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シナリオ詳細

<サイバー陰陽京>反テロ強襲作戦

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●都市迷宮の蠢動
 巨大なコンクリートチューブの中は、すっかり闇に閉ざされていた。
 どこに繋がるのかも知れぬどころか、どれが生きているのかさえも判らないケーブル網。『洛外』地下の共同溝はこの街の基幹インフラストラクチャーでありながら、誰にも全貌が捉えられないほどの奇形的発展を遂げている。
 そんな魔物が横たわっているからこそ、この知られざる都市迷宮は、知る者にとってはこの上ない隠れ家となっていたのであった。もっとも真にそこに棲みつかんと欲するならば、単にこの迷宮に居を構えるだけでなく、時折やって来るメンテナンスの局員たちを、あの手この手で誤魔化す必要があったわけだが。
 そう考えれば必然、この迷宮の主たりえる者は、幾らかの人々に限られる。幻術なり亜空間術なりにて壁向こうの秘密の部屋を隠し通せる魔術師か……あるいは精巧な秘密の入口を建設しうる巨大資本の持ち主か、だ。

 白河北ルートと呼ばれているこの共同溝の一角に、今、一筋の光が差した。光の来た方向に目を凝らしたならば、壁面の一部が密かにずれて、中から光が漏れ出した様子が見えたに違いない。
 それは……まさしく迷宮の主による身じろぎだった。巨大資本――『徳大寺重工』が自身の所有する球場の地下に極秘裏に建設した、球場図面にも共同溝図面にもない秘密工場。その入口が光の正体だ。

「この兵器工場を諸君に使わせるつもりはなかったが、今となっては出し惜しみをすまい」
「なぁに、元よりこんな時のために用意していたものでしょうに」
 工場内で迎え入れた男の言葉に対し、赤外線ゴーグルのみを頼りに秘密の入口へとやって来た男はそう返した。来訪者は昨今『キョート』国を揺るがす反政府テロ組織『白峯』の幹部。蜜月の関係にある徳大寺と白峯は、テロ――寧ろ“戦争”とでも呼ぶべきか――のための非合法兵器製造に手を出したのだ。

●仕事(ビズ)
 黄色くはためく揚羽蝶は、慌てたように本の隙間よりはためき出でた。
「これはあきまへんなぁ……」
 蝶を指先に留めてしばらく見つめた後に、坂東イントネーション混じりのピジン京言葉で洩らしたのは、着崩した着物姿の境界案内人、オハナ。境界図書館に収められたサイバー陰陽小説『ネオホーゲン』シリーズの舞台世界、『八紘』は、テロリストらにより戦争寸前の自体に陥っていたのだ。
「依頼内容はこうどすえ――『極秘の兵器工場を破壊する』……それも特級品のセキュリティ付きの、や」
 工場外とは物理的に隔絶された電脳システム。そればかりか対呪術結界までが張り巡らされていて、幽体離脱や霊視により内部を覗くことすら許されていない。
「とは言え……どうせ破壊すると判ってはるのなら、そう難しいものではありませんのや。システムは配線に中継器を取り付けて、結界は呪符を剥がしてやれば困りはしいひん」
 もっとも、それらが上手くいったところで、物理空間も電脳空間もアストラル空間も罠だらけであることには違いないのだが。赤外線センサーや警備ロボット、攻性防壁や侵入者撃退AI、攻撃術式や使霊といった罠の数々が、万が一に備えて用意されているという!

「それらを掻い潜って、兎に角工場の八割方を機能不全にできれば依頼完了どすえ」
 野球場サイズの工場の八割方とは、幾分途方もない依頼ではあるが。けれどもオハナは、イースト祇園でも優秀なフィクサーとしても知られる人物らしい。つまり、彼女が特異運命座標たちならできると判断したのなら、きっとその通りであるに違いない。

NMコメント

 サイバー陰陽小説『ネオホーゲン』の世界へようこそ。椎野です。
 『八紘』は、『キョート』と呼ばれる国家が地球上の全てを統治するサイバーパンク世界です。舞台となる『洛外』地区の上空には陰陽術に守られた空中都市『洛中』が浮かび、地上には無数の企業アーコロジーが林立する……そんな中で人々は、金と権力にしがみつきながら生きているのです。

●今回の舞台:徳大寺重工白川北兵器廠
 徳大寺重工内部でも存在を知る者は限られる、兵器工場と要塞が合体したような極秘施設です。
 入口は共同溝のもの以外に、物資等の運搬用の潜水艦用ドックがあります。侵入方法は、潜水艦が出入りする隙を狙ってドックに侵入するか、共同溝の入口を爆破するかの二択です。
 工場内は多種多様な警備網がありますので、プレイングには「どんな警備や罠に対し、どんな対策を行なうか」をご記載下さい。対策に成功すれば、破壊工作のための爆弾設置は、特にプレイングになかったとしても最低限の成功を収めるものとします。

●3種類の侵入方法
 皆様は、以下のような侵入方法を試みることができます。ただし必須なのは『【1】物理侵入』のみで、他は無理して選択する必要はありません。

【1】物理侵入
 最も危険ですが、絶対に欠かせない役割です。多種多様の攻撃に晒される中で爆弾等を設置して、工場を無力化しなければなりません。
 破壊工作や侵入用の装備は、ちょっとした軍用品までは必要に応じて支給されますが、スキルやアイテムとして所持していればより高い効果を発揮できます。

【2】電子侵入
 誰か一人でも物理侵入を果たしたならば、中継器経由で電脳空間に侵入し、『電脳体』として行動できます。皆様のデータは電脳戦用アバターとしてものだと解釈されます(物理存在としてのデータがどうなっているのかは、ご自由に決めて構いません……大変ではありますが、物理侵入との両面行動も可能です)。
 物理施設の簡易的な無力化程度なら、電脳空間からの攻撃も有効です。中継器を物理的に取り外されるのが最も致命的なので、対策を考えておくといいでしょう。

【3】霊体侵入
 誰か一人でも物理侵入を果たしたならば、結界の綻びから侵入し、『アストラル体』として行動できます。アストラル体には物理空間を物理攻撃できず、また物理攻撃も受けませんが、対霊体防護のない壁などは自在に通過が可能です。
 物理干渉ができないため、可能な破壊工作はせいぜい攻撃術式等の解除くらいですが、アストラル体ならではの支援行動もありうるでしょう。

  • <サイバー陰陽京>反テロ強襲作戦完了
  • NM名椎野 宗一郎
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2020年07月09日 22時25分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
水瀬 冬佳(p3p006383)
水天の巫女
エシャメル・コッコ(p3p008572)
魔法少女
オニキス・ハート(p3p008639)
八十八式重火砲型機動魔法少女

リプレイ

●工作開始
 小さな、しかし確かな爆発音は、白河北ルート末端の小部屋で転寝していたホームレスを現の世界へと呼び戻した。
 ぽっかりと空いた暗闇の向こうへと目を凝らす彼──しかし半ばアルコールに濁った目には、その先にある真実など判らない……この世界に混乱と恐怖を撒き散らさんと目論むテロ組織の陰謀に、今、立ち向かわんとする者たちがいたなどと。

 『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)がスーツの内ポケットから取り出して投げたライターが、目映い光に包まれた。
 直後……凄まじい炸裂音。けたたましく鳴り立てる警報機はこの爆発で沈黙し、辺りのコンクリート壁ごと消失済みだ。
「さて」
 顔色ひとつ変えずに嘯く寛治。冷酷なまでに冷静に辺りを見渡しながら、囁くのは「派手にやってしまいましょうか」の言葉。
「とーぜんな! こういうとこはちょー久々だから腕が鳴るな! ピロピロな!」
 応えて『魔法少女』エシャメル・コッコ(p3p008572)が投げ込んだプラスチック爆弾が、廊下の向こうで盛大に破裂した。本命の破壊工作用にもほどほどに温存してくださいね、との寛治の忠告にもコッコはプロなと胸を張って返し、忙しなく動き回った先には壊れた壁の向こうの千切れた配線。ピヨピヨ、と召喚中のひよこちゃんとひよこさんがさえずったなら、コッコはすぐさま次の作業を開始した。
「オニオニ、準備はできたな!」
 ひよこくん――こちらは『ひよこちゃん』とも『ひよこさん』とも別の召喚獣だ――に大量の爆弾とともに運ばせてきた中継器を手早く取りつけ手を振るコッコに応じ、中継器のジャックへとプラグを差し込んだ『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)……対人戦を想定した設計はされてない。けれども自身も機械である以上、電子ネットワークとの親和性は常人の比ではない。
「……ん、武装装着。魔力装填。魔法少女オニキス・ハート、起動」
 決め台詞とともに走ったバッチが、電脳空間に重火器使いの魔法少女の姿を具現化させた。物理身体ががくりと動作停止するのと同時……電脳空間のオニキスは無限のグリッドでできた床を蹴る。
『体のほうは、お願い』
 端末越しにオニキスが言葉を発すると、『水天の巫女』水瀬 冬佳(p3p006383)が何かの術式を紡ぎ、オニキスの横たわる壁の穴へと触れた。その瞬間……壁が“再生する”。いいや、もちろんそんなことをしてオニキスを生き埋めにするはずがない……生まれたのはただの幻影にすぎない。しかし、この場を訪れた警備の者たちは、大暴れする寛治やコッコにばかり意識を奪われて、その壁を詳しく検めることなどできぬだろう……。

 そんな空間に自らも収まって、冬佳は静かに壁の向こうの基礎を撫でた。術者にしか判らぬひりつく感覚は、この基礎にも何らかの呪術が施されている証拠。
(神秘と科学の融合――物理的には要塞のようでいて、同時に魔術的観点で見れば術者の工房のような構造でもある……)
 けれどもそれ以上の思索を冬佳は中断し、自らもオニキス同様に目を閉じる。
 次の瞬間、幽体離脱した彼女の目の前に広がったアストラル的視覚には……この工房に幾つも張り巡らされていた、陰陽術の輝きが飛び込んできた。

●奥へ
 行く手に幾つもの迎撃ソフトウェアの姿があるのを、電脳空間内のオニキスは見て取っていた。
 次々に浴びせられるスキャン光。一介の工場には場違いな軍用ボットの強度に、彼女の眉根は僅かばかり寄る。
「この相手には、多対一は不利」
 だからあるのは各個撃破のみ。8.8cmの大口径マジカルアハトアハトが、ボットがスキャン結果を確認し終えるよりも早くプロセスを落とす。ERROR! 他のボットが同胞の不正終了を検出し、オニキスへと敵意を剥き出しにする!
 ……困った。寄って集って攻められたくはない。だからオニキスは電脳空間内をあちこちへと逃げ回りながら、追ってくるボットたちへとコマンドを打った。
「ちょっと止まってもらおうか。大容量データ送信、マジカルDoSアタック」
 急激に動きを悪くする先頭ボット。別のボットがそれを乗り越えてきたならば、そこはオニキスの目の前だ。
 ボットを撃破。ついでに手近な警備システムも破壊。システムの残骸からデータを回収すれば……中には物理座標との対応マップつきの警備ネットワーク図だ――。

 ――秘密工場全体を揺らす微震を体で感じ取りながら、寛治はオニキスから送信された見取り図通りに廊下を進んでいた。
 マップ上に赤点で示された電子ロックやトラップは、次々と緑へと色を変える。オニキスが無事にシステム掌握に成功し、それらを無効化していっている証拠であろう。
 ……けれどもマップに示された罠だけが全てではないことは――寛治が眼鏡に取りつけた、赤外線検知器が物語ってくれていた。独立した警備システムが用意されていることと言い、見取り図上もこの先の空間はぽっかりと空いていることと言い……この先が秘密工場の最重要区画であることは疑いようもあるまい。
(当然、そういった場所は一般従業員たちにも秘密にしたいでしょうからね。しかし……)
 数少ない精鋭の警備兵たちは、その“秘密”の例外だと言えた。前方をセキュリティ、後方を警戒中の武装警備兵に挟まれながら、案じているのは今宵の幼きパートナー。ちょこまかとあちこちの生産ラインに入り込み、爆薬――先程の微震の原因だ――を仕掛けて回るコッコの身だ。
「彼女の“かくれんぼ”を邪魔されるわけにはゆきませんからね」
 製造機械の陰やらダクトやらを遊び場にしてスニーキングミッションをこなすコッコは大人の意識の外に隠れることに長けてはいたが、ひとたび見つかってしまえば場違いさが際立つことまでは否めぬだろう。今も断続的に続いている微振動が、今はまだコッコが誰にも捉えられていないこと――システムの目をオニキスが映像加工により塞いだためか、コッコの身軽さゆえか――の証左にはなっている。けれども“訓練を受けた精鋭”相手にもそれが通じるか否かは、さしもの寛治にも判断しきれない。
 ……だから無造作にステッキをくるりと回したならば、先端を迷わず赤外線センサー群へと向けた。

 BLAM。
 狙い違わぬ仕込み銃の弾丸が、張られた罠を悉く破壊。たとえハックされた監視カメラの映像からは知れずとも、銃声がすれば警備兵は寛治に気付いただろう。……が、そのはずの警備兵たちは……けれども寛治に殺到する代わり、幾人かは闇雲に小銃を乱射する!

 アストラル界から物質界を見下ろす冬佳の目には、警備兵たちが彼女の張った結界に不用意に踏み込んだ結果、次々に魂をかき乱されてゆく様子が見て取れていた。そんな悲惨な状況を打ち破ろうと、冬佳へと襲いかかってゆく使霊たち。
 が……効かない。彼らは冬佳の術式を破れない。陰陽師が直接呪により操る霊ならば兎も角、結界により地縛された霊ごときなら単なる退治対象だ――それでも遠隔から侵入したアストラル体なら帰路を気にして無理できぬだろうが、生憎、冬佳の肉体はすぐそこにある。

「メガネのおっちゃん、こっちは終わったな! これでコッコのポイントもUPな? おいしいおいしいプリンパーティーができるな!!」
「ええもちろん。飽きるまで食べ放題して下さって構いませんよ」
 手持ちの爆薬も使い果たして、ひよこくんの分も残り少なくなるまで破壊工作して回ってから合流したコッコへと、寛治はほくほく顔で答えてみせた。
「はて、徳大寺株はどこまで下落することでしょう?」
 ここまでの間、新田が依頼報酬で賄いきれぬほどの経費を惜しみなく注ぎ込んだ理由はこれだ……全てが白日の下に晒された時、徳大寺重工の株価は時折発作的に起こるだろう反発を除き、週単位でストップ安が続くことだろう。事前に仕込んだ大規模なカラ売りが、経費を上回る莫大な利益へと変わる。
「だったら……プリンパーティーのために、最後まで突撃なー!」

●徳大寺の崩壊
 残り少ない爆薬を盛大に消費して開いた分厚い扉の先は、巨大な格納庫の天井付近へと繋がっていた。
 ほとんど光のない空間に目を擦ってから凝らし、結局は諦めてぴよぴよステッキを振るったコッコ。きらきらと輝いたひよこ型の光によって、下方に横たわるものの姿が微かに明らかになる。
「コッコ、知ってるな! あれは……巨大ロボットな!」
 然様。地下工場のさらに地下に建設されていた格納庫の内部には、金属製の人型ロボットの姿があった。それも、手足だけでもちょっとしたビル程度はあるだろうほどの、あまりにも巨大な軍事兵器が――。

 ……そして。
 一つの人影が巨大ロボットへと駆け寄っていったのが、二人には辛うじて見えた。冬佳からも一つの生命体が、この世界でも他では見られぬような陰陽材料工学の塊に向かって近付いていったのが判る。

『警報! 警報! “タメヨシ”を起動します。従業員は総員避難して下さい』

 警告のサイレンと同時に輝く二つの瞳。ゆっくりと近付いてくるそれの動きは巨大ロボットが今まさに身を起こさんとしていることを示し――直後、それは巨大な腕を持ち上げて、彼からすれば狭い格納庫の天井を打ち崩さんとする!
「何とまあ、無茶苦茶なことを……」
「オニオニ、ふゆちー、聞こえてるな!? 今すぐ体に戻って脱出な!!」
 侵入口に向かって駆け出す寛治とコッコ。そのすぐ後ろの壁が粉々に砕かれて、金属製の腕が通り過ぎてゆく。

 本来ならば搭載されるべき兵器の数々を破壊され、そのまま朽ちてゆくよりは、決戦兵器『タメヨシ』は無理にでも起動されねばならなかった。
 そして……洛外に少しでも破滅をもたらさんと動き出す。

 反政府武装勢力『白峯』の企てし『ネオ保元の乱』の、計画よりも早すぎる最後の夜が始まった。

成否

成功

状態異常

なし

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