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シナリオ詳細

人を愛する花は

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ひとを愛する花
 人が花を愛するならば、花が人を愛しても不思議はない。
 花の愛が、人の愛と同じとは限らないけれど。
 人では愛と呼べない何かでも、花なら人を愛せるかもしれない。

 ――昔々。そう考えた者がいたとか。いなかったとか。どうだったか。

●花に歌を
 深緑のある地方に、『巫女への涙』という花の群生地がある。
 大きさは人の子供ほど。白く細長い花が、ひとつの茎に複数垂れ下がって咲く様が涙のようにも見える花だ。
 古い時代、争いで傷を負った巫女がこの地へ逃れてきた時、今にも枯れそうな名も無き花があった。巫女は癒しの歌を歌いながら健気に花の世話をしたが、巫女は花の回復を見ぬまま傷が悪化して亡くなってしまった。
 巫女が息絶えた直後、花は次々と種を落として芽吹き、巫女の亡骸を花で覆って弔ったという。
 それが『巫女への涙』の云われだ。
「云われを調べた学者によれば、この花は『巫女の亡骸を覆った』……つまり、『偶々近くにあった死体が腐った後、腐肉を苗床に繁殖した』のでは、という話ですけれど」
 それを花の愛と取るか、感情の伴わない自然の営みと取るか。人は人の価値観でしか物を見られない以上、どう捉えようと詮無き事ではある。
 そんな事より、と。深緑の『巫女への涙』の群生地までイレギュラーズ達を案内してきた『千殺万愛』チャンドラ・カトリ(p3n000142)は、振り返って続けた。
「巫女の癒しの歌というのは、そこまでガセでもないみたいで。音楽……特に歌を蕾に聴かせると、不思議なことに綺麗な花を咲かせるそうですよ。曲によっては、白いはずの花に色が付くとか。
 今はどうにも元気が無いようですが、しばらく音楽を聴いていないのでしょうかね」
 群生地の花は、彼が言うようにどれもしんなりとしていて、見方によっては『寂しそう』にも見える。枯れてはいないようだが、このままではそうなってもおかしくないだろう。
 今回の依頼は、そんな『巫女への涙』に活力を、かつての巫女のように癒しの歌を与えてほしい、というものだった。
 残念ながら本来の癒しの歌は失われて久しいが、皆の思う癒しや元気の出る歌を聴かせてやるといい。
 声なき花達もきっと、皆に応えてくれるから。

GMコメント

旭吉です。
この度はシナリオのリクエストをありがとうございました。

●目標
 元気のない『巫女への涙』に歌を聴かせて元気にさせる。

●状況
 深緑の森。
 『巫女への涙』の群生地で、人里からは少し離れてます。
 森の中ですが、程よく日が当たる一角です。

●植物情報
 『巫女への涙』
  大きさとしては通常サイズのススキ程度。
  1本の茎から涙の雫のような白い花が複数垂れ下がった形で、花の重みで茎が少しお辞儀をしているような姿。
  今はしんなりしていて茎も細め、蕾もしわしわ、何だか元気がなさげ。
  曲や歌(特に歌)を聞かせてあげると元気な花を咲かせます。色が付くこともあります。

  歌を聴かせて頂ける場合、歌詞は版権作品そのものだと採用しにくいです(大きめのマスタリングが入ります)
  「こんな雰囲気の歌詞でぶん投げジャーマンお任せ!!!」もありです。旭吉フィーリングで「この方は多分こんな歌詞を作りそうだな」という感じのを妄想して作ります。何でも許せる方向け。

●相談期間
 旭吉のスケジュール事情により、相談期間を長めに設けております。
 よろしければ歌詞もごゆっくり考えてみてください。

●NPC
 チャンドラ
  構わなければ特に何もありません(シナリオ成否や有利不利には特に影響しません)
  歌への造詣は多少ありますが、愛されるよりも愛したい感じの作品になりそうです。

  • 人を愛する花は完了
  • GM名旭吉
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月07日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談11日
  • 参加費---RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
傲慢なる黒
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの
シュテルン(p3p006791)
ブルースターは枯れ果てて
ソロア・ズヌシェカ(p3p008060)
豊穣の空

リプレイ

●花畑にマーチングバンドを
 深緑の人里離れた森の中に、『巫女への涙』は集まって咲いていた。雫の形をした白い蕾が木漏れ日を受けて光る様は、花の涙が煌めいているようにも見える。
「歌で咲く花、か。歌声に乗せた気持ちとかで咲くんだろうか」
「人を愛したという話と合わせても、なんとしてもキレイに咲かせてやりたいな」
 逸話も習性も何ともロマンティックな花だと話すのは、『讐焔宿す死神』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)と『幻想の冒険者』ソロア・ズヌシェカ(p3p008060)。
「おはな、元気、ないない?」
「初めて見る花だが、確かにそう見えるな……」
 じっと花を見つめてから、花に尋ねるように話す『こころの花唄』シュテルン(p3p006791)にソロアも残念そうに視線を下ろした。
「だが、涙のような蕾なら、咲けばそれはきっと笑顔だ。こんなに沢山の蕾があるなら、咲いた暁にはこの辺り、さぞかし素敵な光景になるだろうな」
「……! シュテ、の、おうた、いっぱい、歌う!」
 ぱああ、と花開くように顔を綻ばせるシュテルン。
「オーッホッホッホッ! 何とも童話のような素敵な依頼ですわね!」
 そこへ響き渡る高笑い。口許には手の甲を、もう片手は腰にしっかりと添える完璧なお約束スタイルは、この静かな森にあって一人いるだけでかなり賑やかだ。多めに見積もって百人分くらい。
「よいでしょう! このわたくし!」
 パチン!(※指を鳴らす音)
 
   \きらめけ!/
   \ぼくらの!/
 \\\タント様!///

「――が、元気を差し上げますわー!」
 軽やかに指が鳴ったかと思うと、『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)への大声援がどこからともなく響く。一人で百人分だった賑やかさが千人分になった気分だ。更に声援に応えて彼女がポエティックで(※本人談)ミュージックで(※本人談)ロマンティック(※本人談)なポーズを取る度になぜかキラン、シャラン、ピカーンと効果音まで鳴り響く。きらめきがうるさい(物理)。
 それはそれとして。
「どんな歌にするんだ? あぁ、言っておくが俺はどんな歌だろうと歌えないからな」
「仲間外れは作らないぞ。聞かせる花にも、私達にもだ」
 率先して歌の担当から外れようとするクロバを、ソロアが引き止める。
「クロバも、ね! 一緒に!」
「歌は本当に駄目なんだ、もし花に悪影響が出ても責任取れないし、取らないぞ!」
 シュテルンが一生懸命誘っても断固断る。クロバには歌に加わりたくない明確な理由はあるのだが、ちょっと口に出しづらい今回である。
(俺音痴なんだよな……)
 そう。自覚しているタイプの音痴ゆえに、自分が正しい音で歌っていないとわかってしまう。だが正しい音では歌えない。
「寂しさも悲しみもすべて! 吹き飛ばす気持ちで歌えば! 歌の得意不得意は関係ありませんわー!」
「せめて、楽器に! 楽器なら(猛練習したから)できる! 伴奏があった方が賑やかになって、そういうものも吹き飛ばせるんじゃないか?」
「楽器伴奏! それも素晴らしいですわー!」
 きらきらー!! リアクションがオーバーできらきらするのもまたタント様である。クロバが楽器ならできると聞くと、それは嬉しそうに輝いた。
 クロバはまた大事な所を口に出し損ねたのではないだろうか。
「演奏の形式だが、マーチングバンド……演奏しながら花畑を回るのはどうだ。ひとつの場所で演奏するより、多くの花に聴かせることができると思うぞ」
 クロバの提案に、他の三人もそれぞれに賛成した。
「パレード、みたい! おはな、さん、も、一緒、うたう!」
「わたくしも一緒に歌いますわ! 歌って踊って、ぴかぴか、きらきら……元気で幸せな歌にいたしましょう!」
 まだ始まってもいない、歌う歌も決まっていない内かららんたったと踊り出すシュテルンとタント。友人というより、妹を猫可愛がりするようなタントの溺愛ぶりである。
「マーチングバンドの形式をとるなら、旗を振ってもらった方が様になるのだが……頼めるか、ソロア」
「旗か? 構わないが、どんな旗を?」
 自分から言いだしたものの、ソロアから聞き返されると答えに詰まり唸るクロバ。
「歌に合う旗を作ればよろしいのですわー! どのような歌にいたしましょうか!」
「んとんと。天義、大変、した、時。天義、の、ひと、いーっぱい、元気した、うた!」
 クロバに尋ねられたシュテルンは即答する。ここで歌う、花へ捧げる元気の歌と言えば、これしか無いと思ったのだ。
 かつて――天義が混乱と悲しみに包まれた時に、シュテルンが捧げた歌。

 ――『こころの花唄』がいいと、思ったのだ。

●ひらひらり。くるくるり。
 用意を整えたマーチング部隊が、『旗』を持つソロアを先頭に進み出す。
 この場所では簡単なものしか作れなかったが、木の棒にありったけの植物で飾った『花冠』を掲げてみた。優しく揺すれば、仄かに甘い香りが風に乗る。
「こーこーろのはーな、ひら、ひらり。うんめーいは、くるくるりー!」
 その中で、初めにシュテルンが歌った。

『こころの花 ひらひらり
 運命は くるくるり
 世界駆け巡る 冒険者のマーチ

 愛する心 ふわふわり
 人々は ゆらゆらり
 世界仲良しなら きっと平和になる?

 みんなと笑って過ごす幸せ
 私はこの胸の中に
 ぎゅっと ぎゅっと 詰め込むの

 揺れる風が今へ 撫でるようにすり抜けて
 あなたに優しく流れる 支えてくれるの
 季節の花々が ふわりとゆら揺らめいてく
 ほらね、明日へ流れる 明星の花唄』

 ――人間ではない花の心は、シュテルンにもその形を見通す事はできない。
 それでも思い浮かべたのは、色鮮やかな花々に満ちて煌めく、誰もが幸せな世界。
 大好きな人と死に別れてしまったり、絶望する事の無いように。
 今ある幸せのひとつひとつを、花畑のように仕舞っておけるように。

 運命は、どうしても――花びらのように、ひらひらり、くるくるりと。
 ある日突然、どうしようもない事に阻まれて、吹き飛ばされてしまう事もあるけれど。
 花びらのようにゆらゆらり、ふわふわりと。
 寄り添う人々の想いは、きっと穏やかな風のように誘ってくれるから。
 そう、信じているから。

「みんなでうたうの、とーっても、たのし! だよ!」
 きらめくタントとくるくると踊りながらステップを踏んで、『旗』を振るソロアも巻き込んで。一人で忙しそうに演奏に励むクロバのことも、皆で囲い込んだりして。
 楽しい気持ちを、『巫女への涙』へ伝えた。

 ――皆が通り過ぎた後の花畑に一輪、蕾が橙に色付いていた。

●くらくらり。うきうきと。
 歌と旗持ち以外の全てを休む間もなくこなしていたクロバにとっての休憩は、演奏の合間にカラフルな色々シュークリームを片手で摘まむのみだった。ハーモニカを吹きながらドラムやシンバルを叩き、更にマーチングをするのは技術力ももちろんだが、体力もかなり消耗する。それでも苦しい顔を欠片も見せないのは、彼の鍛錬の為し得る技か、あるいは。
(この姿を友人や恋人に見られたら何と言われるか……。だが、折角だ。あいつらにも良い御土産話に出来るように、目いっぱいやってみるとしよう)
 彼の目に映り、耳に残る。この花唄のお陰かも知れない。

「かーなーしいひーは、くら、くらり。たのしーいひは、うきうきとー!」
 歌の続きを引き継いだのは、タントだ。

『悲しい日は くらくらり
 楽しい日は うきうきと
 気持ち一つだけで 今日も生きてゆける

 どんなに辛いと思う日々も
 みんながずっと笑顔ならね
 私も ずっと 笑えるよ!

 流れるメロディは私を奮わせて
 みんなを癒す力へ かえてゆけるよ
 鮮やかに彩る日々がとても楽しい!
 さぁ毎日を奏でよう 奇跡の調べを』

 ――やさしいと、タントは思っていた。
 シュテルンが作った詩も音も。
 皆を笑顔で支え、笑顔で支えられる、きっと世界は平和であると信じるやさしい心の唄。
 歌っているタント自身さえも、そう信じさせてくれる。

 タントは、自分が太陽だと信じている。
 太陽であるならきらめき、雨であろうが嵐であろうがそこに在り、皆を元気にするのだ。
 だからこの歌詞は、自分にも合うと思った。
 きらきら、ぴかぴか。うるさいほどに輝いて。
 そこに笑顔が満ちていけば、タントも一層輝いてゆける。

「シュテルン様ー! ソロア様ー! クロバ様も、さあさ!」
 可愛いシュテルンと小さな旋風のようになるまでくるくると回って。ソロアの空いている手を取ってホップステップ。
 忙しそうなクロバにも、きらきらと輝いてシャルウィダンス。
 タントはどこにでも、誰にでもきらめくのだ。

 ――花畑に、小さく花開いたピンクの花が、一輪。 

●ぎゅっと。ふわりと。
 随分花畑を回ってきたような気がする。
 4人とは言え、行列の先頭に立って旗を振るなどという経験はソロアにはあまりない。少なくとも、このような楽しい気持ちで立った記憶は。
「あと、もう少しで回り切れそうだな。最後まで頑張ろうか」
 二度目の休憩の後、ソロアは再び『旗』を手に取った。マーチングバンドの行列、その先頭で振るために。

「どんなーに悲しーく辛いこーとが、あっても。私ーはあなたーをさーさえたいよ」
 最後に歌い継いだのは、丁寧に、胸を張って花に向き合うソロアだった。

『どんなに悲しく辛い事があっても
 私はあなたを支えたいよ
 どんなに小さく些細な力でも
 あなたの力へなるって信じてる!

 みんなと笑って過ごす毎日
 私はこの夢の中へ
 ぎゅっと ぎゅっと 詰め込んで
 明日への 歌になる!

 揺れる風が今へ 撫でるようにすり抜けて
 あなたにそっと流れてく いっぱい支えるんだ!
 奇跡の花々が ふわりとゆら揺らめいてた
 ほらね、明日へ流れた こころの花唄』

 自分で考えた歌詞ではないが、不思議な元気をくれる歌だと思った。
 誰かへ向けた応援の歌のはずなのに、歌っている自分も元気になるような。
 誰かの支えになるには、まず自分が元気でいなくてはならない。
 だが、この歌はそれを押し付けるのではなく、『そうなれるように』と応援してくれる。
 ふわふわり、ゆらゆらりと。

 どれほど努力しても認められず、上がるばかりの期待には応えられず。
 そんな窮屈な日々はもう過去になったが、小さな力でも信じてくれる存在は嬉しい。
 この花も、巫女はきっと最期の最後まで、花が開く事だけを信じて歌い続けたのだろう。
 巫女の代わりにはなれないが、せめてその気持ちに寄り添えるように。

「ほらね、明日へーなーがれた こころーのー花唄……」
 最後のフレーズを歌いきって、クロバのシンバルが鳴り響く。
 自分の歌を最後までタントとソロアが歌ってくれた事も、花に聞かせられた事も嬉しいシュテルン。皆で歌って踊って、行進できた事も楽しいタント。歌いながら励まし、励まされていたソロア。やりきった達成感を一時噛みしめるクロバ。

 ――歩んできた道程を、皆で振り返ってみた。

●こころの花唄
 寂しそうにしんなりとしていた『巫女への涙』の群生地。
 歌を捧げて振り返ってみると、そこには小さな、だが確かな変化があった。
 元気の無かった葉はしゃんと光を浴びて、項垂れていた茎もしっかりと前を向くように起き上がっていた。しぼんでいた蕾も多くが花開いて、沢山の白の中に橙やピンク、赤や黄色など、元気そうな色の花もあった。
「まあ! まあ! お花もとってもとっても元気になりましたわー!」
「ふふふ、やっぱりだ。とっても素敵な花畑、見てるだけで幸せな気持ちが湧いてくるな!」
 タントとソロアが感嘆の声を上げる。タントがばんざーい! と飛び跳ねれば、ソロアに加えてシュテルンも一緒に手を上げて跳ねた。クロバは自分からは跳ばなかったものの、タントに求められてハイタッチを。次いで皆ともタッチ。
「巫女、涙……もうね、もうね、泣かなくて、いーよ!」
 花を咲かせた『巫女への涙』にしゃがみ込んで、シュテルンが語りかける。死んでしまった巫女の歌を恋しく思って寂しくなるなら、もう大丈夫だと安心させたかったのだ。
 花に人の言葉が、心が通じるかはわからないが――この花なら、きっとわかると思って。
「シュテ、また、いっぱい、うたう、して。いっぱい、いーっぱい、元気、する! また、しょぼしょぼ。する、だたら、また、うたう、するっ!」
 何度でも、何度でも。例え花でも、歌で元気を、幸せを与えられるのなら。
 また来るね、と。シュテルンが花のひとつをそっと両手で包み込んだ。

 『巫女への涙』は、皆でざわざわ揺らめいて。木漏れ日を受けた鮮やかな花を、いつまでも4人に向けていた。
 

成否

成功

MVP

シュテルン(p3p006791)
ブルースターは枯れ果てて

状態異常

なし

あとがき

お待たせしました、この度はリクエストありがとうございました。
『こころの花唄』、一体どんな歌(音やリズムとして)なのかなーとプレイングから考えるのが楽しかったですが、もし思っていらしたのと違っていたらすみません……!
私の中ではCD発売されました。元気の出る歌ですよね。

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