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シナリオ詳細

天の川鮎パニック!

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●笹の葉さらさ――鮎!
 緑溢れる、穏やかな河辺。
 かやぶき屋根の小屋の中で、ぱたん、ぱたんと小気味いい調子の音が響く。
(ああ、もうすぐ七月七日……彦星様に会える!)
 機織り機で淡い桃色の衣を織る女――織姫は、指折り数えた日に口元が緩むばかり。勤勉な彼女が同じく勤勉な牛飼いの彦星と夫婦になったのは昔のこと。
 はじめは互いに支え合い慎ましく過ごしていた二人も、段々と遊びにかまけて堕落三昧。織姫は神アイドルグループを追いかけ回し、織物の売上は全て握手券と遠征費に浪費。彦星は競牛にのめり込み、飼っていた牛を手放す始末。
 ついに周囲の怒りを買った二人は、彦星を天の川の向こう岸へと引き離し――二人が今一度勤勉に働くならば、年に一度、七夕の日だけ二人を会わせることになった。
 そうして一年間を勤勉(程々の推し活動はご愛敬)に過ごした織姫は、休憩をしようと小屋を出て――

「な、何これー!?」

 川を埋め尽くす銀色の物体に、思わず声を荒げる。
 普段のこの川――天の川も、容易に渡れない川ではある、が。
 それにしてもこの物体は何なのか。銀色の濁流は、ところどころ何か跳ねていて気味が悪い。
「あれまあ、今年は七夕鮎が豊作な年なんだねえ」
「七夕鮎……!?」
 近所の物知りおばあ、と称される老婆はこの光景にも大した驚きを見せずのほほんとした様子。しかし織姫が耳にした単語は、聞き慣れた好物の名だった。
 七夕鮎――名の通り、七夕の時期が旬の鮎。
 この時期は岸から罠を張り、塩焼きにして食べたものだったが――それが、この銀色の川の正体とは。
「何千年かに一度、こんな風に大量発生するんだわあ。懐かしい、前回はあたしの新婚の頃でねえ……」
 おばあの思い出語りなど、織姫の耳に入ることもなく。
 このままでは年に一度の逢瀬どころではなくなってしまう、それは由々しき事態。
「ちなみにおばあ、この鮎で七夕に川を通れない場合は年一の彦星様は……」
「何言ってんだい、来年に持ち越しだよ」
「ですよねー!」
 がっくりと項垂れる織姫――彼女の七夕はどうなる?

●狩り放題食べ放題
 境界図書館を訪れたイレギュラーズの目に飛び込んできたのは――笹。
「いらっしゃい。願い事、書く?」
 境界案内人のシーニィ・ズィーニィが、色とりどりの短冊とペンを手に声を掛ける。彼女の説明によれば、それらは異世界の「七夕」なる祭事で願いを捧ぐものらしい。
 懐かしさを憶える者、似た行事に参加した者、初めてその名を聞く者と反応はそれぞれだが、今回誘われたのは、どうやらその「七夕」について描かれた本の世界への旅路のようだ。
「織姫と彦星、二人は恋人なんだけど一年に一度しか会えないらしいのよ。どうもその川を渡る手助けをしてほしいみたい」
 なるほど、川に怪物でもいるのか。ならば倒して恋人たちの逢瀬を手助け――
「ということで、大量にいる鮎をどうにかしてね」

 ――鮎? あの、美味しいやつ?

 その返答を待たずして、シーニィに本の向こうへと送られたイレギュラーズの目に飛び込んだのは――

 びちびちと跳ね、川一面を埋め尽くす、鮎だった。

NMコメント

 鮎の塩焼きと冷酒で優勝していきたい、飯酒盃おさけです。
 ゆるい戦闘と、ご褒美タイムをどうぞ。

●目標
 大量発生した七夕鮎を対処する。

●舞台
 天の川。どう見てものどかな村に流れる普通の川ですが神がいる世界のようです。
 幅は100メートルほど、深さは中央が3メートル。
 小舟が貸し出されますが、無理に川を突っ切ろうとすると乗り込んだ鮎の重みで沈みます。

●エネミー(?)
・七夕鮎×たくさん
 サイズは通常の鮎より少しだけ大きめ、30cm程度。
 川中にうようよいます。
 使用スキルは以下の通りですが、数が多いだけなのでとにかく弱いです。
 レベル1の方でもさくっと倒せますので、持ち味を活かしてみてください。

 ジェットストリーム鮎アタック(物遠単【移】)
 合体・鮎ビーム(物遠貫【溜2】・高威力)
 鮎ドリル(物至単【崩れ】)

●ご褒美
 無事鮎を対処できれば、織姫と彦星は対岸で逢瀬を楽しむでしょう。
 七夕鮎は絶品との噂です、折角なので二人は放っておいて食べましょう!
 七輪やその他のちょっとした食事(お酒も!)も用意されています。
 仲間と交友を深めるのも、楽しいかもしれませんね。

●備考
 このライブノベルの相談は、今まさに横でびちびち鮎が跳ね回っている川を横目に行われています。
 余裕がある方はシチュエーションと共に会話を楽しんでみましょう。

 また、ライブノベルは成功が確約されております。
 近くの小屋でこんな物借りられないかな、このスキルでこんなことできないかな、と自由にプレイングをかけてみてくださいね。
 それでは、ご参加お待ちしております。

  • 天の川鮎パニック!完了
  • NM名飯酒盃おさけ
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月26日 22時10分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
ソロア・ズヌシェカ(p3p008060)
豊穣の空

リプレイ


 ――磯臭え
   もはや香魚でも
   なんでもねえ

「一句できましたね、季語は香魚……ってなんだコレェ!」
 短冊と筆を思い切り草むらに叩き付ける『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)。季語を取り入れてみたものの即否定の俳句とはいかに――否、この光景では仕方ないのかもしれない。
 何せ目の前の川は、その水面を跳ねる銀色の鮎で埋め尽くされているのだから。
「ぉぉおおお……」
 何とも言えない声が漏れる『幻想の冒険者』ソロア・ズヌシェカ(p3p008060)は、借りた網を片手に、光る水面に目を細める。魚は好きだと言えど、流石にこれだけいると食欲どころか恐怖を感じるばかりで――なぁ、と傍らの『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)に声を掛けようとした、が。
「……!」
 そのアルペストゥスといえば、川べりから首を出してのたくる鮎に既に興味が向いている。
「……。……!」
 水面へと前足を伸ばし、ぺちりとそこを叩く。
 鮎は驚き高く跳ね上がるも、どうやら川に直接入らない限りは敵対視を加えてくる様子はないようで。ぐる、と喉をひとつ鳴らすとそのまま顔を水面へと近付け――
「……!?」
 飛んできた水に驚くと、ぶるぶると顔を振り水を飛ばす。
「あ、アル君――!?」
 駆け付けるソロアに向き直ったアルペストゥスは、尻尾で水と鮎の感触を楽しみながら――じゅる、と涎を垂らす。
「た、食べるのは後にしような……」
 ソロアの言葉に頷くアルペストゥス。本日誕生日の彼のディナーは、鮎に決定のよう。
「さて、織姫さん! 彦星さんに会いたいかー!」
「会いたいでーす!」
 ウィズィの問いかけに答えた織姫は、年に一度の逢瀬に気合も十分な様子。
「よし! では会いたいならどうするか!」
「どうすればいいんでしょうか先生!」
 ウィヴィは、川へ向かいびしりと指を向け――叫ぶ。
「答えは! 全力疾走で迷わず突き進めばいい! 恋とはそういうものです!」
 おお、と拍手をする織姫を遠目に『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)はこめかみを押さえ、眉間の皺を深くする。
「かたやアイドルの追っかけ、かたやギャンブルにのめり込む……えらい俗っぽい2人でなんか泣けてくるな」
 世界自身の知る七夕伝説とは違った織姫と彦星の様相に遠い目をしたくもなるが、自身には関係ないことだからよしとして。
(それより、この光景の気持ち悪さの方が――ウッ)
 胃からこみ上げてくる物に蓋をし、目線を空へと上げ息を吐けど――嗚呼、鮎の蠢く川の様子が脳裏から離れない。
「よし、さっさと終わらせるぞ」
 リア充の恋路の手助けをすることは気に食わないが――この光景を眺め続けるよりはよっぽどマシだから!


 織姫を小舟の中央に乗せ、その周囲を固める形で並んだ世界、ウィズィ、ソロアは、開幕早々に群がってくる鮎達に挨拶代わりの一撃。
「恋路の邪魔する鮎は……馬の骨に蹴られて、吹っ飛べー!」
 ウィズィはその背丈ほどの銀のナイフを軽々と片手で投げる。淡い光を纏うナイフは、前方の鮎の固まりを空へと吹き飛ばす。
「おらおらおらー! 恋する乙女は鮎なんかに邪魔されてたまるものですか!」
 手元に戻ったナイフを二度、三度と投げ続けるウィズィは船べりに足を掛け勇ましくそのマントを翻す。時折その攻撃の隙を縫って突っ込んでくる鮎はといえば――彼女の身を包む茨の鎧で弾き返された衝撃に自滅する始末。
「近くで見ると余計こう……さっさと終わらせよう」
 世界は船へと入りこんだ鮎を指で摘まみ、川へと放り投げる。跳ねた水を拭おうと手を頬にやろうとし――手に付いた魚の香りにげんなりとした表情を浮かべると、白衣の内側から球状の物体を取り出す。
「ほら、精々こんがり焼けてくれ」
 精霊の力が籠められた爆弾を放り投げると――鈍い音の後、ざばぁん、と水柱が打ち上がる。水柱と共に高く打ち上がった鮎は、こんがりと焼けていた。
「しかしまぁキリがないな……」
 世界が指先で描いた陣より喚び出した白蛇が鮎へと噛み付くが、川を埋め尽くす銀色はいまだ薄くなる兆しすら見えず――長期戦を覚悟するのだった。
「大事な逢瀬のため! よーし、いっけー!」
 ソロアも負けじとタクトを振ると――その華奢な身体から出るとは到底思えない砲撃を川にそのまま撃ち込む。一瞬で消し墨となった鮎の群れの姿は、気味の悪さもあれど爽快感すらあり。
 そうして何度か砲撃を繰り返していると――
「わぁ!」
 足元で跳ねる鮎に、滑りそうになるソロア。
「おぉ、こんなに溜まったのか……沈んじゃいそうだな、よいしょっと」
「手伝います!」
 ソロアは織姫と共に、船の縁から船底へと掛けていたこと網を持ち上げる。川岸で借りていたその網は、飛んできた鮎が中へと入る定置網の要領。これなら一匹ずつ鮎を掻き出さずとも、網が溜まったら網の底を持ち上げ川へ戻せばいい、とソロアが思いついた案は大いに役立ち、舟に飛び込む鮎の対処より戦闘へ注力出来ていた。
「アル君、鮎そっちいっぱい行ったぞー!」
「グルルルル……ギャウッ!」
 アルペストゥスは待ってました、と言わんばかりに岸からジャンプすると――口を開けたままざぶん、と顔から水中にダイブ。鮎達も流石に飛び込んでくるものが居るとは思っていなかったのか一瞬固まるも、即突撃しようとしたが――いただきます、と齧りつくアルペトゥスにより返り討ちにされる。
「……グゥ♪」
 口に咥えた鮎をそのまま丸飲みした彼は、新鮮かつ臭みの無いその味がどうやらお気に召した様子。水面に顔を出すと、尻尾を振りぴょこんと岸に戻ると後ろ脚で大きく跳び再び水中へ。
 水辺を跳ね回り、辺り一面に雷撃を落としながら楽しげにばちゃばちゃと遊びまわる姿は、一見水辺で大型犬がはしゃぐ微笑ましい光景だが――鮎からしたら、巨大な竜が飛び込んできて雷と共に大暴れの災害級だったことは想像に難くない。
「っと、元気なのはいいが無茶するなよ?」
 身一つで鮎の群れへと突っ込んだアルペストゥスは、食事と遊びに夢中で増えていく傷もなんのその。とはいえ、掠り傷ながらもそれなりに淡い白の鱗には傷が目立つように。見かねた世界が癒しの術をかけると、その巨体をちょこんと小舟の縁へと上がらせる。
「……グゥ」
「よし、それじゃそろそろラストスパートといきましょうか!」
「おー!」
 遊び疲れたのか食べ足りないのか、一息つくアルペストゥスに、ウィズィとソロアが声を掛ける。
「そうしてくれ、俺ももうすぐ限界――おっと!」
 ここぞとばかりに高速で飛び込んできた鮎の動きを、世界が見切ると――その鮎へとん、と跳躍し頭上から眼下へと白蛇を放つ。
「ラストだー! いけー!」
「……グルォオオオ!」
 ソロアとアルペストゥス、二人の放つ雷撃は水面を走り一気に残る鮎達を薙ぎ払う。
「私も行きますか! 織姫さん、見ていてください」
「まぁ、何か凄い技があるんですか!」
 ウィズィは舟べりから背後の織姫へと振り返りにぃ、と笑い――右眼をちょん、と指して笑う。
「愛する人を見つめる魔眼(め)は、ここまでできるんです!」
 ナイフを構え、近付く対岸を見据え――唱える。
「目を醒ませ、私の獣‪──‬いっけええええ!」
 蒼い炎が燃ゆる右眼から放たれた炎は、妨げとなる鮎を全て焼きつくし――
「へへへ。どう? 恋ってこんなに強いんですよ!」
 だからね、織姫さんもどんな障害にも負けちゃダメですよ――そうウィズィは、とびきりの女殺しのウィンクをひとつ。


「本当にありがとうございます、沢山食べていってくださいね! それじゃあ行こうか織姫」
「彦星様ったらせっかち! 本当に皆さん、ありがとうございました!」
 挨拶もそこそこに消えていった両名を見送り、四人は御褒美の鮎料理を堪能する。
「……グゥ?」
 ちょこん、と七輪の上の鮎を見つめ、鼻を鳴らすアルペストゥス。
 食べていいか、そんな視線の訴えは仲間達の頷きで肯定され、まだまだ食べ足りないのだとアルペストゥスは鮎へかぶりつく。
「やっぱ塩焼きは大正義! 優勝! お酒がおいしい……って世界さんは食べないんですか?」
 何本目かの串焼きの鮎とお猪口を手にしたウィズィは、隣でお茶を飲む世界に問いかける。
「いや、食うとうまいらしいが……あんな光景を見た後だとちょっと食べる気にはならないな」
「そうなのか、ならその分私達がもらうぞ……はふっ、あちゅい、でも美味い!」
 残念がりつつも食を進めるソロアの手元にも数本の串が転がり、大根おろしと醤油にすだちで新たな味を楽しんでいる。
(というかやけにメカメカしい攻撃ばかりだったけど、体が金属で出来たりしてない?  大丈夫か?)
 世界の心配はどうやら目の前の女子二人を見れば問題ないようだが――静かになった水面を見つめ、平和を噛み締めお茶を飲むのだった。
「あ、でも唐揚げも美味しいな! くそ~~鮎め! あっこっちは刺身か……」
 流石に刺身は、と躊躇うウィズィも、ふと丸呑みしていたアルペストゥスを思い出し――恐る恐る一口。
「あっ、これ美味しいじゃん! 刺身うまっ!」
 衝撃の扉を開け、酒が進むウィズィ。傍らで鮎を食べ続けるアルペストゥスにも「飲みます?」とお猪口を差し出すが……ぷい、と首を背けられてしまう。
「ありゃ残念、それじゃあお酒は一人で頂きますね」
「はふ、ご飯もあってこれは進む……!」
 ソロアも茶碗片手に、今度は甘露煮を食べ進める。塩焼きに飽きてきたと思ったら変化球、これは箸が止まらない――!

 その時、世界とアルペストゥスの耳がかすかに拾ったのは、彦星の小屋から聞こえる二つの笑い声。
(――まぁ、良い仕事したか)
 世界はその声にほんの少し目を細め――アルペストゥスは声の主から感情を感じ取る。
「……キュウッ」
 七夕生まれの竜の鳴き声は、高くその空に響いた――

成否

成功

状態異常

なし

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