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シナリオ詳細

ブレンダンソマー墓所よりの誘拐

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●『大いなる墓守』の襲来
 真っ黒な枝のようだ。
 焦げ付いた草地に倒れ、助けを求めるように翳した腕が、その姿勢のまま止まっている。
 燃焼しきった肩から指先までにかけてが炭と化し、やがてぼろぼろと崩れ去ってゆく。
 あたりにあるのは炭の臭いと焦げた人。焼けた草木と黒煙である。
 人間の二倍はあろうかという巨大な人型シルエットが黒煙をかくように近づき、生き残った一人の少女に手を伸ばした。
 黄金に包まれたミイラのような手。しかしその巨大さは人間の倍はあり、ひとつかみで少女を持ち上げてしまった。
 そして見るのだ。
 巨大な。ああ、巨大などくろのような顔。肉が乾き張り付いたようなそれは、黄金の杖を持っていた。
「ゴセゼ、ザギサガゼゼソドバス。ボボシ、グシギ」
 巨大なミイラは不可思議な発音でなにかを述べると、少女を気絶させ、どこかへと運んでいった。
 ブレンダンソマー墓所よりほど近い、イチジョ集落でのできごとである。

●『おお、メシア。我らがウルトラヴァイオレット様』
 事件の発端がいつであったのか。
 墓ができた時か、そこへ入った時か。
「少なくとも、巨大なミイラが墓から飛び出してきたことが、今回の事件の始まりだと言っていいわ」
 装備を調えた四十代ほどの美女が、木のテーブルに簡易地図を描いていった。
 彼女の名はハンナ。学者であり、今回ローレットにおける依頼主である。
 過去にブレンダンソマー墓所の探索を依頼した人物でもあり、その依頼に関わった者なら顔を知っているだろう。
 とはいえ、知っている必要は無い。今知るべきは、他にあるのだ。
 『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)は地図のひとつを鮮やかな爪で指さした。
「少し前のことよ。墓所から複数のミイラ型アンデッドが出現して、近隣の集落を襲ったわ。
 多くは剣や弓を装備したもろい兵隊だったけれど、織物と酪農だけしてきた住民にとっては死ぬほかない状況だったでしょうね。
 実際、現場には無数の死体が残されていたわ。その殆どが矢や刀による失血死だと言われていたけど……一部は地面ごと炭にされた焼死体として見つかったわ。不自然な燃え方をしていたから、ミイラの中に存在していた巨大ミイラのものだと考えていいわね。
 その巨大ミイラが生き残った少女を浚っていったとも報告されてるわ」
 ミイラの腹に刻まれていた文字を学者のハンナが解読したところ、『大いなる墓守』という意味の文字だとわかった。
「普通なら、なぜ近隣住民を突然襲ったのかもなぜ一人だけ浚われたのかもわからなかった所だけれど……」
「収穫された知識は危機に備わるものよね。墓所の地下に封印されていた『大いなるもの』の復活に必要な生贄を集めていると考えているわ。
 勿論その場合もやるべきことは一つ。
 墓所から現われたミイラたちを倒して、壊すこと」

 一度墓所へ戻ったミイラたちは再び外へ現われ、襲われた集落とは逆側にある別の集落へと侵攻を始めている。
 一直線のルートを通っているため、軍勢を阻むのは難しいことではないだろう。
 立ちはだかるイレギュラーズたちを無視出来ない以上、全面的な戦闘になるはずだ。
「下位のミイラたちは恐くないわ。面倒になるのは『大いなる墓守』のほう。
 作戦をよくねって、きっちりと敵を全滅させてちょうだいね」
 それが人々を守ることにもなるのだから。
 と、ハンナは暗に頷いた。

GMコメント


【オーダー】
成功条件:ミイラ軍団の全滅

●依頼特徴
・平地:見通しのよく広い平地で戦います。互いの位置確認がしやすく、足場ペナルティがありません。
・殲滅戦:敵対象物全個体の戦闘不能を成功条件とします

【エネミー】
甲:大いなる墓守(1体)
 ブレンダンソマー墓所より現われた巨大なミイラ型アンデッド。
 全長は3mほどあり、黄金の鎧と杖を装備している。
→使用スキル
 文明を食らう蛇(神遠域【炎獄】):炎の蛇を生み出し、襲いかかる。
 拒絶(神特レ【炎獄】):自身より半径2R範囲の敵(PCのみ)を対象とする炎をまき散らす。

乙:ミイラ(10体)
 ブレンダンソマー墓所より現われたミイラ型アンデッド。
 主に剣で武装しているが、とてももろく戦闘力も劣っている。
 前へ出てのマーク・ブロックを主な役目とする。
→使用スキル
 格闘(物至単):剣で切りつけます

【おまけ解説】
※これは依頼成功に直接必要のない情報です。

 このシナリオは『ブレンダンソマー墓所への探求』の結果に基づいています。
 (https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/241)
 本来『ブレンダンソマー墓所への探求』は普通に古代遺跡を探索し、奥に控えていた巨大なミイラ『大いなる墓守』を倒すことでクリアするノーマルルートが存在していましたが、優秀な活躍によって隠された『真に大いなるものルート』を発見し、高い成功を収めました。
 今回は早すぎる解放によって深刻なエネルギー不足に陥った『大いなるもの』が非効率ながら生贄を直接集めてまわるようになったようです。
 対して周辺の土地を治めている貴族は土地への打撃を恐れて詳しい者(遺跡調査を行なっていた学者のハンナ氏)へ討伐を依頼。ハンナ氏は適切な調査を行ない、遺跡探索の際とても優秀な活躍をしたイレギュラーズを戦力にすべくローレットに依頼を出しました。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • ブレンダンソマー墓所よりの誘拐完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年04月17日 21時10分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

蜜姫(p3p000353)
甘露
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
雷霆(p3p001638)
戦獄獣
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
九重 竜胆(p3p002735)
青花の寄辺
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
Λουκᾶς(p3p004591)
おうさま
ティアブラス(p3p004950)
自称天使

リプレイ

●ミイラと生贄と
「またですか……アンデットって奴は、魂も質が悪いし、しぶといし……」
 不満げに呟く『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)。
 魔剣を杖代わりにして地面をじっと見つめている。
 ここはマツク集落へ続く道。集落が墓所の東側から半時計回りに、かつ近い所から狙われているという法則性に基づいて配置された迎撃ポイントである。
 大いなる墓守とミイラ集団がこちらに近づいていることは、『蒼ノ翼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)のファミリアー式偵察でも明らかだ。
「大人しく寝てればまた壊されることも無かっただろうに」
 ミイラの行軍を共有視覚ごしに俯瞰しながら呟くルーキス。
「攫われた人間が無事ならいいんだけど、流石に偵察以上のことは難しいかもしれないなぁ」
「そうか?」
 そばについていた『紅獣』ルナール・グルナディエ(p3p002562)が、そういうものかもなと小さく納得した。
「さて、今回はルーキスもいるし……たまにはいいとこ見せないとなー?」

 作戦上、ミイラたちが一定のラインを超えるまではやることがない。
 『自称天使』ティアブラス(p3p004950)は周囲の仲間たちを観察しながら時間を過ごしていた。
「さてさて……初の戦闘依頼ですかぁ……」
 なんて呟きながら、『私は出来る事を出来る事でやるだけですかね?』と頭の中で付け加えた。
 組んだ手を胸に寄せる『甘露』蜜姫(p3p000353)。
「さらわれちゃったひとのことも気になるけど……今は新しい犠牲を出さないために頑張るの」
 それはある意味、皆のスローガンだ。
「その通りです」
 頑張りましょう、と『特異運命座標』オリーブ・ローレル(p3p004352)はフルフェイスの兜ごしのくぐもった声でいった。
「今は目の前の事、よ」
 帯を締め直し、ぎゅっと刀の柄を握る『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735)。
 作戦序盤の要を担っているためか、緊張が高まっているようだ。深く呼吸を整えている。
 そんな気分を上げるようにか、『おうさま』Λουκᾶς(p3p004591)がぱっとした笑顔で声をあげた。
「さぁ、人々の脅威となるミイラさん達を殲滅しましょう。過去が今を糧にするなんて、おかしな話じゃありませんか!」
 どんと地面をついた巨大な車輪。戦いは、すぐそこまで迫っている。

「村を荒らして娘を攫うか」
 ネコ化特有の鼻先をスンと鳴らして、『戦獄獣』雷霆(p3p001638)は腕組みをしていた。
「やっている事は遺跡荒らしと似たり寄ったりだな」
「そのミイラを退治するのが仕事なのよね」
 そんなことだろうと思ったわ、と『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)。
 『神がそれを望まれる』と言い慣れた調子で呟くと、ゆっくりと歩き始めた。
 行くわよと声をかけられ、腕組みを解いて後に続く雷霆。
「さて……手前勝手で悪いが、殲滅させて貰おうか」
 何をするにも、まずはそこからなのだろうから。


「作戦を確認するわね」
 イーリンが地面に描いたのは今回の戦闘を有利に始めるための作戦だ。
 狙うのはきわめて大きな初撃。それも手下のミイラたちを可及的速やかに排除するための攻撃だ。
 主なダメージソースは竜胆。
 最大限の打撃を引き出すためのフォローとして、四人ものメンバーによる『名乗り口上』の行使が組み込まれた。
 メンバーに恵まれたと見るところか。恵まれたメンバーを活かしたと見るところか。どちらかはさておき、うまくすれば邪魔なミイラたちを一掃し、きわめて単純な包囲殲滅戦へ持ち込むことができる。やはり大物は囲んで棒で叩くに限るらしい。
「準備はでいています」
「合図を頂ければいつでも」
「りょーかい! 司書様の言う通り!」
 イーリンの作戦に、まずは囮となるメンバーが頷いた。
 ルーキスが手を振った。ファミリアーによる偵察で、予め決めた作戦開始ラインに到達したことを知らせたのだ。ルーキスが知らせた陣形は『大いなる墓守』の前方でミイラ10体が団子状になっているというものだ。好都合である。
「やるわよ、敵から目をそらさないで」
 身構えるイーリンたち。
 戦闘可能距離に入った『大いなる墓守』は、大声で何かを叫んだ。
「リヂゾザダルロボパ、リバゴソギザ!」
 大股で駆け寄り、杖を掲げる『大いなる墓守』。吹き出た炎が蛇の形を成し、イーリンたちへと襲いかかる。
 この程度、とばかりにルカは車輪を盾にして回転を始めた。
 利香とオリーブも剣を翳して炎を耐え、隙間から目をこらした。
 ミイラたちが奇声をあげて駆け寄ってくる。
「今よ!」
 イーリンはすかさず『名乗り口上』を放った。
 彼女だけではない。ルカは高々と『王の一声』を放ち、ミイラたちの意識を集中させた。否、意識せざるをえなくしたのだ。
 この時点で釣り上げることができたのは半数程度。
 イーリンとルカはきびすを返して走り、ミイラたちはそれを追いかけていく。
「残りは引きうけます」
 オリーブはクレイモアをぶんと振って敵意の顕示を行なうと、それを受け取ったミイラたちを引きつけて同じように走り出した。
「えーっと、じゃあ……」
 利香はしばし上を向いていたが、やるぞと自分に気合いを入れ、ちょっぴりセクシーなポーズをとった。
 ぱちんとウィンクをひとつ。注目していた残りのミイラたちがハッとして手を翳し、『ウヴァー』と声をあげて駆け寄ってきた。
「成功! あとはお願い!」
 きびすを返し、全力で走り出す利香。
 端から見るとミイラの集団から逃げ惑う人々に見えなくも無いそんな光景。
 しかし、腕組みしてどっしりと構える竜胆がその先にいるとなれば変わってくるものだ。
「竜胆、任せた!」
「任されたわ」
 片足の踵を下げ、全身を絞ったバネのように緊張させる。刀をすらりと抜き、腕を大きく交差させた。
 竜胆の左右を抜けていくルカやオリーブたち。
 残る風に髪を靡かせつつ、一拍遅れて鋭い斬撃を繰り出した。
 周囲の空間がはじけ飛んだかと思うほどの衝撃。
 狙いに狙った衝撃は、別の目標を必死においかけていたミイラたちに思い切りのいいクリティカルヒットを浴びせることになった。
 一斉に吹き飛び、地面をバウンドするミイラたち。
 その一方で、ブレーキ&ターンをかけるオリーブたちを回復すべく蜜姫やティアブラスたちが飛び出してきた。
「回復が必要そうですね?」
 オリーブにライトヒールをかけるティアブラス。
 一度の回復でフルカバーできないくらいには激しいダメージだったが、取り返せない程でも無い。
 蜜姫も桜模様の扇子に口づけをして、放つようにして風を送り出す。
 それをうけて、ルカの火傷はひいていき、痛みも風にのって飛んでいった。
「さて。数の暴力ってやつな、うん」
 バウンドするミイラたちに突っ込んでいくルナール。
 竜胆の一撃で全壊したミイラも少なくないようで、五体ばらばらになったミイラの残骸を踏み越え、強力なブロッキングバッシュを叩き込む。
 起き上がり組み付こうとしたミイラの上半身がおもしろいように飛んでいった。
 ルーキスが空に向けて魔銃を撃つと、陣を描いて恐ろしい黒翼狼が現われた。
「やあ久しぶり、今回の獲物はあれだ。容赦なく砕いてあげて」
 ルーキスが指をさしていうと、起き上がって我に返った(?)ミイラの上半身を食いちぎっていった。
 ポップコーンもかくやというはじけ方をしていくミイラたち。
 最後の一体となったミイラが、首をぶんぶんと振って身構えた。
 目の前に立つのは黒い巨体。雷霆だ。
 奇声を上げて殴りかかるミイラ。
 が、その拳が手のひらで止められ、雷霆は深く鼻息を吐いた。
 相手の拳をぎゅっと握って固定し、振りかぶる自らの拳。
 ミイラは抵抗もままならぬまま、顔面を空の彼方へ飛ばされた。

●大いなる墓守
「レギガガラビギダザギダゼギダギグ……」
 『大いなる墓守』は首を振った。
 ミイラたちがかくも早く散ったことに驚いているのか、それとも失策を察したのか。
「ボグバセダ……ゴレゲサガヅバラゲデ、ゴサンデガサビグスギバベゲ!」
 杖を振りかざし、突撃を仕掛けてくる『大いなる墓守』。
 ルカはそれを引きつけるように、車輪を手にぶつかっていった。
「墓を暴かれた後に出てくるなんて、墓守にした主が泣いていますよ」
 『大いなる墓守』の繰り出した杖を車輪で受け止める。爆発的に吹き出した炎があたりを覆い、草や土を焼いていった。
 イーリンは聖句を唱え、魔書の断章で周囲を覆う。
 聖なるかな聖なるかなと響かせ、炎があちこちへ曲がっていった。
 それでも防げない炎に耐えつつ、リッターブリッツを叩き込んでいく。
 『大いなる墓守』へと突き刺さる剣。
 追撃だとばかりに飛びかかったオリーブのブロッキングバッシュが、『大いなる墓守』の膝頭を砕く。
 顔を上げるオリーブ。
 次なる攻撃がくるタイミングだ。
 膝をついた『大いなる墓守』は杖を振りかざし、その先端で地面を叩いた。
 あちこちから吹き上がる炎。
 腕を交差して防御し、雷霆が跳躍した。サロの爪から作られたという爪剣が炎の渦を切り裂いて進む。
「我が闘志の炎と貴様の炎獄、どちらが呑み込まれるか、試させて貰おう」
 『大いなる墓守』の顔面に食い込み、激しく斜めに切り裂いていく爪。
 はれた炎の隙間を縫うように、ルーキスがマギシュートを打ち込んでいった。
「範囲外からならこっちへの攻撃は絞られるってね」
 攻撃に紛れるようにして蜜姫が駆け寄ってくる。扇子に口づけをすると、その場でくるりと回転した。甘い桜の香りがあたりを包み、雷霆たちの身体を覆っていた激しい炎が払われていく。
 『大いなる墓守』は歯噛みし、杖を振りかざす。
 自分を囲む全員を一斉に薙ぎ払うつもりだ。
 炎が杖を覆い、まず蜜姫へと向かっていく。
 そこへ飛び込んだのはルナールだ。
「ヒーラーや後衛を庇うのは当然、か」
 槍を激しく振り、蜜姫を炎から守る。
 ルナールは炎にまみれたが、ティアブラスが離れた所からライトヒールで回復をしてきた。
 それに便乗するようにヒールオーダーでの回復をかぶせるルーキス。
「ほらほらしゃんとして、仕事はまだあるんだよ」
 頷くルナール。
 炎でできた渦巻き状の焦げ跡が『大いなる墓守』を中心にできあがる。
 死にものぐるい、という表現で正しいのだろうか。
 群がる皆の攻撃を振り払うように、『大いなる墓守』は暴れに暴れた。
 しかしそれがただの悪あがきであることを、もしかしたら察していたのかも知れない。
 杖をつき、頭を垂れる『大いなる墓守』。
「レギガガラ……ヴァギゴセドドガランダレビ!」
 腕を翳し、自らの腕を燃やし始める。
 対抗するは利香と竜胆だ。
 振り込まれる炎の腕を、飛び込んだ利香は根元から切断した。
「もう二度と出てこないで下さいね」
 飛んでいく腕。回転する腕。
 竜胆は刀を一本に絞り、飛来した腕を袈裟斬りにした。斬撃はそのまま飛び、『大いなる墓守』の首をはねた。
 膝を突いた姿勢のまま、倒れ込む『大いなる墓守』。
 竜胆は安堵するように息を吐き、そして背を向けた。

●チェスプレイヤー
「見事なものだわ。指揮官はあなた?」
 現場を遠くから観察していたらしい依頼人のハンナ氏が、手を叩きながらやってきた。
 味方の損害はそこそこ。初期想定よりも軽微。
 『あなた』と呼びかけられたイーリンが、小首を傾げた。
「あなたは司書だって聞いていたけど、どうやらチェスプレイヤーだったみたいね」
「チェス……」
「『屍屍地雷(しかばねじらい)』を速やかに解除したんですって? その時の話を学者仲間から聞いたのよ。名前を知らなかったから。そんなあだ名で呼んでいたの。気に障ったらごめんなさいね」
 現場は既に次の段階に入っていたようで、ルカや蜜姫たちが『大いなる墓守』の残骸を調べている。
「報告書では女性が人柱になっていたようですし、ミイラ化して再利用なんて事も十分あり得そうです」
 それに加わるティアブラスも、どこか気分が良さそうだ。
「いやぁ、面白いですねぇーミイラって動くんですねぇ。こんな曰く付きの雰囲気と良さそうな装備を見てたらまた信仰(お金)なるお話が……ゴホンッ。おっと、このミイラ薪の材料になりますかね? 杖と鎧は壊さないでください! 良い素材になりそうなので」
 そんな彼らをよそに、利香やオリーブたちはハンナのもとへとやってきた。
 『大いなるものやそれに類似した敵が再び現れる可能性に備えて、遺跡の更なる調査を頼みたい』という旨だ。
「墓所絡みの面倒がまた起こる事はほぼ間違いありません」
「私も同意見だわ。と言うより、調査は私のライフワークだもの、仮にやめろと言われても調べるわ」
「手が必要ならまた私達を呼びなさい」
 会話に加わってくる竜胆。ハンナは肩をすくめて見せた。
「二度も頼んでおいてはしごを外したりしないわ。それこそ、やめろと言われても依頼するつもりよ」
 振り返る。
 『大いなる墓守』を中心としたエリアは火で炙ったようにまあるく焦げていた。
(生贄を求めるだけなら一人を残して全ての村人を殺す必要はない。報告に合った若く美しい女性が生命力を吸い取られた事情、攫われた少女……)
 そこでふと、竜胆は違和感に気がついた。

 違和感に気づいたのはイーリンもまた同じである。
 報告によれば、ブレンダンソマー墓所よりほど近いイチジョ集落は『大いなる墓守』によって襲撃をうけ、少女が浚われたという。
 現場に残った霊魂からとった断片的な情報ではあるが、実物と戦ってみて、どうにも規模が違うように思えたのだ。
 まず辺り一面を焼き払う、というほどの規模ではない。
 人間が完全に炭化して崩壊するほどの火力でもない。
 『大いなる墓守』を上回る……いや、比べものにならないほど超人的な存在が、集落を焼き払ったのではないか、という推測がたった。
 仮にそうだとすれば、あの時『大いなる墓守』が発した言葉はその『超人的な存在』に対してのものだったのではないか。
「残り、3……か」
 そしてこんな推測もたった。
 『超人的な存在』は集落を焼き払うのに『柱』を消費し、それを再び充填する必要があるのでは、と。

 ルーキスとルナールはブレンダンソマー墓所の近くへと来ていた。
「……まだ終わりそうもない予感がするんだよなぁ。ま、これでルーキスが攫われたら困るし、俺は此処で待機だ」
「生存者がいるなら可能な限り回収はしたいけど……」
 遺跡を観察してみた結果、周辺にミイラの影は無い。
 雷霆は一旦仲間を誘い、墓所へと訪れた。
 目的は浚われた少女の救出や残ったミイラの破壊だが……。
「今すぐ扉を破壊しろ。総力でだ」
 墓所の扉から走って飛び出してきた雷霆はそう言い放った。
「中はミイラだらけだ。放っておけばあふれ出すぞ」

 おおきなものが、そこにある。
 イレギュラーズたちの再びの出番は、近い。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

――mission complete
――see you next

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