を傾かせた。
「……やれやれ、波の感覚がのこってやがる。当分こいつには乗りたくねぇな」
 一方で、天十里に手を貸しながらバイクを降りる鶫。
 しっとりと濡れた髪を絞って、整備班から投げられたバスタオルを肩にかける。
「任務完了。ここに長居は無用ですね」
「その通り。あとはデカブツにビビって空の脅威が空白になってる隙をついて、大鷲部隊が空爆してくれるって寸法だ」
 ヒューン、ドカーンとジェスチャーで示すユーナバー。
 ティスルは一足先にベンチに腰掛け、だされたスムージーのストローをくわえていた。
「こっちの被害もそんなに出なかったし。だいぶスマートだったかな」
「そうね。『天夢路』の調子もよかったし……満足だわ」
 マッハスプラッシャーを取り外された愛機に手を置き、うっとりと見つめるかんな。
 綾姫はといえば、慣れないバイクやかわった剣の鑑賞でテンションが激しく動いたせいかくたくたに疲れていた。
 クリスティーナやマヤと一緒にベンチにこしかけ、パスされたスポーツドリンクを受け取る。
「どうだった? 船ならぬ海バイクを乗り回したわけだけど……」
「そうねえ」
 ドリンクを飲み干して、手の甲で唇を拭うマヤ。
「楽しめたわ。また機会があったら、よろしくね」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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