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シナリオ詳細

<ホワイトブリーチ>もくじんぶろぶ乱打戦

完了

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オープニング


 それはかつて、あらゆる意味を込めて、もくじんぶろぶと名付けられた。
 のたり、と、もくじんぶろぶが動く。その動き。
 君が磁性流体というものを知っているのならば、それに相当すると悟るだろう。
 君がスライムを見たことがあるのならば、それに酷似していると識るだろう。
 君がもくじんぶろぶ自体を見たことがあるのならば。
 それは今こそ……。

 ……君の望む姿を表すべく、いつもの沸騰を始めたと気づくだろう!

「Buoooobo ba biibiriibibaaaaaaa!!!」
 意味のない言葉に似て、水音が泡が、もくじんぶろぶの体内に湧く。
 周囲は――いつもの通り――由来不明の白壁と、白円の描かれた石床のみ。
 急ぐことはない。慌てる理由もない。しかしこれを戦場と認識したまえ。
 君が悠々と待ってさえいれば、眼前のもくじんぶろぶは、完全変態を遂げるはずだ。
 君の牙を研ぐための牙を剥いて!


「こんにちは、イレギュラーズ。今回もお招きさせていただいて光栄よ!」
 境界案内人、『ホライゾンシーカー』ポルックス・ジェミニ。
 少女は軽く一礼。そして、一冊の本を取り出した。
「この世界は……ええと、役には立たないけれど役に立つ、そんな世界なの」
 言葉遊びの物言いを咎める視線に、ポルックスはうーん、と唸る。
「あるのはひとつ、白無垢の戦場。
 いるのはひとり、不滅の怪物。
 怪物は零落……バージョンダウンして、かつての有り様は望めないのだけれ、ど」
 言いよどむポルックス。
 かつての話だけど、と前置きした。
「誰かが望むならば、怪物はその力を得るの。
 無双の攻撃を望めば、そのとおりに。
 鉄壁の防御を望めば、そのとおりに。
 無限の夢幻を望めば、そのとおりに。
 不朽の頑丈を、不可触の回避を、鏡写しの姿を、望むならばばそのとおりに。
 かの怪物の形を変える能力と、力を得る特性と、そしてもう一つ……。
 ……対峙する存在のチカラを上げてあげようという本能を讃えられ、その怪物はかつて、もくじんぶろぶと名付けられたわ」

 勘がいい人なら、そろそろ気づくかもしれないけど。
 この世界をひととき滅ぼしたのは、ええ、もくじんぶろぶなのよ。

「それから、長い、永い、ながい、ひとりきりの時間が経ったわ。
 罪というものが時間に薄められるのなら、もう濃度を観測できないほどに。
 罰というものが時間に依るのならば、それこそ過剰なまでに。
 だから、あそこにいるもくじんぶろぶは、生まれたばかりの赤子より無垢な存在よ。

 ……だから、あの子を慰めてあげて。

 あの子は悪くなかったのだと。
 誰も悪くはなかったのだと。そこは、嘘でいいから。」
 ポルックスは本を開いた。

「慰め方だけど……そうね、おもいっきり攻撃すればいいんじゃないかしら!
 もくじんぶろぶの方で勝手に、あなたの攻撃や意図に最適化対応するはずだから!」
 だ、そうだ。

NMコメント

 こんにちは、はじめまして。
 ノベルマスターの君島世界です。
 第一章は、簡潔に言っちゃえば『試し切りしようぜ!』であります。
 なんかこうエモな設定(私比)な設定がもくじんぶろぶにはあるようですが、その辺は拾っても拾わなくても構いません。なんならオープニングは最後の3行だけ読めばイナフです。でも全文読んで♪(にっこり)

 さて。
 第一章のもくじんぶろぶには制限があります。
 それは、かつての世界にあった誰かの似姿にしか、変身できないこと。
 あなたの思う『にくいあんちくしょう』の姿には、おそらくなれません。
 無理ですよ。無理ですからね。無理と3回言いました。そこをガツンだ。
 一つの技を修練するもよし、新技や新魔法、新ビームや新キャノンを打つもよし。
 特殊化したスキルがある? 結構! もっと自慢したくなりますよ!

 それでは、皆様のプレイングを心待ちにしております。
 第二章? あるよ。

・サンプルプレイング1
オレは誰にも負けない握力が欲しい。
手にしたものを二度と手放さない、そんな力だ。
だからもくじんぶろぶに対しては、握撃(特殊化した組技だ)のみで攻撃する。
回避はされても構わない。そんな相手にも握撃を当てるのが、つまり技量だからな。
だが、オレに掴まれて早々に音を上げるようでは困る。
せいぜい耐えてくれよ……ッ!

・サンプルプレイング2
【一門】
強くあたって後は流れでどうにかするでござる。アドリブ歓迎。

・サンプルプレイング3
【一門】
このひとのサポートをします。
……ある程度は、痛めつけてくれて構いません。ある程度はですが。
アドリブも大丈夫です。

  • <ホワイトブリーチ>もくじんぶろぶ乱打戦完了
  • NM名君島世界
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年08月06日 10時39分
  • 章数3章
  • 総採用数13人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

 その時のことだ。
 ここにいる特異運命座標たち、その全ての隣に――もくじんぶろぶの『端末』が現れた。
 女性形。研究者然として、目を伏せるその姿。
 いつの間にか、もくじんぶろぶとの模擬戦は終了していた。周囲に広がるは、あの白い部屋。
 そして端末は、このように言うのである。
「言語変換完了 - あなた方を歓迎いたします。
 正確に言えば、大歓迎いたします。
 かつてわたしは――この世界を滅ぼし――その罪と、その罪の罰に喪することと決めました。
 誰もいなくなったこの世界を、何もない世界へと変えるため、『白の漂白』を施して。
 その時のわたしは、悼むことも、まして罰されることも、わたしに許すことをしませんでした」
 ……と。
 部屋の境界が、すこしづつ揺らいできている、ように見えた。
 白、その色のみに塗り物された壁と床が、なにものかへと変化していく。
 染み出すように、なんらかの『装置』へと置き換わっていく。
「わたしの存在、それ自体も、長い永い時間をかければ、漂白されるものと信じて――。
 ――そして、ついに。
 誰かが、もしかしたらあなた方が、この世界に福音を告げてくれたのです。
 罪も、罰も、もう消えたと。そのように思って、このような怪物を慰めてやろうと。
 それを、私は……」

 端末は、くたびれた男の姿に変わった。
 ボロをまとい、折れた煙草に火をつけて、殺すような視線でこちらを射抜く。
「許すワケには行かねェんだよ。誰よりもオレ自身がな」
 煙草の炎が、ぼう、と燃え広がる。白の世界を、銀幕のごとく焼き尽くした。
 かわりに現れるのは、そう、滅びの情景。
 どこからか悲鳴が聞こえる。どこにでも火の手があがる。
 空はよどみ地は裂け、数多の血と哀惜が世を満たす。
 赤と灰色と黒と絶望で塗りたくられた、戦争と呼ばれるもの。
「……嗚呼。これは終わりじゃねえ。この程度でこの世界は終わらなかった。
 つまりコレは、滅びに至る途上の光景だ。ヒトとヒトとの、下らない終末戦争に過ぎん。
 ああ下らない。だが、オレにはわかっている。お前らにとっては、そうじゃないんだろう?」
 もくじんぶろぶの端末は、煙草を吸うこともなくピンと投げ捨てた。
 その方向に去り、踵で吸い殻を踏みにじる。
 いつの間にか――特異運命座標たちは、同じ場所に集合していた。
「次は大規模模擬戦だ。オレはこれから、この世界の本当の終わりを再演する。
 なんてコトは無え。誰かがオレに望んだように、実体を持つ世界廃滅の悪魔と化す、それだけだ。
 止めてみせろ。あるいは、生き延びてみせろ。この終末を。
 そして……オレを消尽させてくれ。
 観測者がいる状態で、世界再演を最後まで果たせば、さすがのオレも、この怪物も――」

 ――滅ぶことが、できるだろうさ。


第2章 第2節

三國・誠司(p3p008563)
一般人
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者


「即座の移動を」
 単純明快に。『群鱗』只野・黒子(p3p008597)は、すべきことを告げる。
「前方上空です。もくじんぶろぶの主力体と思わしきものが――」
「――了解! ありがとうございます!」
「……」
 と、『砲使い』三國・誠司(p3p008563)は、そちらに御國式大筒【星堕】を向けた。
 前方上空、すなわち33度。その角度に、グリーフ・ロス(p3p008615)も視線を揚げる。
 瓦礫の隙間、雲のあわいに、確かにそれを見た。……そして。
「……届きません」
「いえ! 僕の大筒なら、この超々距離でもきっと――」
 そこまで言って、はたと気づく。

「――そういうことじゃ、ないんですよね」
「どうやら、そのようです」
「そう。ここからの狙撃では、結論に届きません」

 三人。視線を合わせ、頷きあった。
 銀幕の欠片を蹴り破って、舞台裏、模造された終末へ駆ける。何かを通り過ぎたような感覚があり、するとすぐに、見たことのない景色へと踏み込んでいた。
 摩天楼、アスファルト、ガラス、十字路。それらで構成されて『いた』であろう地点。
 再現性東京――とも、黒子の、誠司の知る世界とも、どれにも良く似て、まるで似つかぬ。
 それでもこの光景はよく知っている。知っていた。
「戦争というものは、どこもかしこもこのような姿なのですかな」
 黒子が嘆息する。かつての世界で見た資料と、異なりながらこれらは、等しかった。
「炎と煙、破壊の傷跡……そして」
「そして! それをどこかで悠々と眺めている、滅びの黒幕ッ!」
 グリーフの言葉を、誠司が継ぐ。黒子が前に出ることで、思いの等しさを証明した。
「打倒します。各人、ご協力を」
 ギュンッ!
 ――すると、もくじんぶろぶの最終端末が、三人の前方に墜落した。かろうじて人型の、それ。
 黒焦げの死体のようで、それは動くたびにぼろぼろと肉片を零しながら、こちらを向く。
「『ヘビーサーブルズ』」
 黒子の掌に、熱砂の小竜巻が生まれる。投げ上げた。
 ざあっ……という、驟雨の音と砂煙とに紛れて、誠司は射撃地点へと移動する。
「もくじんぶろぶ。お前、何か勘違いしてるだろ」
 言う。
「罪を背負うのも赦すのも、お前にしかできないことだ。お前にしか!」
 射線クリア。障壁よし。エイムセット。タイミング……今!
 ッタアアアアアンンン!
 青の炎線が、熱砂圏ごと、最終端末の身体を貫いた。延焼する。
 その渦中にグリーフは進んでいく。
「望みに、寄り添いましょう。アナタの行動を阻害し、アナタの害意に生存し。
 アナタの希望に、たとえそれが滅びだとしても……」
 じりじりと焼かれる最終端末が、するとぐにゃりと歪み、一本の針となった。
 貫いてくるそれを、己の身ごと、グリーフはその場に抱き留める。
 胸にあいた空洞に、もくじんぶろぶが詰まっていた。
「……それは、ならば、アナタの感情から来たものなのでしょうか?
 言葉として紡いだ経緯、望みを望むに至った理由。それが……?」
 ぶしゅっ。
 グリーフは、もくじんぶろぶを留め切れずに、躯体の貫通を許してしまう。
 からん、と道に転がった先で、最終端末はまた黒焦げの姿となった。
 瞳は蒸発し、喉は焼け落ち。ゆえに何も言わぬ、言えぬその有様。
 その有様で、最終端末は指を弾いた。左手は崩れ落ち、代わりに高い炎壁が、三人を包囲する。
「……っとに、本当に! ほんっとに面倒臭ぇやつだなぁ!」
 誠司はポイントから飛び降りた。直後、背後の構築物が崩れ落ちる。
「いいぜ、向き合ってやる! そのための経験は、お前から受け取った!」
 集中しろ。見抜け。そのうえで想定外も想定しろ。
 一人ではない今なら、その工程を、仲間全員がやってくれる!
「みんなッ!」
 撃つ。狙いは最も外皮から遠く、故に燃傷の届いていないだろう、丹田――"核"だ。
 先の狙撃傷と合わせて、鋭角交差の弾痕が、最終端末に刻まれた。
 外殻が、砕ける……!
「そろそろ終わりといたしましょう、もくじんぶろぶ様」
 ――ッ!
 ブオンッ!
 自然体に立つ黒子の前に、すると烈風が生じた。
「少なくとも、この戦闘演習は」
 最終端末の乾いた肉を、吹き刮ぐ。骨はなく、ゆえに臓もなく。
 ならばまさしく"核"というべきものがそこにあった。

 それは今や、ねむるみどりごの形をしている。
 グリーフが、無傷のそれをようやく、傷ついた躯体へ抱きとめた。
 滅びの大地に、落ちる前に。

成否

成功

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