シナリオ詳細
<ホワイトブリーチ>もくじんぶろぶ乱打戦
完了
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オープニング
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それはかつて、あらゆる意味を込めて、もくじんぶろぶと名付けられた。
のたり、と、もくじんぶろぶが動く。その動き。
君が磁性流体というものを知っているのならば、それに相当すると悟るだろう。
君がスライムを見たことがあるのならば、それに酷似していると識るだろう。
君がもくじんぶろぶ自体を見たことがあるのならば。
それは今こそ……。
……君の望む姿を表すべく、いつもの沸騰を始めたと気づくだろう!
「Buoooobo ba biibiriibibaaaaaaa!!!」
意味のない言葉に似て、水音が泡が、もくじんぶろぶの体内に湧く。
周囲は――いつもの通り――由来不明の白壁と、白円の描かれた石床のみ。
急ぐことはない。慌てる理由もない。しかしこれを戦場と認識したまえ。
君が悠々と待ってさえいれば、眼前のもくじんぶろぶは、完全変態を遂げるはずだ。
君の牙を研ぐための牙を剥いて!
●
「こんにちは、イレギュラーズ。今回もお招きさせていただいて光栄よ!」
境界案内人、『ホライゾンシーカー』ポルックス・ジェミニ。
少女は軽く一礼。そして、一冊の本を取り出した。
「この世界は……ええと、役には立たないけれど役に立つ、そんな世界なの」
言葉遊びの物言いを咎める視線に、ポルックスはうーん、と唸る。
「あるのはひとつ、白無垢の戦場。
いるのはひとり、不滅の怪物。
怪物は零落……バージョンダウンして、かつての有り様は望めないのだけれ、ど」
言いよどむポルックス。
かつての話だけど、と前置きした。
「誰かが望むならば、怪物はその力を得るの。
無双の攻撃を望めば、そのとおりに。
鉄壁の防御を望めば、そのとおりに。
無限の夢幻を望めば、そのとおりに。
不朽の頑丈を、不可触の回避を、鏡写しの姿を、望むならばばそのとおりに。
かの怪物の形を変える能力と、力を得る特性と、そしてもう一つ……。
……対峙する存在のチカラを上げてあげようという本能を讃えられ、その怪物はかつて、もくじんぶろぶと名付けられたわ」
勘がいい人なら、そろそろ気づくかもしれないけど。
この世界をひととき滅ぼしたのは、ええ、もくじんぶろぶなのよ。
「それから、長い、永い、ながい、ひとりきりの時間が経ったわ。
罪というものが時間に薄められるのなら、もう濃度を観測できないほどに。
罰というものが時間に依るのならば、それこそ過剰なまでに。
だから、あそこにいるもくじんぶろぶは、生まれたばかりの赤子より無垢な存在よ。
……だから、あの子を慰めてあげて。
あの子は悪くなかったのだと。
誰も悪くはなかったのだと。そこは、嘘でいいから。」
ポルックスは本を開いた。
「慰め方だけど……そうね、おもいっきり攻撃すればいいんじゃないかしら!
もくじんぶろぶの方で勝手に、あなたの攻撃や意図に最適化対応するはずだから!」
だ、そうだ。
- <ホワイトブリーチ>もくじんぶろぶ乱打戦完了
- NM名君島世界
- 種別ラリー(LN)
- 難易度-
- 冒険終了日時2020年08月06日 10時39分
- 章数3章
- 総採用数13人
- 参加費50RC
第2章
第2章 第1節
その時のことだ。
ここにいる特異運命座標たち、その全ての隣に――もくじんぶろぶの『端末』が現れた。
女性形。研究者然として、目を伏せるその姿。
いつの間にか、もくじんぶろぶとの模擬戦は終了していた。周囲に広がるは、あの白い部屋。
そして端末は、このように言うのである。
「言語変換完了 - あなた方を歓迎いたします。
正確に言えば、大歓迎いたします。
かつてわたしは――この世界を滅ぼし――その罪と、その罪の罰に喪することと決めました。
誰もいなくなったこの世界を、何もない世界へと変えるため、『白の漂白』を施して。
その時のわたしは、悼むことも、まして罰されることも、わたしに許すことをしませんでした」
……と。
部屋の境界が、すこしづつ揺らいできている、ように見えた。
白、その色のみに塗り物された壁と床が、なにものかへと変化していく。
染み出すように、なんらかの『装置』へと置き換わっていく。
「わたしの存在、それ自体も、長い永い時間をかければ、漂白されるものと信じて――。
――そして、ついに。
誰かが、もしかしたらあなた方が、この世界に福音を告げてくれたのです。
罪も、罰も、もう消えたと。そのように思って、このような怪物を慰めてやろうと。
それを、私は……」
端末は、くたびれた男の姿に変わった。
ボロをまとい、折れた煙草に火をつけて、殺すような視線でこちらを射抜く。
「許すワケには行かねェんだよ。誰よりもオレ自身がな」
煙草の炎が、ぼう、と燃え広がる。白の世界を、銀幕のごとく焼き尽くした。
かわりに現れるのは、そう、滅びの情景。
どこからか悲鳴が聞こえる。どこにでも火の手があがる。
空はよどみ地は裂け、数多の血と哀惜が世を満たす。
赤と灰色と黒と絶望で塗りたくられた、戦争と呼ばれるもの。
「……嗚呼。これは終わりじゃねえ。この程度でこの世界は終わらなかった。
つまりコレは、滅びに至る途上の光景だ。ヒトとヒトとの、下らない終末戦争に過ぎん。
ああ下らない。だが、オレにはわかっている。お前らにとっては、そうじゃないんだろう?」
もくじんぶろぶの端末は、煙草を吸うこともなくピンと投げ捨てた。
その方向に去り、踵で吸い殻を踏みにじる。
いつの間にか――特異運命座標たちは、同じ場所に集合していた。
「次は大規模模擬戦だ。オレはこれから、この世界の本当の終わりを再演する。
なんてコトは無え。誰かがオレに望んだように、実体を持つ世界廃滅の悪魔と化す、それだけだ。
止めてみせろ。あるいは、生き延びてみせろ。この終末を。
そして……オレを消尽させてくれ。
観測者がいる状態で、世界再演を最後まで果たせば、さすがのオレも、この怪物も――」
――滅ぶことが、できるだろうさ。
第2章 第2節
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「即座の移動を」
単純明快に。『群鱗』只野・黒子(p3p008597)は、すべきことを告げる。
「前方上空です。もくじんぶろぶの主力体と思わしきものが――」
「――了解! ありがとうございます!」
「……」
と、『砲使い』三國・誠司(p3p008563)は、そちらに御國式大筒【星堕】を向けた。
前方上空、すなわち33度。その角度に、グリーフ・ロス(p3p008615)も視線を揚げる。
瓦礫の隙間、雲のあわいに、確かにそれを見た。……そして。
「……届きません」
「いえ! 僕の大筒なら、この超々距離でもきっと――」
そこまで言って、はたと気づく。
「――そういうことじゃ、ないんですよね」
「どうやら、そのようです」
「そう。ここからの狙撃では、結論に届きません」
三人。視線を合わせ、頷きあった。
銀幕の欠片を蹴り破って、舞台裏、模造された終末へ駆ける。何かを通り過ぎたような感覚があり、するとすぐに、見たことのない景色へと踏み込んでいた。
摩天楼、アスファルト、ガラス、十字路。それらで構成されて『いた』であろう地点。
再現性東京――とも、黒子の、誠司の知る世界とも、どれにも良く似て、まるで似つかぬ。
それでもこの光景はよく知っている。知っていた。
「戦争というものは、どこもかしこもこのような姿なのですかな」
黒子が嘆息する。かつての世界で見た資料と、異なりながらこれらは、等しかった。
「炎と煙、破壊の傷跡……そして」
「そして! それをどこかで悠々と眺めている、滅びの黒幕ッ!」
グリーフの言葉を、誠司が継ぐ。黒子が前に出ることで、思いの等しさを証明した。
「打倒します。各人、ご協力を」
ギュンッ!
――すると、もくじんぶろぶの最終端末が、三人の前方に墜落した。かろうじて人型の、それ。
黒焦げの死体のようで、それは動くたびにぼろぼろと肉片を零しながら、こちらを向く。
「『ヘビーサーブルズ』」
黒子の掌に、熱砂の小竜巻が生まれる。投げ上げた。
ざあっ……という、驟雨の音と砂煙とに紛れて、誠司は射撃地点へと移動する。
「もくじんぶろぶ。お前、何か勘違いしてるだろ」
言う。
「罪を背負うのも赦すのも、お前にしかできないことだ。お前にしか!」
射線クリア。障壁よし。エイムセット。タイミング……今!
ッタアアアアアンンン!
青の炎線が、熱砂圏ごと、最終端末の身体を貫いた。延焼する。
その渦中にグリーフは進んでいく。
「望みに、寄り添いましょう。アナタの行動を阻害し、アナタの害意に生存し。
アナタの希望に、たとえそれが滅びだとしても……」
じりじりと焼かれる最終端末が、するとぐにゃりと歪み、一本の針となった。
貫いてくるそれを、己の身ごと、グリーフはその場に抱き留める。
胸にあいた空洞に、もくじんぶろぶが詰まっていた。
「……それは、ならば、アナタの感情から来たものなのでしょうか?
言葉として紡いだ経緯、望みを望むに至った理由。それが……?」
ぶしゅっ。
グリーフは、もくじんぶろぶを留め切れずに、躯体の貫通を許してしまう。
からん、と道に転がった先で、最終端末はまた黒焦げの姿となった。
瞳は蒸発し、喉は焼け落ち。ゆえに何も言わぬ、言えぬその有様。
その有様で、最終端末は指を弾いた。左手は崩れ落ち、代わりに高い炎壁が、三人を包囲する。
「……っとに、本当に! ほんっとに面倒臭ぇやつだなぁ!」
誠司はポイントから飛び降りた。直後、背後の構築物が崩れ落ちる。
「いいぜ、向き合ってやる! そのための経験は、お前から受け取った!」
集中しろ。見抜け。そのうえで想定外も想定しろ。
一人ではない今なら、その工程を、仲間全員がやってくれる!
「みんなッ!」
撃つ。狙いは最も外皮から遠く、故に燃傷の届いていないだろう、丹田――"核"だ。
先の狙撃傷と合わせて、鋭角交差の弾痕が、最終端末に刻まれた。
外殻が、砕ける……!
「そろそろ終わりといたしましょう、もくじんぶろぶ様」
――ッ!
ブオンッ!
自然体に立つ黒子の前に、すると烈風が生じた。
「少なくとも、この戦闘演習は」
最終端末の乾いた肉を、吹き刮ぐ。骨はなく、ゆえに臓もなく。
ならばまさしく"核"というべきものがそこにあった。
それは今や、ねむるみどりごの形をしている。
グリーフが、無傷のそれをようやく、傷ついた躯体へ抱きとめた。
滅びの大地に、落ちる前に。
成否
成功
NMコメント
こんにちは、はじめまして。
ノベルマスターの君島世界です。
第一章は、簡潔に言っちゃえば『試し切りしようぜ!』であります。
なんかこうエモな設定(私比)な設定がもくじんぶろぶにはあるようですが、その辺は拾っても拾わなくても構いません。なんならオープニングは最後の3行だけ読めばイナフです。でも全文読んで♪(にっこり)
さて。
第一章のもくじんぶろぶには制限があります。
それは、かつての世界にあった誰かの似姿にしか、変身できないこと。
あなたの思う『にくいあんちくしょう』の姿には、おそらくなれません。
無理ですよ。無理ですからね。無理と3回言いました。そこをガツンだ。
一つの技を修練するもよし、新技や新魔法、新ビームや新キャノンを打つもよし。
特殊化したスキルがある? 結構! もっと自慢したくなりますよ!
それでは、皆様のプレイングを心待ちにしております。
第二章? あるよ。
・サンプルプレイング1
オレは誰にも負けない握力が欲しい。
手にしたものを二度と手放さない、そんな力だ。
だからもくじんぶろぶに対しては、握撃(特殊化した組技だ)のみで攻撃する。
回避はされても構わない。そんな相手にも握撃を当てるのが、つまり技量だからな。
だが、オレに掴まれて早々に音を上げるようでは困る。
せいぜい耐えてくれよ……ッ!
・サンプルプレイング2
【一門】
強くあたって後は流れでどうにかするでござる。アドリブ歓迎。
・サンプルプレイング3
【一門】
このひとのサポートをします。
……ある程度は、痛めつけてくれて構いません。ある程度はですが。
アドリブも大丈夫です。
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