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シナリオ詳細

<月蝕アグノシア>大きな蜥蜴は食べ盛り

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 とばりの森と言う、妖精郷内の森林がある。
 樹木や光る花は勿論の事、何よりもこの場所を国の名に相応しき幻想的なセカイに染め上げているのは、時に人の背丈すら越える大きなキノコたちの存在だ。
 森林を構成するそれらは、今――ある一つの脅威によって、滅びを迎えようとしていた。
「このー! このー!」
「離れろー! 離れろよう!」
 ぺちぺち、という擬音と共に、戦闘能力の無い妖精たちが必死にパンチを繰り返すのは……一匹の蜥蜴だった。
 まあ当然というか、只の爬虫類ではない。その体高、実に3mほどの超巨大蜥蜴である。
 一時間ほど前であろうか。とばりの森に突如現れたこの蜥蜴は、のたのたと緩慢な動きをしつつも周囲の草木やキノコを食べ始めた。
 この蜥蜴、何が怖いって「満腹」が無い。
 動きは鈍くても一時間もの間、その巨体を食べることに終始している蜥蜴は、現時点に於いても尚食事をやめる気配はなかった。
「いい加減に食べるのやめろよー! 今年に収穫する木の実まで無くなっちゃうだろ!」
 ……襲われた妖精側にとって唯一の救いは、この蜥蜴に戦闘能力と言えるものがおよそ存在していないことであろうか。
 妖精たちが何度攻撃しても知らんぷり。尤も攻撃によって与えられたダメージは、蜥蜴が食事を行えばすぐに修復されてしまう。
 要は、いたちごっこである。
 そして戦闘に持ち込んでも膠着状況に陥る以上、結果的に森の植物がどんどん食べられていく現状に変わりはないわけで。
「うわーん! 誰かコイツをやっつけてよう!!」
 必死に効かない攻撃をし続けていた妖精の一人が、泣きながら助けを呼ぶ。
 ――斯くして。
 妖精郷側からすれば「時間をかけるか総力を挙げれば倒せなくはないけど、現状そんな余裕とか無い」依頼は、『ローレット』の特異運命座標達に託されることとなったのである。


「……状況は分かったんだが」
 場所は変わって、『ローレット』の一角。
 突如妖精たちに因って持ち込まれた多くの依頼で大わらわとなっている室内に於いて、此度集まった特異運命座標達もまた、相対する妖精に片手を挙げて質問する。
「件の……とばりの森? だったか。
 其処に未だ残って蜥蜴を足止めしてるらしい、一般人の妖精の扱いはどうするんだ」
 この意図を理解するには、妖精側はともかくとして、問い掛けた特異運命座標達にとっては現状を正しく把握している必要がある。
 即ち。今現在、この妖精が住まう故郷――妖精郷アルヴィオンに、嘗てない危機が訪れているということに。
「妖精たちは現在、妖精郷を襲った魔種や配下の魔物たちに捕らえられている……で良かったよな」
「はい……。その後、私たちの友達は、白い怪物……アルベドと呼ばれる化け物の核に用いられてしまったんです」
 ショートカットをした少女型の妖精は、特異運命座標の言葉にしょんぼりした様子で肩を落とした。
 それが、「未曽有の危機」の理由。
 民である妖精たちはその命を兵器の核として利用され、それらを統べる女王ですらも、現在は魔種の手に落ちては『月夜の塔』と呼ばれる場所に幽閉されているらしい。
「なら、一般人の妖精たちを保護しない訳には……いかないよな?」
「それについては、逃げ延びた私達の内、練度が浅いものを何人か同行させていただこうと思います。
 彼らは救出対象である友達を連れて、即座に撤退するように言っておきます、が……」
 逆説、それはこの戦闘に於いて、妖精側から提供できる援護……戦力を、保護に回さざるを得ないことが意味される。
 体高3m、爆発的な回復力を有する蜥蜴。練度に差異は有れど、それに特異運命座標8人が立ち向かえるのか――と、思いもするが。
「国一つを巻き込んだ戦争は、戦中は勿論の事、何より戦後の立て直しが重要となってくるんです。
 国力が疲弊した後、とばりの森からの収穫物さえも無くなってしまえば、私たちに未来はありません。どうかお願いします……!」
 苦笑は、知らず、いつの間にか零れていた。
 魔種による『滅びのアーク』の拡大を防ぐという目的は、当然有るが、それよりも。

 ――ただ、「困っている人の力になる」ことこそが、『ローレット』の基本理念であることを、彼らは近いしていたから。

GMコメント

 GMの田辺です。
 以下、シナリオ詳細。

●成功条件
・『大蜥蜴』の討伐、若しくは撃退。

●失敗条件
・『大蜥蜴』が下記A系スキル「食事」を一定回数行うこと。

●場所
『とばりの森』
 妖精郷アルヴィオンに存在する広大な森です。巨大なキノコや、光を放つ花などが特徴的な場所。
 一部では戦闘が行われているようですが、本シナリオが同じ場所で発生している他のシナリオに影響を与えることはありません。
 シナリオ開始時、下記『大蜥蜴』との距離は20mです。

●敵
『大蜥蜴』
 体高3mの巨大な蜥蜴です。分類は錬金術モンスター。数は1体。
 元々は只の蜥蜴だったのですが、妖精郷を襲っていた魔種が戯れに実験したらこれくらいの大きさになりました。
 速度はほぼゼロ。ダメージを与える手段も一切存在しない代わりに、体力を主とした耐久性の高さは相当なもの。
 また、妨害、回復系スキルも多少は所有しております。
 以下、能力詳細。

【P系スキル】
・鈍重
(1ターンにおける自身の行動順が最後になる代わりに、体力に大幅な補正がかかります)
・超すーぱー脱皮
(自身の副行動直前に自動発動。自身を戦闘不能状態とする代わりに、「その時点での自身のHP現在値」を「HP最大値」とした、全く同じ能力値のエネミーを同位置に発生させます)

【A系スキル】
・食事
(自身の周囲3m以内に存在する植物を全て食べることで、自身の「HP現在値」と「HP最大値」に補正を与えます)
・はいぱー尻尾ミサイル
(尻尾の先端が切り離され、ジェット噴射しながら遠距離単体に発射されます。
 ダメージ0。但し命中した場合、対象の3m以内に下記『しっぽ』が対象をマークした状態となります)
・うるとらファイヤーブレス
(近距離範囲対象に向けて口から温風を吐き出します。命中した場合、対象のHPが回復するとともにMアタック効果が発生。
 これにより対象のAPが0となった場合、対象は眠たくなって一定ターン行動不能状態となります。BS回復等は不可)

『しっぽ』
 上記『大蜥蜴』が射出した尻尾です。能動行動を取らないオブジェクト扱い。耐久力等は不明。
 このオブジェクトの周囲3mに存在するPCは自動的にマークされた扱いとなり、これを破壊するか後方に離脱しなければ移動することができません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。



 それでは、参加をお待ちしております。

  • <月蝕アグノシア>大きな蜥蜴は食べ盛り完了
  • GM名田辺正彦
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年07月17日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)
宝石の魔女
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
太井 数子(p3p007907)
不撓の刃
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
鍵守 葭ノ(p3p008472)
鍵の守り手

リプレイ


「衣食住足りて礼節を知るとも言うし、食べ物はとっても大事じゃ」
 うむ、と頷く『放火犯』アカツキ・アマギ(p3p008034)が、次いでその指をびしっと突き付ける。
「それを奪われて困っている妖精達の力になるためにも……悪い蜥蜴はお仕置きじゃ!」
 向けた先には、大きな蜥蜴。
 突如現れた八名の特異運命座標達を捉えた大蜥蜴は、ちょっとだけ彼らを見た後、ふいっと視線を逸らして周囲の草木をもぐもぐし始める。
 ――彼女の言う通り、此度、彼らに与えられた依頼は、この大蜥蜴の撃退。
 妖精郷に於けるある種の食糧庫ともいえる『とばりの森』の植物を手当たり次第に食べ散らすモンスターを倒すべく、彼らは現在も着々と準備を進めている。
「主たる戦場とは離れて、亦此処では別の問題、と。
 ……なんだか、少し気の抜けるような、そんな気配もあるのです……が」
「もう、ここは妖精さん達のテリトリーよ! 勝手に食べたらダメじゃない!」
 べそべそ泣いてる妖精を宥めつつも、迎えに着た妖精たちに引き渡す『悼みを教えて』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)の呆然とした感想に、『不撓の刃』太井 数子(p3p007907)が怒り顔で大蜥蜴を叱っている。
「うわっ、でっけーな!! オレこんなでけーのみたことないから吃驚……っておもったけど」
 目を丸くして感想を述べるのは『鍵の守り手』鍵守 葭ノ(p3p008472)である。眼前の巨大なモンスターを前にただただ驚くばかりの彼ではあるが……その「巨大さに驚く」要因は、一つだけではなく。
「………………?」
『………………』
 なかま? と小首を傾げた『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)に対して、再び視線を合わせた大蜥蜴はつぶらな瞳をぱちくりさせて、ふるふると首を横に振った。何か通じているのかもしれない。
「いやー、アルさんと並ぶとプチ怪獣大戦争みたいですね!」
「いやアルペストゥス殿はともかくあのクソトカゲは只のゲテモノじゃろ!?」
 片手を庇にして両者を眺める『可愛いもの好き』しにゃこ(p3p008456)に対して、横目で突っ込んだのは『宝石の魔女』クラウジア=ジュエリア=ペトロヴァー(p3p006508)。
 見た目はその辺の蜥蜴が単純にでっかくなっただけだから、合わない人には合わないのかもしれない。そういう問題でもない気がするけど。
 ……何れにせよ。
「――ヴァイスドラッヘ! 困っている妖精たちがいると聞きここに参上」
 ギフトを介しての装備換装を行った『ヴァイスドラッヘ』レイリ―=シュタイン(p3p007270)は、雄々しき白竜の如き全身鎧を身に着け、相対する大蜥蜴に得物の穂先を向ける。
「攻撃はしてこないけど迷惑度も厄介度も大きいし、全力で倒そう!」
 圧倒されつつある仲間たちに向け鬨の声を上げる彼女によって、ちょっと不思議な戦いの幕は上がったのである。


 まず、情報のおさらいから始めよう。
 此度相対するエネミー、通称大蜥蜴は、行動が遅く、その能動行動にダメージを与えるものが無いという特徴がある。
 逆に言うとその分、与えてくる状態異常や移動制限などは独特なもので、かつ鬱陶しいという言葉がぴったりと当て嵌まる。
 ともあれ。では特異運命座標達を倒す存在ではない大蜥蜴との戦いでは何を以て敗北と定めるかは単純で――この大蜥蜴による「とばりの森」での食事が広範囲に及びすぎることである。
 それ故に、特異運命座標達が真っ先に取る行動は決まっており。
「なんとしてもここで止めます! さぁ、お仕事開始です!」
 レイリーの言葉に追随して、真っ先に動いたのはしにゃこ。
 他のメンバーと比べて挙動の速さが頭一つ抜けている彼女は、大蜥蜴による「移動制限」に警戒を兼ねて仲間たちとある程度距離を取った後、両手に携えたライフル――『コールド・ブラッド』を介して精密射撃を叩きこむ。
 が。事前に聞いていた情報通り、硬い……と言うか、分厚い。
 防御力ではなく、体力に大きく割かれた能力は伊達ではない。うへえ、と呆れた表情を浮かべるしにゃこは、しかし。
「これ相当時間かかりますね!? アルさんとレイリーさん、よろしく!」
「グガァッ!」
「了解!」
 投げかけられた言葉を意図して、アルペストゥスが、レイリーが声を返して蜥蜴の前後に布陣する。
 先にも言った敗北条件――大蜥蜴の食事と言うのは、一度行使するたびに自身の至近範囲にある「食べ物」が無くなるため、敵の側は常に移動を強いられている。
 つまり、その移動を冒険者たちがローテーションで封じ続ければ食事は行えない。
 進行方向と背後、それぞれに位置された相手へおぶおぶと戸惑う蜥蜴に対して、レイリーは堂々と言い放つ。
「これ以上、お前を動かせないよ!」
 足止めの先鋒を担った遊色銀の竜と白竜の騎士を確認し終えた後、残る仲間たちは火力を一気に集中させる。
「ちょっとは私達も踏み荒らす事になってしまうけど……すぐに終わらせるわ!」
 しにゃこ同様、最低3mの距離を保って散開する数子は、それと共に『フォーリングスター』から収束した氣を撃ち放つ。
 用いるのは刃ではなく、籠められた宝石。魔術媒体の代替としたそれを砲台にした数子の一撃に大蜥蜴もぐらぐらと揺らぐ。
「効いてるけど、圧倒までは出来てないわね……」
「はい。直撃している筈、なのですが……。まるで意にも介さないということ、でしょうか……」
 返すアッシュとて、ソーンバインドでの拘束を仕掛けるものの、対する大蜥蜴の表情(?)からは、何というか――痛痒、と言ったものが感じられない。
 それが錬金術による呪法で感覚がマヒした故ならば兎も角、初動から全力の特異運命座標たちをして碌なダメージを負っていない、と言う意味ならば……考えるだけでも恐ろしい。
「だとしても、妾達に出来ることは限られておろうが!」
 右手に陽を、左手に陰を。
『朱の刻印』と名付けられたそれが、担い手の繊手を紅く染め上げれば、咆えたアカツキは二重の火柱を大蜥蜴の胴体めがけて展開する。
「苦戦は元より承知、何より(しにゃこやアルと一緒の戦場で)今回テンション上がっておる妾を侮るでないわ!」
 ダブルクリメーション。追随する悪意の二炎を放ち、ひゅうと呼気を吐いたアカツキに続いて、彼女が。
「如何にも! 一度で敵わぬのなら十も二十も重ね、このクソトカゲを滅ぼしてくれようぞ!」
 にやりと笑ったクラウジアが、左手に構えた箒から幾多の光条を展開する。
 ただ単体に対して暴力的とすら言える魔力の爆裂と、それに付随する三種の呪い。挙動が遅い蜥蜴の側はこれまでの攻撃をただ黙って受けるばかりだ。
「……同情はしないぜ。お前の食事で、泣いてるヤツらが居るんだ」
 一切の抵抗なく、呵責無い攻勢を浴び続ける大蜥蜴へ、葭ノは自身に戒めるように呟いた。
 此度を初陣とする彼の実力は、仲間たちに比べれば幾らか劣るものでもあろうが、しかし。
「思い、想われ、乞い、焦がれ」
 ――この蜥蜴の所業に、涙する誰かが居る。
 その事実に対し、熱く燃える心だけは、きっと、誰にも負けはしないと。
「……ありったけの想い、ぶちかますぜ!」
 気力を低下させる大蜥蜴のブレスを警戒する葭ノは、その行動に於いてあまり気力を消費する行動は取れない。
 だが、その分の地力は装備が補っている。基礎能力を大きく削る反面、装備した際の補正を大きく上げる『焦燥破刃』の二刀流は、確かにその分厚い皮膚を大きく裂き削る。
『………………!』
 それまでの経過で、流石の大蜥蜴も特異運命座標らが自身に危害を与えうる存在と認識したのだろう。
 距離を取るため、何よりもっともっと食べ物を頂くために。
 前方のアルペストゥスを、後方のレイリーを『置き去りにして』。

 大蜥蜴は――――――移動を、開始する。


「ガ、グァッ!」
「ちょっ……と!?」
 驚きの声は、ブロックを務めていたアルペストゥスとレイリーのもの。
 だが、瞠目は、驚愕の感情は……この場に居る凡そ全員が共通して抱いていたに違いない。
 何故と言って、レイリー達が移動を封じている大蜥蜴は、現在もそこに位置している。
 ブロックを抜けた大蜥蜴に彼女らが気付いたのは、その巨体からなる足音が故だ。では眼前に居るこの巨体は――
「『抜け殻』!?」
 事前に情報として伝えられていた、大蜥蜴の脱皮能力。その形骸であった。
 元の個体と遜色ない体色と凹凸を持ったそれは、特異運命座標達が気付くと同時、ふにゃふにゃと自重で潰れていってしまう。
 此処が、特異運命座標達の犯した重大なミスである。
 マークやブロックなどの移動制限行動は、あくまでその行動時に指定した対象にのみ影響を与える。
 つまり――その対象自体が消失すれば、それら移動制限行為は無為に帰すこととなる。
 この大蜥蜴の有する脱皮能力は単純な状態異常の回復を行う程度のものではなく、言ってしまえば「自身の命を引き換えに自身の複製を生み出す」類の能力だ。
 自然、複製元の個体に対してのブロックやマークは、複製された個体に対し寄与しない。
「いやそんなズル許されるんですかこの子!?」
「やっぱりクソトカゲだったのじゃ――!」
 悲鳴を上げるしにゃことクラウジア。こうなった戦線は一気に混沌の様相を迎える。
 何しろ好き勝手動き回る相手を常時移動しながら攻撃する必要がある。距離を離された側は追いかけ、距離を詰められた側はさらに距離を取るためにだ。
 副行動は殆ど移動に費やされ、集中して攻撃精度を上げられないとなった彼らの術技によるダメージは本来想定したものより幾らか劣ってしまう。
「ちょっとは、止まりな……さい!」
 手にする大盾でのチャージから、刺突。
 レイリーのレジストクラッシュを受けて目を回す蜥蜴は、しかし次に脱皮を迎えるとけろりとした様子で移動を開始する。
「……駄目、やっぱりダメージ系以外は殆ど効いてないわ、この子!」
 これは元より作戦相談時にも懸念されていたが、この蜥蜴に対して能動行動に制限を与える状態異常は然したる意味を持たない。
 影響を与える前に状態異常が解除されてしまう以上、致し方ないことではある。尤もその分、大蜥蜴の側も二次、三次行動を取れないというデメリットは存在するが。
 最早こうなると特異運命座標の側はリソースをすべて吐き出しての総力戦となる。
 生えているキノコやら、木の実がついた大木やらをもっしゃもっしゃと頬張る蜥蜴に、焦った様子の葭ノが追いかけての一撃。
「ああもう、お前の一口はデカすぎんだよ、このデカ蜥蜴が!」
 それまで受けていた傷の大部分を回復された相手に、辟易とした表情を浮かべるのは彼だけではない。
「それ以上食べてる余裕はあるかしら? その一口が最後の晩餐よ!」
 接敵した数子の一刀両断も、分厚い皮に阻まれて巨体の芯までは届かない。
(早くしないと、妖精さんたちの食糧が……!)
 忸怩たる感情を口の中で呟き、敵を見やる数子。それと似たように。
「っ、この尻尾も……本当に」
 言いかけた言葉を呑みこむアッシュだが、その意図は明白である。
 先に打ち込まれ、自身の眼前に立ちはだかる巨大な尻尾に動きを封じられた彼女が試しにと一撃を試みるも、これが一撃では破壊できず、さりとて二撃目にはダメージが過多になると、絶妙な耐久力を有している。
 ただのオブジェクトに二行動を費やす隙は大きく、かといって放置すれば位置取りの過程でそれに近づいた仲間の移動をまたしても制限する。結果としてこれを破壊する以外の選択肢は彼女や、仲間たちに残されてはいなかった。
 この辺りも、マークやブロックが奏功しなかった場合の弊害にあたる。この大蜥蜴が移動を行わなければ、遠距離攻撃班はたとえしっぽを打ち込まれても移動せず、固定砲台として大蜥蜴を狙い続ければよかっただけなのであろうが。
「えぇい、わかっておったことじゃがこの脱皮クソ厄介じゃな!?」
 心中含めて最早何度目の悪態になるか分からないクラウジア。それが敵個体ではなく、その能力単体に充てられるというのも可笑しな話だが。
 いずれにせよ、このままでは食事によって回復を行う蜥蜴に対して、特異運命座標達はリソース差によりジリ貧となる状態だった。
 しかし、それは「本来ならば」の話だ。
「グラァウッ!」
 特異運命座標達とて、自身や仲間の行動にエラーが起きた際の対応策は事前に相談されていた。が、
 その中でも、作戦の骨子であろう「移動制限が意味を為さなかった場合」を考慮していたアルペストゥスの挙動は流石と言える。
 接近して、衝術。言ってしまえば単純だが、大蜥蜴が既に食事を行い、「食べ物」が枯渇したエリアへと吹き飛ばす、と言う疑似的な拘束を行う彼により、大蜥蜴の体力は時間と共に確かに目減りしてきている。
「もー、この暴力的な食欲さえ無ければ、他者を全く傷つけない滅茶苦茶優しい蜥蜴さんなんですがね!」
「言っても仕方無いじゃろ。そら、アルも含めて友情コンビネーションじゃ!」
「えっそれ私聞いてない……!!」
 同様に、しにゃこも。彼女の場合はその時その時に於けるブロック役が動けない場合のヘルプ要因としてだが、アルペストゥス同様に衝術を活性化していた彼女も大蜥蜴の移動制限に貢献する。
 並び、アカツキによる炎技が一度、二度――三度。
 総計、六柱の炎渦。度重なるダメージにアカツキ自身、反動による痛みを微か表情に浮かべるが、それよりも。
「往けい、アルペストゥス!」
 叫ぶアカツキの言葉は、薄氷の激励。或いは皮一枚を隔てた虚勢でもある。
 衝術は近距離対象に向けてしか放てないという特性上、それを行うアルペストゥスとしにゃこはスイッチ不可の足止めを強いられているのと同義だ。
『崩れないバベル』の影響下にある以上、元より言語を介さない大蜥蜴に人並みの知性が有る筈も無いが、こうまで同じ対象に移動を封じられれば魔物の側もその動きを封じる行動に出てくる。
 即ち、自身のブレス――と言うべきか、睡魔を誘う吐息である。
「……グルルル」
 既に戦いは膨大な時間を費やしている。
 繰り返し吐かれた吐息によって舟をこぐアルペストゥスとしにゃこ、そのいずれかが倒れれば、あとは残った何方かがしっぽによってマークされ、自由を得た大蜥蜴は再び食事を開始するだろう。
 ゆえ、そうなる前に。
「ギャウ」

 ――いきるためには食べる。仕方がない。けど、はやく戻ろう。もとのりんねに。

 その意図が、伝わったかは分からないけれど。
 枯渇寸前の気力を振るい、衝術で押し込んだアルペストゥスにもまた、一つの奇跡が。

 ――歪んだまま逝かぬ様に、浄雷を掲げて、
 ――きみが、どうか、しずかに過ごせるように。

「グラアアアアアウッ!!!」
 二次行動。全てを振り絞ったアルペストゥスの雷撃が、その巨体を灼き尽くす。
 ……湧きあがった砂ぼこりの向こう側も確認する余裕なく、翼を畳み、地に付したアルペストゥスの――視線の、先には。


「ぶっへー……つ、疲れました!」
 いや怪我とはないですけど! と語り、地面にへたり込んだしにゃこの言葉に、葭ノもぐったりとした様子で言葉を返す。
「傷を負わない戦いって聞いてちょっと安心してたけど……これを何度もってのは勘弁だ」
 そう言った葭ノは、自身が倒れこんだ『地面』を見て、ぽつり、呟いた。

「……アルペスさん、何時起きるのかな」

 戦いは。
 特異運命座標達の、敗北に終わった。
 先にも言った衝術での移動制限で、後半以降の特異運命座標達は蜥蜴を追いかける必要なく、攻撃集中を用いての火力を叩きこむことに成功したが、残念ながらそれまでにかかる時間が大きすぎた。
 返す刀となるブレスで眠らされたアルペストゥスを置き去りに、しにゃこをしっぽで封じて再び食事を再開した蜥蜴を止める術は、彼らには存在しなかったのだ。
 ……これは若しもの話だが、状態異常回復を受けない睡眠であろうとも、それをスキルに頼らず覚まそうとする仲間の存在が在れば展開はまた違ったかもしれない。
 ともあれ、全ては過ぎてしまったあとの話だ。
「……妖精さんを食べる怪物とかじゃないことは、良かったのですが」
 俯くアッシュ。その頭をぽんと軽くたたいた数子が、誰よりも真っ先に立ち上がって言う。
「せめて、妖精さんたちの森を元に戻す手伝いくらいしないとね」
「……そうね。荒らされた森の後始末も必要でしょう」
 同様に、武装解除していたレイリーも立ち上がっては、自分の両頬を叩いて活を入れる。
「次こそは、あのクソトカゲを倒して見せるのじゃ……!」
 或いは、再起に燃える者も。
 この場での食事を終え、何処かへと去っていった蜥蜴への恨みを募らせるクラウジアに、苦笑したアカツキは。
「……さあ、妾達も、休んでいるばかりでは無かろうな」
 その小さな手で、傍らに眠る竜の背を、そうと撫でて言う。
「妾たちは負けても、戦いは、尚も続いておるのだから」
 ――その手足が動く限りは、未だ、と。

成否

失敗

MVP

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜

状態異常

なし

あとがき

依頼結果は失敗に終わりましたが、戦闘に於いて最も重要な役割を果たしたアルペストゥス(p3p000029)様にMVPを差し上げます。
ご参加、有難う御座いました。

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