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シナリオ詳細

<月蝕アグノシア>或いは、古代遺跡の錬金術師…。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●とばりの森の奥深く
 常春の国、妖精郷アルヴィオン。
 現在、魔種たちによる襲撃を受けているこの国には〝とばりの森〟と呼ばれる森林区が存在している。
 各種樹木に、怪しく光る幻想花、そして人の背丈さえ超える巨大キノコの群生する森だ。
 場所によっては、常春の国とは思えないほどに暗く、陰鬱な雰囲気に包まれている。

 木々の間を縫うようにして、空を舞う1人の妖精がいた。
 新緑色の髪色をした、どこか幼い容姿の妖精だ。
 彼女は、とばりの森の奥深く……巨大キノコに侵食された古代遺跡に住まう一族の出身だ。
 本来であれば、遺跡から出ることなく静かに日々を送る彼女が、どうして森の中を疾駆しているのか。
 どうして、その頬には熱い涙が伝っているのか。
 話は、しばらく前に巻き戻る。

 ある夜、妖精の村に現れたのは〝カー〟と名乗る錬金術師だった。
カーは魔種の狂気にあてられた人間だ。
 彼は“ニグレド”……黒くどろどろとした人型の魔物である……を連れており、妖精たちを捕えてまわる。
 捕えた妖精たちを遺跡の一室に集め、カーは言った。
「隠れ場所にはちょうどいいな。〝アルベド〟の量産には持ってこいだ」
 と、そう言って手近な妖精を掴み上げる。
 カーの話す内容から、およそ以下の事実がわかった。
 〝アルベド〟と呼ばれる錬金術モンスターを作製するには妖精が必要となること。
 カーは、この遺跡でアルベドを量産するつもりであること。
 現在、アルベドを作製するための道具や材料を運送中であること。
 アルベド量産の準備が整ってしまえば、妖精たちはその材料にされてしまう。
 その事実を知った妖精たちは、ただ1人拘束を逃れていた幼い妖精に伝言を託した。
 誰か……誰でもいいから助けてほしい、と。
 錬金術モンスターの核にされ、同族たちを苦しめることだけは避けたいと。
 もしもそんなことになるなら……せめて、カーごと自分たちも殺してほしい、と。
 同族たちの想いを託され、幼い妖精はただひたすらに森の中を疾駆する。

●遺跡へ
 深緑より繋がる妖精郷。
 魔種たちの侵略を受けたかの国で、新たな動きがあったようだ。
「以前に起きたイレギュラーズの血や毛髪を採取するという事件……どうやら〝アルベド〟という錬金術モンスターを作るのに利用するようだ」
 と、そう告げたのは『黒猫の』ショウ(p3n000005)だ。
 アルベドは白い身体のモンスターであり、その姿はベースとなったイレギュラーズに酷似する。
 そして、その生命の核として妖精を必要とするのであった。
「まぁ、妖精たちを救出してしまえばこの場所でアルベドが生まれることはなくなる」
 人目につかず、アルベドを量産するためにカーは遺跡に拠点を構えたのだろう。
 妖精郷に人が使えるサイズの建築物が少ないということも理由のひとつだろうか。
 カーが拠点としているのは遺跡の半ばほどにある一室だ。
 そこに妖精たちも捕らわれている。
「カー自身の戦闘力は低いが、連れている6体のニグレドは耐久力に優れた個体のようだ。また、カーはニグレドに投薬することで、その性能を上昇させることが出来る」
 カーの役割としては、ニグレドを使役して戦う後衛指揮官といったところだろうか。
「カーの投薬を受けたニグレドは【痺れ】の状態異常付与の能力を得る。その点は注意してくれ」
 それから、と一息吐いてショーはさらに言葉を重ねた。
「カーとの戦闘中、アルベドの材料を搬送して来る錬金術師たちが乱入して来る可能性がある」
 現在、遺跡に滞在しているのはカーだけだ。
 カーは単独で遺跡に乗り込み、妖精郷を占拠してみせた。おそらく、目立たずにことを進めるためだろう。
「カーの部下の錬金術師は2名。装備として【凍結】を付与する薬液を所持している」
 近接戦闘能力は低いが、薬液の命中率はなかなか高い。
 混戦の中仕掛けられれば、不慮のダメージを負うこともあるだろう。
「錬金術師たちがどのタイミングで遺跡に侵入するかは分からない。もしかすると、すでに入り込んでいるかもな」
 或いは、戦闘終了まで姿を現さない可能性もある。
 イレギュラーズたちは、いつ現れるともしれない錬金術師たちを警戒しながら戦闘を行うことになるだろう。
「そして一番厄介なのは、カーによってアルベドが製造されることだな」
 アルベドは、ベースとなった者の戦闘スタイルや性格や記憶の一部を引き継いだ白い錬金術モンスターだ。
「仲間と同じ技を使い、同じ声でしゃべる相手か……俺なら戦いたくはないな」
 と、そう言って。
 ショウはうんざりしたような表情を浮かべるのだった。

GMコメント

●ターゲット
・カー(人間)×1
原罪の呼び声を受けている人間
妖精郷を占拠した錬金術師。
戦闘力は低いが、ニグレドを指揮する能力は高い。
また、ニグレドのパラメーターを上昇させる薬物を所持している。


・ニグレド×6
黒いドロドロとした身体を持つ錬金術モンスター。
体力が高め。
また、カーの薬物を投与されると通常攻撃に【痺れ】が付与される。


・錬金術師(人間)×2
原罪の呼び声を受けている人間。
アルベドの材料を運搬している錬金術師たち。
戦況を見て戦闘に乱入してきたり、逃げたりする。

凍結薬:魔遠範に小ダメージ、凍結


●場所
妖精郷にある古代遺跡。
遺跡の中心部にある一室にカーや妖精たちがいる。
遺跡の内部はほぼ1本道だが、ところどころ壁が崩れていたり、部屋があったりするので身を隠す場所には事欠かない。
ランタンが設置されているため視界は良好。
場所によっては道幅が狭く、長物を満足に取り廻せないということもあるだろう。

  • <月蝕アグノシア>或いは、古代遺跡の錬金術師…。完了
  • GM名病み月
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2020年07月15日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
知識の蒐集者
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
絶望を砕く者
シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
わんこ(p3p008288)
シャウト&クラッシュ
シュテム=ナイツ(p3p008343)
久遠の孤月
三國・誠司(p3p008563)
一般人
晋 飛(p3p008588)
マジ卍やばい

リプレイ

●中心部への進軍
 常春の国、妖精郷アルヴィオン。
 〝とばりの森〟の古代遺跡に住まう妖精たちが捕らわれた。
 妖精を捕えた者の名は“カー”。
 原罪の呼び声を受け魔種に与する錬金術師だ。
「クソみてぇな実験繰り返す奴らは元の世界でも大勢いた。こんなファンタジーコミックな世界にきても人間の悪ってのは変わらねぇのな」
 一定の間隔で並ぶランタンの灯りをなんとはなしに目で追いながら『鋼鉄の冒険者』晋 飛(p3p008588)はそう呟いた。
 彼は別の世界からやって来た。元居た世界でも100を超える年月を、兵士として戦って来た彼は、目を背けたくなるような出来事を嫌と言うほどに見てきたという経験がある。
 此度のターゲットである錬金術師は、捕らえた妖精を利用し〝アルベド〟という錬金術モンスターを作り出そうとしているようだ。
「命は平等だ、なんて綺麗ごとを言うつもりはないけどね。優劣って必ずどこかでついてしまうものだ」
 飛の呟きに言葉を返したのは『強く叩くとすぐ死ぬ』三國・誠司(p3p008563)である。彼もまた、飛と同じく別の世界からの来訪者。
 とはいえ彼は、飛と違いごく普通の学徒であった。武器を手に戦うという経験も、この世界へやって来てからが初めてだ。
 そんな彼はどこか冷めた目で世を睥睨し、淡々と世界の真理を口にする。
 命は平等ではなく、優劣は必ずつくものだ、と。
 けれど、しかし……。
 他者の命を弄ぶカーに対して、怒りの感情を抱いていないわけではないのだ。

「兵は拙速を尊ぶという言葉もある。新たなアルベドを生み出される前に、カーたちを撃破してしまいたいね」
腰の刀に手を伸ばし『久遠の孤月』シュテム=ナイツ(p3p008343)はそう告げる。その白い髪に、ランタンの灯りが反射した。
 周囲へ警戒を飛ばしつつも、その歩行速度は速い。通路の先に、助けを求める妖精たちがいるとなれば立ち止まっている理由はないのだ。
 そんなシュテムに『Knowl-Edge』シグ・ローデッド(p3p000483)は「焦るな」と声をかけた。
 シグの視線の向く先には、崩壊した通路の壁がある。
「死角に何が隠れているか……元の世界では、遺跡の探索が生業だったのでな。最も今回の目的は、宝物ではなく〝潜む者たち〟になりそうだが」
 眼鏡の奥の瞳を細め、シグはピタリと歩を止めた。
 ほんの一時、気配を探るように視線を伏せて「怪しいな」と言葉を零す。
シグの言葉を受け、前に出たのは『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)と『死を齎す黒刃』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)だった。
 わんこはカンテラに足を乗せ、壁を走るように全速前進。一方でシュバルツは地を這うように、音もなく崩落した壁へと近づいていく。
 壁の向こうを覗き込み、わんこはキャヒヒと甲高い笑い声をあげた。
「居まシタネ。外道相手に容赦は無しデス……一刻も早く、ぶちのめしてやりマショウ!」
 どうやら壁の向こうに敵を発見したらしい。
 誰よりも早く、わんこは敵へと跳びかかる。
 壁の向こうから轟音。舌打ちを零したシュバルツは、腰の短刀を引き抜くと加勢のためにわんこの後を追いかけた。
 シュバルツの視界に映る黒い影。ドロドロとした体表と、人のそれに似た形。
 振り下ろされたわんこの拳が、黒い怪物の頭部を打った。
「ニグレトだ! 放置しておく理由もねぇし、殲滅してから先に進むぜ」
 よろける黒い影……ニグレトの懐へと潜り、シュバルツは素早く短刀を一閃。
 ニグレトの胸に十字の傷を刻み込む。

 打たれ、裂かれ、身体の破片が飛び散った。
 肩を抉られ、ニグレトの右腕が地に落ちる。
 頭部は陥没し、ドロドロとした体液を止めどなく垂れ流し続けていた。
 シュバルツの刃とわんこの拳が、左右からその頭部を抉る。
 息絶えながらも、ニグレトは大きく身体を捻った。遠心力によって振り抜かれた固い拳が、わんこの胴を打ちのめす。
 けほ、と小さな咳を零してわんこの身体は壁に衝突。それと同時に、力尽きたニグレトの身体は腐るように崩れ去る。
 床に出来た黒く汚れた水たまり。つい数舜前までニグレトだったそれを見て、シュバルツは短刀を腰に仕舞った。
 遅れて戦場に到着した『絶望を砕く者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)は、ニグレトだったものを指さし、薄い笑みを口元に浮かべる。
「アルベドって、これの進化系なのよね? んー。おじさまのアルベドが出たら持って帰るから、髪の毛落としといて?」
 ルアナの視線の向く先には、モノクルをかけた1人の老人。彼の名は『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)。ルアナの保護者を務める元・魔王である。
「まったく、困ったものだ。つい最近も、写身との戦いがあった……髪の毛等、取られぬように気を付けろと言ったばかりだろうに」
 やれやれ、と呆れたように首を振りダレイシアは視線を通路の奥へと向けた。
 遺跡の中心部まで、残りの道程は後僅か。
 来るべき戦いの時に備えて、懐から円盤状の魔道具を取り出した。
 戦いの気配を察知したのか、ルアナもまた剣を抜く。

●妖精解放戦線
 大部屋へと立ち入るイレギュラーズたちの背を眺め、2人の男が言葉を交わす。
「どうするよ? カーの旦那、危ないんじゃねぇの?」
「やもしれんが、御仁はニグレトを引き連れている。今すぐに助けがいるとは思えぬ」
「つまり?」
「……様子見だな」
 と、そう呟いて男は壁に背を付けた。
 遺跡中央の大部屋からは、男の怒号と戦いの音が響き渡った。

 大部屋に到着したイレギュラーズを出迎えたのは、ローブを纏った錬金術師〝カー〟だった。カーの周囲には倒壊した小さな家屋のようなもの……妖精たちの住居だろう……が転がっていた。
 ニグレトだちを使って家屋の残骸を片付けているところを見るに、アルベド精製のための設備をここに設置するつもりのようだ。
 だが、肝心の妖精たちの姿はどこにも見当たらない。
「あちらの角に、どうやら何か居るようだ」
 物音から妖精の位置を割り出したグレイシアは、自身の手元に魔力の球体を作り上げる。それは、禍々しい闇の波動を放つ月。
 侵入者を警戒し、カーがニグレドに指示を出す。カーの前方に集まったニグレドたちへ向けて、月の光が降り注ぐ。
 月明りを浴びたニグレドの身体に、暗色のオーラが巻き付いた。
「ちっ……何をした? いや、検証は後回しだ」
 カーは手近なニグレドへ向け、懐から取り出した注射器を刺す。ニグレドのパラメータを上昇させる強化薬だ。
 術者を倒すべく、1体のニグレドが駆け出した。
「ちょーっとこっちで遊ぼうよ?」
 グレイシアを庇うように、ルアナは数歩前に出ると、剣の切っ先をニグレドへ向けた。ニグレドの攻撃対象はグレイシアからルアナへ移行。移動するルアナを追っていく。
 突然の命令違反にカーは驚愕の表情を浮かべた。
 ニグレドの殴打を剣で受け止め、ルアナは薄い笑みを浮かべる。
「あはっ、その程度じゃ私は倒せないよ!」
 返す刀でニグレドの腕を斬り付けながら、挑発するようにそう告げた。

 ルアナと同様、他の仲間たちもまた動き出す。
 グレイシアのデバフとカーの強化を受けたニグレドは、侵入者を撃退すべく次々に前進を開始した。
 そのうち1体の眉間に、シグの放った矢が突き刺さる。
 対象をシグに固定したニグレドだが、シグは敢えて追撃をかけず大部屋の端へと逃走。
「そう言った趣味は無いのでな。接近は回避させてもらうとしよう」
 距離が開けば、シグの矢による攻撃を受ける。頑丈な身体を持つニグレドを倒すには手数が必要となるが、それも時間の問題だ。
 駆け回りながらも、手にした弓に矢を番え、回避不能なタイミングでそれを射出。
 シグは確実にニグレドの体力を削っていった。

 渾身の殴打がニグレドの頭部を陥没させた。
「どんどん攻撃デス! ニグレドを殲滅して、カーを討ち取りマスヨ!」
 回避を主とするシグとは対照的に、わんこは急接近からの格闘戦でニグレドの注意を惹きつける。
 跳びかかり、殴り、蹴り、アクロバティックに回転し……その様はさながら小さな台風だ。
 ダメージを受ける度、ニグレドの身体を構築する黒い液体が飛び散った。
 一方のニグレドも、頑丈な身体を活かし拳を振るう。
 ニグレドの拳がわんこの腹部を殴打し、その体を地面に叩きつけた。
 呼気を吐き出すわんこへ向けてニグレドの追撃が放たれる。
「キャンっ!?」
 わんこの頭部を、ニグレドの拳が打ち据えた。

「できるならば投薬される前に対処をしたかったのだがな」
 シュテムの放った飛ぶ斬撃が、ニグレドの胸に傷を刻んだ。
 さらに、誠司の放つ無数の弾丸がニグレドの体に銃創を穿つ。
 ニグレドが怯んだ隙に、誠司はカーのもとへと走る。
 だが……。
「っ……!? その一手がくるって思っていたよ」
 ニグレドは素早く誠司の進路へ割り込んだ。振り下ろされる拳を回避し、誠司は小さく舌打ちを零す。
 どうやら2人が相手取っているニグレドは、カーの護衛を優先的に行うよう命令を受けているようだ。
 シュテムと誠司が、カーの持つ薬物を奪取するためにはまず目の前のニグレドを殲滅する必要がある。
「どうにか前衛を通したいけど……」
「ここは敵のテリトリーだ。急いでいても慎重に……だね」
 ニグレドの背後へ回り、剣を一閃。
 シュテムの視線が誠司へ向いた。
 目の前の敵を殲滅すべく、体勢を立て直した誠司はニグレドへ向け弾丸を放つ。
 誠司の放った弾丸は、狙い違わずニグレドの額を撃ち抜いた。

 飛操る2足歩行の戦闘機械が、カーのもとへと辿り着く。
「よっしゃ行くぜぇ!」
 気合一声。
 操縦席から身を乗り出すと、飛はショットガンを掃射。
 ニグレドの影に駆け込むカーだが、弾雨を避けきることはできずにその脚や身体に銃創をつくった。
 銃創を抑え、カーは絶叫。
 痛みに呻くカーの頭上を越える黒い影。
 シュバルツは素早く妖精たちのもとへ駆け込み、周囲の瓦礫を蹴散らした。
 妖精たちは、カーが持参したであろう鳥籠の中に捕らわれている。妖精を奪取すべく、カーはニグレドを行動させるが……。
「はっ、遅ぇよ」
 地面を蹴ってシュバルツは素早く後方へ撤退。
 その手には、妖精の収まった鳥籠がぶら下げられていた。
 カーとニグレドの注意が、シュバルツへ向いたその直後。
「インドア野郎はもっと引き篭もって研究してやがれ!」
 カーの頭上に振り下ろされる鋼の拳。
 戦闘機械による暴力が、カーの身体を叩きのめした。
「妖精の保護は完了だ。頼むぜ」
「応! って、こら! 狭いんだからそんなに暴れんなっつーの」
 シュバルツから手渡された鳥籠を、飛は手早く操縦席へ回収する。
 鳥籠から脱出しようともがく妖精たちを宥めつつ、飛とシュバルツは戦線から離脱。
 追い縋るニグレドの身体へ、無数の魔弾が降り注いだ。
 魔弾を放ったのはグレイシアだ。
 大きなダメージを受け、よろけるニグレドの背後へシュテムが迫る。
「視野が狭いな。計算通りだ」
 剣による一閃が、ニグレドの首を斬り落とし。
 その体は、汚泥と化して崩れ去る。

●妖精たちの解放
 弾丸の雨がニグレドの身体を千々に砕いた。
 硝煙の煙る中、誠司は周囲へ視線を巡らす。残るニグレドは3体。それぞれ、ルアナ、シグ、わんこが受け持っている。
 誰を優先的に援護すべきか……と、そう考えたその直後。
「う、おぉぉおぉ!?」
 小規模な爆音と飛の悲鳴。
撒き散らされる膨大な冷気と凍り付く戦闘機械が視界に映る。
 凍り付く戦闘機械の傍らには、半身を凍らせたシュバルツが倒れていた。
 操縦席から這い出した飛へ向け、錬金術師たちは何かを放った。それは、彼らの持つ凍結薬だろう。妖精たちを庇うべく、飛は身体を盾にして凍結薬を受け止める。
 この期に及んで錬金術師たちは、妖精を捕獲するつもりのようだ。
「お前ら全員、生かして返さねぇよ……!」
 誠司の脳裏で何かが切れた。
 湧き上がる怒りの感情に突き動かされるままに、誠司は砲の引き金を引く。

 咆哮と共にショットガンを乱射する。
「どぉぉらぁっ!」
 そうしながらも、飛は視線をシグへと向ける。グレイシアの援護もあり、ニグレドを討伐したシグは、頷きをひとつ返すと、素早く瓦礫の影へと潜った。
 錬金術師たちのもとへ、弾丸の雨が降り注ぐ。
「くっ……思ったよりもしぶてぇな。妖精は諦めるか?」
「あぁ、それが最善やも知れぬ」
 2人の錬金術師たちは、妖精の奪取を諦め撤退を図る。
 弾雨の雨を避けながら、大部屋の出口へと移動を開始するが……。
「うぉっ!?」
 悲鳴と共に、錬金術師は転倒。その足元は、魔弾によって抉られていた。
 コツン、と甲高い足音が一つ。
「何方に向かう気だ? 生憎、此方は現在通行止めでな」
 大部屋の出口に回り込み、退路を塞ぐグレイシア。静かな口調でそう告げた。
 錬金術師たちはローブの懐へ手を伸ばす。
 けれど、手にした薬瓶を投げる暇もなく……。
 瓦礫の影からシグがゆっくりと立ち上がり、眼鏡の奥の瞳を細める。
 直後、シグの身体は眩い光に覆われた。
「いいタイミングである。攻撃に移る瞬間は誰しも隙だらけになるものだからな」
 一閃。
 直後、飛び散る鮮血。
錬金術師たちの腕は、光剣に姿を変えたシグにより一刀のもとに切断される。
「よっしゃ! ナイスだぜ!」
 妖精たちの無事を確認した飛が、シグへ向けてサムズアップの賞賛を送る。

 一閃。 
 ニグレドの腕が斬り落とされる。
 ニグレドの拳が、ルアナの右胸を打った。噎せ返りながら、ルアナは後退。その口元から血の雫が滴った。
 けれど、ルアナはにぃと小さく笑みを浮かべてみせる。
「痺れ? わたしには効かないよっ!」
 大きく1歩、踏み出すと共に手にした剣を大上段から振り下ろす。
 肩から胴にかけてを深く切り裂かれたニグレドは、力尽きて崩れ去る。
「さぁて……ここが年貢の納め時なんだからね!」
 剣を汚す汚泥を払い、ルアナは視線をカーへと向けた。
 けれどそこには、カーの姿は見当たらない。飛に打ちのめされてなお、カーはどこかへ逃げ去ったのだ。

 飛び散る鮮血と黒い体液。
 激しく殴り合うわんことニグレドは、一進一退の攻防を続けていた。ダメージを受けたわんこの頬から、血と共に電気が飛び散っている。
 アンドロイドであるわんこの身体に巡る回路が、一部いかれてしまったようだ。
 カーの投薬により強化されたニグレドは、思いのほかに頑丈だった。
 だが……。
「残るはこの1体だけだね」
「おぉ、それなら出し惜しみ無しデスヨ!!」
 振り抜かれたニグレドの拳を、シュテムの剣が受け流す。
 仲間の援護により生じた一瞬の隙……わんこがそれを見逃すはずもなく。
 きつく拳を握りしめると、渾身の力でもってそれをニグレドの顔面へと叩き込む。
 ぐしゃり、と土を殴ったような感触。
 頭部を潰されたニグレドは、遂に力尽きたのだった。

 止めどなく血が滴る。
 鼻はへし折れ、歯は砕け、片方の目は潰れている。けれど、まだ生きている。まだ動ける。
 生きてさえいれば、チャンスはきっと巡ってくるとそう思い、痛む身体に鞭打ってカーはゆっくりと出口へ向けて這っていく。
 瓦礫に紛れ、大部屋の端……暗がりを選び、仲間の錬金術師たちを囮に使い、見捨ててまでも彼は必死で生きようとした。
 けれど……しかし。
「錬金術師カー、悪いがお前は地獄行きだ」
 足を引きずる音がした。
 視線をあげるカーの正面、そこにいたのは半身を凍らせたシュバルツだ。凍った身体で無理に動いたせいだろうか。凍った皮膚には罅が走って、そこからは熱い血が滲む。
 氷の破片を零しながら、シュバルツはゆっくりと腕を振り上げる。
 その手には黒い刀身の短刀。
「あ、あぁ……」
 震える唇からは、意味のある言葉を紡げない。
 じゃあな、と。
 囁くような別れの言葉。
 首に走る痛みは一瞬。カーの意識は闇に飲まれた。

「……この遺跡はどうしたらいいんだろう」
 開放された妖精たちは、粉々になった家屋の残骸をかき集めていた。
 その光景を眺めつつ、シュテムはそう言葉を吐いた。
 そんなシュテムの肩に手を置き、飛はゆっくり前に出る。
「片付けを手伝って、それからほかの妖精たちの居場所を聞いてみようぜ」
 妖精たちの居場所が分かれば、魔種たちに先んじた行動も可能になるかもしれないと。
 飛は鳥籠を踏みつぶす。

成否

成功

MVP

シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
皆さんの尽力により、妖精たちの解放に成功しました。
錬金術師2名は捕縛。カーは討伐されました。
依頼は成功です。

この度はご参加ありがとうございました。
お楽しみいただけたでしょうか?
まだまだ魔種たちとの戦いは続いています。
もしも機会があれば、また別の依頼でお会いしましょう。

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