PandoraPartyProject

シナリオ詳細

絶叫の館へようこそ!

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

◆悪夢

 深い霧と明ける事のない夜に閉ざされた国があった。
 その国では近年外からの観光客が激減していて政府も頭を悩ませていた。
「仕方ない、こうなったら奴に頼もう。」
「奴ですか……!?」
「しかし奴の考えは我々では理解出来ない域にまで達しています!」
「いや、それくらい斬新なアイディアが今この国に必要なのかも……。」

「ファントムを呼べ!」


 まるで無人を思わせる大広間にぽっと蝋燭の火が灯る。
 1つ、また1つ。
 数は全部で12。
 そして開かれた入り口から一人の男が消えた足をコツコツと鳴らして現れた。
 恭しく礼をとり、真っ暗な穴のような目を三日月のように細める。
「お前を呼んだのは他でもない。」
 しわがれた声で腐敗をまき散らす高齢のゾンビが言った。
「この国は今、外からの観光客が減り大切な糧を得ることが出来ない。」
 半透明の幽霊が霧に混じりそうな帽子を深く被り直す。
「だからこそ天才と呼ばれるお前に、観光の目玉となる施設の開発を依頼する。」
 カタカタと高い音を響かせた外骨がその細い腕を振り上げた。

「この国に必要な【絶叫】を集めるのだ!」
「いいよ!」


◆天才は理解されないから天才と呼ばれる
 ファントムは考えた。
 この国は死者だけが暮らすお化けの国。
 国を維持するのに必要なのは生者から得られる【絶叫】だ。
 毎年新しい施設を作っては観光客を集めていたが、近年はありきたりな内容と恐怖への耐性を付けた者が増え、めっきり訪れる者が減っている。
「いっそ発想を転換しよ。もともと国内自体が暗いのに更に暗い施設を作ったって面白くもないじゃない。入り口を開けたらドパーンと光って驚かせるんだ。スタッフもボロボロの布きれみたいな衣装も止めて着飾らせよう。悪臭へのクレームもあったから香りは爽やかなフレグランスを使用して。あ、それと無音も止めて叫びたくなる軽快な音楽を採用したらいいんじゃね。照明も見飽きた蝋燭の炎だけってのもな。埃っぽさを嫌う声もあったから清掃は念入りにして。叫び疲れた時の為に庭に紅茶セットを置こう。座ると急に現れる紅茶なんてみんなびっくりするだろう。いいぞ、あとはこれも! それも!」

 ファントムは考えた。
 朝も昼も夜も暗い部屋で一人考え続けた。
 どうやったらお客様を呼べるか、どうやったら絶叫を手に入れられるか。
 そうして草案を書き上げた時、5徹目の濃い隈と高らかな笑い声を残して彼は倒れた。


◆お化け屋敷ってなんだっけね
「異世界の危機にハッピーエンドを綴る為! 境界案内人・子羊、参上!」
 カウンターの上でビシッとポーズを決めた子羊が、10秒ほど静止したあと無言でカウンターを降りる。
 そうして何事もなかったかのような顔をして一冊の本を取り出した。

「今回のお話はとあるお化けの国からの依頼だよ。毎年所謂お化け屋敷を作って観光客を集め【絶叫】を得ることで国を維持していたんだけど、どうやら最近はみんな飽きてきちゃって訪れる人が減っちゃったみたいなんだよね。」
 黒い表紙には墓場の絵と可愛らしくデフォルメされた幽霊が描かれている。
「それでファントムと呼ばれる幽霊に白羽の矢が立ったんだけど……他の死者たちとは違う思考と徹夜のテンションで作りだした最新のお化け屋敷は政府の人達の理解を越えちゃってるみたいで、これが本当に観光客を呼び戻せるか心配になったからオープンする前に試運転してみようってことで異世界に助けを求めたんだ。」
 見た目はおどろおどろしい館だが、一歩入れば回るミラーボール。どこからともなく響く軽快なピアノの音。踊るダンスフロア。
「あの、それってお化け屋敷なの?」
 安全性の為に動く椅子の行き先がふっかふかのクッションの壁であるという説明を読んで、イレギュラーズの一人が首を傾げる。
 「本人がお化け屋敷だと言ってるし、問題はそこじゃないんだよね!」
 虹色に光る蝋燭が灯る廊下を抜けた先、心安らぐ薔薇に囲まれた中庭のティーテーブル。突如現れる美味しい紅茶。
 「この施設がダメだったらお化けの国は本当に衰退してしまうし、ファントムくんの身も危ないことになっちゃう。それは幸せじゃないってことで!」
 死者となって初めて着る煌びやかで可愛い衣装を気に入ってるスタッフも多いらしい。
 政府の役人が見守る中、イレギュラーズに課せられた使命とは。

「みんなにはこの楽し……コホン、こわーい施設でたっぷり絶叫してほしいんだ!」

NMコメント

桃缶です。
今回は夏に向けてホラーをお届けします。
ホラーです。お化け屋敷だし。

◆やること
絶叫すること。
内包する感情は恐怖である必要はありません。
辞書にも「出せる限りの声で叫ぶ」って書いてあります。
政府の役人にとって盲点でもあったのである意味ファントムの天才性は間違ってないと言えるでしょう。

◆施設内
・玄関ホール
煌びやかに光るミラーボールと鮮やかな衣装を着た可愛らしい外骨や幽霊がどこからともなく響いてくる軽快なピアノジャズに合わせて踊り狂っています。

・食堂
椅子に座るとジェットコースターのように動きだします。
怪我がないようにクッションの壁にぶつかりますがスリル満点です。
ちなみにテーブルの上の食事は触れると消えます。食べられません。

・寝室
ムーディーな音楽と共に布団からゾンビが顔を出します。
見た目は腐ってますがとても良い香りがします。
襲う仕草は見せますが基本的にお触り禁止ルールがあります。

・中庭
カラフルに光る蝋燭で照らされた廊下の先に、美しい黒い薔薇が咲き誇る庭とティーテーブルが置いてあります。
椅子に座ると人数分の紅茶が現れます。とても美味しい。

この4か所で絶叫してください。
出口は庭を抜けた先にあります。
ちなみにファントムは深い眠りについているため登場しません。爆睡中。
お化け屋敷ってなんだっけ。

以上となります。
みなさまとハッピーエンドを綴れますように。

  • 絶叫の館へようこそ!完了
  • NM名桃缶
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月15日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束
鏡禍・A・水月(p3p008354)
夜鏡
只野・黒子(p3p008597)
群鱗
モルドレッド(p3p008649)
 

リプレイ

◆お化け屋敷ってなんだっけ

 月すら見えないこの国では現在が朝なのか夜なのかも分からない暗さに満ちている。
 招待を受けた4人の目の前には大きな門と塀に囲まれた見るからに不気味そうな洋館があった。
「人を恐怖させたり驚かせたりするのって大変なんですよね。
 だから勉強になるかと思ったのですけど……発想が新しすぎてついていけそうにないです……。」
 『鏡面の妖怪』水月・鏡禍(p3p008354)がげんなりしながら門に手を掛ける。
 鏡の向こう側にいた妖怪である彼は人に悪戯したり驚かせたりする事が生業のようなものであったらしいが、今回の依頼で訪れたこの施設はどうやら思惑とはイメージが違うようだ。
 さっきから随分とメルヘンなBGMが流れているし。
「あ、大丈夫です。役割は忘れてないですよ、はい。」
「分かるぜファントム。クリエイターが全身全霊を込めて創った作品を頭の固ぇお役人が分かるかっつう話だよな!」
 綺麗に舗装されて小石一つ落ちていない道を歩きながらうんうんと頷くのは『聖女の小鳥』ヴェルナンド=ヴァレンティーノ(p3p002941)だ。
「しっかし、ホラーはそんなに得意じゃねぇんだが大丈夫だろうか……。」
 頑丈そうで厳つい見た目とは裏腹に声にはやや弱気が漂っている。
 そんな彼の横を歩く『群鱗』只野・黒子(p3p008597)は元地方公務員らしい心情で今回の依頼内容を思い返していた。
「ファントムの境遇というかおかれた環境へは同情する。
 公僕というのは大体こういう無理めな要求をどうにか処理するのが仕事だしな。」
 過去を思い出して吐くため息は妙に哀愁を感じさせている。
「なので。まあ、頑張るか……。」
 依頼、仕事であると辿り着いた洋館の扉の前。
 やや陰鬱な空気感を漂わせる三人とは裏腹に一人随分とテンションの高い男がいる。
「ラウンドナイツのモルドレッド! ただいま参上、ってなぁ!
 俺が来たからには安心してくれ! どんな敵だろうとブッ倒し――え、そういう依頼じゃない? お化け屋敷?」
 三人に緩く首を横に振られ、『ラウンドナイツ』モルドレッド(p3p008649)はその四白眼をぱちくりと瞬かせた。
 意気揚々と振り上げた腕をそっと降ろし、深呼吸を一つ。
「なっ……なんじゃそりゃああああああああ!?」
 始まる前から最初の絶叫が施設に響き渡った。


 気を取り直したモルドレッドが先陣を切らんとばかりに洋館の扉を開け、閉じた。
「待った。ちょっと待った。え、場所間違えたか? ここで会ってる? そ、そうか。ダンスホールが見えたのは目の錯覚か。俺、疲れてんのかな。」
 ゴシゴシと片手で両目を擦ってからいざ再挑戦。
「よし、もっかい開けるぞ――

 やっぱりダンスホールだったああああああああ!?」
 政府のお役人たちもにっこりのリアクションで叫ぶモルドレッド。
「うわぁっ!!??」
 ミラーボールの光に面食らった悲鳴を上げたのは鏡禍だ。
「外が暗いのに開幕からこれはきついです……。」
 などと目をしょぼしょぼさせながらホール内を見て、踊り狂ってる幽霊たちに若干引いた笑顔を見せたりしている。
 最初のアトラクションと思われる玄関ホールは外の暗さから一変、キラキラと輝くミラーボールに照らされながら軽快なジャズが流れていた。
 大きなグランドピアノをノリノリで弾いている小柄な外骨がドヤ顔で客を歓迎し、宙に浮かぶフリフリのアイドル衣装が滑らかな動きでターンを決める。
 ぴったりとしたボンテージをパッツパツにしながら体を詰め込んだのであろうスライムみたいな物体も音楽に合わせてぐねぐね踊っていた。
 どこからともなく響く笑い声は通常のお化け屋敷なら恐怖すら感じさせるかもしれないが、ここは光輝くダンスホール。
 ただただ楽しそう、としか言えない。
「普段から絵を描いてる時も聞くくらいジャズが好きだからな。ファントムとやら、いい趣味してやがるぜ!」
 入るまでは弱気になっていたベルナルドがテンションを上げて踊るスタッフの中に飛び込んだ。
 各方位から照らされるスポットライト。
「折角だからな誰か踊らないか?
 スウィングがなけりゃ始まらない。踊れる場では踊ったもん勝ち。そうだろう?」
 音楽に合わせて軽快なステップを踏むベルナルドにキャー!と黄色い声援が贈られる。
 声援に応えるように振り向けば、踊る衣装に囲まれながら無表情気味で八重歯を見せて声を出す黒子と目が合った。


「いやあ、踊った踊った。」
 汗を拭いながら廊下を進むベルナンドが次の扉を開けるとそこは豪華なテーブルに豪勢な食事が並べられた食堂だった。
「これが動く椅子ですか……安全なんですよね?」
「え、ここに座れって? いやもうなんか既に嫌な予感がするんだけど――うおっ!? ガタンっつったぞ!何か動き出してねぇか!?」
「お、飲み物もあるじゃないか。喉が渇いて……って、な、なんだこりゃあああああーーッ!?」
 4人が席に着くと同時に動きだした椅子が縦横無尽に食堂内を走り回る。
 安全だと言われていてもシートベルトはなく、必死で椅子にしがみつく。
「待って、待ってくださいー!!!!鏡が割れる!割れますからぁ!!!!!!!!!」
「って、これジェットコースターじゃねぇかあああああああ!? おわあああああああああああ!?」
 人生初体験の絶叫アトラクションに悲鳴を上げる鏡禍と目を見開いたまま悲鳴を上げるモルドレッド。
 ベルナンドは咄嗟に何か掴もうと真横にあったテーブルに手を伸ばすが、実はただの幻で出来ていた食事たちは簡単にその手をすり抜ける。
「……って、今更そんなサプライズかまされても「お腹空いてたのになー」とかいう状況な訳ねぇだろおぉぉーー!!」
 もふんっもふんっもふんっ
 とても柔らかそうな音を立てて椅子ごと壁に突っ込んだ3人はドキドキと激しく動く心臓を落ち着かせる為にその気持ちよさに没頭する。
 一人、黒子はわー!とかきゃー!とか言いながら安全を追求するならシートベルトは必要だなと思いながら壁に突っ込んだ。


「うっ……壊れるかと思いました。」
 滅茶苦茶怖かったと半泣きになりながら、よろよろと歩く鏡禍を黒子が支えながら、4人は次の扉を開けた。
 情報では寝室ということだが。
「ふぅ、ようやくお化け屋敷らしい場所に――って、このBGMなによ?スタッフ間違えてね?」
「随分良い香りもするな。俺はギフトで匂いの色が見えるから、ベッドに何か仕掛けがあるのはピンとくる。」
「あ、ホントだ。良い匂いです。」
 薄暗い寝室はほんのりピンク色の照明で照らされ、流れるBGMは随分とムーディーな雰囲気だ。
 甘く爽やかな匂いに釣られてぐったりとしていた鏡禍が顔を上げ、そのギフトの効果でベッドに何かがいると判断したベルナンドが分かっていれば怖くないとばかりに距離を取る。
 バレバレの罠にかかってやる程、俺は馬鹿じゃない!と言いかけ、布団を跳ね飛ばすように起き上がったゾンビにヒッと悲鳴が上がった。
「離れてても出るのかよぉおお!!」
「うわっ!? 良い匂いのゾンビとか……これ知らなかったらだいぶ怖いですよ!」
 部屋の入り口付近まで下がってドン引きするベルナンドと鏡禍。
 びっくりしたー!とリアクションする黒子の横で逃げ遅れたモルドレッドの視線がゾンビとばっちり絡み合う。
「うおっ!? ゾンビ!? なんで!? てかその仕草なに!?」
 清楚な白いネグリジェに身を包んだゾンビがまるで呼び込むように腐り落ちかけた両手を伸ばして誘うような仕草を見せる。
「おまっ、これラブホかよおおおおおおおおお!!!」
 モルドレッドの渾身の絶叫が響いた。


 彼等は逃げた。
 あの後棚の間やクローゼットからぞろぞろ現れた良い匂いのするゾンビたちから必死で逃げた。
 そうして辿り着いた庭に用意されたティーテーブルで今は優雅な安らぎを得ている。
「……はぁ、はぁ。くそ、最後に普通のお化け屋敷らしいギミック仕込んでやがるなんて、油断したぜ……。紅茶が無駄に美味いのがまた腹立つ……。」
「わぁぁぁぁぁ! 素敵な庭ですね!」
「ヒュウ、素敵な庭じゃないか。黒薔薇をカラフルな燭台が照らし、黒色を引き立たせる……悪くない雰囲気だ。なんと紅茶のサービスつき。彼女との一時を過ごす場所として最適――

 って、ただのデートスポットじゃねぇかあああああああ!ホラー要素どこいったああああああ!?」
 モルドレッドの渾身の絶叫が響いた。

 綺麗な庭に美味しい紅茶。
 あとはもう出口に向かうだけだと知っているからこそ今は平穏に休息を楽しめる。
「なんだかんだ声は上がりましたね。お化け屋敷というよりごった煮テーマパークでしたけど……」
「最初は楽しいと見せかけてという意味じゃ、ギャップを上手く使っているな。」
「なんで初依頼がこうなるんだよおおおおおおおお!!!」
 頭を抱えるモルドレッドをベルナンドと鏡禍がお茶菓子にと現れたクッキーを勧めながら慰めている後ろで。

「うん、これ普通にホールと絶叫マシーンだけでなんとかなるだろ、多分。
 寝室は宿泊施設や中庭は飲食施設にして。「一泊できる行楽施設」で売り出せばいけるはずだ。
 そういや要望があればサプライズ的なゾンビちゃんの出番もあるんだろうか。
 無論、追加料金的にもらう感じで。記念日とかでも使えるような。
 他の案も追加でほしい? けど予算をそう多く出せない?
 国営の為なんだから捻り出すって突っぱねてやりなさい。手伝うから。」
 黒子はこっそり現れた12人のお役人お化けたちを相手に総評と今後の構想を兼ねた会議を始めていた。

成否

成功

状態異常

なし

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