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シナリオ詳細

<求ム強者!>第53回 バーチャル御前試合

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●強きことは美しきこと哉
「――強者どもの戦が見たい」

 玉座にて、皇帝ズルガンはポツリと呟いた。
 がらんとした室内。この場にいるのはズルガン自身ともう一人。
 ズルガンの座る玉座の傍らで直立不動の姿勢で侍る大柄な偉丈夫だ。

「……御前試合ということですか」
「貴様は話が早くて良いな、ウルグよ」

 ウルグと呼ばれた偉丈夫の返答に満足したのか、ズルガンは鷹揚に頷いた。

「余は強者を好む。鍛え上げた肉体と技術が躍動する様のなんと美しいことか」
「おっしゃる通りかと」

 滔々と述べるズルガンの言葉に首肯するウルグ。
 彼自身、その鍛え上げた武威をもって皇帝の傍に侍るのを許された存在であるが故に、ズルガンの言葉には全面的に同意していた。
 それに、何もこれが初めてという訳でもない。

「では早速準備をさせましょう。国中にお触れを出し――」
「待てウルグよ、今回はそれでは足らぬ」

 しかし、いつものように準備へと取り掛かろうとしたウルグを他ならぬズルガンが止めた。

「ウルグよ、余はこれまで何回の御前試合を行った?」
「52回と記憶しております」
「そうだ。それだけの回数を行えば自然新たな才能の発掘というのは難しくなり、参加者の顔ぶれも見知った者が多くなる――ぶっちゃけ飽きた」
「……なるほど」

 歯に衣着せぬ主君の物言いに、ウルグは思わず言葉に詰まった。
 飽きたというズルガンの感想は、毎回のように御前試合に出場し優勝していたウルグ自身も抱いていたからである。
 ここ最近は特に、似たような顔ぶれで似たような試合結果という内容が続いており、マンネリと言われても仕方ない部分があることを自覚していたのだ。

「しかし、マンネリとはいえ御前試合は余の愉しみでもあるため止めたくはない。そこでだ――」
 
●求ム強者!
「――ということで、君たちには御前試合に参加して欲しいんだ」

 境界案内人カストル・ジェミニは、そう言ってイレギュラーズへ微笑んだ。

「とある世界の皇帝陛下なんだけどね。強い人達が戦うのを見るのが大好きらしくってね、その国では御前試合が頻繁に開催されているんだ」

 その数なんと52回、とカストルはやや呆れたような表情で告げた。

「普通ならそんな頻繁にやれるようなものじゃないんだろうけど、あの世界はVR技術が異様に発達していてね。強者同士の真剣勝負が現実と変わらない精度で行えてしまうんだ」

 誰も傷つかずに真剣勝負が何度でも繰り返し行える。
 素晴らしい技術ではあるが、それで調子に乗って短期間に開催しまくっていたら面子の固定化を招いてマンネリ化し主催者の皇帝自身が飽きてしまったと、そういうことらしい。

「そこでマンネリ打破のために白羽の矢が立ったのが君たちという訳さ。VR空間で同時並行的に試合を行うから人数は無制限。相手の設定も自由に変えられて、自分の戦いたいシチュエーションで存分に戦えるそうだよ」

 戦闘の方法も剣、槍、格闘はもちろん弓、銃、魔法などなど何でもあり。
 とにかくイレギュラーズの鍛え上げた戦闘技術を存分に見せて欲しいということだ。

「もちろん報酬だってキチンと出る。絶対に怪我をしない中で戦闘経験が積めるという意味では結構おいしい依頼だと思うけど、さて君たちはどうする?」

NMコメント

はじめまして、日継桶丸です。
御前試合に出ようということで、好きなように戦闘を行えるシナリオです。
バーチャル空間で繰り広げられる戦闘を皇帝に見せて存分に喜んでもらいましょう。

●シチュエーション
皆さんがこういう戦闘をしたい!と思うシチュエーションをご自由にお書きください。
バーチャルなので海でも空でも火山でもどこでも設定可能です。
あなたの能力が最も魅力的に輝く舞台設定で存分に戦闘をお楽しみください。

●対戦相手
NPCと戦うかPC同士で戦うかご自由に選択ください。
NPCと戦う場合、相手の特徴の希望があれば書いて頂けると助かります。おまかせでも構いません。
PC同士で戦う場合は、事前に勝敗についてプレイングに書いて頂ければそのように。特に記載がない場合はこちらで勝敗を決めさせていただきます。

●プレイング
1行目にグループタグ。
2行目以降は自由にお書きください。

●その他
1章で完結予定です。
個人戦でも団体戦でも構いませんので、あなたの思う最高にカッコいい戦闘を教えてください。

  • <求ム強者!>第53回 バーチャル御前試合完了
  • NM名日継桶丸
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月25日 16時14分
  • 章数1章
  • 総採用数6人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥

 大観衆の熱気に包まれたステージの上で、ウルグとミルヴィ=カーソン(p3p005047)が相対していた。踊り子然とした衣装に身を包み、ヴェールで顔を覆ったミルヴィが唄うように言葉を紡ぐ。

「こんな大きな舞台で踊れるなんて! ふふっ、ファイターで踊り子の血が騒ぐよっ!」
「舞剣の使い手と戦える機会は貴重だ、いい試合にしよう」
「モチロンっ! それじゃ、ショータイムッ!」

 顔のヴェールを脱ぎ捨て様、ミルヴィが飛び出した。両手に愛用の曲刀を携え、怒涛の嵐のようなステップでウルグとの間を詰める。踊るような、唄うような独特なリズムで駆け抜け様に叩き込まれる高速の斬撃。剣撃自体は全て受けきったものの、その特異な動きにウルグから思わず感嘆の声が漏れた。

「なるほど面白いな。独特の呼吸で剣筋が読み難い」
「ありがとっ! でもまだまだこんなものじゃないよ!」

 ウルグの賛辞に礼を口にしつつミルヴィの動きは止まらない。踊るように、いや事実として踊りながら繰り出される連撃には、全ての動作に観衆を魅了する華があった。

「一応客人相手と考えていたが――どうやら遠慮は無用のようだな」
「ふふっ、それでこそだよ。こっちだって演目はまだいくらでもあるんだからっ!」

 眼前で圧力を強めるウルグに愉し気な笑みを返すミルヴィ。四方から叩きつけられる割れんばかりの大歓声が、この第一試合が御前試合の最高の幕開けとなったことを物語っていた。

成否

成功


第1章 第2節

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣

「こういうのを騎士冥利に尽きるというのかな?」

 皇城ズルガンの居城の門前。リゲル=アークライト(p3p000442)は無数の魔物を相手に獅子奮迅の立ち回りを見せていた。群がる魔物を斬り、叩き、弾き、薙ぎ払う。戦場を駆ける銀の流星はその軌跡に魔物の死骸を積み上げる。
 流麗苛烈な銀閃の騎士の活躍に、背後の城内は破裂せんばかりの歓声に沸いていた。

「バーチャルならではの気楽さなのかもしれないが、こういうのも悪くはないな」

 命の危機がないからこそ、観衆は今このリゲルの活躍を純粋に活劇として楽しんでいる。しかし、それはそれで別に良い。民の歓声を一身に浴びながら城を守るという体験は、騎士として充足感のあるものだった。

「我、人々の剣となり盾となる! 門を越えたくばこの銀閃を絶やしてみせよ!」

 手近な魔物を一掃し、剣を頭上に掲げて見栄を切る。煌めく銀光は威光となって魔物たちを委縮させ、背後からの歓声はより一段とその激しさを増した。魔物たちが攻めにためらいを見せることで出来た一瞬の間。その間をリゲルは見逃さなかった。

「距離を取って様子をみるつもりか――甘いな! 『炎星-炎舞』!」

 掲げた剣を魔物たちに向かって振り下ろす。その直後、魔物たちの頭上へと火球の嵐が降り注いだ。眼前のリゲルに気を取られていたため、無防備に炎上していく魔物たち。
 立ち上る火柱が、さながら花火のようにリゲルの勝利に華を添えていた。

成否

成功


第1章 第3節

前田 風次郎(p3p008638)
鬼狩人

「ほぉ……これは中々、殆ど本物と変わらんな」

 自身の希望した鬼と対峙しながら、前田 風次郎(p3p008638)は感心したように呟いた。大柄な己より二回りは大きい巨躯にゴツゴツと分厚い皮膚。丸太のように太い二本の腕は、見ただけでもそのパワーを如実に伝わってくる。

「だが、どれほど精巧だろうと所詮はまやかしか。あの禍々しい気とは比べものにならん」

 故に恐るるに足らずと、風次郎は一直線に向かっていった。遊びもフェイントもなにもない愚直なまでの突進。当然、それを迎撃せんと鬼の拳が真正面から襲い掛かってきたのだが、

「――温いッ!」

 重爆のような鬼の拳がまともに風次郎の顔面を捉えるものの、まるで意に介さない。口の端から血を流しながらも鬼の腕を鬱陶しいとばかりに弾き飛ばし、その前進が止むことはない。迸る闘気が風次郎の背後で形を成し、眼前の鬼の巨躯をも凌駕する仁王像がその姿を現した。唐突に表れた仁王像に、思わず怯んで気を取られしまう鬼。しかし、それは風次郎を前にしては致命的な隙となった。

「くたばれィッ!」

 回避のことも躱された場合のことも何も考えない、渾身の大振り。唐竹に繰り出された大剣の一撃は、咄嗟に防御に差し込まれた鬼の両腕ごとその身体を一刀両断に斬り伏せた。

「紛い物ではこんなものか……」

 絶命し倒れ込む鬼には一瞥もくれず、風次郎はいずれ来る本当の戦いへと思いを馳せるのであった。

成否

成功


第1章 第4節

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳

「俺の喧嘩は人様に見せられるほどお綺麗なもんじゃないんだが……やるからには全力でやらせてもらうぜ」

 上着を勢いよく脱ぎ捨て、亘理 義弘(p3p000398)は爛と眼光を輝かせた。シャツの下から出てきたのは切創、刺創、銃創、無数の傷跡の残る剥き出しの漢の肉体である。加えて背中に舞い散る夜桜の入れ墨の醸し出す奇妙な色気に、観客からも思わずどよめきの声が上がった。

「――さて、そろそろヤろうか」

 客の反応に満更でもない笑みを漏らし、義弘は眼前の相手と向かい合った。用意された相手は筋骨隆々のオーク。身長だけを見れば義弘よりも低いが筋肉の厚みは凄まじく、実際よりも一回りは大きく見えた。しかし義弘はそれに臆した様子はまるでなく、真正面から突撃した。

「所詮喧嘩は度胸と勢い。ビビった奴が負けるんだよ!」

 駆け寄りざま放たれる渾身の右ストレート。遊びがないが故に速く鋭いその拳は、相手の迎撃よりもなお速くその顔面に叩き込まれた。豚鼻から血を流してたたらを踏むオークに対して更に踏み込み、鳩尾を喧嘩キックで勢い任せに蹴りつける。衝撃で前かがみになった所を地面に引きずり倒し、そのまま馬乗りになれば勝負アリであった。

「――フッ、ノリのいいお客さんでありがたいこったぜ」

 マウントで殴られ続けてみるみる内にズタボロになっていくオークの無惨な姿を見ながら、それでも歓声を上げる観客に義弘は苦笑交じりに呟くのであった。

成否

成功


第1章 第5節

シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
海紅玉 彼方(p3p008804)
扇動者たらん

「さて、それでは行こうか彼方」
「はい師匠、お供いたします」

 満員の観衆の熱気が渦巻く舞台の上で、シューヴェルト・シェヴァリエと海紅玉 彼方は込み上げる高揚を抑えきれずにいた。師匠と弟子、2人揃って武闘大会に出場するということで、互いに恥ずかしいところは見せられないと意気込んでもいたのである。

「私が前で相手を抑える、援護は頼むぞ」

 そう言って、シューヴェルトは軽やかな足取りで前へと歩を進めた。視界に入るのは甲冑を着込んだ2名の騎士。その騎士へと向かって、シューヴェルトは無造作にデザートイーグルの弾丸を叩き込んだ。拳銃とはいえ大口径、堅牢な甲冑を貫くことはできないものの、その衝撃で動きを阻害するには十分な威力がある。

「では、しばしお相手願おうか」

 その隙を見逃さずに騎士たちの懐に潜り込むと、続いては剣技である。華麗かつ流麗な剣捌きは巧みに相手の防御の隙間をすり抜けて関節部などの弱い部分を傷つけていく。そのまるで舞踏のような華麗な剣捌きに大いに観客は沸き、相手の騎士たちの意識もシューヴェルト一人に偏ってしまう。

「――隙ありです」

 そこへ横合いから叩きつけられる爆発的な衝撃に、騎士の一人が文字通り弾け飛んだ。後方から放たれた、彼方のバリスタの一撃である。本来は攻城兵器として使用されるような弩の一撃は、いかに堅牢な甲冑を着込もうとも耐えられるような代物では到底ない。そして、相方がバリスタの矢で吹き飛ばされるという光景を目の当たりにしたもう一人の騎士としては、少しの間とはいえ呆然としてしまうのも無理からぬことといえるだろう。

「どうした、隙だらけだぞ?」

 だがその呆然は致命的な隙となる。シューヴェルトはそこを逃さずに的確に動いていた。相手の足の甲をデザートイーグルで打ち抜き、前かがみにさせるとすかさずその顎下を蹴り上げる。蹴りの衝撃と兜の重さで脳と首とへ同時にダメージを与えた後に、首の間に生じた鎧の隙間から剣をねじ込んで全てを終わらせた。

「彼方、見事な援護であったぞ」
「いえ、まだまだ師匠の域には届きません」

 舞台中央に戻り、彼方を褒めるシューヴェルトとそれに傅いて謙遜する彼方。その儀礼的な立ち居振る舞いは一見この舞台に似つかわしくないようにも思えるが、しかし観客の心の何かに触れたのか二人の頭上には一際大きな拍手と声援が降り注ぎ続けていた。

成否

成功


第1章 第6節

●大会終了
「今回はこんなところか」

 玉座にて、皇帝ズルガンはポツリと呟いた。眼前には先程まで天覧試合の様子を映していたモニターが未だに展開してある。

「今大会はいかがでしたか、陛下」

 その傍に控えるウルグがズルガンに問うた。その表情は、しかし既に答えなど分かり切っているというような風情をたたえている。

「そなたも分かっておろうに――今回は久々に見応えのある大会であったわ」

 それはズルガン自身も分かっていたのだろう。少し照れたように大会の様子を反芻し始めた。

「イレギュラーズ、異界の猛者たちか。腕前もそうだが、本当に様々な戦い方で見ていて飽きぬな」
「私自身も戦いましたが、彼らの多様性には本当に驚かされました」
「そうよな……」

 思い返されるのは多種多様な戦法で戦いを繰り広げるイレギュラーズの姿。この世界にはない発想による自由な戦いは見るものの心をひきつけ、皇帝も含めた観衆が大満足のうちに終わるという最高の結果となった。

「また、いつか彼らを呼んでやりたいものよな」
「――御意に」

 強き者への憧れと畏敬はいつの時代、どこの世界でも共通のもの。そして、その強さを魅せてくれる機会を作れるのならば、また是非ともやりたいと思うことも当然のことなのである。

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